マツダのかつての代名詞「ロータリーエンジン」が復活への道を歩み出した。通常のエンジンと比べて燃費が悪いなどとして量産停止となってから約11年。マツダは14日、このエンジンを搭載した新型のプラグインハイブリッド車(PHV)を11月に国内で発売すると発表した。直接の動力としてではなく、PHVのモーターを回す電気をつくる発電機として使う。モビリティー変革の時代に捲土(けんど)重来を果たせるのか。
発売するのは新型PHV「MX-30 Rotary-EV(MX-30)」だ。最大の特徴は、モーターを回す電気をつくる発電機にマツダ独自のロータリーエンジンを採用することにある。「マツダの飽くなき挑戦を象徴するエンジンに再び火がともった」。マツダの小島岳二取締役専務執行役員は興奮気味に語る。
1967年、世界で初めてロータリーエンジンの量産化に成功したマツダ。ピストンの往復で動力を生み出す通常のエンジンと異なり、ロータリーエンジンはおむすび型のローター(回転子)がぐるぐる回ることで動力を生む。マツダの代名詞で、エンジンに対するこだわりや技術力を示す象徴的な存在だ。しかし燃費が悪いなどの理由で2012年に量産を停止していた。
ロータリーエンジンに強い愛着を持つファンや関係者は多く、復活を待ち望む声も少なくなかった。もっとも、マツダは郷愁を誘うためにロータリーエンジンを引っ張り出してきたわけではない。「このエンジンなしに競争力のあるPHVを開発することはできなかった」(小島取締役)のだ。
PHVはモーターやバッテリーに加え、発電用としてエンジンとガソリンタンクも搭載しなければならない。重量は重く車体も大型になりがちだ。
しかしMX-30は全長約4.4m、重量約1.8トン。競合メーカーのPHVと比較してサイズは小さく軽量だ。この最小クラスの車体に17.8キロワット時というPHVとしては比較的大容量のバッテリーを搭載することに成功した。エンジンを使わず、バッテリーだけで走れる距離は107kmに上り、MX-30の開発を統括する上藤和佳子主査は「PHVではトップクラスだ」と自信を見せる。
コンパクト、かつ高性能なPHVを開発するカギになったのが11年間お蔵入りになっていたロータリーエンジンだった。
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