勝利を重ねていくと
美酒の味わいが違うことに気がつく。
PGAツアーは
勝ちたいと思って勝てるほど
簡単なものではない。
今年、松山がジェネシス招待で優勝し
真っ先に報告に向かったのは
丸山茂樹だった。
同期のK.J.チョイがアジア人最高の
ツアー8勝という金字塔を打ち立てた。
丸山がことあるごとに松山に
「彼の記録を塗り替えろ」
とハッパをかけてきた。
しかし松山も8勝以降苦しんだ。
先週まではパッティングが不調だったが
アプローチはさえわたった。
リビエラではプレースタイルを少し変え
無理にピンを狙わない我慢のゴルフに徹した。
終盤、勝利のチャンスが見え始めると
アクセルを全開まで踏み込み
ピンをデッドに狙う猛攻。
15番からの3連続バーディにつなげ
一気に後続を引き離した。
この日、丸山は自宅でテレビ観戦していたが
いてもたってもいられず
コースに向かった。
ホールアウト後、
二人は自分たちでしか分かり合えない
美酒の味をかみ締めた。
宮本 卓Taku Miyamoto
1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Clubほか、国内数々のオフィシャルフォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。