キャプテン・シネマの奮闘記

キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第261回:映画『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』感想と考察

今回は現在公開中の映画『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

米国アカデミー賞で作品賞にも輝いたローマ帝国が舞台の歴史スペクタクル『グラディエーター』(2000年公開)の24年ぶりとなる続編。

アカシウス将軍(ペトロ・パスカル)率いるローマ帝国軍の侵攻を受け、妻を失い奴隷となったルシアス(ポール・メスカル)。ローマ軍への復讐を誓う最中、剣闘士/グラディエーターを雇う興行師 マクリヌス(デンゼル・ワシントン)に戦闘の腕を見込まれ、彼の所有物としてコロッセオでの死闘に挑む事になっていく。

監督は前作同様リドリー・スコット。もう90歳近いですよね?それでまだこんな映画撮るんですから元気過ぎる!しかも既にポール・メスカルを再び主演とした新作の製作が始まっているらしいですし「エイリアン」シリーズもまた動いているとか。仕事が早いよ!

主演はポール・メスカル。『aftersun/アフター・サン』(2022年公開)や日本では今年公開した『異人たち』と繊細で中性的な役どころが多い方だと思いますが、本作では筋肉モリモリマッチョマンに。これだから役者って凄いよね。基本はワイルドなマッチョガイでしたが、時々あの中性的な色気がブワッと滲み出るのが良かったな。

そしてデンゼル・ワシントンがやっぱり強い。リドスコ作品ですと『アメリカン・ギャングスター』(2007年公開)に出てました。そしてその時の共演者が前作『グラディエーター』で主役だったラッセル・クロウです。リドスコ御大、割と同じ役者を起用するのがお好きなのかな?前作でヒール役だったホアキン・フェニックスは『ナポレオン』(2023年公開)で主演でしたし。

英雄よ、戻って来い!

正直、製作決定のニュースを見た時は"なぜ?"と思いました。続編が出るようなネタでもないと思っていた事もありますが、何しろ24年の期間が空いています。リドスコだって他に企画は色々持ってるでしょうから無理に作らなくてもと。しかし観れば納得。なるほど、確かに今の世の中には民衆を導く真っ当な英雄が必要でした。

内容自体も前作と同様「復讐」が物語を推進させる要素となっており、その復讐すべき相手も野心的で暴力的な皇帝です。まぁ今回は倍に増えた双子でしたし、片方がカラカラ帝というインパクトのデカい名前。そう言えば山形県の郷土料理にからから汁ってのがあったような…。

まぁそれは置いておいて、実はこの二人の皇帝以上に倒さなければならない狡猾な黒幕が登場します。この人ってのがビジネスを重視し目的の為なら手段を選ばない冷血漢で、権力の座に就けば大変な事態を招くのは明白なわけです。おやっ?つい最近某国のトップの座に似たような方向性の人が就任した気がするのは私だけ?

そんな某国以外にも昨今、多くの国や自治体等でトップの座には決して相応しいとは思えない人たちが就くケース見受けられます。だからこそ英雄の帰還を描いた作品が必要なのです。人の尊厳を踏み躙る奴は許さん!圧政には屈しない!そんな強い思いが伝わって来ますし、私たちもその思いを持ち続けるべきだと思います。

それはそうとサメやサイ等の動物たちも参戦する血みどろファイトは相変わらず。リドスコの歴史作品って結構残虐なのよね。今考えると前作だって首や胴体がちょん切れるバイオレンスな作品でしたが、それが作品賞獲ってるんです。まぁ2000年の話でまだ9.11から始まる対テロ戦争ですら未来だったあの頃。何だか映画の雰囲気も景気良かったのかもなぁと思うばかりです。

まとめ

以上が私の見解です。

私これ観てる時、Fall Out Boyの『Centuries』という曲が頭の中で鳴り響ておりました。ミュージックビデオがまさにコロセウムで戦う映像なんですよね。曲自体もめちゃ格好良いので、シリーズの主題歌はあれで決まりでしょ。Remember me~ For centuries~♪

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第260回:映画『チェイン・リアクションズ』&『悪魔のいけにえ』感想と考察

今回は先日東京国際映画祭(TIFF)で鑑賞した映画『チェイン・リアクションズ』について語っていこうと思います。今後一般上映や配信される事もあるかもしれないので、ネタバレには注意です。

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東京国際映画祭についてはこちら

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イントロダクション

今から50年前の1974年に公開し、多くのクリエイターやカルチャーに影響与えたホラー映画の金字塔『悪魔のいけにえ』についてのフィルムドキュメンタリー。コメディアンのパットン・オズワルト、映画監督の三池崇史カリン・クサマ、映画評論家のアレクサンドラ・ヘラー=ニコラス、作家のスティーヴン・キング。5人それぞれの『悪魔のいけにえ』との出会いや受けた衝撃についてからその凄さを紐解きます。

ちなみに『悪魔のいけにえ』のあらすじは、ドライブ旅行中の若者5人組がテキサス州のとある洋館を訪れるとそこには常軌を逸した家族が住んでいたというもの。「13日の金曜日」のジェイソン・ボーヒーズや「ハロウィン」のブギーマン等と並ぶホラー映画界のアイドル レザーフェイスの初登場作品となります。

またニューヨーク近代美術館MoMA)にフィルムが所蔵がされているホラー映画としても有名。確かMoMAで収蔵してるホラー映画って確かこれと『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年公開)だけなはず。かたや「ナイト~」はゾンビカルチャーを生み出した金字塔ですからね。

悪魔のいけにえ』は何が凄いのか?

まずこのドキュメンタリーの形式に沿って私の”悪いけ”とのファーストコンタクトを。

初めて観たのは大学生だったと思います。当時は配信サービスなんて入っていませんし、それに近所のTSUTAYAに置いてなかったので観るのが難しかった作品。その為、わざわざ新宿か渋谷のTSUTAYAでDVDをレンタルして観たんです。今やTSUTAYAは新宿から無くなり、渋谷は店頭レンタルから撤退。遥々借りるみたいな事が無いのはちょっぴり寂しいですね。

それで授業が無い日の平日昼間に鑑賞し冒頭から度肝抜かれました。ポラロイドカメラのシャッターと共に映し出される死体のドアップ。あのシーンだけでただならぬ雰囲気を察知し、吐き気を催す気持ちになったのを覚えています。その後もラストに至るまで信じ難いシーンの数々に思考停止。なるほど、本当に恐ろしい思いをすると人間の思考って止まるのか…。決してゴア描写という程グロテスクなシーンは無いのに、こんな表現が出来るのかと肝が冷えました。それから今日に至るまで3~4回は観直したでしょうか。恐ろしいのは分かっていても観てしまう、一体何故なのか?

本ドキュメンタリーでは『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922年公開)をはじめとした古典ホラー映画との共通点や“悪いけ”の影響が見られるホラー映画について(1999年公開『ブレアウィッチ・プロジェクト』とか)語られますが、オーストラリア映画との共通点の話は個人的目から鱗ポイント。本ブログでは以前にマッドマックス新作公開に託けてオーストラリア映画特集をやりましたが、乾燥地帯特有の色味や雰囲気。低予算映画だからこその底から湧き出るエネギッシュさという共通項が私の心を掴んでいるのかも。まさか『ウルフクリーク/猟奇殺人谷』(2005年公開)や『荒野の千鳥足』(1971年公開)の話が出るとは思わなんだ。

そうして観ながら考える内に何度も観直す理由が分かりました。この映画の凄さは「狂気」そのままカメラに収めてしまったような直接心にぶつかって来るような野蛮で過激な描写の数々。しかしその中に映し出される一瞬の美しさがあるのです。そうです、この映画は美しい。リアルな実生活では近づけない、いや近づいてはいけない暴力の先にある美しさ。フィクションだから成し得るそんな至上の絶景が観られるのです。

オーストラリア映画特集はこちら

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まとめ

以上が私の見解です。

それにしても三池崇史監督の『悪魔のいけにえ』の出会い方よ。『街の灯』(1931年公開)のリバイバルを観に行くも満席で入れず。他に何か観て帰ろうと目に入ったポスターから、ちょっとエッチなものが観られるかもと期待して劇場へ。それが『悪魔のいけにえ』って…w しかしそうした映画との偶然の出会いは羨ましい限りです。今のような情報社会では否が応でも映画についての情報が入ってきてしまうので、なかなか真っ新な状態で観られる機会が少ないのがねぇ。

おまけにそれ以降『街の灯』を観てないって言うんだから、思わず「マジかよ!」と声出ちゃいました。まぁ私以外にも爆笑してた人は居ましたし、時折り笑い声が聞こえる和やかな雰囲気でした。やっぱり一般上映もして欲しいな。

あとスティーブン・キングが『シャイニング』(1980年公開)の映画化が嫌いな事も分かりました。ネタだと思ってたけどマジなんだなw

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第259回:第37回東京国際映画祭に行った件

今回は日比谷・有楽町を中心に開催されていた第37回東京国際映画祭(TIFF)に行ってきましたのでそのレポートでもしようと思います。今後一般上映される可能性もあるかと思いますので、鑑賞した作品の内容については極力触れないようにはしますが、いつも通りややネタバレには注意です。

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↓去年についてはこちら

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今年のチケット争奪戦

去年から部門ごとにチケット販売の開始時間が分散されたため思っていたよりスムーズに予約が出来ていましたが、今年は更に時間帯の分散化がされた様子。予約画面に一発でアクセス出来るというのは流石にありませんでしたが、目的の作品がものの4~5分粘れば予約が可能でした。スマホとPCのダブルスタンダードで挑む必要も無く、4作品の座席の獲得が出来ました。年々システムが改善されているのは非常に良い点。来年もより予約のし易い環境に期待しています。

DAY1

さて、私の映画祭は11月3日からスタート。とその前にTOHOシネマズ日本橋『十一人の賊軍』を鑑賞。直接映画祭で観た訳ではありませんでしたが、こちらは今年のオープニング作品になっていたので。

時は戊辰戦争奥羽越列藩同盟と新政府軍の狭間に揺れる現新潟県に位置する新発田藩。その砦の防衛を任されたのは、即席で集められた罪人たち&忠義に燃える武士。罪人たちは無罪を勝ち取るために奔走。裏では藩存続の絵図を書いてるとも知らずに…

山田孝之が出演しているという事もあり『十三人の刺客』(2010年公開)が頭を過るのは必須な時代劇アクション。概ね面白かったのですが、ちょくちょくノレない部分がありました。まず共闘感が薄くカタルシスが少ない。内輪揉めばかりが目立ち、いざ戦闘に突入しても三々五々に戦ってる印象を受けました。また切腹シーンを始め拍子抜けするシーンも散見。その辺省いてもちっとタイトにまとめられたんじゃないか?

概ね良かったのは役者でもっていた映画だと思えたから。どこかでも書きましたが我が推しの仲野太賀が躍動。まぁ仲野太賀が主演だから観に行った節はありますが、こういうワイルド系もいけるんですね。それと一人だけ明らかにモーションが違う人が居るんですよ、謎の白髪浪人。先述の『十三人の刺客』でいえば松方弘樹ポジション的な問答無用でアガるキャラでした。調べたところ本山力という殺陣師の一面を持つ俳優さん。それこそ『十三人の刺客』にも出ていたらしいですよ。そりゃ一挙手一投足が違うわけだ。

ちなみにTOHOシネマズ日本橋。座席シートがairweaveになってる!これなら長い映画でもお尻が痛くならない。でも今だけかも?暫くするとヘタって反撥力が無くなるでしょうから。今のうちに堪能すべしです。

それでは主戦地有楽町へ…と前に夕飯。酒でも一杯入れてこうかと思いましたが思考が鈍った状態で観るのはいかん。万全を期して挑むに越した事はありません。

会場はTOHOシネマズシャンテ。シャンテ自体に珍しさは覚えません。そりゃ定期的行ってるし。そこで観るのはコンペティション部門の『士官候補生』。士官候補を訓練する学校が舞台で、軍部の暗部を描いた社会派スリラーみたいな映画だと思ってたんですが…あれっ?序盤からホラー演出がバチバチ。まさかの親子が主人公のホラー映画だったのです。いや~ん、もう自分好みの作品を察知する嗅覚の鋭さは本物かもしれない。ただ「ホラー映画」というジャンル映画として捉えると弱冠尺の長さは感じました。

上映後、監督と出演者2名(母親とその母親に協力する刑事を演じてた方)のQ&Aがありました。これですね、映画祭の醍醐味。その中で正当化される暴力によって変化する母と子を描く意図があったと話がありました。個人的には男らしさの呪縛がもう一つテーマとしてあったかなと思いました。

ちなみに上映中に日本語っぽい唸り声が聞こえたんです。普通に映画からの音響が日本語っぽく聞こえただろうと思ったらそうじゃなく、スマホ操作した奴に怒鳴ってたっぽいですね。はぁ…映画祭にまで来てスマホって何しに来てんだ!周りへの迷惑も去ることながら、作り手へのリスペクトが無い奴に観る資格はありませんね。幼少期から出直せ!

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↑丁度3人がこちらに手を振ってる瞬間が撮れました、良い写真だ。

DAY2

それでは2日目は、今年で映画祭ラストであろう丸の内TOEIでの鑑賞です。来年の夏には無くなってしまいますから切ない。それは映画祭の会場が一つ無くなる事も意味します。スケジュール具合もだいぶ変わってきそうですね。そこで観るのはコンペティション部門の『死体を埋めろ』

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動物の死体を運搬処理する仕事を生業とする主人公が世紀末な世界を渡り歩くといった作品。食肉が希少、子供が病原菌を広めるらしく島に隔離、ロケットで地球から脱出をしようとしている金持ちたち、そしてTVやラジオでは訳の分からない紅茶を飲ますカルトも登場するアポカリプスな世界が展開…っていやなんすかこれ?w 途中から何を見せられてるか分からなくなる謎体験。『タイタニック』(1997年公開)の使い方といいこれがコンペって奇抜かよw 前日に続き珍作を連チャンで引き当てた気がします。

鑑賞後の監督によるQ&Aでは色使いについての話に納得。赤黒い空や土の色合いが個人的には印象深かったので。それにしても監督さん、よく話される方でした。一つの質問に対する真摯さからきっと良い人なんだろうと思いました。

鑑賞後は空席次第でもう一本ぐらい観ようかとも考えましたが、何だか脳みそが疲れた。それと映画の影響なのか無性に肉が食べたくなったので、ステーキ食って家路につきました。

DAY3

早いもので最終日となります。日比谷に少々早めに到着したので野外上映でも眺めながら時間を潰そうと思ったのですが…おいっ!寒いぞ!とにかく風が冷たく10分程度で撤退です。野外上映に最適な秋が短いんだから仕方ないなぁ。折角の『バッドボーイズ』(1995年公開)も閑古鳥です。

撤退後、時間を濁しながら再びシャンテへ。そこで観たのはワールドフォーカス部門の『チェイン・リアクションズ』

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ホラー映画の金字塔『悪魔のいけにえ』(1974年公開)を5人の有識者が紐解くフィルムドキュメンタリー。私が今年の映画祭で一番楽しみにしていた作品です。平日ですが結構な入り具合。まぁ私もこの日のために有給休暇を取りましたからね。"悪いけ"絶大なる支持率です。内容に関してはこちらは結構なボリュームになりそうなので、別途用意しようと思います。

鑑賞後、シネスイッチ銀座へと移動。昔一度だけ行った事あったかなぁ。 2階席がある映画館なので迷わず2階席の最前列を選択しましたが、ちょっとスクリーンから遠いわね。昔の映画館って感じでいいですが。こちらで今年の最後を飾る事となるのが同じくワールドフォーカス部門の『叫び』です。

何者かの視線や雰囲気を感じ戦慄する世代が異なる女性3人を描いたスペイン産ホラー作品。プログラムにホラー映画って書いてあり、ホラー映画のドキュメンタリー観た後だから何かホラー映画が観たくなるだろう と思い予約していました。

決して悪い作品では無いのですが、私の今年の映画祭ラストを飾るにはスッキリしない映画でした。特に終わり方には絶句。今尚被害者を出し続ける社会に対する怒りと嘆きの表明でしょうか。そりゃ世間に目を向ければ、女性蔑視も甚だしい方が某国の大統領に就任しますし、この終わりの見えない不条理な暴力に暗澹たる気持ちになりました。それにしてもジジイのバックハグシーン、マジでキショかった。

まとめ

以上、今年の映画祭体験でした。

私、これで3回目の参戦となりましたがこれが終わると同時に今年の終わりが近づいている感覚になります。ほんと早いよなぁ~。労働と映画鑑賞をしている内にあっという間に過ぎていく。こうやって年を取るのかぁ…。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第258回:映画『トラップ』感想と考察

今回は現在公開中の映画『トラップ』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

M・ナイト・シャマラン監督が仕掛ける予測不能なサスペンス作品。

主人公のクーパー(ジョシュ・ハーネット)は世界的なポップスター レディ・レイブン(サレカ・シャマラン)のアリーナライブに愛娘ライリー(アリエル・ドノヒ)と共に訪れていた。レイブンの大ファンであるライリーは大興奮だが、クーパーは監視カメラや警察官の異様な多さが気になって仕方ない。何故なら彼の正体は”ブッチャー”として世間を騒がせている残忍な殺人鬼だから…

監督はM・ナイト・シャマラン。この監督と言えば『シックス・センス』(1999年公開)が有名でしょう。ただ本作によって”どんでん返しありき”のレッテルを世間から貼られている印象を受けます。何だかねぇ…どんでん返しの伏線回収がやたらと持ち上げられる世の風習はどうにかなりませんかね。別にそれが無くとも『サイン』(2002年公開)とか『アンブレイカブル』(2000年公開)は普通に面白いですよ。

主演はジョシュ・ハーネット。お久しぶりかと思いきや『オッペンハイマー』に出演してたんですね。どの役だったけ?あの身長のデカさなら覚えてるはずなんだけど。今作ではその身長のデカさが遺憾なく発揮されていました。ライブの群衆に紛れても頭一つ出てるからやけに目立っているという面白い画が沢山ありました。

そしてティーンから大人気の歌姫を演じるサレカ・シャマランは監督の娘さん。シンガーソングライターが本職っぽいですね。意地悪く見れば"忖度かよ!"ってなりますが、親子で親子が主人公の映画を撮るなんて仲睦まじくて良いじゃないすか。あれっ?今年公開していた『ザ・ウォッチャー』だかの監督も娘でしたよね?シャマラン家は芸能一族だったのか。

出オチだけど…

基本的に上記あらすじで書いた事だけで出オチなネタではあるんです。しかしこの一個のアイディアを丁寧に描いている事で純粋なオモシロ映画になっていました。ライブ会場という広いようで狭い空間から殺人鬼はどう脱出するのか?という密室劇が展開。しかも子連れの状態というペナルティ付きです。これを台詞に頼らず視覚的にサクサク見せていくのは好感が持てます。その為、事の種明かしとなる終盤は台詞に頼り過ぎている印象を受けますが。

またこの“ブッチャー”と呼ばれる殺人鬼のキャラクターもナイスアイディア。子煩悩なシリアルキラーって何だよw 仕事と殺人の合間を縫って家族サービスをするパパ。信号や順番の列もしっかり守る姿から殺人鬼の連想は出来ません。そりゃみんな騙されて信用しちゃうわな。現在放送中の『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』では殺し屋が実家に帰省するエピソードがありましたが、殺人というインモラルな事をしているのに家族とは良好というそのギャップが面白かったりするのです。

ご都合主義的でつい”そんな訳ねーだろ”と突っ込みたくなる展開も多々ありますがそこはご愛嬌。真摯な娯楽作として溜飲は下げられる程度です。これはシャマラン作品の中で一番好きかもな。

まとめ

以上が私の見解です。

個人的に突っ込みたくなる最大のポイントはライブ会場のお客さんたち。えっ皆さんろくに曲聴かずに離席しまくりじゃね?w いや、もしかして海外のライブってアーティストがパフォーマンスしている最中でも自由に飲み食いしたり、グッズを買いに行っちゃうのが普通だったりするのでしょうか。日本のアーティストが国内公演をする際、スマホでの撮影はNGなのに、海外公演だと撮影OKにしてるっぽいのとかありますからね。そんなに集中して聴くのではなく、もっとラフに楽しむものなのか?

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第257回:映画『破墓/パミョ』感想と考察

今回は現在公開中の映画『破墓/パミョ』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ…いや今回はしっかりネタバレする回になると思います。これからご覧なる予定の方は、どうぞ速やかにお引き取りを。

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イントロダクション

今年最も韓国で観客動員数を挙げたというホラー作品。去年が『ソウルの春』で今年がコレですか。何だかパワフルだな。

ムーダンと呼ばれる朝鮮半島に伝わるシャーマンを生業とするファリム(キム・ゴウン)とその弟子ボンギル(イ・ドヒョン)は、サンフランシスコに住む富豪一族から依頼を受ける。それは後継ぎが次々と奇病に罹って亡くなる現象を断つ事で、先祖の墓が原因であることを突き止める。風水師のサンドク(チェ・ミンシク)と葬儀屋のヨングン(ユ・ヘジン)も合流し、墓を風水の良い場所へ移転をしようとするが、その墓は異様な雰囲気を放っていた。

主演はチェ・ミンシク。つい最近『シュリ』(1999年公開)のリマスター版の話をした際にも触れたベテラン俳優。そういえば『親切なクムジェさん』(2005年公開)にも出てたよね。そしてその相棒を演じるのがユ・ヘジン。『コンフィデンシャル/共助』(2017年公開)の一見頼りなさそうだけど、結構優秀な刑事を演じてましたね。「コンフィデンシャル」は去年か一昨年ぐらいに続編があったよね?見逃してんな。

日韓オカルト融合?

そう、ズバリ言いますと非常に日本が密接に絡んだ作品になっていました。なんせ開始早々、日本語の会話が登場しますからね。

映画の前半はジャパニーズホラー要素が高い幽霊ものといったところでしょうか。何も居ないけどガラス越しにはその姿が映ってる様はJホラーでよく見るようなじっとりとした恐怖演出かと思います。なお前半は謎にテンションが高く高揚感のある祈祷シーンがポイント。『哭声/コクソン』(2016年公開)でもハイテンションな祈祷描写があったので、割とマジで存在するのでしょう。

しかし後半からは作風が一転。韓国映画らしい血みどろアクションで見せるモンスターホラーと化します。まぁ言ってしまうと、ジャパニーズサムライの”鬼”が登場するわけで日本に伝わる「耳無芳一」を想起させるような展開や演出があります。多分監督さん、日本のホラー映画や怪談が好きなんじゃないかな?日韓ホラーの融合作品をやりたかったのかも。

しかし色々と気になるところはあります。まずサムライが登場した時点でやはり韓国ですし、豊臣秀吉による朝鮮侵攻、いわゆる文禄/慶長の役で戦死したかと思ったんですよ。でも関ヶ原で討ち取られたって発言してるんですね。んっ?という事は文禄/慶長の役は関係ない?でも北へ進軍しろとか言ってるのは侵攻を表してるだろうから…何だか分からくなってきました。そもそも埋葬したのは韓国併合時代?じゃ侍の遺体ってどう保存してたんだ?ってな感じ時代考証が少々甘い作りになっていた気がします。それに暗い歴史にスポットを当てる意図があるなら、もっと掘り下げるべきだったようにも思えます。何だか中途半端と言いますか、色々な方面の顔色を伺ったのかと邪推してしまいます。

まとめ

以上が私の見解です。

面白かったですけど、求めてた方向性とは違い弱冠の拍子抜け感はありました。
ちなみにこちらは日帝風水陰略説がベースらしいですね。韓国併合時代、日本が朝鮮半島で行ったとされるで風水によって朝鮮民族民族意識を削ごうとしたいう陰謀説。いや知らんかった。月刊ムーに載ってそうなネタですし、日本でいうところの口裂け女的な韓国では皆が知ってるオカルト話なのか?

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第256回:映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した2019年公開の『ジョーカー』の続編。

上流階級の人々を殺害した事で社会の反逆者として祀り上げられた”ジョーカー”ことアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は、アーカム精神病棟に収監され看守たちからの不当な扱いに耐える日々を送っていた。そんなある日、たまたま参加する事になった更生プロブラムでリー(レディー・ガガ)という女性を出会う。彼女は熱狂的なジョーカーのファンで、二人は恋に落ちるのだが…。

監督は前作同様トッド・フィリップス。この方、本シリーズ以外に手掛けている作品となると「ハング・オーバー!」シリーズですからね。私、随分昔に1作目だけ観て、あまり合わなかった印象があります。「ハング・オーバー!」からの「ジョーカー」ってなかなかの落差な気がしますが。

主演は引き続きホアキン・フェニックス。様々な俳優はジョーカーを演じてきましたが、ホアキン演じる本シリーズのジョーカーが一番人間味を感じます。ヒース・レジャージャック・ニコルソンとは違ったアプローチの仕方をしており、カリスマ性が見受けられない事に徹底しています。また笑い方が痛々しい。前作も含め心の底から声上げて笑ってるシーンってあったかな?

そしてハーレクインを思わせる女性を演じるのがレディー・ガガ。確か主演を務めた『アリー/スター誕生』(2018年公開)の製作指揮にトッド・フィリップスが居たような。その人脈があったのでしょうか?まぁ今年で言えばパリ五輪の開会式で歌っていたのが記憶に新しいですね。

”ジョーカー”であるという事

私、前作の『ジョーカー』は結構好きです。だって自宅にポスター飾ってありますもん。まぁDVD買った際にたまたま特典で付いていたので、せっかくだし飾ろうってぐらいなんですが。何が好きかと言いますと、ライティングが綺麗で画面からリッチさを感じられるから。”あぁいま映画観てるなぁ”って気持ちに強くなれます。内容的にも先述の通りで、今までよりも人間臭い感情が見えるキャラクターに仕上がっていたのも良かったと思います。

しかし残念な事に”ジョーカー”という存在は「悪のカリスマ」として誤った反逆心や厨二的な危うさのアイコンと化し、現実社会を脅かす人物を生み出しています。小田急線内で無差別殺傷を行う奴も居れば低俗なポスターと公約を掲げて都知事選に出馬する奴なんかも登場。おかげでマイナスイメージの烙印が押されたジョーカー関連の映画作品でございます。『ダークナイト』(2008年公開)だってよ、私にとっては映画にハマるきっかけの作品の一つでめちゃ好きなのに、気軽に"面白いよねぇ~"と言いづらくなったじゃんか。責任を取れよ、馬鹿ども!

恐らくそんなマイナスイメージの払拭が本作の狙いだったのではないでしょうか。まず驚きだったのがミュージカル映画だったという点。アメコミヒーロー系統の作品でここまでミュージカル要素が濃いのも珍しいのでは?虚実綯交ぜだった前作とは異なり、ミュージカルシーンが偽り/妄想だとはっきり区別出来るようになっていました。

また、私は本作をラブストーリーだと受け取りました。精神的に危険な状態の二人が出会ってしまった!しかしリーが好きなのは心優しい”アーサー”ではなく、危険で暴力的な”ジョーカー”である事が物の哀れ。アーサーは”ジョーカー”を演じ続けないと彼女からの愛を獲得出来ないのです。いや、それどころか彼女以外の人間からも”ジョーカー”であり続けないと相手にされません。唯一対等に付き合ってくれた元同僚のゲイリーさんは、自ら遠ざける形になったわけで…(だからこそあの法廷のシーンは心にグサッと来る)。本当の自分を愛して欲しい!彼の叫びは誰の耳にも届きません。

それにハービー・デントは「ハービー・デント」になってましたし、ラストは新たな悪の神輿の誕生では?どこまで行っても世の中は穏やかじゃありません。世知辛いぜ。

まとめ

以上が私の見解です。

そんな悪い作品ではないと思うけど。まぁ納得いかない人も多く批判が出るのも分かります。だってみんな“ジョーカー”が好きで”ジョーカー”の物語が見たいですもん。”アーサー”の物語には興味ないのでしょう。

あっちなみに誰もがジョーカー=悪のカリスマになり得る的な話。個人的にはそうでははなく、誰しも一端の犯罪者になる可能性はあるというのは思うところ。新聞やTVニュースで取り沙汰される事件を観てりゃそんな世紀の大悪党なんて登場しませんし、ごくありふれた理由で罪を犯すのが人間です。それに誰の心の中にも暗く醜い部分はあるはずで、それを獰猛な虎と表現したのが中島敦の「山月記」。これは昔『ダークナイト』を扱った時も同じ事書いてるんじゃないかな?

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

↓最後にこちら。フィギュア、リアル過ぎるだろ

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第255回:映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』感想と考察

今回は現在公開中の映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

内戦が勃発した近未来のアメリカを舞台にしたディストピアスリラー。2021年に起きたアメリカ国会議事堂襲撃事件から着想を得たのではと思ったりもするタイムリーさを帯びた作品となっています。

連邦政府からテキサス州カリフォルニア州を中心とした19の州が離脱し、その州が編成する武装勢力と政府軍による戦闘が行われているアメリカ。FBIの解散や反発する市民への空爆を行った大統領は追い詰められており、ワシントンD.Cの陥落も目前に迫っていた。そんな窮地に立たされる大統領のインタビューを試みる戦場カメラマンのリー(キルスティン・ダンスト)を中心としたジャーナリストたちが、ニューヨークからワシントンD.Cへと車を走らせる。

監督はアレックス・ガーランド。『エクス・マナキ』(2014年公開)や『MEN/同じ顔を持つ男』(2022年公開)の監督ですが、実はこの方小説家としての一面も。レオナルド・ディカプリオ主演の『ザ・ビーチ』(2000年公開)の原作を書いてる人なんです。知らんかった。

主演はキルスティン・ダンスト。この方と言えばサム・ライミ監督の「スパイダーマン」シリーズですね。このシリーズの影響でガキの頃に”海外の綺麗な女優さん”と言われて思い浮かべるのがこの方でした。そしてその旦那さんあたり色々あって飛び入り出演となったジェシー・プレモンスが怪演を見せています。夫婦での出演作だと『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021年公開)もあったな。また公開中の『エイリアン:ロムルス』も記憶に新しいケイリー・スピーニーも出演。こういう言い方も何ですが、怯えた表情がめちゃ映える人だなと。今回みたいなスリラーやホラー映画にじゃんじゃん出て欲しい次世代スターです。

混沌をSHOOTせよ

まずこの映画、一言で言うならカオスです。

序盤は私服の武装者が連邦政府から離反した集団で軍服姿が正規軍と思って観てたんですけど、軍服同士でも殺し合いをしており誰が誰を攻撃しているか分からないカオスが展開。敵味方の概念が崩壊しています。そんなカオスの象徴的存在なのがジェシー・プレモンス演じる赤サングラスの武装男。「お前どこ中だよ?」とカツアゲするヤンキーの最終形態にも見えるレイシストは、恐らくどの部隊にも所属しておらず、内戦に便乗して本性剝き出しで有色人種や移民をルーツを持つ人々を殺し回っているのではと思いました。恐ろしや~。水の配給も滞ってる事からインフラが機能していないのも分かるしアメリカドルは価値を失ってるし…。

しかしそれはあくまで舞台設定であってこの映画で描かれるテーマはジャーナリズムでした。多くの凄惨な現場を撮り続けた事で心を失ったリーさんから序盤じゃ怯えながらカメラを向けていたものの終盤になるとカオスを撮る事に憑りつかれ寧ろ楽しんでいるかのようになる後輩のジェシーさんへ歪なジャーナリズム精神が受け継がれます。”歪な”と表現したのも「記録に収める」という大きな使命があると同時にどんな凄惨な現場でもシャッターを切るというある種の狂気をはらんでいると思うから。しかしその使命と狂気の間にこそ真実が浮かび上がるのかもしれません。
ちなみに中盤辺りにリーさんのフラッシュバックでリンチに合った男性が焼き殺されるシーン(ジュノサイドの現場とか?)があるんですが、あれを観た時にピューリッツァー賞を受賞した「サイゴンでの処刑(グエン・ヴァン・レムの処刑)」が頭をよぎりました。テト攻勢の最中に撮影されたもので、ベトナム反戦運動の起因にもなったと言われる一枚。見た事ある人も多いと思います。それに私、この直前に『プライベート・ライアン』(1998年公開)の再上映を観ていたので、ロバート・キャパのノルマンディーの写真を思い出したりもするわけで。そんなキャパの写真で有名なのが「崩れ落ちる兵士」という銃弾に倒れる瞬間を映したやらせの噂もある一枚。本作の中にも銃弾に倒れた兵士の写真が登場します。きっとこの辺も意識して作られたんじゃないですかね?

まとめ

以上が私の見解です。

ロードムービー、ジャーナリズム、ミリタリーと私の好きな要素モリモリだったので満足ではありますが、期待していた程の衝撃は無かったかなと。先述のグラサンプレモンスのシーンがあまりに強烈&テーマからは少しズレた印象を受けたので、あのシーンだけ浮いていて全体的なバランスの悪さがあったと思います。

また個人的にはもっと軍隊と軍隊がガチンコでぶつかり合って人間が将棋倒しになってく様を期待していたのですが…。大量の戦車が隊列を組んでホワイトハウスへ!みたいな。ただこうしたシーンはスペクタクルになってしまうので、表現としてあえて避けたのかもしれません。すんません、私の発想がガキでしたわw

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。