ふらっと加古川に行ってきた。加古川というとあんまり有名なものはない。テケテケくらいか?あと上垣の鶯ボールの本部と工場があること?かつめしという御当地グルメもあるにはあるが、そんなに話題になることも減ってきた。
まあ、かような具合で、なかなか行く目的が掴みにくい土地ともいえる。大阪から仕事以外で「たまに加古川に遊びにいくねん!」みたいな人には会ったことがない。けど、僕は年に数回くらいは行きたくなる。大きな動機のひとつに画像の赤提灯の店、酔処(よっとこ)がある。いかにも小屋という外観、赤提灯、実際に入るとL字型のカウンターのみのお店。自分が理想にするお店の形態のひとつって、間違いなくこんなのなんだろうなあと思う。
この日は20時を回ったあたりの到着で、営業してるかどうかの確信はもてなかったが、このお店の路地に入った瞬間に赤提灯を見て優勝したと思えた。赤提灯はおじの希望である。こちとらわざわざこの店のために大阪から足を運んでいるわけで、もし閉まってたら駅前の餃子の王将に行っていた。
大瓶ビールを頼む。つきだしに大根の炊いたんをもらう。ここの特徴としては、狭さと料理の意外な旨さ。あとは兵庫県らしいお酒か。
ちなみに、このお店は、のれんとかはかかってない。店内に入ると、なんと壁にのれんがかかっている。意味がわからないのだけど、ママさんに聞くと、のれんがないことによって、入ってくる客がヤクザとか危ない奴かどうか、早めに分かるということだ。一見して危なそうなら、満席ですとかなんとか言って追い返すのだろう。僕は初めて入った時から辛うじて受け入れられていたが、ここで追い返された人は、危なそうな雰囲気があると判定されたことになる。悲しい。
この店は料理がなかなか美味い。とはいえ何が美味いとか実はあんまりよく知らない。その時その時のカウンターに並んでいる料理から適当に選ぶ感じ。それで外れはなかったから信用して良いと思っただけだった。というか、こんなお店にきて、味がどうのこうのとか、はっきりいって邪魔な思想だ!煩悩の塊!狭い店内で肩を寄せ合って、地元客の世間話でも聞きながら、ちびちび酒とかすすって安い値段だったら満足とは思わんかね?という歪んだロマンチシズムが自分にはある。
とりあえず大瓶のある店は最強なのはいうまでもない。中瓶の店だったらこれほど執着してない可能性もあるくらいだ。大瓶と中瓶の壁は意外に高いのだった。
カウンターに並んでる料理のなかに手羽先の唐揚げがあったのでなんとはなしに頼む。そしたらママさんから「玉ねぎは食べれるか?」というふいをついた問いかけをもらう。いささかめんくらうが、玉ねぎはどんなものでも好きなので「好き」と答えると、しばらくしてから玉ねぎサラダつきの手羽先揚げが登場した。何の気なしに頼んだ手羽先揚げを、ここまで盛り付けてくれるなんて思いもしなかった。銀ガミで持つところまで。揚げおきをそのまま出してくれるのではなく、フライパンでもう一度加熱して表面の皮はカリカリになっている。有名店の手羽先とはまた違った魅力。玉ねぎのサラダも濃厚なドレッシングで否応なしで美味い。1品頼んだつもりが2品分の働き。
お酒にシフトする。ここで使われてるのは龍力(たつりき)という姫路あたりじゃちょっと知られた地酒。そういうのを知ってるので安心して注文できるわけだ。龍力のパックがぶっささった酒燗器からコポコポと入れてくれる。これ舐めながら地元常連の世間話なんかを聞いてると愉快になってくる。
もう日持ちしないからということで、ママさんが客全員にヅケマグロを振る舞ってくれた。気のせいかかなり美味い。本マグロなみのお味。やっぱり気のせいではないかも。
ママさんと話していて、大阪からこの店に来たと言ったら驚かれた。前も同じ話をした記憶があるがそれから何日経ったのか覚えてない。下手をすると一年以上は経ってるかも。カウンターには消毒液が置いてあって手を消毒できるようになっている。大阪ではマスクや消毒液が手に入らないという話をしたら、もちろん加古川でも手に入らないらしいが、以前にたまたま大量に買っていたということだった。そしてマクスも2枚だけ買い置きがあるからあげようか?とか言われて、いやそんな貴重なものは要らないです!と断ったんだが無理に渡されてしまった。ここぞという時に使わせてもらおうと思う。申し訳ないのでお酒のお代わりをする。
22時前に出たら灯りが消えていた。21時まわったらだいたい終わりなのだろう。27年間くらいやってると言ってたが、意外と新しい店だと思った。店内にトイレはなくて、店の外に公衆トイレみたいなものがある。