I人、E人とは?中国のネットでバズっている「MBTI(性格診断テスト)」について〜日本との比較
こんにちは、日本在留中の中国出身のshokoです。
皆さんは「E人」、「I人」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。これは最近の1年間で、SNSを使っている中国の若者の間で知らない人がいないと言ってもいいほど、バズっている言葉です。実はこちらのネット用語は「MBTI(性格診断テスト)」の「E型・I型」から来ています。
今回の記事では、中国での「MBTI」の流行とそれにまつわるマーケティングについて紹介し、日本と比較してみたいと思います。
Table of Contents
「MBTI」とは?
「MBTI」は「Myers-Briggs Type Indicator」の略であり、スイス人心理学者のカール・グスタフ・ユングが1921年に出版した著書『心理学的類型』に基づいて、1962年にアメリカ人のキャサリン・クック・ブリッグスと娘のイザベル・ブリッグス・マイヤーズによって初版が完成した心理検査(自己分析メソッド)のことです。*1
現在の若者の間で流行っている「MBTI」は元々のMBTI診断ではなく、イギリスのNERIS Analytics Limitedが公開している「16Personalities」というWebサイトです。全93問の質問の回答を選択すれば、例えば「ENFJ」のようなアルファベット4文字の診断結果を得ることができます。診断結果は全部で16のタイプがあり、それぞれ「I(内向型)とE(外向型)」「S(感覚型)とN(直観型)」「T(論理型)とF(感情型)」「J(判断型)とP(知覚型)」となっています。
こちらのサイト自体は2011年からあって、私自身も2016年あたりに一回やっていたという記憶があります。2022年〜2023年のバズリは、韓国のアイドルがきっかけだそうです。その後、韓国の多くの有名人がアルファベット4文字の性格タイプを公表するようになり、韓国や日本でブームとなっていました。
一方、中国での流行のきっかけは明白ではなく、挙げられるきっかけは「MBTIの質問が大幅に変わり、前より結果が正確になった」とインフルエンサーたちが言っていたことぐらいです。
「E人・I人」新たなネット用語の誕生
私自身は2023年の前半からWechatの「朋友圈(モーメンツ)」や「小紅書(RED)」で「MBTI」に関する投稿をよく見かけるようになりましたが、「昔からあったものじゃないですか?」と思い、スルーし続けました。
しかしその後、SNSでは「E人とI人の区別の方法」、「こういう場合、E人ならこういう行動を取る」のような、「E人・I人」という用語が頻繁に使われるようになりました。さすがに調べないともう友達の投稿を理解することすらできなくなってしまい、調べて覚えました。個人的な考えですが、日本で言う「私はE型・I型」より「私はE人・I人」の方がおもしろくて浸透しやすいので、一気にバズったのではないかと思いました。
少し余談ですが、中国では元々「〜人」という言い方があり、「〜」の部分が地名のほか、学校名、業界名、企業名の場合もあります。(例えば、北大人(北京大学の学生、卒業生のこと)、電影人(映画業界の人))。日本語でも「映画人」という言い方がありますが、全ての業界につけられるというわけではないようです。
MBTIの場合、「I型」ではなく「I人」で言うと、「人の属性」というより、その人がある集団に属していることを強調している気がして、若者が求める「帰属意識(中国語:帰属感)」をより与えられるんじゃないかと思いました。
この記事を書いている時、REDで「E人」というキーワードを入力し、その時点で一番最初に出てきたのが「MBTI留学国家怎么选,i人e人留学国家大不同(MBTI留学先の選び方。I人とE人に向いている留学先が大いに異なる)」という投稿でした。
その投稿では、I人(内向型)に向いている留学先は日本とイギリスで、日本に関する理由は「1、人と人の距離感が遠い;2、マスクをして自分を守る文化(個性を見せないこと);3、人に迷惑をかけたくない「すみません」文化」です。当然ながら、こちらはステレオタイプを多いに含む投稿で、「MBTI」の流行りのデメリットではありますが、私自身も「I人(内向型)」で、日本に来てから割とすんなりと日本の文化に溶け込んだので、投稿の内容が間違っているとは言えないです。
MBTIのマーケティングでの運用(中国)
本来MBTIは自己分析のためのツールではありますが、あまりの流行により、徐々にマーケティングのキーワードにもなりました。「星座」とも似ているところはありますが、より「性格」と直接関連しているので、商品の宣伝に使いやすいのは確かです。
中国の「千瓜数据」というサイトによると、2023年上半期の小紅書(RED)の「MBTI」に関連する投稿の調査では、前期より投稿数が272.53%増加し、インタラクション(コメント、いいね)は253.57%増加しました。REDの人気タグ 「#万物皆可MBTI(#なんでもMBTI)」の閲覧総回数は13 億 8,500 万回に達していました。*2
広告と関連する投稿の内容は以下のようなものがあります。
・「INFPの物が多い部屋へようこそ」→家具・インテリアブランド
・「INFPのインドア生活」→家庭用プロジェクターのブランド
・「I型人格、30日間で外国語会話をマスター」→外国語学習アプリ
・「P人はJ人の優雅な生活を理解できない」→化粧品ブランド
日本でも似たような広告は存在するかもしれませんが、最近の中国では特にこのような投稿が多いという印象を受けています。
MBTIに関する投稿の中では、笑いや共感を得ることを目的にしているものや広告が多く、気にしすぎることは避けた方がいいと思いますが、気軽な気持ちで診断を受けてみて、活用していくのはいいことだと思います。