こんにちは。Quality Assuranceグループで、Bill Oneの品質マネジャーをしている秋元真理子です。現在QAグループで取り組んでいる「ナラティブ文化」についてご紹介したいと思います。
アマゾンで経験した「ナラティブ文化」
本題に入る前に、少し私自身の背景などもお話しさせてください。私は2024年4月1日にSansanに入社しましたが、その前はアマゾン・ジャパンに13年間、グローバル・モバイルQAエンジニアやCXプログラム・マネジャーとして勤めていました。
多くの方が既にご存知の「アマゾンではパワー・ポイントは使わない」、「箇条書きはなし」、「ミーティングが始まると、まずは文章を読む」など、「ナラティブ」または「文章」で表現していく文化に長年触れてきました。
QAエンジニアとしては、正式なドキュメントを書く機会はそれほど多くはなかったのですが、QAプロジェクトや障害などに対するやり取りは、文章で伝えることが常でした。また、QAとして、プロダクト・マネジャーが立案するプロダクト計画文書「PR/FAQ」のレビューセッションにも参加し、最初の15~20分は文章を各自読みながらフィードバックも行っていました。
この「PR/FAQ」を簡単に説明しますと、PR=プレス・リリースで、プロダクトがリリースされる際に発表されるであろう広報文章であり、FAQは、想定される社内外全ての質問の回答で、どういったメトリックスを取っていくか、うまくいかなかった場合のプロセスなど、あらゆる状況への回答がカバーされています。
プログラム・マネジャー時代は、「PR/FAQ」を書いておりましたが、さすがに最初は同じチームのシニア・プロダクトマネジャーにつきっきりで指導してもらい完成させましたが、アマゾンにて働く中で、非常にチャレンジングな経験の一つでした。
そして、今回のテーマは、このアマゾンでの、「ナラティブで書く」という経験が大きくつながります。
「ナラティブ」とは何?メリット・デメリットは?
まず「ナラティブ」とは何なのか、簡単にお話しさせていただきます。
辞書には、「叙述的である」とあり、それは順を追って述べていくことを意味します。しかし、ただ順を追うだけではなく、私が解釈するには、それに付け加えて、「あらゆる側面において、文章でロジカルな説明が詳細になされている」ということが、アマゾンで経験した、また私たちが目指す「ナラティブ」文化であると考えています。
では、「ナラティブ」であることのメリット・デメリットとなるとどうなのでしょうか。
メリットとしては、「あらゆる側面」に対する思考が深まり、またそれが文章化されているため、他者との齟齬が起こりにくいことはまず挙げられますが、その反面、「ナラティブ文書」作成に慣れない場合には、非常に多くのトレーニングを要することは、デメリットとして上がってきます。
しかし、組織的に長い目で見た場合、思考能力は飛躍的に上昇しますし、コミュニケーションの質も格段に上がります。今まで何度もやり取りしなくてはいけなかった時間の短縮にもつながっていき、最終的にはプロダクト品質向上に多大なる貢献をしていくことになります。
QAで始まった「ナラティブ文化」
QAのグループ・マネジャーとして、9月からプロダクト室・室長の西場さんが着任しましたが、9月は新しい期が始まるタイミングでもありました。西場さんとの最初の仕事は、SMART法則による四半期目標の設定で、これは初めてQAに導入された目標設定のやり方でした。今までの簡潔に伝えていた記述に対して何度も指摘が入り、グループ全体で非常に苦労しました。
伝わりやすい文章であることは大切ですが、「シンプル=伝わりやすい」ということでは決してなく、この場合の指摘は、「シンプル=詳細が見えない」という意図がありました。
しかし、最終的に承認をもらった目標は今までになく明確に設定され、その重要性や背景なども、そのプロダクトに関わっていなくてもある程度イメージができるほどになっていました。
「ナラティブ」に近づくプロセスにおいて、完璧には程遠いとは言え、大きくQAグループが変わる瞬間であったと個人的には感じています。
この「ナラティブ」への取り組みは、今期から始まった週次レポートでも実践しています。設定した目標を達成するためのPDCAサイクルを小さく行い、それを週次レポートとして西場さんへ報告していくのですが、この内容を「ナラティブ」で書いています。
このスタイルに慣れていない人にとっては、「ナラティブ」で書くことは、容易ではありません。現在、QA内でも何が正解なのか分からないという声も上がり、レポートを書くのに今までよりも時間がかかりすぎているといったチームもあります。
ただ挑戦してみないと成長も望めません。
幸い「ナラティブ」文化に慣れている社員が他にもいるため、相互レビューを行い、QAグループ全体の底上げを行っています。
定期的な勉強会を開催
四半期目標を設定した後、西場さんがQAグループ全体にお薦めしていた本が「入門 考える技術・書く技術」です。
実は、アマゾンに入りたての頃、「考える技術・書く技術」はシニア・プロダクトマネジャーから一番初めにお薦めされた本でもありました。目標設定におけるプロセスのポストモーテムを行った際、数人の方がこの本を購入して、自身で勉強をしていました。今後QAグループでの「ナラティブ」文化を強化していくために、現在では、この本をベースに定期勉強会を開催しています。その内容はまだトライアル状態ではありますが、新しく学んだことや不明な点、これからどういう取り組みを個人でやっていくかなど、お互いが新たな視点を学ぶ機会となっています。
QAから技術本部全体へ
「ナラティブ」文化の醸成は、現段階ではQAグループ内で積極的に行っていますが、今後は技術本部全体へと広げていきたいと思います。
その文化が醸成された後、プロダクト開発への影響がどう変化・飛躍していくのか、それを楽しみに描きながら、毎週のレポートや勉強会の質を上げて参ります。