猫額洞の日々
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猫額洞の日々

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2024年 12月 10日

(3)Graham Greene "TRAVELS WITH MY AUNT" PART ONEの終わり近く

(3)Graham Greene \"TRAVELS WITH MY AUNT\" PART ONEの終わり近く_e0030187_18245170.jpg























 跳んでる叔母さんに翻弄される、地味な甥の成長小説(そう、いくつ
になっても人は成長できる)という物語を語りつつ、同時に作家と作品、
フィクションとは何かを考える小説のようだと、PART ONEの19章、
p160辺りでは思っている。更に読み進むと、また別の感想になるかも
しれないが。

 ある男の回想という構造で物語が語り進められてゆく。その第1行___

<I met my Aunt Augusta for the first time in more than half a
 century at my mother's funeral.>(p3)

 "in more than half a century"を、50年以上と解釈したら、この話者は
一体いくつのときにこの回想記を書いてるのだろうと、英語に無知な読者
は頭を悩ませる。お葬式のときの現在時では母は86歳で死去、叔母さんは
それより12歳ほど下なので、74歳くらいか?
 銀行員だった話者は2年前に引退しているが、いくつで引退したのか?

 この段落の下では___

< My farther had been dead for more than forty years."

___父の死からは40年以上。引退時の話者は50代半ばすぎの独身者だった
と思う。後で、たしか、第4章に求婚し損なった話が出てくる___

<Our ages were suitable, she was approaching forty and I would
 soon be half -way through the fifth decade, and I knew my mother
 would have approved.>(pp22-23)

___これは母のお葬式以前のことなので、お葬式のときの彼はおそらく58歳
から60歳、と考えていいのか? 
 父の死は40年以上前だから、彼はまだ10代。父は異郷で死んだようだが、
父の死因やお墓のことを聞くと、母は頑として答えなかったとあるので、たぶん
10歳かそこら、ロウティーンの頃に亡くなっているのではないかしら?

 どうもbrotherやsisterと書かれているとすぐ、兄なのか弟なのか、姉か妹か
と考えてしまう日本語でできた読者は、細々と小煩く困ったものだ。

 で、それにしても、<I met my Aunt Augusta for the first time in more
than half a century at my mother's funeral.>である。これでは回想記を書き
始めたときの話者は、もしや100歳を超えているのか?___それとも、こう書く
ことによって、フィクショナルなフィクションであると宣言しているのか?
 これらの事柄は日本語訳ではどうなっているのか、翻訳書を手に入れたほうが
いいかな? でもまずこちらを読み切ってからじゃないと頼り切ってしまうだろう。


     Graham Greene "TRAVELS WITH MY AUNT"
     (2019 penguin vintage)




 Stop the Gaza Genocide 
 シリアに平和が構築されるかもしれない。その力の煽りでガザの虐殺が更に
酷いことになったりしたらと思うと...イスラエルを止める手立ては本当にない
のか。



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# by byogakudo | 2024-12-10 20:20 | 読書ノート | Comments(0)
2024年 12月 08日

昨日は

昨日は_e0030187_20204565.jpg























 昨日は西荻窪へ。モンガ堂へ行きたいが、西荻からまっすぐ北上する
のでは曲がないので、住宅地を左右に移動しながら近づこうとする計画。 

 しかし土曜の午後の西荻窪駅の混みよう! 西荻って何か観光スポットが
あったかしら? 善福寺池? 新しく解放された荻外荘は隣の荻窪だし、駅
周辺をぞろぞろ歩く若いカップル(老人より若い人が目につく)はどこの何
を目指しているのか? 音羽館や盛林堂?(かなあ...) 

 ともかくモンガ堂を目指すが、その前にうろうろ。JRの駅近くには西荻
教会、住宅地の中に本郷教会というのがあった。 

 青梅街道に出たら、ん、方向がわからない。モンガ堂は右か左か? 
 電話器の地図を見ると、荻窪寄りに出てしまったので街道を渡って左手へ。
モンガ堂はほんとに青梅街道・荻窪~西荻窪間の真ん中だ。西荻窪駅北口から
まっすぐ北上するのが、いちばん近いだろう。 

 店頭の箱に目を走らせる。今回は、ないかな? 相変わらず渋いライン
ナップ。

 店内へ。入ってすぐ右の文庫列を念入りに眺めて、『芸術ウソつかない 横尾
忠則対談集』(ちくま文庫)、井野朋也『新宿駅最後の小さなお店ベルク』(ちくま
文庫)___『...ベルク』はこの前日、6日・金曜日に行ったカフェ清澄に置いて
ある本。6日じゃなくてもっと前に行って奥の席だったとき、手に取って斜め読み
していた。そのとき、平凡社コロナブックス『作家の珈琲』も目にしていて気に
入ったが、未だ古本屋で見つけていない。同じ平凡社からは『作家と珈琲』も
出ている。
 ほかに、川本三郎/写真・鈴木知之『東京の空の下、今日も町歩き』(ちくま
文庫)、網野善彦『日本の歴史をよみなおす(全)』(ちくま学芸文庫)。
 ほぼ、ちくま文庫ばかり買った日。

 モンガ堂でエネルギーを使い果たしたみたいなので、バスで荻窪、ひと休み
して戻る。

 いきなり冬になった今日はどこにも行かない。
 昼間の電車内と寝る前は"TRAVELS WITH MY AUNT"だけ読んでいるので
(わからない箇所を放擲して読み進めていたら半分強読んでいる。この調子で
行けば何とか読み終えられるだろう。行間がもう少し空いていればもっと楽
なのだが)、昼間に読む本として『東京の空の下、今日も町歩き』を選んだ。
雑誌「東京人」に連載されたエッセイなので、一回分ずつ読むのに適している。




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# by byogakudo | 2024-12-08 21:21 | 雑録 | Comments(0)
2024年 12月 07日

騒音書簡 第三十三:市田良彦 ⇄ 鈴木創士

騒音書簡 第三十三:市田良彦 ⇄ 鈴木創士_e0030187_20513447.jpg




















 2024年最後の騒音書簡は、もはや第三十三葉。

 市田良彦氏の書簡の宛先は、UnitPの首魁にして自らの「百二十日」を
綴り続ける作家、鈴木創士へ、である。内容そのままなタイトルだ___

<「いい歌」として聴かれる文章。そんな作品として完結させようといつも
 強く思うと同時に、心地よいものとして「消費」されてたまるか、とも
 念じている。この両極のまさに中間に、この「騒音書簡」もある。かろう
 じて本業の「~論」を書くことも。ロゴスのなかにメロディとリズムを
 導入すべし!>(市田良彦/2024年11月28日)


 鈴木創士氏の書簡は、すんなり市田良彦さまと始まる___

<現在はない、とマラルメは言っていたが、その時間の中にかつての現在と
 今の現在を見出そうとすること自体が、「老い」を思い知ることかもしれ
 ない。それは誰もが感じたことのある時間の奸計に似ている。はたして我々は
 何かしら焦燥にかられているのか。焦燥にかられるということは、思いどおり
 に運ばなかった事があったということだし、今もあるということになるが、
 自分が急いでいるのか、時間自体が急いでいるのかわからなくなる。「光陰
 矢の如し」というのは、時間そのものが急いでいることである。我々は早回し
 のシュルレアリスム映画のなかにいる。急げ、マルセル・デュシャン! 頭の後
 にはヒトデか星の形をしたハゲができている。>(鈴木創士/2024年11月30日)
 




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# by byogakudo | 2024-12-07 21:23 | 読書ノート | Comments(0)
2024年 12月 05日

久しぶりにやっと小石川植物園へ(2024/12/04)

久しぶりにやっと小石川植物園へ(2024/12/04)_e0030187_18112405.jpg
























 写真は小石川植物園の新しい温室で。水牛の角みたいだ。植物も好き
勝手な方向に進化するのだろうか。

 この数日、三鷹の天文台か、白山の植物園かを二人で検討していた。
三鷹というより、やっぱり武蔵境からのバスじゃないと時間がかかるし、
だいたい、部屋からバスでJR中野駅に行くか、地下鉄で中野坂上に
行って荻窪に戻って(そんな感じ)JRに乗り継がないと武蔵境には
着かないのだ。
 天文台前から三鷹ないし武蔵境駅までの帰りのバス時刻表も電話器
に入れておかないと、タクシーは高すぎる。帰りは時間がかかっても、
やっぱり三鷹駅行きだろう。どうも西の限度が吉祥寺までになっていて
(吉祥寺が嫌いなので実質は西荻窪が限度)、その先を目指すととても
遠くなる。調布からもバスが出ているが、この部屋から調布に行くには
......。
 天文台は遠い。ワイエスが丘(子午線標)はあのままに在るだろうか、
建物はちゃんと残っているようだし、喫煙所も健在のようだ、もう吸わ
ないけれど。2008年に行って、それっきり訪れてない...。


 やっと昨日、気分的に近い小石川植物園に行った。「行ったぞぉ!」と
自分に向かって言い聞かせたくなるくらい疲れたが、幸福な時間だった。

 植物園も2019年以来である。大江戸線・春日から、ちと歩く。大昔、
冨坂の友人を訪ねてよく来ていた界隈だが、新しいビルばっかりになって
どこだかわからない/どこでも同じ街だなあと思っていたら、えんま通り
商店街も、もちろん、こんにゃくえんまも続いている。おお、大亜堂書店
が建物もそのままに在る。本だけでなく小物雑貨も目立つところに置いて
あるが、先を急ぐ身だ。ひと休みした喫茶店、リトルウッドも健在。総じて
この商店街は健在、小売店が続いている。
 共同印刷のあのうつくしいアールは、もうないだろうなと思って歩いて
いた。いまwebで確認したら、やはり消えた。

 徒歩20分強で、小石川植物園。入口で入場券(大人500円)を買って見上げ
れば、やっぱりあの坂が迫っている。ここを登るんだ、登れるかな。
 登っていると右にパンパスグラス、左に内田祥三の本館。ここを解放して
見せてくれないかなぁ、無理なんだろうな。

 ひらたい開けた一帯に登りつく。あきれるほど人が多い。いや、混雑して
いるわけではないが、一瞬、新宿御苑かと見紛うくらい、人が増えている。
外国人観光客のほうがむしろ多いかもしれない。

 新しい温室は、ありふれたシンプルな温室らしい作りで、よかった。好み
としては、木枠に白いペンキを塗って壁にも天井にもガラスが嵌め込まれ、
床面は土の古風な温室(このガラス窓の外に、ドリアン・グレイを姉の仇と
付け狙うジェイムズの顔が覗く)がいいけれど、軽量鉄骨か何かで枠組された、
コンクリート床以外はガラスのこの温室でいいです。
 さらになによりまた、温室前の池(もう水が出ない噴水ありと噴水なし)が
二つとも残されていて、よかった。池の淵ぎわで背を伸ばす蒲の穂を見ると、
因幡の白兎ではなく、ローレンス・アルマ=タデマの描くエジプトの女たちが
浮かんでくる老人には、うれしかった。

 年古りた大きな樹木が生い茂る一帯が、この崖上と崖下に残されている。
大きな樹はすばらしい。メスカリン的クリアな高揚感に包まれる。すぐ傍は
春日通りだというのに、ここが残っている。
 アメリカから兵器を買うのをやめて予算を回せば、国立博物館がクラウド
ファンディングしなくて済むし、大学には好きなように研究させてるほうが
本質的な結果が得られるだろうし、お腹を空かせる子どもたちや大人たちが
いなくなり、強盗に入らざるを得なくなるなんてこともなくなる...。大統領の
クーデタを阻止した韓国の人たちを尊敬する。占領軍がそのまま解放者であった
事実をほったらかしてきた日本人に、あの反軍行動ができるだろうか。

 崖の登り降りで疲れたので戻りはタクシーを捕まえる。700円で春日駅に着く。
混んだカフェで休んで大江戸線で西新宿五丁目へ。そこからバスで接骨院、さらに
夕飯を買ってまたバスで戻っていたら、9,000歩強。




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# by byogakudo | 2024-12-05 21:44 | 雑録 | Comments(0)
2024年 12月 04日

鈴木創士『第177回 ある著名作家が…… 超越論的ジャーナル 5』

鈴木創士『第177回 ある著名作家が…… 超越論的ジャーナル 5』_e0030187_21213697.jpg






















 2024年最後の鈴木創士氏のコラムは、『第177回 ある著名作家が

<言っておくが、シュルレアリスムはまず もって革命思想だった。
 政治的意味においてもそうである。ブルトンやアラゴンはフランス
 共産党に入党するも、後に決裂する。スターリニズムはすでに
 台頭していたが、現在の共産党に入党するのとはわけが違った。
 トロツキストの国際組織である第四インターナショナル・フランス
 支部の創設を支えたひとりは元シュルレアリストであったし、
 ブルトンは後にメキシコでトロツキーと会見し、共同宣言を発表
 した。第二次大戦後のシュルレアリスム運動を目の当たりにして、
 批判的であることを含む影響を受けたに違いないシチュアシオニスト
 の若者たちは、68年五月革命を準備し、それに火をつけた。そして
 ブルトン亡き後、68年五月の街頭に自分たちの姿を見出したパリの
 シュルレアリスト・グループは69年に解散した。>




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# by byogakudo | 2024-12-04 21:52 | 読書ノート | Comments(0)