ボブ・ディラン30周年コンサートが2週にわたってNHK−BSで放映されました。
私が持っているDVDには収録されていない曲も放映されので夢中になって観ました。
みうらじゅんの解説も楽しい。
ディラン先生のレコード・デビュー30周年を記念したコンサートで、フォーク、ロック、カントリーなどあらゆるジャンルからのアーティストがディランの曲を歌います。
会場はマディソン・スクエア・ガーデン。
1992年10月16日ですから、20年以上も前のコンサートですが、決して古くありません。
ものすごく入れ込んでいたザ・バンドのベーシスト、リック・ダンコが見る影もなく太ってしまっていて大ショックを受けた苦い思い出もありますが、ディラン先生の曲のすばらしさを改めて実感できるすばらしいライブです。
ディラン先生本人が歌うより上手なバージョンが数多くあり、ファンとしては苦笑するしかありません。
特に聴きたかったのは『スペイン革のブーツ』ですが、残念ながら今回は放映されませんでした。
ナンシー・グリフィスとキャロリン・へスターのバージョンです。
『スペイン革のブーツ』には特別な思い入れがあります。
高校時代にディラン先生の曲と出会い、夢中になって英語の歌詞を読みました。英語の授業で使う教科書とはまったく違う、いきいきとした英語がそこにあったからです。
当時、兄がよく聴いていたのが太田裕美の『木綿のハンカチーフ』。
都会に行って変わってしまった恋人に、涙を拭く木綿のハンカチーフをねだる女の子の悲しい歌です。
ディラン先生の『スペイン革のブーツ』の歌詞を見て、「これって『木綿のハンカチーフ』と同じ!」と驚愕したものです。
『木綿のハンカチーフ』は 1975年、『スペイン革のブーツ』は1963年ですが、私は先に『木綿のハンカチーフ』を聴いていたので、ディラン先生が真似したのかと一瞬思ったものです。しかし、作詞の松本隆は、ボブ・ディランから着想を得たと認めています。
『木綿のハンカチーフ』では、恋人が東へと向かう列車で都会へ旅立ちます。
そして残された恋人に都会で流行りの指輪を送ろうとします。
残された恋人は、「都会の絵の具に染まらないで帰って」と願います。
『スペイン革のブーツ』では、船でアメリカからスペインへ。
恋人に送ろうとするのは、金や銀のアクセサリー。
残された恋人は、"Just carry yourself back to me unspoiled"と願います。
二つの曲で決定的に異なるのは男女の立場。
『木綿のハンカチーフ』では、旅立つのは男性で、待つのは女性。
『スペイン革のブーツ』では、恋人を見送るのは男性です。
Oh, I got a letter on a lonesome day,
It was from her ship a-sailin',
Saying I don't know when I'll be comin' back again,
It depends on how I'm a-feelin'.
ある寂しい日、僕は手紙を受け取った
船上からの手紙 それにはこう書かれていた
「いつ戻るのか私にはわかりません
それは私の気分次第」
一方の『木綿のハンカチーフ』
君を忘れて変わってく
僕を許して
毎日愉快に 過ごす街角
僕は、僕は帰れない
この二つの曲を聴き比べて、「旅する恋人を待つなんてつまらない人生は送りたくない」と決意しました。
父が外国航路の船乗りで、母は日本の家で父の帰りを待っているという家庭環境の影響もありました。
『スペイン革のブーツ』は、恋人スーズ・ロトロがヨーロッパに旅立つにあたり、ディラン先生が作った曲です。
ディラン先生のセカンドアルバム『Freewheeling'』のジャケット写真の女性です。ボブ・ディランのような才能あふれるボーイフレンドを置いて旅に出るなんて「なんて素敵なんだ」とあこがれました。
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恋人を待つのではなく、一人で未知の世界へ旅立とう。
それはとても刺激に満ちたおもしろい体験となりました。
そして、カウチサーフィンを通じて、日本に一人でやってくるスザンヌやマイヤ、アンネと知り合いました。
一人で外国を旅行する女性とは、生まれた国が違っていても、すぐに意気投合でき、大切な友人となりました。