神戸の三宮のガード下に皆様食堂という食堂がある。あんまり人に詰めかけて欲しくないので紹介したくないが、良い店は語りたいという性もある。だから今回はなかば嫌々紹介しようと思う。僕自身このお店が今以上に混むと嫌なので、よっぽど行きたいと思った変わった人だけに行って欲しい。
皆様食堂はお昼前からやってるらしい……というのも暖簾を出すタイミングがわりとバラバラで僕もよくわかってない。14時くらいになることもあるが、満を辞して入ったら大抵常連がすでに出来上がっている。営業時間がわからない店。でも閉店はかっちりと20時30分。
昼時に暖簾を出さないこともある食堂って何なんだと思うが、ここは所謂食堂とは少し違っている。要するに飲みがメインの店。もちろん食堂の機能も有していて、食事メニューやうどんや丼などは充実しているが、純粋に飯を食いにやってくる人間はほとんどいない。ゼロでは無いとは思うがという程度。食堂といえば必ずといっていいほどある定食メニューも無いし。
あと店内がすごく狭い。おでん鍋をぐるり囲むカウンターが8〜9席くらい。あと壁向けのサイドテーブルの席が2席ほどあるだけ。誰かが座ってると奥から出ることも出来ないほどの狭小さだ。
ほとんどの時間は常連がギッシリと居座っててなかなか入れないが、ふとしたタイミングで入れることがある。僕はそうやって隙間に入れてもらって大瓶ビールを頼む。大瓶があるのが関西における「飲める店」であるサインだと思ってる。
なかなか入れない店ではあるけど、店外に並ぶなんて無粋な人はいない。もし混んでて入らない場合は諦めるか、どこかで時間を潰して改めて覗いてみよう。くれぐれも並ばないで欲しい。
「キャベツウインナ肉ソース炒め」という長い名前のメニュウ。ここのメニュウは独特だ。これは読んで字の如しの料理だが、思った以上の美味さで驚く。他にも「肉入り豆腐炒め」なるメニュウがあって注文したら麻婆豆腐だったりする。なるほど。
食事メニュウは壁にビッシリと張り出されていてなかなか壮観だ。いちど見たら感動できる。あと狭すぎて店内に調理スペースが無いのも特徴。このお店はお二人でやっておられて時間交代で店に出る。もう片方は二階の調理スペース上がる。注文が入ると、インターフォン的なやつで二階に通信。作ってエレベーターで下ろしてもらうという仕組みになっている。それもあってか料理が出てくるのは時間がかかるので注意。
皆様食堂といえばU字カウンターのおでん鍋でもある。これを見てるとついつい注文したくなる。出汁は真っ黒になってる。ずっと継ぎ足ししてきた汁なんだろうな。料理が出てくるのが遅いのが嫌な人はおでんを頼めば良い。
常連かんからヤクルトが振舞われる。高級なやつ。たまにこういうことも。何しろ肩を寄せ合うようにして飲む店だ。月に一回行くか行かないかの僕でも行くたびに見る人が多い。
この日もなんとか潜り込む。
まずは大瓶。
この日は他所で食ってきたのか覚えてないが、タコとミョウガのやつでごまかしている。別にお腹が減ってなくても来てしまう食堂だ。
これはとんとんみーの箸置き!?なぜ!?店の人には聞かなかった。
またまたやってきてる。早い時間に三宮に来たら絶対に行っておきたい病気。夜は20時すぎで終わりなのでほとんど絶望だし。
大瓶がルーチン。常連は焼酎とか飲みがち。僕は頼んだことがない。
いつものごとく店内ぎっしり。
汁物も美味いのだ。これは豚汁。実にあっさりした味付けだ。昔っぽい茶碗に入れて出してくれるのが嬉しい。こういうのは減ってしまった。
おでんも食べる。ここはいちいち大きい。ちくわも元の何倍くらい膨れてるのだろうか。ふにゃふにゃになったちくわをつまみつつビールを流し込むのが好きだ。
またまたやってくる。
なんと!今までは大瓶はアサヒかキリンしか無かったのだが、サッポロ赤星が選べるようになっていた!しかもこの日からだという!
今まで断続的に通ってきて良かったなあとしみじみする。
実はこの日は、以前に紹介した神戸餃子のひょうたん三宮店に行くか皆様食堂に行くか迷いまくっていた。平日の昼間だとひょうたん三宮店はガラガラなのだ。ブログで紹介して以来、夜のひょうたんは行列で入れない店になっていたので、のんびり楽しむにはド平日の昼間という機会しかない。
とりあえず皆様食堂に行って、入らなければひょうたんという段取りだったのだが、すんなり入れてしまったのだった。でもサッポロの初日というサプライズ。まあ、ひょうたんは次の機会にして構わないかと思った。
しかしとんでもない奇跡が起きる!
なんと、常連さんがひょうたんの餃子を大量に買ってきて、店内全員に差し入れてくれたのだ!
不定期で皆様食堂に通っているが、この日は歴代ナンバー1の奇跡オブ奇跡の日だった。
すかさずサッポロ赤星もおかわり。隣は米子から遠征で来られた人だったのも奇跡のひとつだったかもしれない。なんと、あの、米子カレーとんきんの話題で盛り上がる。あと古代史の話なんかも何故かたくさんした。
店が狭いゆえに、客同士が近いのも皆様食堂の楽しみのひとつ。その分、立ち回り方も気をつけないといけないが。気の短い常連もいるので下手なこと言うと怒らせる。僕が思うに3人以上でガヤガヤ行かない方が良い店だ。まあ、入ろうとしても滅多に入れないけど。「なんか面倒くさそうだなあ」と思った人には向かない店だろう。独りふらっと訪れて、店のすみっこに納まって、静かに飲み食いできる人には居心地が良い。店の人はすごく親切だし。
気分が良いのでホルモン炒めを注文。これも味が濃くて美味い。ビールがすすむ。皆様食堂で美味しくないものは無かった。
皆様食堂の難点は店が狭すぎてトイレが無いこと。道を渡って遠くのトイレまで行かないといけない。古の任天堂ゲーム&ウォッチ(注:後で調べたらゲーム&ウォッチではなく、バンダイのゲームデジタルシリーズの『クロスハイウェイ』だった!)で、酔っ払いが車を避けながら道を渡るというものがあった。いつもあのゲームを思い出す。いつかゲームオーバーになりそうだ。僕はビール飲みすぎると膀胱が弱くなるので、あんまり長居できない悲しさがある。信号でなかなか渡れないときのスリルがすごい。
とにかく色々と難しい店なのでみんなには来ないで欲しいが、僕自身は行くのがやめられない。