沖縄旅行の前日に日本語学校の学生を家に泊めることになりました。
作文のクラスにずっと出ていたベルギー人の女子学生です。
週2回の授業で6週間、12テーマで展開しているので、6週間が終われば別のクラスに移るように誘導しているのですが、彼女は「このクラスが一番好き」と3クール、18週間連続で受講しました。
彼女の両親は映像監督と女優。日本語も堪能で自由自在に創作を書き続けます。彼女と私は、学生と教師ではなくライターと編集者、あるいは愛読者という関係となりました。
帰国直前、彼女が暗い顔をして教室に現れました。ホストファミリーとうまくいかなくなり、気まずくてしかたがないそうです。
「そんなにいやな思いをしているのなら、うちに来ますか?」と声をかけました。
彼女の作文を延々と読んできたので人となりはしっかりわかっています。礼儀正しくて向上心が強くて、友達思い。何よりも彼女の芸術家気質に惚れ込んでいます。
正式なホームステイではなく、友達同士という関係で泊めるので学校で問題になるかと思ったのですが、彼女を教えている先生から感謝の言葉をもらいました。あんなに熱心に日本語を勉強している彼女が、失意のうちに日本滞在を終えるのは忍びないと思ったそうです。
そんなわけで、沖縄旅行の前日に彼女を自宅に泊めました。問題は翌日の朝。沖縄行きの早い便なので6時に出発します。鍵を渡し、彼女を残して家を出るから、鍵は日本語学校の同僚の先生に返すように言いました。
自分たちが不在の家に外国人が滞在するなんて、きわめてリスキーな状況ですが、私はまったく心配しませんでした。
カウチサーフィンのサイトを読んでいると、「自分は仕事から帰るのが遅いので、鍵は近所の店に預けている。そこへ行って名前を告げて鍵を受け取ってほしい」というホストもいました。メールのやり取りや、相手のレファレンスを読んで、「この人なら大丈夫」と思える相手を受け入れているのでしょう。
アコモデーション担当ディレクターに聞くと、彼女のホームステイ先は特に問題があるわけでもないとのこと。日本人の夫と外国人の妻。日本人は留学生を受け入れることに抵抗がある家庭が多く、ホームステイ先はどうしても在日外国人の家庭が多くなるそうです。
私の想像では、彼女の日本語があまりにも上達して、ホストファミリーの奥さんよりも上手になり、おもしろく思われなかったのかも。彼女は長期生で、5ヶ月間は一つの家庭に滞在するのは長すぎたのかもしれません。
子どもは親を選べないのと同じく、留学生はホストファミリーを選べません。
彼女がもっと早く「この家はいやだ」と声をあげていれば、別の家庭や寮なり、選択肢はあったはずです。それを「仲良くしなくてはいけない」と思い込んで気を使い、最終週で限界に達したのでしょう。彼女がホストファミリーとうまくやっていくことに気を配っていたことを知っているだけに、傍観するわけにはいきませんでした。
この夏、我が家にも3週間、留学生が滞在します。フィンランド人学生3人目。
最初のヘンリク君はすばらしすぎて、夢のような3週間でした。
翌年のソフィアはちょっとトーンダウンしましたが、トラブルはなくなごやかに終わりました。
さて、今年のフィンランド人学生はどうなることでしょう。