企業をして会社経営を始めると、銀行などの金融機関から融資を受けたいと思う時がやってくるでしょう。
銀行融資には種類があり、大きく「プロパー融資」と「保証付き融資」とに分類されます。
銀行融資を受けるならプロパー融資がおすすめだ、などという話を聞くことも多いですが、プロパー融資とはいったいどのような融資なのでしょうか?
今回のテーマは「プロパー融資」です。
プロパー融資のメリットやデメリットについて解説していきます。
銀行のプロパー融資とはいったい何?
これから会社を経営しようとしている人なら「プロパー融資」という言葉を聞いたことのある人も多いと思いますが、プロパー融資とはどのような融資を指すのでしょうか?
銀行の融資は大きく分けて2種類ある!
銀行の事業資金の融資は大きく下記の2種類に分けられます。
- プロパー融資
- 保証付き融資
プロパー融資とは、信用保証協会を通さずに銀行などの金融機関から直接お金を借りる融資を指します。
一方、保証付き融資とは、保信用証協会の保証がついた融資、つまり保証協会に保証人となってもらって銀行からお金を借りる融資を指します。
でも、同じように資金を融資してもらうのに、信用協会の保証がついているかいないかで何が異なるのでしょうか?
銀行は貸し倒れを最も警戒している
銀行が会社に融資をする際に最も重視するのは、その会社が現在どのくらいの利益を上げているかです。
つまり、返済能力がどのくらいあるかということですね。
銀行の収益のしくみ
銀行は、多くの人から預金としてお金を集める代わりに、預金者に利息を支払っています。
一方で、集めた預金はお金を必要としている会社などに融資をして、会社から利息を受け取っています。
会社から受け取る利息は預金者に支払う利息よりも高く設定されていて、その差額が銀行の収入になるのですね。
例えば、預金者に支払う利息を3%、会社から受取る利息を5%に設定すれば、銀行は2%の利益を得られます。
これが銀行融資の収益のしくみです。
銀行にとって、会社などに貸し出す資金は重要な「商売道具」です。
万一融資先の会社が返済不能に陥ってしまったら、銀行は利息を得られないばかりでなく元本まで失ってしまいます。
これは銀行にとって非常に大きな損失です。
そのため銀行は、融資した資金が返済されなくなる「貸し倒れ」を非常に嫌うのです。
銀行の融資は保証会社がつくケースが多い
このような貸し倒れによる損失を防ぐため、最近では、銀行が融資をする際には保証会社の保証をつけるのが一般的です。
そう聞くと、そういえばそうかもと思い当たる部分もあるのではないでしょうか?
たとえば銀行で、下記などを利用する場合は、いずれも保証会社の保証がついていますよね。
- 住宅ローン
- マイカーローン
- フリーローン
- カードローン
会社や事業主が事業資金を借りる場合も同じで、信用保証協会の保証をつけることが多いです。
たとえ会社が返済不能になったとしても、保証会社が保証人になっていてくれれば損失は保証会社がカバーしてくれますから、銀行は貸し倒れリスクを心配しなくても済むのです。
プロパー融資と保証付き融資(マル保)の違い
それでは、保証協会の保証が付かないプロパー融資と保証付き融資では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
会社が返済不能に陥った場合の対応の違い
一番の違いは、会社が返済不能に陥った場合の対応でしょう。
【銀行の立場から見た場合】
プロパー融資は、保証協会を通さず銀行が直接会社に融資をするわけですから、万一会社が返済不能に陥った場合には銀行がリスクをすべてかぶらなければなりません。
一方、保証付き融資(マル保)なら、貸したお金が返済されなかった場合には信用保証協会が会社に代わって融資したお金を銀行に返済してくれます。
上でも説明したとおり、貸し倒れのリスクがありませんから銀行は安心して会社に融資できます。
【事業者の立場から見た場合】
プロパー融資では、もし会社が借りたお金を返済できなくなった場合には、銀行は事業者本人や保証人からなんとか資金を回収しようとしますので、裁判所の管理の下で資産を差し押さえられてしまうこともあります。
保証付き融資(マル保)の場合は、銀行への返済は保証協会が行ってくれますが、借金がなくなってしまうわけではなく、事業者は保証協会に返済をしていかなければなりません。
ただ、保証協会自身もこうした金融事故に備えて保険に入っていて、保証した金額の7割から9割程度を保険金として受けとれますから、会社に対しては厳しい取り立てを行うことはありません。
どちらかといえば、緩やかな条件での返済に応じてもらえる可能性が高いでしょう。
利用条件の違い
プロパー融資と保証付き融資では、利用条件も大きく異なります。
プロパー融資の場合は、審査を行うのは銀行だけです。
融資金額や金利なども銀行との交渉によって決めていくので、「オーダーメイド型」の融資だともいえます。
保証付き融資の場合は、銀行の審査に加えて保証協会の審査も受けなければなりません。
借りられる金額は上限が決まっていますし、銀行に支払う金利の他に保証協会に保証料も支払う必要があります。
プロパー融資がオーダーメイド型の融資だとすれば、保証付き融資は既製品型の融資だといえるでしょう。
審査期間の違い
プロパー融資と保証付き融資では審査期間も大きく異なります。
プロパー融資の場合、これまでに充分な融資実績がある会社ならその事業内容や経営状態、返済能力について銀行が把握していますから、問題がなければ1週間~2週間程度で融資が実行されるでしょう。
しかし、初めて融資を行う会社だと、銀行はイチから審査をしなければなりません。
貸し倒れリスクがないかをしっかり判断するために審査に充分な時間をかけますので、融資が実行されるまでには3週間程度かかります。
また、保証付き融資の場合は、先に説明したように銀行側の審査と並行して保証協会の様々な手続きや審査も行われますので時間がかかります。
融資が実行されるまでには1ヶ月~1ヶ月半、場合によってはもっと時間がかかることもあります。
プロパー融資にはどんなメリットがある?
では、プロパー融資を受けるメリットとは一体どのようなものなのでしょうか?
プロパー融資を受けることで信用が大幅にアップする
プロパー融資は、事業者が返済できなくなった場合には銀行がすべてのリスクを被らなければならない融資です。
ですから、銀行は、絶対貸倒れることがないと判断した会社にしかプロパー融資を行いません。
プロパー融資を受けられるということは、その銀行に「この会社は確実に融資したお金を返済してくれる」と判断してもらえたということです。
プロパー融資を受けることによって、資金を融資してくれる銀行だけではなく、他の金融機関や会社に対しても大幅に信用力が上がりますから、会社にとっては非常にメリットが大きいです。
金利が低い
保証付き融資の場合は、原則として金利交渉はできませんし、金利の他に毎年保証料を支払わなければなりませんので、実質的な金利はやや高くなります。
一方、プロパー融資の金利相場は1%~2%程度といわれており、交渉次第では1%を割ることもあるといいます。
返済の負担をできるだけ抑えたいと考えている会社にとって、プロパー融資は非常に魅力的な融資だといえます。
保証料が不要
上でも述べましたが、保証付き融資では、銀行に支払う金利の他に信用保証協会に保証料を支払わなければなりませんが、プロパー融資には信用保証協会の保証がついていませんので、保証料を支払う必要はありません。
保証料がかからない分、支払う金額が少なくなるのは大きなメリットだといえるでしょう。
借入限度額がない
最初からいきなり大きな金額を借りられるケースはまれですが、プロパー融資では基本的に限度額がありません。
銀行に、「この会社になら融資をしても大丈夫だ」と判断してもらえれば、何億円、何十億円でも借りられる可能性もあります。
会社が成長するにしたがって必要に応じて大きな金額を借りることができるのも、プロパー融資のメリットです。
プロパー融資にはこんなデメリットも…
非常にメリットの多いプロパー融資ですが、デメリットとしてはどのような点が挙げられるでしょうか?
審査が非常に厳しい
プロパー融資の場合、会社が返済不能に陥ってしまったらそれがストレートに銀行の損失につながります。
そのため銀行は下記など、信用できる会社にしかプロパー融資を行いません。
- 業績が安定している
- 確実な返済能力を備えている
ですから、どうしても審査は厳しいものになってしまうのです。
状況によっては、下記のような条件を提示することもあります。
- 代表者以外の保証人を立てるように要求する
- 不動産担保を要求する
銀行が経営状況を細かく管理するようになる
プロパー融資を行っている会社がもし倒産してしまうと、銀行の損失が非常に大きいです。
そのため、銀行は保証付き融資を利用している場合よりも厳格に会社の管理を行います。
定期的に担当者や支店長が訪問して、経営状況が悪化しないよう常にチェックされるので、煩わしいと感じることもあるでしょう。
マル保と比べて返済期間が短い
基本的に、銀行は返済期間が長くなることを嫌います。
返済期間を長く設定してしまうと、その間に会社の業績が大きく変動するケースが出てくるからです。
特に、初めてプロパー融資を受ける時などは、融資したお金を回収できなくなってしまわないようと返済期間を短く設定されることが多いようです。
しかし、せっかくプロパー融資をうけることができても、返済期間を短く設定されてしまったら会社の返済負担は大きくなってしまいます。
返済不能に陥った場合のリスクが大きい
プロパー融資は、保証付き融資とは異なって代位弁済はしてもらえませんから、リスクは銀行が全てかぶらなければなりません。
しかし、返済できなくなってしまったからといって銀行がその状態を放置しておくはずはありません。
融資してもらったお金を返済できなくなると、銀行は保証人に請求したり、担保を売却したりするなど、かなり厳しい態度で資金の回収を試みます。
自宅や工場などを売却しても返済しきれず、最終的に自己破産してしまうケースなども実際に多くみられます。
銀行のプロパー融資を利用する際の注意点
プロパー融資を受ける際にはいくつか注意しておかなければならないことがあります。
どういった点に気をつければいいか見ていきましょう。
プロパー融資を受けるには信用と実績が不可欠
初めて金融機関から融資を受ける場合、いきなりプロパー融資を受けられることはまずありません。
銀行としては、何の実績もない事業者にリスクの高いプロパー融資は行えないというわけです。
しかし、銀行の立場に立ってみればそれは当然のことでしょう。
突然知らない人がやってきて、「お金を貸してください」と頼まれたときに、何もいわずにお金を貸す人はいないのと同じことです。
銀行からプロパー融資を受けたいと考えているのなら、まずは、保証付き融資を利用して確実に返済するということを何度か繰り返し、数年間かけて信用を積み上げていきましょう。
融資実績を積み重ねて会社の業績や安全性に問題がないことを認識してもらえたら、そこで初めて短期・少額のプロパー融資に移行する準備に取りかかる、といったように少しずつコマを進めていくことが重要です。
プロパー融資を受けたいのなら銀行選びも重要
初めて銀行で融資を受ける際には、どんな銀行を選ぶのがよいでしょうか?
これまで銀行取引をしたことがないと、世間で名の通ったメガバンクなどを選んでしまいがちですが、銀行にはおのおの融資先についての役割分担があります。
それぞれの金融機関の役割とは?
例えば、メガバンクは、世界をまたにかける大会社を主な融資の対象としています。
同様に、地方銀行は地域で名の知られた企業を主な顧客としていますし、信用金庫や信用組合は地域の中小企業を対象に融資を行うといった具合に、金融機関にはそれぞれの役割分担があってすみわけをしているのですね。
メガバンクは全国規模・国際規模で事業展開する会社に金融サービスを提供することを柱としていますので、規模の小さい会社への融資ノウハウは持っていません。
また、地銀や信用金庫・信用組合は地域の発展に寄与する地域密着型のサービスの提供をメインとしています。
大企業に巨額融資をするほどの体力も持ち合わせていませんし、信用金庫などは法律で大企業には融資できないしくみになっています。
会社の規模に合った銀行で融資を受けることが重要
従って、零細企業がメガバンクに融資を申し込んだとしても、もそもそも相手にしてもらえないケースも多いのだということを理解しておかなければなりません。
事業者は銀行の役割分担をよく理解して、自分の会社に合った金融機関と取引をすることが重要です。
会社の規模に合った金融機関を選ぶことで、状況に適したきめの細かいサービスを受けられるのだということを理解しておきましょう。
プロパー融資のメリットだけを見るのではなくデメリットも考慮する
金利が低く、余計な保証料を支払わなくてもよいことなどを考えると、ぜひプロパー融資を受けたいと考えるのは当然のことです。
しかし、審査の厳しさや返済期間の短さ、また、万一返済できなった場合のリスクの大きさなど考えると一概にプロパー融資がいいともいえません。
事業の見通しや必要な資金などを総合的に考えて、保証付き融資とどちらを利用する方がメリットが大きいかをよく考える必要があります。
おわりに
プロパー融資は、金利が低く借入上限に制限がないなど、確かに多くのメリットがあります
しかし、プロパー融資を受けるには、充分な取引実績を積み重ねたうえで厳しい審査に通過しなければなりません。
何が何でもプロパー融資を!というのではなく、会社の状況に照らして最適と思われる融資を選択することが大切です。
もちろん、銀行側からプロパー融資の提案があれば大チャンスです。
ぜひその関係を大切にして、さらなる信頼関係を築き上げていってください。