2021年 12月 22日
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』 |
ようやくこの映画を息子に観せることができた。
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のラストに顎を外して呆然とした彼に、デヴィッド・クローネンバーグの最高傑作をどうしても観せてやりたかった。
16歳の息子と深夜2時からこの作品に向かい合うことになった。
オープニング、あきらかにいかがわしい男たちが車でゆっくりと街を横切っていくときの不穏な空気からもたらされる胸のざわつき。
このシーンだけで、この映画がただならぬ作品であることを予見させる。
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のラストに顎を外して呆然とした彼に、デヴィッド・クローネンバーグの最高傑作をどうしても観せてやりたかった。
16歳の息子と深夜2時からこの作品に向かい合うことになった。
オープニング、あきらかにいかがわしい男たちが車でゆっくりと街を横切っていくときの不穏な空気からもたらされる胸のざわつき。
このシーンだけで、この映画がただならぬ作品であることを予見させる。
「殺し」という行為に感覚が麻痺している残忍な輩たちと、穏やかな家庭を育み、地元の常連から愛されるコーヒーショップを営む男との接近によって物語は急速に展開していく。ヴィゴ・モーテンセンの抑制された表情に、映画ファンであれば誰しもがこの後の変貌の展開を期待するわけだが、その変貌の有り様が慎ましく、単なる覚醒とは違う複雑な表情を帯びる。彼はただ、元々できることをやってのけただけなのだ。
エド・ハリスは私の贔屓の俳優だが、この映画での存在感は特に素晴らしい。
暴力の恐ろしさと快楽を知り尽くした男が、その最も効果的な行使の仕方を手繰り寄せているような静かな威圧。
周到に計画を張り巡らせた男に訪れる予期せぬ最期。これこそがバイオレンス映画の醍醐味である。

暴力という行為ではなく、存在についてここまで深く静かに映像で問いかける作品は極めてまれであり、私はそこに魅了されている。
周到に計画を張り巡らせた男に訪れる予期せぬ最期。これこそがバイオレンス映画の醍醐味である。

理性的な抑制から暴力を回避したい感情がある一方で、暴力を行使することへのカタルシスは思わず溢れてしまう。しかもその血は子供にも継承されている。
また、暴力によってもたらされた恐怖と興奮が性欲へ結びついていく様も見事に描かれていて、クローネンバーグの感性に頭を垂れた。
また、暴力によってもたらされた恐怖と興奮が性欲へ結びついていく様も見事に描かれていて、クローネンバーグの感性に頭を垂れた。
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by cassavetes69
| 2021-12-22 01:48
| 映画
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Comments(6)