団塊の世代が皆、後期高齢者となる2025年、日本企業に新たな危機が迫る。50代前半で企業の中核をなす団塊ジュニアの親の介護が本格化するのだ。国も法改正で対策を急ぐが、企業の介護への認識は旧態依然としている。

 花形部門の営業部長、主力商品の生産を一手に担う工場長。役職を問わず、企業のマネジメントの中核を担う50代が、ある日「親の介護に専念したい」という理由から退職したいと申し出る──。そんな未来が迫っている。

 25年、第2次世界大戦後のベビーブームで生まれた団塊の世代は、全員が75歳以上になる。75歳は高齢者医療の節目で、「要介護状態(2週間以上にわたって常に介護を必要とする状態)」として認定される人の割合が3割を超え、それ以下の年代よりも一気に介護リスクが高まる。

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 自立した生活を送るために必要な能力が急速に下がり、外出しての買い物などに支障を来す人が増える。認知症の発症割合も高まる。この世代の親の介護に直面するのが団塊世代の子どもたち、いわゆる「団塊ジュニア世代」(1971~74年生まれ)だ。

 団塊ジュニア世代は現在50代前半。多くが若手経営層や管理職、あるいは現場のベテランとして企業の中核を担う。働き手不足の中、貴重な後進を育てるためにも欠かせない存在となっているこの層が、親の介護と仕事の両立に悩む時代が目の前に迫っている。

■記事の予定ラインアップ(タイトルや回数は変わる可能性があります)
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・介護中の部下を追い込む「休んで親孝行を」 善意のはずが離職誘う
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・「隠れ介護」が横行 戦力外への恐怖心、勤め先のニーズ把握を妨げ
・介護離職を招く人事・上司のひと言 会社に相談しても溝埋まらず
・「働き続けてほしい」 コマツ・大成建設が介護中社員に届ける熱意
・日立社員5000人に響いた介護体験談 仕事と両立へ職場風土を変革
・「経営陣は介護体験を語れ」 東洋エンジ副社長が広げた共感の輪
・介護が奪うエース社員の働く意欲 「キャリアの芽はない」と諦め
・日立・中畑専務「介護支援は経営がやるべきこと」 社員の不安払拭

30年にはビジネスケアラーが318万人

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