今年から、4か月に一度のペースで島根を訪れています。
東京で知り合った友人が島根にUターン。積もる話もあるし、温泉津(ゆのつ)という日本海に面した温泉町がすっかり気に入って、通っているうちに知り合いもできました。
島根にはあちこちに温泉があるので、今回は出雲空港からとある温泉に直行し、二日目に温泉津に向かうことに。その初日の温泉でちょっとしたアクシデントに見舞われました。
お湯の質はとてもいいし、宿の人も親切ですっかりいい気分になって部屋で寝ていたら、深夜に足の激痛で目が覚めました。あわてて布団をはねのけて飛び起きると、大きなムカデが!
時計を見ると午前2時近く。宿の人に助けを求めたかったのですが、時間が遅すぎます。ネットで「ムカデ 刺された」と検索。洗い流して温めるのがいいそうです。幸いにして温泉は夜じゅう開いています。
足を引きずりながら浴場へ。貸切風呂は全部空いていて選び放題。「痛い痛い」とうめきながら真夜中の温泉に入りました。
島根は神話の地。
痛みで泣いている私は、因幡の白兎。そう連想すると、時間がたてば痛みも引くだろうと楽観的になり、翌日は出雲大社にお参りに行きました。
出雲大社の霊験か、お参りする頃には痛みがかなりやわらぎ、温泉津(ゆのつ)のお湯に入ってすっかり回復しました。
たまたま起こったことに意味を持たせようとするのが、心理セラピーや占い業の常。
ユングのエピソードを思い出しました。
ユングのクライアントに知性を重んじる合理主義者の女性がいて、なかなかセラピーがうまく進みません。ある日、彼女が前の晩に見た夢の話を始めます。
「誰かが私に黄金のスカラベ(神聖なカブトムシ)をくれた」
こう話している途中に、窓ガラスをたたく音がして、それはかなり大きなカブトムシでした。
これにより、彼女の合理主義に穴が開き、知的な抵抗がなくなり以後の治療はぐっとやりやすくなりました。スカラベは古代エジプトの再生や変容の象徴。つまり、知性に凝り固まっていた彼女に分析を受け入れるように求めていたというのです。
だったらムカデは何の象徴なのでしょう?
足が何本もあることから、いい気になってあちこちに旅ばかりしている生活への戒め?
ネットで検索すると、ムカデは前にしか進めないことから「前進」「目標達成」を意味するとありました。戦国時代は武具にあしらわれるほどのラッキーモチーフだそうです。仕事がほぼリタイア状態となり、念願のスペイン巡礼も果たして目標を見失っている私に渇を入れている?
島根の友人に話すと「そのムカデはどうしたの?」と聞かれました。
どうするも何も、痛くてたまらなくて対策をネット検索しているうちにどこかに行ったと答えると「母にムカデは頭から叩き潰せと教わった。次に泊まった人がまた刺されるかもしれないじゃない」とワイルドな発言。軟弱な東京都民は地方に旅はできても移住はとても無理です。