仮想通貨元年とも呼ばれた2017年に、仮想通貨価格の暴騰で莫大な資産を手にした“億り人”が日本で話題となり、認知度がいっきに広まった仮想通貨。
一方、2014年のマウントゴックス破綻事件や、2017年のコインチェック不正流出事件などネガティブなニュースにも事欠かず、仮想通貨は全て胡散くさいと敬遠する人も多いと思います。
本稿では、そんな一部誤解も生じやすい仮想通貨について、電子マネーや法定通貨との違いに着目しつつ、簡単に概要を説明していきたいと思います。
仮想通貨は電子マネー?
英語「cryptocurrency」の対訳として国内メディアでは「仮想通貨」という言葉が使われてきましたが、金などと同様に「資産性」もあることから、G20などの国際会議の場では「crypto asset」と表現され、金融庁もこれに倣う形で2018年12月に「暗号資産」へ名称変更・統一を行いました。
仮想通貨(暗号資産)の定義は、インターネット上で取引できる通貨(財産的価値)です。
国内では、Suicaやnanacoなどの電子マネーが普及していることから、仮想通貨を電子マネーの一つだと連想する方もいるかと思いますが、規制される法律、IT技術と仕組み、目的などが根本的に異なります。
電子マネーは顧客側の小口決済の利便性向上と、企業側の顧客データ収集やロイヤリティー向上(プリペイド式なので、経済圏が生まれる)、という利害の一致により国内で急速に普及してきました。
専用のICカードに日本円等の法定通貨をチャージすることで、入金額と同等額の価値(100円をチャージすれば100円分の価値)を持つ電子マネーを使用可能店舗でのショッピングに利用でき、クレジットカードにおけるサインやPIN入力の手間が省けるメリットがあります。
そして、電子マネーを提供する企業は「資金決済法に基づく前払式支払手段」という規制の適用を受けています。
一方の仮想通貨(暗号資産)は、純粋なpeer-to-peer(個人間)電子的通貨によって、金融機関等の中央集権を介さない2社間の直接的オンライン取引を可能とする事を目的とした「ビットコイン」が原点となっているため、メールのように世界中の人たちが24時間365日いつでも簡単に迅速に送金できる仕組みとして編み出されました。
国内において、仮想通貨は「改正資金決済法」で定義され、関連する事業に対し同規制が適用されています。
仮想通貨(暗号資産)といっても種類は様々で、ほとんど知られていないものも含め2000通貨以上にもなります。
ビットコインのように需要と供給によって価格変動を伴うことから価値が対法定通貨で安定しない通貨もあれば、電子マネーのように当初100円で購入すれば、100円のまま価値が維持されるような仕組みを持つ「ペッグ通貨」もあります。
しかし、プリペイド型の電子マネーは一企業の売上げとなり、顧客はお金を「支払う」一方の関係であるのに対し、仮想通貨は法定通貨に代替できる「資産」になり得るという点が最も大きく異なるポイントと言えます。
現時点では、営利目的である企業があえて「ビットコイン」等といった価格変動の大きい通貨を決済に利用できるサービスを拡充するインセンティブをあまり持たないため、顧客(保有者)は決済目的よりも資産の値上がり(キャピタルゲイン)に期待した投機目的の方が多いのが現状です。
将来的に価格が安定してくれば、ボーダレスな決済利用に対するニーズが高まり、インバウンド需要を獲得する為に企業側が本腰をあげる可能性も十分にあります。
仮想通貨の概要
2008年10月30日にSatoshi Nakamotoと名乗る人物が書いた論文「Bitcoin:A Peer-to-Peer Electronic Cash System」が仮想通貨ビットコインのはじまりです。
Satoshi Nakamoto氏が一体何者なのかは今も明らかとなっていませんが、この論文の中には、ブロックチェーン技術の基本構造やマイニングの仕組みなど、ビットコインを維持する画期的な仕組みが書かれています。
2009年には、当該論文に基づき、世界最初となる仮想通貨ビットコインが実際に稼働し始めました。ビットコインの稼働(成功)が確認されると、ETH(イーサリアム)やLTC(ライトコイン)など新たな仮想通貨も続々と誕生し始めました。
ここでは、一般的な仮想通貨の特徴について説明したいと思います。
仮想通貨の主な4つの特徴
国、銀行などの発行主体がない
私たちが普段使っている円やドルなどの法定通貨は国家(含む中央銀行)が発行・管理しており、その価値は、国家によって保証(担保)されています。
一方、仮想通貨は、政府や中央銀行などの管理者が存在せず、利用者それぞれが協力し合ってネットワーク上の取引データの管理を行っています(リップルなど一部の仮想通貨を除く)。
バリデーターと呼ばれるネットワーク監視者が複数存在し、お互いに正しい取引かどうかを確認しています。
お互いが正しい取引であると確認し合うと、それぞれのバリデーターの保有する台帳に同じ取引記録が共有されます。
つまり、全く同じ台帳が複数のユーザー間で保有されることにより、仮に誰かのサーバーがダウンしてしまった場合でも、他のユーザーのシステムが機能している限り運用がストップし障害につながる可能性は低いというメリットがあります。
また、多くの仮想通貨は、発行枚数の上限などがネットワーク上のプログラミングであらかじめ決められているという特徴もあります。
よって、国や中央銀行などの人為的な金融政策によって価値が上下するなどの心配は原則ないと言えます。
法定通貨のように国が発行・管理を行う中央集権型通貨に対し、仮想通貨は発行主体が存在せず、プログラムに沿って発行・管理が行われるため分散型通貨(非中央集権型通貨)とも呼ばれています。
ブロックチェーン技術
仮想通貨にはブロックチェーンなどの分散型台帳技術が使われており、取引情報を分散して管理しています。
ブロックチェーンは、取引情報を一定時間ごとにまとめたもの「ブロック」と称し、前後の取引情報をチェーン(鎖)のように繋げて管理していく技術を指します。
ブロック内の取引情報が正当であるか否かについては、「バリデーター」が承認作業を行い、承認されたブロックのみが、次々と繋がっていきます。
ブロックチェーンに刻まれた取引履歴などは、インターネット上で誰もが確認できるため、現金よりもマネーロンダリングが起こりづらいとも言われています。
また、あるブロックの取引情報の改ざんや二重払いなどをしようとした場合、改ざん時点以降の全てのブロックの書き換えが必要となることから、相当な労力・時間・費用がかかり、普及が進んでいる通貨ほど(特にビットコイン)実質的に改ざんは不可能と言われています。
分散型台帳技術の発展により、法定通貨が国家・中央銀行などの信用を元に財産的価値を担保しているのに対し、仮想通貨はこのような独特な方法を用いて、通貨の信用を担保しています。
世界中のどこでも使える無形資産
仮想通貨(暗号資産)は、法定通貨のように紙幣や硬貨など具体的な「形」を持たず、これを発行する中央機関が存在しません。
インターネット上の電子的記録としてのみ存在し、ウォレットと呼ばれるアプリを用いて電子的に送金や支払いなどの取引を行います。
仮想通貨のウォレットは、原則クラウドで管理されていますので、例え端末データが消えたとしても復元が可能であり、資産を失うことはないと言えます。(パスワードにあたる秘密鍵を忘れた場合は、管理者がいないため、取り戻す機能はありません)
インターネットを接続できる環境さえあれば、パソコンやスマホに保存し持ち運び、世界中で支払いや送金に利用できます。国ごとに発行・管理されている法定通貨とは違って、両替などを行わずとも世界共通通貨として使用することができます(ボーダレス決済)。
利用者同士が直接取引を行える
既存のデジタルデータ取引は、国や企業などの組織が管理する中央サーバーを経由することから、取引情報は全て「組織」が管理する形態が取られています(クライアント・サーバー方式と呼ばれます)。
対して仮想通貨は、中央サーバーのような管理者が存在せず、利用者同士(純粋なpeer-to-peer)が直接取引・管理を行うため、管理者の都合(銀行の営業時間など)を考慮する必要が無く、個人間の海外送金などを24時間365日、迅速に且つ安価で行うことができます。
まとめ
仮想通貨は、テレビや新聞などマスメディアの影響などで着実にその知名度を上げています。
足もとでは、大手企業の参入や、法整備の進行、仮想通貨の使える場所や機会の増加などにより、仮想通貨、ブロックチェーン技術の将来性やポテンシャルに対し、金融業界のみならず多くの業界からも期待が寄せられています。
仮想通貨業界は様々な変化・難題を経験しつつも、解決に向けて一歩ずつ前進しています。
今後も政府や企業が手を取り合って仮想通貨の健全化に向けて進んでいくことが期待されます。
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