RESULT2021年1月号 Vol. 31 No. 10(通巻361号)

陸域統合モデル MIROC-INTEG-LAND:気候・水資源・生態系・作物・土地利用結合モデルの開発

  • 横畠徳太(地球環境研究センター気候変動リスク評価研究室 主任研究員)

気候変動は、自然環境と人間活動が密接に関係しあう問題です。具体的には、人間による温室効果ガスの排出や土地利用によって、気候に変化が生じます。そして気候の変化は、生態系や水資源などの自然環境や、水の利用や食料生産などの人間活動に影響を与えます。

そこで私たちは、日本の研究チームによって開発された全球気候モデル*1である MIROC (Model for Interdisciplinary Research on Climate) における陸面モデル*1をベースにして、水資源・陸域生態系・作物・土地利用のモデル(これらを「サブモデル」と呼びます)を結合させることにより、陸域統合モデル MIROC-INTEG-LAND (MIROC INTEGrated LAND surface model) を開発しました。

従来の研究では、それぞれのサブモデルによる将来予測の計算がなされていましたが、陸域統合モデルでは、図に示すように、それぞれのモデルで計算した結果をお互いに交換する(あるサブモデルの結果を別のモデルで利用する)ことにより、気候・水資源・生態系・作物・土地利用の間の相互作用を記述することが可能になります。

具体的には、気候変化によって水資源が減少し、作物収量が低下することにより、食料需要を満たすための農地が拡大する、といった影響の連鎖を定量的に評価することが可能になりました。モデルの詳細と、現実を再現する性能の評価、将来予測の概要をまとめ、モデル記述論文として出版しました。

 陸域統合モデル MIROC-INTEG-LAND の構成図。気候(陸面)、水資源、陸域生態系、土地利用、作物成長のサブモデルと、サブモデルの間の変数交換を示す。矢印が変数の交換方法で、矢印の横に交換する変数を示す。気候・社会経済シナリオは、モデル外部からデータとして与える