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Mercury's:マクロ戦略投資ニュースレター https://www.mercurys-assets.com/

Mercury'sでは、平日の毎朝7:30にお届けするニュースレターを中心に、グローバルマクロ戦略等の資産運用に関するインサイトを発信しています。

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2023/03/17

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  • 投資戦略の更新(2024年11月)

    written by @mercurys_assets ※本ニュースレターは不定期で配信しています。逃さないためには、ニュースレターにご登録ください。 ニュースレターに登録 投資戦略の振り返り 昨年の11月に、FRBの利上げサイクル終了を受けて、以下のように書いた。 景気後退が来る・来ないに関わらず、金利の上昇がピークを超えたのであれば、金利低下から利益を得るポジションを取ればよいということになる。 金利の低下は、株式にも債券にもプラスであるから、これらを組み合わせたポートフォリオが基本となるだろう。 ・景気後退が来ると考える場合:債券の割合を多めにする ・景気後退が来ないと考える場合:株式の割合を多めにする いずれにせよ、キャッシュやMMFで待機するのではなく、株式や債券、ビットコインなど、何かしらのポジションを持っておきたいタイミングではないだろうか。 * FRBは政策金利を維持、利上げサイクルは終了 2023年11月から今年にかけて、株式や債券、ビットコインなどでポジションを組んでいれば、大きくリターンを上げられたはずである。特にビットコインは過去1年で2

  • ドル安が米株高を相殺:S&P500最高値更新でもリターンは伸び悩み

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * 米国株は上昇しているが、日本の個人投資家にとってはドル安(円高)によって相殺されている。 * FRBの利下げ予測と景気後退リスクが米国株への投資魅力を低下させている。 * 為替リスクを考慮した新たな投資戦略が必要とされている。 ニュースレターに登録 為替と米国株のパフォーマンス 米国株式市場は、ダウ平均株価やS&P500指数が最高値に迫るなど、堅調な動きを見せている。しかし、日本の個人投資家にとっては、これらの株高がそのまま利益につながっているわけではない。主な理由として、円高の進行が挙げられる。特に、S&P500が歴史的な高値に達しそうな局面でも、日本の個人投資家がその恩恵を受けにくい現状がある。 かつて、米国株への投資は為替リスクをそれほど心配する必要がなかった。2022年3月以降、米連邦準備制度理事会(FRB)が急速に利上げを進めたことで、ドル高が進行し、米国株への投資の魅力が高まっていたからだ。 しかし、現在の状況は変わりつつある。債券先物市場の予測では、FRBが今後0.25%ずつ

  • 逆イールドが解消:景気後退をシグナルか

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * 逆イールドの解消に注意: 米国10年債と2年債の逆イールドが解消された。景気後退が近いことを市場がシグナルしており、過去をみると、逆イールドの解消後には、ほぼ確実に景気後退入りしてきた。 * 景気後退とポートフォリオ戦略: 景気後退に備えるには、守りのポートフォリオを組み、債券の比率を高めることが一般的である。 ニュースレターに登録 逆イールドが解消 米国10年債と2年債の逆イールドが解消した。 「逆イールドの解消」というのは、少しややこしい概念であるため、順を追って説明したい。 逆イールドとは 通常、債券の金利というのは、短期の金利よりも長期の金利の方が高い傾向がある。2年後に元本を返してもらえるのと、10年後までお金を返してもらえないのでは、後者の方がリスクが高いため、その分だけ金利も高くなければ割に合わないということだ。 また、景気が良くなっていく見通しであれば、今よりも将来の方が金利が上がっている可能性が高い。短期の債券は直近の政策金利、長期の債券は将来の予想政策金

  • 金価格が史上最高値を記録:利下げと中央銀行の動向でさらなる上昇もあるか

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * 金価格が過去最高値を更新した背景には、中国や欧米の中央銀行による積極的な金の買い増しがある。 * 米連邦準備制度(FRB)の利下げ開始が、金の相対的なリターンを押し上げる要因となり、さらなる上昇が期待される。 * 米国株と金の価格動向は、今後のFRBの政策次第で大きく変動する可能性があり、特に利下げペースに注目が必要。 ニュースレターに登録 金(ゴールド)の価格が最高値を更新した背景 金(ゴールド)の価格が過去最高値を更新しました。2023年後半、金の先物価格は1トロイオンスあたり2,541ドルに達し、市場で大きな注目を集めています。この急騰の背景には、世界経済の不透明感と中央銀行の動きが密接に関係しています。 金の価格上昇を牽引している要因の一つは、各国中央銀行による金の積極的な買い増しです。特に中国は、ウクライナ戦争以降、外貨準備としてのドル資産を売却し、金の現物を購入する動きを加速させています。これは、将来の経済制裁リスクに備えた対応です。例えば、中国が台湾に進攻した場合、ドルやユーロ

  • 2023年12月:現状ポートフォリオと投資戦略

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * 現状のポートフォリオと投資戦略をニュースレターに登録している読者限定で公開する。 ニュースレターに登録 現状のポートフォリオ 今回は本ニュースレターに登録している読者限定で、個人的なポートフォリオを公開する回としたい。 ※以下はニュースレター(無料)登録者向けの限定コンテンツです。未登録の方は、登録して続きをお読みください。 ニュースレターに登録

  • ジェイミー・ダイモン氏:メキシコは最も魅力的な投資先である

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * JPモルガンCEOのジェイミー・ダイモン氏は、現在の世界情勢においてラテンアメリカと北米が比較的安定している地域として際立っていると指摘。特に、新型コロナウイルスや戦争による影響を受けた北米企業が生産ラインをメキシコに移す可能性があることを強調した。これにより、メキシコはグローバル企業にとって魅力的な投資先となっている。 * ダイモン氏は、メキシコの経済インフラが既に充実しており、資本市場はさらなる成長の可能性を秘めていると述べた。メキシコのGDPと株式市場の時価総額を例に挙げ、これらがもっと大きい数字であるべきだと指摘。また、高度な技術セクターの存在もメキシコの魅力の一つとして挙げられた。 * ダイモン氏は、メキシコが実施した金融政策、特に金利を早期に引き上げたことを正しい判断と評価した。メキシコでは、政府債務GDP比率も減少に転じており、メキシコ・ペソの価格もそれに伴って反発している。メキシコは投資家にとって、為替リスクの観点からも魅力が増している。 ニュースレターに登録 ジェイミー・ダイモ

  • 日本CPI:10月消費者物価指数は前年比+3.3%に再加速

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * 日本のインフレ率は前年比+3.3%に加速し、日銀の目標の2%をオーバーシュートしているが、昨年の急な加速と比べると横ばい傾向にある。これにより、日銀は金融緩和政策を継続しやすい状況にある。 * 日本のインフレ率の将来には加速と減速の2つのシナリオが考えられ、米国の金利や為替レートの動向に左右される。インフレが減速すれば株価は上昇し、インフレが再加速すれば株価は下降する可能性がある。 ニュースレターに登録 日本のインフレ率は前年比+3.3%に加速 11月24日に発表された日本の消費者物価指数(10月分)は、前年比+3.3%で、前回の+3.0%から0.3ポイントの加速となった。 昨年に急加速したあと、今年に入ってはどちかというと落ち着いていたインフレ率だが、今回は再加速した形で、基本的には今後も前年比+3.0%を上回る水準で推移するのだろう。 また、今年に入ってからも加速を続けていたのが「生鮮食品及びエネルギーを除く総合(以下、コアコア)」である。 以下の表を見ていただくと、一番下のコアコアは

  • 地政学リスクの高い時代に、レイ・ダリオ氏の考える理想の投資先とは

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * 分散投資の重要性:ダリオ氏は、リスクの80%を削減しつつ期待リターンを維持するためには、相関性の低い異なる資産に分散投資することが重要であると強調した。彼の「オールウェザー戦略」は、株式、債券、コモディティなどの様々なアセットクラスにまたがる徹底的な分散を特徴としている。 * 財政が健全な国への投資:ダリオ氏は、現在の経済状況下で良いパフォーマンスを発揮する可能性が高いのは、良好な財政状態にある国々であると指摘している。 * 社会的対立の少ない国々への投資:ダリオ氏は、国内の左右対立が顕著な国々では、資産の没収などのリスクが高まる可能性があるため、そのような国々に投資することは避けるべきだと述べている。また、戦争に巻き込まれる可能性が低い中立国への投資を推奨している。歴史的に見て、中立国は戦争に勝った国よりも良いリターンを生み出すことが多いと彼は指摘している。 ニュースレターに登録 前提として重要なのは分散投資 今回は、レイ・ダリオ氏のMoney Maze Podcastによるインタビューから

  • レイ・ダリオ氏:米国の金利は4.5%〜5.0%以上が妥当

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * 米国の利上げサイクルが終了し、直近は金利が低下している。米国10年国債の金利は5%から4.3%に下がった。しかし、レイ・ダリオ氏は中長期的な米国債の金利上昇の可能性を指摘している。 * レイ・ダリオ氏は、今後の期待インフレ率を3.0%〜3.5%と予想している。また、投資家はインフレ率に加えて実質金利も求めるが、ダリオ氏はこの実質金利を1.5%〜2.0%と見積もっている。これにより、米国債金利の適正水準は4.5%〜5.0%程度になるとしている。 * さらに、財政問題に伴う需給の悪化や政治的不安定性が、金利に上昇圧力をかける可能性があると指摘している。 ニュースレターに登録 金利の先行きは低下か上昇か 今回は、世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエイツの創業者レイ・ダリオ氏のCNBCインタビューをお届けする。 まずインタビューは、直近の金利低下の話から始まっている。 直近、米国の利上げが終わったという見方が広がり、金利は低下傾向にある。本ニュースレターでも、目先は金利が低下

  • ガンドラック氏:2023年の相場と2つのサプライズを振り返る

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * 2023年は米国経済が予想に反して強く、株価が上昇し続けた。これは消費者がクレジットカードを利用して消費を続けたことが背景にあるとガンドラック氏は考察している。 * ウクライナ戦争と中東の混乱にも関わらず、原油価格は100ドルを超えた後に70ドル台まで下落した。ガンドラック氏は、米国の景気後退を予想してコモディティ市場全体が下落しているとの見方を述べた。 * ガンドラック氏は、経済が弱まり、来年には景気後退が到来すると予測している。この景気後退は、一時的に金利の低下を招くだろうが、長期的には財政問題により長期金利が上昇する可能性が高いと見ている。 ニュースレターに登録 クレカ消費による好景気が続いた2023年 今回は、ガンドラック氏のChannel11によるインタビュー内容をお届けする。今回は、ガンドラック氏にとって今年サプライズだった2つの点についてだ。 ガンドラック氏にとって1つめのサプライズは、米国が景気後退入りせずに株価が上昇を続けた点だ。 順を追って振り返ろう。もう1年前なので記

  • 米国CPI:予想を下回る前年比+3.2%を株式市場は好感

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * アメリカの消費者物価指数(CPI)の動向:最新のCPIは前年比で+3.2%と報告されており、予想された+3.3%よりもわずかに低く、前回の+3.7%から減少した。このデータは、インフレが低下傾向にあることを示している。 * 株式市場の反応: インフレの収束を受けて、株式市場は上昇傾向にある。S&P 500は過去1ヶ月で+3.09%上昇し、10月の底からは約10%の上昇を見せています。投資妙味のあるセクターはグロース株や暗号資産、新興国株など。 * 中長期的な金利の見通し: 複数の著名投資家の見解によると、短期的には金利が低下する可能性もあるが、中長期的には財政問題などにより長期金利の上昇が見込まれる。これは株式市場に逆風をもたらす可能性があるが、目先は株式+債券のポートフォリオを維持する予定。 ニュースレターに登録 アメリカのインフレ第一波は収束へ 本ニュースレターは週3回な上に、書き溜めもしているので、少し遅くなってしまったが、改めて先週火曜日に発表された米国の消費者物価指数(CPI)を振り

  • ガンドラック氏:米国は2024年2Qまでに景気後退入りする

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * ガンドラック氏は、現在の金利水準は経済にとって耐え難いと警告している。ガンドラック氏は2024年第2四半期までに景気後退が始まり、金利が低下すると予測しており、次の利上げはないと考えている。 * 一方、米国10年国債などの長期債は必ずしも金利が低下するとは限らず、むしろ上昇する可能性もある。長期金利が上昇するのは、米国が財政問題を抱えているためで、2028年には税収の半分が米国債の金利支払いに当てられるとの試算もある。 * 米国の財政問題については複数の著名な投資家や金融関係者が懸念を表明している。 ニュースレターに登録 今の金利水準に経済は耐えられない 今回は、Yahoo! Financeによるガンドラック氏のインタビュー内容を紹介する。 まず、FRBの金融政策について問われたガンドラック氏は、FRBが昨年3月に一気に金利を2%引き上げていれば、現在のような高い政策金利にせずともインフレを抑えられたと回答した。 もしFRBが私のアドバイスに従って、昨年の3月に0.25%や0.50%ではな

  • ハワード・マークス氏:デフォルト率が上昇して債権の魅力が高まる

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * ハワード・マークス氏は、2023年から「Sea Change」と呼ぶ新たなパラダイムシフトの到来を語っており、過去40年間にわたる低金利時代が終了したと主張している。 * 長期的な金利低下によって、債券やクレジットよりも株式に投資をするのが資産運用の主流であり正解となっていた。しかし、マークス氏は金利のある時代時代には、資産運用のアプローチを変える必要があると提言している。 * マークス氏は、金利のある時代に適した資産運用として、債券などのクレジット商品を推奨しており、金利上昇によって株式に匹敵するリターンを得られるようになったとしている。また、クレジット商品は、企業の倒産時に株主に優先して資金回収できるメリットもある。 ニュースレターに登録 低金利の時代は終わった 今回は、Bloombergによるハワード・マークス氏のインタビュー内容を紹介する。 ハワード・マークス氏は、2023年の年初から「Sea Change」と自身が名付けるパラダイムシフトについて語ることが多い。それは1980年から

  • ジェイミー・ダイモン氏:長期金利は7%まで想定している

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * JPモルガンのCEOであり、金融業界の"太陽王"として知られるジェイミー・ダイモン氏は、インフレの収束には時間が掛かるため、金利にはまだ上昇余地があると考えている。 * 政策金利については、最大で0.75%の追加利上げ、長期金利については7%までの上昇を想定しており、これに対するリスク管理が必要だと述べている。 * 一方で、経済や消費者の状況については、コロナ期の余剰貯蓄は使い果たしそうなものの、失業率も低く、賃金や保有する住宅の価格も上昇しており、非常に強いとしている。 ニュースレターに登録 年初に金利5%を予想していたジェイミー・ダイモン氏 今回は、JPモルガンCEOの"太陽王"ことジェイミー・ダイモン氏のインタビュー内容を紹介する。本インタビューはJPモルガンのイベントにおいて、米Yahoo!ファイナンスが行ったものだ。 ダイモン氏といえば、今年1月に開催されたダボス会議でのインタビューにおいて金利5%がありうると発言したことが記憶に新しい。 私は金利が5%以上になると考えている。こ

  • ドラッケンミラー氏:景気後退を懸念して米国2年国債を大量に保有

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * ドラッケンミラー氏は景気の先行きに弱気。原油、金利、ドルの上昇が経済に悪影響を及ぼすと考えており、米国2年国債を大量に保有している。 * 一方、米国30年国債については金利の低下余地があまりないと考えてショートしており、債券全体ではロングショート戦略をとっている。これは逆イールドの解消からリターンを得るポジションである。 ニュースレターに登録 ドラッケンミラー氏は、景気の先行きに弱気 引き続き、Robin Hood NYC 2023からドラッケンミラー氏のインタビュー内容を紹介します。前回は、ドラッケンミラー氏の米国株についての長期展望を紹介しました。 * ドラッケンミラー氏:米国株は今後10年上昇しない 今回は米国債の展望について、ドラッケンミラー氏の見解を紹介する。 まず、ドラッケンミラー氏は今後の米国経済について、悲観的な見方をしている。 原油も金利もドルも全て上昇している。それが経済にとって良かった試しがない。そうした環境下において、通常なら私は債券をロングする。それが過去35

  • ドラッケンミラー氏:米国株は今後10年上昇しない

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * ドラッケンミラー氏の見立てでは、長期間続いた量的金融緩和(QE)の時代が終わり、金利がある時代へと移行している。 * ドラッケンミラー氏によると、長期金利は4.5%〜5.0%が妥当であり、米国株市場はそれに伴うマルチプルの調整を迫られる。今後10年間の米国株は、AI関連株など一部を除いて、横ばいとなる可能性が高い。 ニュースレターに登録 多くの投資家は環境の変化に適応できない ドラッケンミラー氏は、Robin Hood NYC 2023に登壇して、同じく優れた投資家であるポール・チューダー・ジョーンズ氏のインタビューを受けた。 その中で、ドラッケンミラー氏は投資環境が全く新しい時代に入ったことを強調した。具体的には、リーマンショックからコロナ相場まで続いた金融緩和の時代が終わり、金利がある環境に戻ったのだという。 しかし、こうした環境の変化はすぐに相場に織り込まれるわけではない。投資家の多くが根本的な環境の変化を受け入れて適応するのには時間がかかるからだ。 私は1981年にデュケイン・キャ

  • 次の上昇相場で投資妙味のある3つのセクター

    今回のポイント * 次の株式市場の上昇相場でリターンを生む条件について、2つの要点が考えられる。まず、銘柄が大幅に割安であり、上昇余地が大きいこと。さらに、相場のテーマに関連した銘柄であること。 * 金利上昇局面で売り込まれたハイグロース株が、金利低下のテーマに関連し、リターンを生む可能性がある。ハイグロース株は金利上昇に弱いが、金利低下が進むとその逆の展開が期待される。 * ビットコインも金利上昇により売り込まれた資産の一つである。今後についてはポジティブな要因も存在する。 * 新興国への投資も検討しうる。米国の金利上昇が収束すると、ドル高が緩和され、新興国への投資が魅力的になる可能性が高まる。特に、フロンティア国への投資はリショアリングの恩恵を受けやすいと考えられる。 ニュースレターに登録 次の上昇相場で大きくリターンを生む条件 以前のニュースレターでは、利上げサイクル・金利上昇の局面が終わった可能性が高いことに触れた。 * FRBは政策金利を維持、利上げサイクルは終了 金利がピークを超えて、低下に転じるのであれば、(景気後退がなければ)株式にとってはプラス

  • 米10月雇用統計:失業率3.9%は景気後退を示唆か

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * 2023年10月の米国雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を下回り、失業率が予想を上回る結果となった。インフレの収まりつつある中で、失業率が上昇していることから、FRBは今後雇用に重点を置く可能性が高まっている。 * 債券王のガンドラック氏によれば、失業率が12ヶ月移動平均を上回ると景気後退が確実とされている。現在の失業率3.9%は12ヶ月平均の3.6%を上回っている。しかし、債券市場では長期金利が下がっている一方、米国債とハイイールド債のスプレッドはまだ低下しており、景気後退への見方はまちまちである。 ニュースレターに登録 予想よりも悪かった米10月雇用統計 11月3日に、2023年10月の米国雇用統計が発表された。 まずは、ざっくりと内容を確認しよう。 * 非農業部門雇用者数:前月比+150.0千人(予想は+190.0千人) * 失業率:3.9%(予想は3.8%) * 平均賃金:前年比+4.1%(予想は+4.1%) 雇用者数の伸びは予想を下回り、失業率は予想を上回った。つまり、

  • FRBは政策金利を維持、利上げサイクルは終了

    written by @mercurys_assets 今回のポイント * 今週のFOMC会議において、FRBは政策金利を5.25%-5.50%に維持する決定を下した。これは7月の利上げ以降、政策金利が横ばいとなり、利上げサイクルが終了したことを示している。 * インフレ率の低下と賃金インフレの収まりが、FRBにとって安心材料となっている。失業率が上昇に転じている中で、政策金利のさらなる引き上げよりも雇用や景気の状況を注視すべき時期に入ったことが背景にある。 * 利上げの終了に伴い、債券市場の金利も低下しており、金利上昇に関する懸念は一時的に収束している。今後の焦点は景気後退の有無であり、ガンドラック氏は逆イールドが解消に向かっていることを根拠に景気後退が近いと警鐘を鳴らしている。 ニュースレターに登録 FRBは政策金利を5.25%-5.50%に維持 今週の火曜日・水曜日にFOMCが開催され、FRBは政策金利を5.25%-5.50%に維持することを決定した。 7月の利上げを最後に、米政策金利は横ばいが続いており、2022年から急ピッチに進められてきた利上げは基本的に

  • 米7月のISM製造業景況指数は景気後退的だが、やや緩やかに

    米国7月のISM製造業景況指数は46.4%でした。 前回が46.0%でしたから、製造業の景況感は引き続き後退しているものの、その速度は緩やかになっていることが分かります。 * 6月の米ISM製造業景況指数はさらに悪化 景気後退が遠のく、あるいはソフトランディング的な環境になる確率は上がっていると思います。 ニュースレターをメールで受け取る ISM製造業景況指数は46.4% ISM製造業景況指数は46.4%でした。 ISM製造業景況指数は、50%を下回ると景気後退的であることを示しますが、すでに9ヶ月連続で50%を下回っています。 内訳を見てみると、多くの項目において、数値が少し改善していることが分かります。製造業の景気後退スピードは緩やかになっている、つまり底打ちに向かっていると言えるでしょう。 ダウ平均株価は上昇している テック株の比重が大きいS&P500は年初から上昇を続けたのに対して、工業株の比重が大きいダウ平均株価は年初から7月頃まで横ばいが続いていました。しかし、8月に入ってダウ平均株価は上昇を続けています。 ISM製造業景況指数の数値やダウ平均株

  • フィッチによる米国債の格下げと金利上昇は買いのチャンスになる

    ここ数日、米国株市場がぎくしゃくしています。(2023年8月3日執筆時点) その背景に、格付け機関であるフィッチが、米国債の格付けをAAAからAA+に1段階引き下げたことがあげられます。米国債の格下げによって、米国債価格が下がり(米国債金利が上がり)、それを嫌悪してマーケットは荒れ模様を呈しています。 ニュースレターをメールで受け取る フィッチが米国株を格下げ フィッチは、S&Pやムーディーズと並ぶ、大手格付け機関です。 もともと、今年の5月の時点でアメリカの連邦政府の債務上限問題を受けて、米国債の格付けを引き下げる方向で見直すというアナウンスは出されていました。 しかし、米銀行の経営破綻ショック、連邦政府の債務上限問題、インフレが終わるのか、FEDによる利上げはいつまで続くのか、という様々な不安があった中では、マーケット等への影響を考えて、実際の格下げには踏み切れていませんでした。今回、これらの問題がおおむね片付いたように見えるタイミングで格下げを実施したということです。 マーケットの反応としては、米国債の格下げを受けて米国債が売られ、金利は上昇しています。例えば、長

  • ガンドラック氏:FEDの利上げは失策、金利はピークを超えた

    FOMC後のガンドラック氏のCNBCインタビューから、複数回に分けて、債券王ガンドラック氏の見通しをお送りします。今回は金融政策や金利に関する部分をまとめています。 ニュースレターをメールで受け取る FEDは利上げをすべきではなかった ガンドラック氏は、以前から、FEDはこれ以上の利上げをすべきではないと訴えていました。 * ガンドラック氏:FEDが利上げを続ければ、経済は壊れる 今回、FOMCでの利上げを受けて、もはやインフレ率は十分に下がっており、今回の利上げは必要なかったと見解を述べました。 インフレ率は低下しており、CPIは9.1%から2.98%まで下がってきた。それから今後、数ヶ月でいくつかの大きな項目でインフレの減速があり、コアPCEも3%まで下がるだろう。PCEは近いうちに2%台に入るだろう。だから、私たちはインフレ率はFEDが喜ぶ水準まで下がっているはずだ。 また、遅効指数である住宅価格の家賃換算という計算手法を取り除くと、すでにインフレ率は0%になっているとガンドラック氏は述べています。 家主の家賃換算を実際の住宅価格の推移で置き換えたなら、CPI

  • 米国FOMC:FF金利は5.5%へ、市場参加者は利上げ終了を予想

    ※本ニュースレターは毎週平日の7:30に配信してきましたが、最近忙しく、2日ほどお休みをいただいてしまいました。しばらく忙しい状態が続きそうなので、今後は月曜日・水曜日・金曜日の配信とさせていただきたいと思います。 7月27日に行われたFOMCでは、0.25%の利上げが行われて、FF金利は5.25%〜5.50%となりました。市場参加者はこれで利上げは終わりだと予想しています。 ニュースレターをメールで受け取る 0.25%の利上げで、FF金利は5.25%〜5.50%に 2023年7月27日に行われたFOMCでは、0.25%の利上げが行われた結果、アメリカの政策金利であるFF金利は5.25%〜5.50%となりました。 上の政策金利の推移をみていただくと、政策金利の上がり方はかなり緩やかになってきていることが分かります。 その背景には、当然ながらアメリカのインフレ収束があります。 * 米国6月消費者物価指数は予想以上のインフレ減速でドル安へ 上のグラフを見ていただくと分かるとおり、アメリカのインフレ率は前年比+3.0%まで下がってきました。PCEデフレーターも前年比+3.

  • 米国金利の天井は近づいている:FEDはあと2回、市場はあと1回の利上げを予想

    5月頃からは、インフレの再燃と金利上昇を懸念して、ポートフォリオを小さめにし、慎重な投資姿勢を貫いてきました。そのため、ハイテク株を中心とした大相場に乗り損ねた側面もあります。 しかし、米国金利が天井をつければ、債券を中心に投資をしやすい環境が整ってきます。FEDはあと2回、市場参加者はあと1回を予想していますが、いずれにせよ米国金利の天井は近いことが分かります。 今回は、このあたりを確認したいと思います。 毎朝メールで受け取る 米国金利が天井をつけると投資しやすくなる 現在、大きくポジションを取れない最大の理由は、米国金利がいつ天井をつけるかが分からないからです。 米国金利が天井をつけたことが分かれば、株式と債券を組み合わせることで景気後退リスクをヘッジしつつリターンを追求できますし、ドル安を見込んだゴールドや新興国への投資もできます。 つまり、米国金利さえ天井をつけてしまえば、景気後退リスクが残っていたとしても、投資は非常にやりやすくなるわけです。 では、米国金利がいつ天井をつけるかというと、その見通しはFEDと市場で割れており、FEDはあと2回の利上げを予想して

  • 日本の金融政策正常化(金利上昇)をトレードする方法

    前回書いたように、いよいよ日本のインフレ率はアメリカを上回る水準になりました。 * 日本6月CPI:日米のインフレ率がいよいよ逆転、日本株は業績相場へ そこで今回は、将来的に金融政策の正常化を受けて、日本の金利が上昇した場合に、それをトレードする方法を検討したいと思います。 日本債券のショート まずは、金利が上昇するのであれば、シンプルに債券をショートするという手が考えられます。 個人的にもトレードしているのが、日本債券ベアファンド(5倍型)です。 この投資信託は、あまり優れた投資商品だとは言えません。5倍のレバレッジをかけるので減価も激しく、上の基準価格のグラフを見ていただくと、2014年から半値になっていることが分かります。 とはいえ、個人投資家が債券を効率よくショートする方法はほとんど用意されていないのが現状で、もしも債券をショートしたいのであれば、多少の問題には目をつむるしかなさそうです。 上のグラフの「純資産総額」を見ていただくと、同じように考えている投資家が多いのか、2022年以降、残高が急増しているのが分かります。 銀行株のロング 金利上昇は、銀

  • 日本6月CPI:日米のインフレ率がいよいよ逆転、日本株は業績相場へ

    日本の6月消費者物価指数(CPI)は前年比+3.3%で、アメリカの+3.0%を上回りました。 政策金利が5%程度あるアメリカを上回るインフレ率の日本がマイナス金利だというのは不整合な状態で、今後は日本の金融政策正常化が意識されるでしょう。 それは低金利・円安に支えられてきた日本株のボーナスタイムが終わり、業績相場へと移行していくことを示唆しています。 毎朝メールで受け取る 日本の消費者物価指数(CPI)は前年比+3.3% 2023年6月の日本の消費者物価指数は前年比+3.3%でした。 一時は前年比+4%を超えていたCPIですが、直近は前年比+3%超で横ばいに推移しています。 今年に入って、消費者物価指数が落ち着いている理由は、エネルギー価格の下落であることは、本ニュースレターで繰り返し書いてきた通りです。 * 日本の消費者物価指数(2023年5月分)は+3.2%で正念場 いま原油価格をふり返ると、原油価格は昨年の6月に115ドルあたりでピークをつけており、秋には80ドル台まで下がっています。 そうすると、昨年の秋にはすでに原油価格が十分に下がっているわけですから

  • 米6月小売売上高は、前年比+0.5%で実質マイナス

    6月の米国小売売上高は前年比+0.5%、前月比+0.2%でした。 直近数ヶ月の米国小売売上高は、名目ベースではぎりぎりプラスを維持しているものの、実質ベースではすでにマイナス成長となっています。 今後のインフレ率次第では、名目ベースでのマイナス成長入りも考えられますが、その場合は景気後退が強く意識されるでしょう。 毎朝メールで受け取る 米6月小売売上高は前年比+0.5%‌ 米国の6月小売売上高は前年比+0.5%でした。前月比は+0.2%でした。 直近の消費者物価指数(CPI)が前年比+3.0%であったことを考慮すると、実質ベースでは小売はマイナスになっています。 * 米国6月消費者物価指数は予想以上のインフレ減速でドル安へ 名目ベースではプラスを維持しているものの、実質ベースではマイナスというのは、ここ数ヶ月の米国小売売上高に共通して見られる傾向です。 * 米国小売売上高:2023年5月はマイナス成長を回避して、粘り強さをみせた * 米国小売売上高は前年比マイナスに迫る水準で景気後退を示唆 最近の小売売上高をどう考えるか 最近の小売売上高を素直に受け取る

  • ナスダックCEO:IPOマーケットに青信号が灯った

    アメリカでは決算シーズンが続いています。今回発表されたナスダックの決算は、EPS・売上ともに予想を上回る好決算でした。また、アデナ・フリードマンCEOは、株式市場の将来について明るい見通しを示しました。 毎朝メールで受け取る ナスダックの決算(2023年Q2) ナスダックの第2四半期決算は、以下の通りでした。 * EPS:$0.71(予想+$0.05、前年同期:$0.69) * 売上:$925M(予想+$8.68M、YoY:+3.58%) 収益の内訳をみると、市場プラットフォームの収益が$397M、資本アクセスプラットフォームの収益が$438M、金融犯罪対策ソフトウェアの収益が$89Mでした。 また、第2四半期にナスダックは、金融ソフトウェア企業のアデンザ(Adenza)を105億ドルで買収しました。Adenzaは、銀行や証券などの金融機関が必要とする「リスク管理」や「規制対応」のためのソフトウェアを提供しています。 ナスダックCEO「IPO市場に青信号が灯った」

  • 6月の米国生産者物価指数(PPI)は前年比+2.4%でインフレ終息の予感

    2023年6月の米国生産者物価指数(PPI)は、エネルギーおよび食料を除くと前年比+2.4%、全てを含めると前年比+0.2%でした。 FOMCが気にしているのは消費者側の物価指数なので、生産者の物価指数はあくまでも参考値に過ぎませんが、それでも2%台まで順調にインフレが減速したのは驚きです。 毎朝メールで受け取る 米国生産者物価指数(PPI)のインフレ率は、新型コロナ前の水準まで減速 2023年6月のエネルギーおよび食料を除いた米国生産者物価指数(PPI)は、前年比+2.4%で、ほぼ新型コロナ前の水準となりました。 前期比の年率換算だと+1.4%であり、これだけを見ると、もはやインフレは終息したかのような数字です。 また、エネルギー価格が前年比で低下しているため、エネルギー価格等も含めた全体のPPIは、前年比+0.2%とデフレ近い水準になりました。 いま見直したい、ガンドラック氏のデフレ指摘 PPIとCPIは基本的には連動しています。そのため、素直に考えると、CPIのさらなる低下も見込まれます。 ついこの間まで、インフレが収まらないかもしれないという警戒感が広がっ

  • J.P.モルガンやウェルズ・ファーゴの好決算をどう考えるか

    いよいよ2023年の第二四半期決算シーズンが始まりました。アメリカの決算シーズンは大手銀行から始まるので、今回はそれらの決算内容をお伝えします。 現在、マクロ経済の先行きを占う上で、銀行セクターは非常に重要になっています。銀行の貸出しや経営状況は経済全体にヒットしますし、金利の上昇が経済にどのような影響を与えるかを考える材料にもなるからです。 毎朝メールで受け取る J.P.モルガンの決算(2023年Q2) J.P.モルガンの第二四半期決算は、以下の通りでした。 * EPS:$4.75(予想+$0.99、前回:$4.10) * 売上:$41.31B(予想+$2.47B、YoY:34.48%) 主に、消費者・コミュニティバンキング部門と商業バンキング部門の特に強く、売上の成長を牽引しました。また、3月からの銀行経営破綻危機で破綻に追い込まれた銀行のひとつ、ファースト・リパブリック銀行も今四半期に買収完了しています。 今年の純利息収入は、約870億ドルを見込んでおり、前回の決算で発表された810億ドルから上方修正されました。また、信用損失引当金は29億ドルで、前回の22.

  • 米国6月消費者物価指数は予想以上のインフレ減速でドル安へ

    2023年6月の米国消費者物価指数(CPI)は、前年比+3.0%でした。前回の+4.0%からは1.0ポイントの減速となりました。また予想の+3.1%を0.1ポイント下回りました。 ここ最近は景気の強さ・インフレの根強さを示していた中で、今回の消費者物価指数は非常に良い結果となりました。 インフレ率は3%まで急減速 インフレは前年比+3.0%まで減速しました。 2021年3月以来の水準であり、目標の2%台も見えてくる水準となっています。 この大部分は、エネルギー価格の前年比によるところが大きいです。エネルギー価格は、昨年の3月に始まったウクライナ戦争の影響もあり、6月まで高い水準で推移していました。 価格の変化が激しいエネルギーや食料品を除くと、インフレ率は5%近い水準で高く推移しています。 来月以降は、原油価格の昨年比較の恩恵がなくなってくるため、インフレ率は下げ渋りを見せやすくなります。今後は前年比+7.8%の住宅価格が下がってくるかどうかがポイントになってくるでしょう。 金利低下とドル安 4%に達していた米国の長期金利は+3.8%まで低下しました。

  • 米国6月消費者物価指数は予想以上のインフレ減速でドル安へ

    2023年6月の米国消費者物価指数(CPI)は、前年比+3.0%でした。前回の+4.0%からは1.0ポイントの減速となりました。また予想の+3.1%を0.1ポイント下回りました。 ここ最近は景気の強さ・インフレの根強さを示していた中で、今回の消費者物価指数は非常に良い結果となりました。 インフレ率は3%まで急減速 インフレは前年比+3.0%まで減速しました。 2021年3月以来の水準であり、目標の2%台も見えてくる水準となっています。 この大部分は、エネルギー価格の前年比によるところが大きいです。エネルギー価格は、昨年の3月に始まったウクライナ戦争の影響もあり、6月まで高い水準で推移していました。 価格の変化が激しいエネルギーや食料品を除くと、インフレ率は5%近い水準で高く推移しています。 来月以降は、原油価格の昨年比較の恩恵がなくなってくるため、インフレ率は下げ渋りを見せやすくなります。今後は前年比+7.8%の住宅価格が下がってくるかどうかがポイントになってくるでしょう。 金利低下とドル安 4%に達していた米国の長期金利は+3.8%まで低下しました。

  • ポートフォリオの確認と投資戦略の更新

    日々のニュースレターでも、結論として投資戦略への示唆を書いていますが、しばらくポートフォリオや投資戦略をまとめたようなレターは書いていなかったので、今回はそうした内容を書きたいと思います。 毎朝メールで受け取る 米国債の保有を減らす

  • サマーズ氏:景気後退を起こすまで金利を上げなければインフレは止まらない

    サマーズ氏は、6月分の米国雇用統計を受けて、インフレとさらなる利上げが継続するだろうと指摘しました。 毎朝メールで受け取る サマーズ氏、雇用統計の強さを指摘 先日の米国雇用統計の数字を受けて、サマーズ氏は以下のように述べました。 数字は非常に強かった。新規雇用の増加率は米国の大人の増加率よりも2倍も多かった。すでに加熱している経済の中においてもだ。インフレ率を目標水準まで引き下げることとは相反する状態だ。また、賃金のデータは、FEDの目標よりも遥かに高いインフレ水準を示した。 雇用統計が非常に強かったことは、本ニュースレターでもすでにお伝えしている通りです。 * 米6月雇用統計は強く、引き続き、高金利が維持される 前回の雇用統計では失業率が上昇するかに思えましたが、今回は3.6%に下がり、横ばいトレンドを示したのも、上に書いた通りです。サマーズ氏は、さらに失業率が下がる可能性まで指摘しています。 失業率は3.6%と低かった。そして、他の労働市場のデータをみると、(中略)3.6%よりもさらに低い失業率を示唆している。 さらなる利上げが必要 サマーズ氏は、予想より

  • 6月ISM非製造業景況指数:力強く反発、サービス業の景気は強い

    2023年6月のISM非製造業(サービス業)景況指数は、前回の50.3ポイントから3.6ポイント上昇して53.9となりました。アメリカのサービス業の景気の良さを示した形となりました。 ISM非製造業(サービス業)景況指数は強かった ISM非製造業(サービス業)景況指数の数値は、53.9で、前回の50.3から3.6ポイント上昇しました。前回は50ぎりぎりの数字で、景気の減速が見られると書きましたが、今回は力強い反発となりました。 * 米国ISMサービス業景況指数:サービス業は景気拡大するも減速がみられる ISMの数字は50以上であれば景気が拡大している様子を表すので、アメリカのサービス業は景気が強いことが示された形になります。 内訳を見ても、かなり良い内容でした。 具体的には、新規注文(New Orders)は+2.6ポイント、雇用(Employment)は+3.9ポイントなど、経済活動が順調に伸びたのに対して、価格(Prices)は-2.1ポイントとインフレが減速しています。 このように経済活動が活発なままで、インフレが抑えられていくのであれば、ソフトランディングの可

  • 米6月雇用統計は強く、引き続き、高金利が維持される

    7月7日の米国雇用統計では、失業率が3.6%、賃金上昇率が+4.4%でした。 失業率は3.6%で横ばい まずは、雇用統計の数字をみていきましょう。 失業率は3.6%で、前回の3.7%から0.1ポイント下落しました。 前回の雇用統計では、失業率が3.7%に上昇しました。4%に向けて上がっていくようであれば景気後退が意識されると書きましたが、今回は3.6%なので、まだ横ばいのトレンドが続きそうです。 * 米国雇用統計:5月は失業率がやや上昇 失業率が今後3.7%を超えて、4%に向かって上昇を続けることがあれば、市場では景気後退が強く意識される展開になると思います。その場合、金利は下がり、景気に敏感な業種の株式も下がるでしょう。 賃金インフレは+4.4%で高水準 続いて、時給の伸び率をみると、前年比で+4.4%でした。

  • 逆イールドが解消して、不景気入りするのは2024年末の可能性もある

    短期金利が長期金利を上回る逆イールドは、不景気の前兆として知られています。実際に、過去の例をみると、逆イールドが生じると、それが解消した直後に不景気に陥っています。 そこで、今回は逆イールドが解消するタイミングを考えてみます。 毎朝メールで受け取る 不景気の前兆として知られる、逆イールド 不景気の前兆として、多くの投資家が参考にしているのが短期金利と長期金利の「逆イールド」です。 通常、米国10年国債の金利(長期金利)は、米国2年国債の金利(短期金利)よりも高いことが一般的です。なぜなら、2年後に元本が償還される債券と、10年後まで待たないと元本が償還されない債券では、後者の方がリスクが高いから、その分、高い利回りを求められるからです。 しかし、「近いうちに景気後退入りする」と債券市場が予想すると、この関係性が崩れて、短期金利の方が高くなります。今が景気のピークで、今後景気が悪化するのであれば、景気の悪化にあわせて金利が下がることが予想されるからです。これを「逆イールド」といいます。 実際に、過去の10年金利 - 2年金利の推移をみると、景気後退(グレーの背景部分)の前

  • 6月の米ISM製造業景況指数はさらに悪化

    6月の米国ISM製造業景況指数は46.0で、前回から0.9ポイント悪化。8ヶ月連続で50を下回りました。 毎朝メールで受け取る 米ISM製造業景況指数は46.0で悪化 2023年7月3日に発表されたISM製造業景況指数は46.0でした。ISM製造業景況指数は50よりも低いと、景気が悪化していることを示すので、2023年6月も製造業の景気は悪化したことになります。これで8ヶ月連続の景気悪化となります。 予想の47.1を下回り、前回の46.9からも0.9ポイントの悪化となりました。 * 米国ISM製造業景況指数:5月は46.9%で悪化、今の米国経済はインフレ頼み すべての指標が50を下回る 続いて、ISM製造業景況指数の内訳を見ていくと、今回はすべての数字が50を切る、悪い数値でした。 良い点としては、新規注文(New Orders)や注文残(Backlog of Orders)が前月比プラスな点があげられます。もしも、これらの数字が底打ちして伸びていくようであれば、景気後退の心配は少し緩和されるでしょう。 また、価格(Prices)が前月比-2.4ポイントの41.

  • セス・クラーマン氏:インデックス投資の落とし穴

    セス・クラーマン氏は、最も尊敬されているバリュー投資家のひとりです。 あまり表に出ることを好まないため、TV番組の出演などは少ないですが、ウォーレン・バフェット氏にも、インデックスを上回るパフォーマンスをあげられる投資家として名前をあげられるなど、尊敬を集めています。 今回は、そんなクラーマン氏がバリュー投資家のバイブルであるベンジャミン・グレアム著『賢明なる投資家』の最新改訂版の編集に関わった関係で、その宣伝でいくつかのインタビューに出演していたため、その内容をお届けします。 毎朝メールで受け取る インデックス投資は平均リターンに負けない 著名なバリュー投資家であるウォーレン・バフェットは、平均的な投資家が資産運用をするのであればインデックス投資が最適だと発言したことがあります。 では、まずは改めてインデックス投資の魅力をセス・クラーマン氏に説明してもらいましょう。 インデックス投資は、0%近い手数料で、マーケット全体にエクスポージャーを持てるというものだ。マーケットに負けることもないし、勝つこともない。 インデックス投資の運用においては、個別の銘柄を調査するといっ

  • 米国5月のPCEデフレーターは、前年比+3%台に減速

    FEDが重視しているインフレ指標として知られるPCEデフレーターの前年比は+3.8%で、3%台まで減速しました。 依然として、FEDの目標インフレ率である2%を大きく上回る状態で、高金利も維持されると思いますし、住宅価格の推移などを見ていると、インフレ第二波への警戒も必要です。一方で、インフレとの戦いが地道ながらも進捗していることも確かだと思います。 毎朝メールで受け取る PCEデフレーターは前年比+3%台に減速 個人消費ベースのインフレ率であるPCEデフレーターは前年比+3.8%で、3%台に減速しました。 PCEは、FEDが金融政策を決めるにあたって重要視しているインフレ指標です。 一般的にインフレ率というと、CPI(消費者物価指数)の前年比を見ることが多いですが、CPIベースのインフレ率が世の中で売られている商品のインフレ率なのに対して、PCE(個人消費支出)は実際に消費者が買った商品のインフレ率です。 つまり、CPIは値上げされたけれど売れていない商品も含むのに対して、PCEは実際に消費者が買った商品の値上がりのみを考慮しているということです。 いずれもインフレ

  • 住宅大手レナー社CEO:金利上昇や銀行の貸し渋りで供給が減っている

    経済指標からマクロ経済を見ることも重要であり、本ニュースレターでは経済指標を積極的に紹介していますが、個別企業の決算をウォッチする中で、マクロ状況が見えてくることもあります。 今回は、米国住宅建設大手のレナー社が最新決算を発表したので、確認しておきたいと思います。今回の決算内容は2023年3月〜5月のものです。前回分は以下のニュースレターで紹介しています。 * 住宅大手レナー社CEO:住宅市場は底打ちも地銀の貸し渋りに注意が必要 レナー社の決算は予想を上回った レナー社の決算は、売上の前年比こそ住宅価格デフレの影響などを受けて減少しましたが、EPS・売上ともに予想を上回る好決算でした。 EPSは$2.94で、予想を$0.62上回りました。また、売上は$8.05Bで、予想を$796M上回りました。売上の前年比は-3.75%で微減でした。 売上が前年比で減少した主な理由は、納品単価の下落によるものです。昨年の2Qは平均単価が$505,166でしたが、今期は$449,000であり、約11%ほど下落しています。 前回のニュースレターで見た通り、4月分のケースシラー住宅価格指数

  • 粘り強いインフレを見せる米ケースシラー住宅価格指数

    2023年4月分のケースシラー住宅価格指数は、前年比-1.70%とデフレでした。しかし、前月比でみるとインフレが再加速しており、米国のインフレとの戦いは長期化しそうです。 毎朝メールで受け取る 前年比ではマイナスがしばらく続く 2023年6月27日に発表された、4月分のケースシラー住宅価格指数(20都市)は前年比-1.70%でした。これは前回の-1.15%よりも減速しましたが、コンセンサスの-2.55%と比べると高い数値でした。 こちらのグラフを見ても分かる通り、2022年のケースシラー住宅価格指数が高い水準にあったため、前年比マイナス、言い換えるとデフレ的な状況はしばらく続くでしょう。 前月比でみると、再び上昇に転じている 一方で、直近の前月比で見ると、再び上昇に転じている点には注意が必要です。 前月比を年率換算した数値は+11.4%であり、前回の+5.1%から大幅に加速しました。この調子での価格上昇が続けば、今後の住宅価格はまた年率10%といった水準に戻っていくことになります。 高金利が続く インフレ率をなんとか9%から4%台まで下げてきたわけですから、FE

  • ガンドラック氏:企業の借り換え難がいよいよ始まる

    ガンドラック氏が、少なくない量の社債が借り換えの時期を迎えることによるショックをツイッターで指摘しました。 毎朝メールで受け取る 数年前にゼロ金利で調達した資金が返済時期を迎える ガンドラック氏は、6月24日に以下のようにツイートしています。 米国の負債は$32Tを超えて、すでに$33Tに向けて爆増している。そうした負債の利払いは、FEDが5.00%も利上げをしてきたことがアクセルとなり、当然増えている。数年前に0%近い金利で発行された短期の社債の少ない数が返済期限を迎えようとしている。おっと。 本ニュースレターの読者の皆様は、これだけで彼の言いたいことが十分に分かるかもしれません。しかし、それでは付加価値がないので、この内容について詳しく見ていくこととしましょう。 まず、社債が過去の各年にどのくらい発行されたのかを見ると、以下のようになっています。 2020年には新型コロナの影響で資金調達需要が生じて、$2,000Bを超える社債が発行されたことが分かります。ガンドラック氏の指摘する「数年前に0%近い金利で発行された短期の社債」というのは、ここに含まれるものでしょう。

  • ガンドラック氏:債券は割安で値上がりも見込める、株式は割高

    引き続き、ガンドラック氏のインタビューです。 毎朝メールで受け取る 株式のバリュエーションは割高 株式市場について問われたガンドラック氏は、今の株式市場の歪な構造について指摘しています。 株式市場の話をするなら、セクターを分けなければならない。まず、S&P7がある。AIといえば株価が20%上昇するような偏った市場だ。それから、S&P493がある。こちらは直近追い風が吹いているが、数週間前までは年初から横ばいだった。 S&P7の筆頭格はエヌビディアでしょう。AIブームによって、最先端の半導体を製造しているエヌビディアの株価は年初来で3倍ほどになっています。 以前紹介したように、これをピタリとあてて、ロングショート戦略で利益をあげたドラッケンミラー氏もさすがですが、そうした一部の銘柄による相場の牽引を危険視するガンドラック氏の見方も理解できます。 * ドラッケンミラー氏:AI関連のNVDIAやMicrosoft株を購入 ガンドラック氏が、今の株式市場が割高であると指摘する背景には2つの要素があります。 1つは逆イールドなどの景気後退の予兆から、近い将来に企業業績が下が

  • ガンドラック氏:FEDが利上げを続ければ、経済は壊れる

    引き続き、FOMC後に放映された、CNBCのガンドラック氏のインタビュー内容をお送りします。 毎朝メールで受け取る 失業率がFEDの予想通りに上昇すれば景気後退入りする 前回は、ガンドラック氏が利上げはもう終わったと考えていることをお伝えしました。 * ガンドラック氏:これ以上の利上げはない とはいえ、そもそもガンドラック氏はFF金利は5.00%を超えないと年初に予想しており、今は5.25%ですから、すでに過去のガンドラック氏の予想はFEDに裏切られた形となっています。 * ガンドラック氏:FEDが何と言おうとFF金利は5%を超えない この差は、FEDがコアインフレ率と雇用を最重視しており、ガンドラック氏がその他の幅広い経済指標を見ていることから生じています。失業率が下がり切るのを待っていたFEDは利上げを始めるのが遅れて高インフレを招いたし、今は逆にインフレ率が下がり切るのを待っているので、利上げを続けているわけです。 では、ガンドラック氏の予想が再び外れて、FEDが予告している通りに利上げが行われた場合にはどうなるのでしょうか。ガンドラック氏は、以下のように述

  • 日本の消費者物価指数(2023年5月分)は+3.2%で正念場

    日本の消費者物価指数は前年比+3.2%で、前回から0.3ポイントの減速となりました。 日本の消費者物価指数ベースのインフレ率は横ばいの形を見せ始めており、今の前年比+3%程度の水準で横ばいになると、日本株や日本経済にとっては恩恵が大きいと考えられます。 一方で、エネルギーおよび食料品を除いたコアコアのインフレ率は+4.3%に加速しています。また、企業物価指数は+5.1%という高水準であり、5月は輸入物価指数も上昇に転じているため、インフレ加速への警戒は引き続き必要です。 日銀が早めに対処して、インフレの加速を防ぎ、今のマイルドなインフレを継続させることが重要でしょう。 毎朝メールで受け取る 日本の消費者物価指数は前年比+3.2% 2023年5月分の日本の消費者物価指数は前年比+3.2%で、前回から0.3ポイントの減速となりました。 一方、エネルギーおよび生鮮食品を除いたインフレ率は、前年比+4.3%で、前回からは0.2ポイントの加速となりました。 前回はインフレが再加速している旨を指摘して、警戒を促しましたが、基本的にはエネルギー価格のデフレが、根っこのインフレを相殺

  • レイ・ダリオ氏:米国債はインフレ負けするリスクが高い

    過去にも本ニュースレターで何度か紹介していますが、レイ・ダリオ氏は「米国債の需給バランス崩壊を発端とした、中央銀行による国債買いからハイパーインフレ」のシナリオをたびたび提唱しています。 * レイ・ダリオ氏:米国債の買い手がいなくなり、米国政府の財政は破綻する 今回もCNBCで同様のシナリオを語ったダリオ氏ですが、非常に分かりやすい話の流れであったため、こちらの内容をあらためてお届けします。 毎朝メールで受け取る アメリカが抱える債務問題の終着点 米国の過剰債務の行き着く先について、警鐘を鳴らし続けているのが世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエイツの創業者レイ・ダリオ氏です。 国家の経済は、個人や企業の経済と変わらない。あなたは借金をすることなく、収入以上のお金を使うことはできない。そして借金は返さなければならない。違いはお金を印刷できるかどうかだけだ。 世の中には、「国債は国民の借金ではない」、「国家はお金を印刷できるのだから予算の制約はない」といったレトリックを振り回す論者もいます。果たして、その考え方は正しいのか、レイ・ダリオ氏はそうした発

  • ガンドラック氏:これ以上の利上げはない

    今回は、直近ベア派の筆頭格になりつつある債券王ガンドラック氏のFOMCに対するコメントをお伝えします。 なお、ガンドラック氏は、インフレを早い段階から警告しており、その後、今年のインフレ減速をピタリと当ててきました。一方で、FEDのFF金利については、5%を超えることはないと過去に発言しており、それについては外れています。 * ガンドラック氏:FEDが何と言おうとFF金利は5%を超えない 毎朝メールで受け取る FEDは経済の先行きを予想できない 今回のFOMCは鷹派だというのが一般認識ですが、それについて問われたガンドラック氏は、鷹派ではなかったと回答しました。 言葉遣いは鷹派だったが、行動は利上げの停止であり、鷹派ではなかった。FEDは近眼のマグーのようになっているように見える。前回のミーティングは利上げだが鳩派であり、今回は鷹派の利上げ停止だ。7月のミーティングではどうなるか見ものだ。 ガンドラック氏は、FEDの言っていることと実際の行動がちぐはぐであることを指摘しています。FEDは本音では利上げをせずに様子を見たいと思っているであろうことは、先日のニュースレター

  • 米国小売売上高:2023年5月はマイナス成長を回避して、粘り強さをみせた

    最近はお届けすべき著名投資家のコメントや他の重要指標等も多かったため、少し遅くなってしまいましたが、今回は先週発表された米国小売売上高を確認しておきましょう。 米国小売売上高は、アメリカの消費者の動向を知る上で重要な指標であり、前回4月の数値は成長が急減速して、いずれマイナス成長に陥りそうだということをお伝えしました。 * 米国小売売上高は前年比マイナスに迫る水準で景気後退を示唆 しかし、先週発表された2023年5月の数字は強く、プラス成長で踏みとどまりました。 毎朝メールで受け取る プラス成長で踏みとどまった米国小売売上高 2023年5月の小売売上高は、前年比+1.6%でした。 長期でみると下降トレンドが続いていますが、前回からは、ほぼ横ばいの状態となり、プラス成長で踏みとどまっています。 なお、小売売上高は名目ベースの金額ですから、インフレ率が前年比+4.1%ある中での+1.6%というのは、実質ベースではすでにマイナスです。 インフレが下げ渋れば、プラス成長での推移もありうる さて、小売売上高が+1.6%ということは、インフレ率があと1.6ポイント下がれば

  • 国内PPI:2023年5月の企業物価はインフレ減速も高水準、第二波にも警戒必要

    先週発表された2023年5月の国内企業物価指数(PPI)は、前年比+5.1%でした。これは前回の+5.9%から0.7ポイント減速して、企業物価のインフレ減速トレンドが維持されていることを示しました。 一方で、前年比+5.1%という水準は依然として高水準であり、企業がこれらの値上がりを最終商品の値上げに転嫁した場合、消費者物価指数にはまだ上昇の余地があることになります。 また、PPIに先んじて下落していた輸入物価指数が反発して上昇に転じたように見えることも気になります。日本のインフレ加速懸念は引き続き存在していると考えます。 毎朝メールで受け取る 0.7ポイント減速して前年比+5.1% 2023年5月の国内企業物価指数(PPI)は、前年比で+5.1%でした。前回の+5.9%からは0.7ポイントの減速となりました。 前年比+5.1%は十分に高水準で注意が必要 上のグラフを見ていると、インフレは順調に減速しているように見えます。 しかし、前年比+5.1%

  • 6月FOMCは利上げ見送り、米国経済へのダメージを見極めたいFED

    6月FOMCでは利上げが見送られ、5.00%〜5.25%の政策金利が維持されました。 今の金利水準でも、地銀破綻問題や商業不動産ローンの破綻をきっかけに信用収縮の連鎖が始まる可能性があり、FEDは「許されるならば、これ以上の利上げをせずに様子を見たい」と考えていると思います。 毎朝メールで受け取る 6月FOMCは利上げを見送り FEDは、6月の利上げについて、市場の予想通りに見送りました。政策金利は、引き続き5.00%〜5.25%が維持されることとなります。 前日の米国消費者物価指数(CPI)のデータも前年比+4.0%(前回から0.9ポイント減)と順調なインフレ減速を示していたため、FEDからすると、今回は一旦の様子見の機会を得られたといえるでしょう。 高金利が米国経済に与えたダメージを見極めたいFED 今の政策金利は5.00%〜5.25%であり、これはすでに総合インフレ率の+4.0%を上回っています。 原油および食料を除いたコアコアのインフレ率は+6.0%なので、これに対しては、まだ政策金利が負けていますが、先日のニュースレターでも書いたように、

  • 2023年5月の米国CPIは前年比+4.0%まで急減速、秋以降を警戒

    6月13日に発表された2023年5月の米国消費者物価指数は、予想の前年比+4.2%を0.2ポイント下回る+4.0%で、前回の+4.9%からは急減速しました。 毎朝メールで受け取る エネルギー価格の下落を受けて、4.0%まで急落した米国消費者物価指数 6月13日に発表された、2023年5月の米国消費者物価指数は4.0%まで急落しました。 この消費者物価指数(前年比)の+4.0%という数値は前回の+4.9%から0.9ポイントの急落であり、予想の+4.2%を0.2ポイント上回る下落でした。 本ニュースレターでは、4%台で横ばいに入ることを予想していましたが、予想以上の急落となりました。 * 米国CPI:アメリカのインフレ率は4%台で横ばいへ その背景にあるのが、原油価格の急落です。 4月には80ドル台まで戻していた原油価格は、5月に入って70ドル台前半にまで下落して、5月中に75ドルを超えることはありませんでした。 結果、

  • ガンドラック氏:おすすめのポートフォリオを公開、債券が多め

    前回に引き続き、DoubleLine Capitalのオンラインセミナーから、ガンドラック氏の相場見通しをお伝えしていきます。 毎朝メールで受け取る マネーサプライの減少は、いずれインフレを低下させる ガンドラック氏は、以前から米国のインフレは下げ渋ると発言していました。 * ガンドラック氏:FEDの予想する年末インフレ率3%は実現できず、インフレは高止まりする 今回も同様の発言は見られましたが、もしもFEDが今の引き締めを続けるのであれば、遅かれ早かれ、いずれCPIは下がってくるだろうとも述べました。 その根拠となっているのが、マネーサプライの減少です。 以下のグラフでは、マネーサプライの前年比とインフレ率が連動する様子が示されています。 良い点は、マネーサプライの減少はインフレを減速させるということだ。このグラフはその証明だ。これはM2とCPIを並べたもので、M2が大きく下がると、インフレも落ち着くことが見てとれる。これはCPIも下がっていくであろうことを示唆している。 マネーサプライについては、以前のニュースレターで詳しく触れました。 * 米国実質マネー

  • ガンドラック氏:3月の銀行破綻は過去の経済危機に匹敵する規模

    債券王としても知られる、DoubleLine Capitalのガンドラック氏が、年半ばのオンラインセミナーを行いました。今回はそこから今年3月の銀行破綻に触れた箇所をお伝えしたいと思います。 毎朝メールで受け取る 3月の銀行経営破綻問題 2023年3月にはシリコンバレー銀行などを中心にいくつかの銀行が経営破綻しました。 * シリコンバレー銀行が経営破綻、米国債金利は低下へ この話については、本ニュースレターで何度も取り扱ってきたため、再度の詳しい説明は避けますが、(1)米国債などの資産がFEDの急速な利上げで大きく値下がりしたこと、(2)短期金利が上がったことで銀行預金を引き出して、短期のMMFや米国債を購入する動きが広がったこと、の2つが組み合わさった結果、取り付け騒ぎのようになったことが、その経営破綻の原因でした。 ガンドラック氏は、利上げが終わらない限り、人々が銀行から預金を引き出す動きは止まらないので、銀行の経営破綻が続くだろうと指摘していました。 * 利上げを止めないと預金の引き出しは止まらない 多くの人々は、米国6ヶ月国債が当時で5%、今でも4.5%や

  • ドラッケンミラー氏:中国は将来性を感じない、日本株には強気

    引き続き「Bloomberg Invest New York」から、今回はドラッケンミラー氏のインタビューをお送りします。 ドラッケンミラー氏は、中国の将来性についての悲観的な見方と、日本株の強さ、AIブームの大きさなどについて語りました。 毎朝メールで受け取る 中国には将来性を感じない まず、今の中国については魅力を感じないと一刀両断しました。 私は6年〜7年前まで中国が大好きだった。上海のエネルギーは、コカインを吸ったニューヨークのようだった。素晴らしいエネルギーがあり、起業家たちは興奮していた。しかし、習近平が彼の政策をとった。中国の台頭をみると、国内には大きな資本主義があった。ダイナミックな経済の中で、ニューヨーカーのように次々と新しいビジネスを起こす人たちがいた。 中国は鄧小平が資本主義を取り入れて以降、急速に成長しました。 グラフからは、1980年に底打ちしてから、一人あたりGDPが急速に伸びていったことがわかります。これが中国という広大な土地と膨大な人口を抱える大国が資本主義を取り入れた成果でした。 だが、習近平は彼が資本主義者ではないと証明したし

  • ドラッケンミラー氏:中国は将来性を感じない、日本株には強気

    引き続き「Bloomberg Invest New York」から、今回はドラッケンミラー氏のインタビューをお送りします。 ドラッケンミラー氏は、中国の将来性についての悲観的な見方と、日本株の強さ、AIブームの大きさなどについて語りました。 毎朝メールで受け取る 中国には将来性を感じない まず、今の中国については魅力を感じないと一刀両断しました。 私は6年〜7年前まで中国が大好きだった。上海のエネルギーは、コカインを吸ったニューヨークのようだった。素晴らしいエネルギーがあり、起業家たちは興奮していた。しかし、習近平が彼の政策をとった。中国の台頭をみると、国内には大きな資本主義があった。ダイナミックな経済の中で、ニューヨーカーのように次々と新しいビジネスを起こす人たちがいた。 中国は鄧小平が資本主義を取り入れて以降、急速に成長しました。 グラフからは、1980年に底打ちしてから、一人あたりGDPが急速に伸びていったことがわかります。これが中国という広大な土地と膨大な人口を抱える大国が資本主義を取り入れた成果でした。 だが、習近平は彼が資本主義者ではないと証明したし

  • ソロス・ファンド運用担当者:プライベートクレジットは銀行の貸し渋りを埋められない

    前回のレイ・ダリオのインタビューに続き、「Bloomberg Invest New York」のインタビュー内容をお伝えします。今回は、現在ジョージ・ソロスのソロスファンドを運用しているフィッツパトリック氏のインタビューです。 毎朝メールで受け取る いま投資妙味のある資産クラスは住宅ローン証券 フィッツパトリック氏は、最初にいま一番投資妙味のある領域として、住宅ローン証券をあげています。 いま最も興味深いのは、退屈な資産クラスだが、住宅ローン証券だ。現在、主な保有者のうち3分の2である中央銀行と銀行が売りに回っている。金利のボラティリティも大きいため、その領域のバリュエーションは他の資産クラスに比べて、非常に安くなっている。それに、いくつかの地銀が経営破綻して、FDICがそのポートフォリオをオークションにかけているので、それも価格の下落に影響している。住宅ローン証券は唯一、興味深い資産クラスだ。 住宅ローン証券というのは、住宅ローンを証券化したもので、満期まで金利収益を受け取って、満期になると元本が償還されます。 不動産ローンの領域は、商業不動産ローンは今後が危険視されて

  • レイ・ダリオ氏:米国債の買い手がいなくなり、米国政府の財政は破綻する

    世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエイツの創業者レイ・ダリオ氏は、「Bloomberg’s David Westin at Bloomberg Invest New York」に出演して、いずれ米国債の買い手がいなくなり、最終的にはFEDが米国債を買うしかなくなると指摘しました。 毎朝メールで受け取る 長期サイクルの終盤で起きること レイ・ダリオ氏は、長期サイクルの終盤で起きることとして、財政ファイナンス、国内対立、覇権国家の対立をあげました。 歴史上は繰り返してきたが、我々の世代では経験していなかったことが3つ起こっている。膨大な量の財政ファイナンス、貧富の差の拡大に伴うポピュリズムの台頭などの国内対立、日米の権力対立と戦争の可能性だ。 さて、財政ファイナンスが行われるほど、インフレ的な経済になります。 このとき、債権者はインフレ率を上回るリターンを求めるため、インフレを抑えようと思うと、金利がインフレ率を上回る(実質金利がプラスになる)必要があります。 金利は、債権者と債務者の両方を満足させる水準でなければならない。つまり、金利は債権者に実質リ

  • 米国ISMサービス業景況指数:サービス業は景気拡大するも減速がみられる

    ISMサービス業景況指数は50.3%で景気拡大を示しましたが、前回の51.9%と比べると1.6ポイントの減速となりました。また、注文残の減少、顧客在庫の増加など、ISM製造業景況指数と同様の悪化傾向が見られました。 毎朝メールで受け取る ISMサービス業景況指数は50.3% 6月5日に発表された、2023年5月のISMサービス業景況指数は50.3%でした。 5 月のサービス業景況指数は50.3%を記録しました。4月の51.9%と比べると、1.6ポイントの減速となりました。 本指数は、50以上であれば景気が拡大していることを意味します。そのため、50.3%という数値は2023年5月もサービス業全般は景気が良かったことを示しています。これは景気の悪さを示していたISM製造業景況指数とは大きな違いです。 * 米国ISM製造業景況指数:5月は46.9%で悪化、今の米国経済はインフレ頼み 一方、上のグラフを見ていただくと、景気の拡大速度については、2021年の下旬から減速傾向が続いていることも分かります。このペースであれば、早ければ来月には景気減速に転じる可能性もあります。

  • FEDは7月にもう一度利上げする

    CMEの債券先物市場参加者は、FEDが7月にもう一度利上げすることを予想しはじめました。1ヶ月前には、7月頃には利下げに転じて、年末には4.50%〜4.75%というシナリオを予想していたことを考えると、大幅な金利予想の上方修正です。 毎朝メールで受け取る 債券市場の参加者は、7月の追加利上げを予想 直近、インフレ率が4%台で下げ渋るようになったのをみて、債券市場は7月にもう一度利上げがあることを予想しはじめました。 * 米国CPI:アメリカのインフレ率は4%台で横ばいへ * 米国雇用統計:5月は失業率がやや上昇 CMEの債券先物価格をもとに算出されたFEDの利上げ予想は、2023年7月に5.25%〜5.50%を予想しています。 利下げは11月に先延ばし 次に、FF金利が5.00%〜5.25%になる、つまり利下げが行われるタイミングについては、11月が予想されています。 4月下旬に以下のニュースレターで確認した際には、年末時点で4.50%〜4.75%を予想していた債券市場ですが、この1ヶ月で年末時点のFF金利予想を0.5ポイント上方修正したことになります。 *

  • 米国ISM製造業景況指数:5月は46.9%で悪化、今の米国経済はインフレ頼み

    2023年5月の米国ISM製造業景況指数は46.9%で、4月の47.1%からさらに悪化しました。今の米国の状況は、経済活動は実質的に停滞しており、雇用の強さとインフレ頼みの名目成長が続いている状態だといえます。 毎朝メールで受け取る 米国ISM製造業景況指数の概観 米国ISM製造業景況指数は、前月の47.1%から悪化して46.9%となりました。 ISMの景況指数は、製造業、非製造業などに分かれており、いずれも50%を下回ると景気が悪化していることを示します。 米国の製造業景況指数は悪化しました。5月に46.9%を記録して、4月の47.1%から0.2ポイントの悪化となりました。7ヶ月連続で50%を下回っており、2022年6月に始まった下落トレンドが継続しています。そのトレンドが反映されて、ISM製造業景況指数の12ヶ月平均は49.4%へと下落しました。 米国製造業景況指数の詳細 内訳の数字を個別に見ていくと、製造(Production)やEmployment(雇用)で成長が見られたものの、新規注文(New Orders)や注文在庫(Backlog of

  • 米国雇用統計:5月は失業率がやや上昇

    5月の雇用統計は失業率がやや上昇して3.7%となりました。今後、継続して上昇した場合は景気後退が強く意識されるでしょう。一方、賃金インフレは4%台で下げ渋りをみせています。やや、スタグフレーション的な状況が強まっているように見えます。 毎朝メールで受け取る 2023年5月の米国雇用統計では失業率が上昇 非農業部門の雇用者数は339,000人増えました。これは予想の190,000人を上回りました。 一方、失業率は3.7%となりました。これは前回の3.4%から0.3ポイントの増加となり、予想の3.5%も上回りました。 しかし、上のグラフを見ていただくと分かるように、3.7%というのは昨年にも8月と10月にタッチしている水準です。そのため、今回の失業率の上昇を持って、米国が景気後退に向かっていると判断するのは少し尚早でしょう。 一方、失業率が今後3.7%を超えて、4%に向かって上昇を続けることがあれば、市場では景気後退が強く意識される展開になると思います。その場合、金利は下がり、景気に敏感な業種の株式も下がるでしょう。 以前、ガンドラック氏の失業率と景気後退に関する発言をお伝

  • 米国実質マネーストックは、すでに2020年の水準まで減少している

    現在、米国の中央銀行(FED)は、インフレ抑制のために金融引き締めを進めています。その進捗を確認する方法のひとつがマネーストックですが、インフレを考慮した実質ベースでみると2020年4月〜5月の水準まで減少しており、金融引き締めはあと一歩だと考えられます。 毎朝メールで受け取る 米国の金融引き締めは、まだ足りないのか 現在、米国の中央銀行(FED)は、インフレを退治するために金融の引き締めを続けています。FEDが行う金融引き締めは主に2種類あります。1つが利上げ、もう1つが量的引き締めです。 利上げは金利をあげることで、事業者や消費者がお金を借りることを難しくする金融政策です。事業者や消費者がお金を借りると、銀行の信用創造機能によって世の中のお金の量が増えます。逆に、お金を借りにくくすれば、過去の借金が返済されるに従って、世の中のお金の量は減っていきます。2023年5月末現在、政策金利(FF金利)は5.00%-5.25%です。 また、量的引き締めは、FEDが保有する米国債などを市場で売却する金融政策です。米国債を市場で売却すると、買い手は対価としてFEDにお金を支払うので、

  • ドラッケンミラー氏:「年金は大丈夫」という政治家は詐欺師

    さて、引き続き、ドラッケンミラー氏のインタビューをお送りしています。ドラッケンミラー氏は、以前よりドルに対してネガティブな見方をしていますが、その背景に深く入っていたので、今回はその部分をお伝えします。 毎朝メールで受け取る 債務上限問題よりも本質的な年金問題 まず、現在米国は債務上限問題で騒いでいますが、ドラッケンミラー氏はより本質的な問題を指摘します。 近い将来の2040年には、年金と金利の支払いが税収を超える。2052年には、税収の117%となる。 先進国は基本的に慢性的な赤字に陥っていますが、年金と負債の利払いだけでも赤字になってしまうというのは、根本的に構造問題を抱えていることになります。そうした構造問題と素直に向き合わない政治家をドラッケンミラー氏は詐欺師だと切り捨てています。 年金の支払いカット以外の資金源はなくなる。お金はそこにある。私たちは、確実にこの国の年金をカットすることになる。「年金をカットしなくても大丈夫」という言論は嘘か妄想だ。 そして、支出を削って、負債を減らさなければ、その間、利払いを続けることになります。今のアメリカは長期金利が4%もあ

  • ドラッケンミラー氏:景気後退で銅や住宅市場、AIに投資機会が訪れる

    先週に引き続き、SOHN2023で行われたドラッケンミラー氏のインタビューの内容をお伝えします。今回は、ハードランディング後に何に投資をすべきかというテーマです。 毎朝メールで受け取る 銅(コモディティ) まず、最初にドラッケンミラー氏があげたのが銅です。銅の需要はもっとも逼迫しているといいます。 景気後退から回復するときには、コモディティの黄金期が訪れるだろう。銅は最も需給がタイトであり、私も勉強をしている。私は阿呆ではないし、景気サイクルで何が起こるかを知っているから、ハードランディングに向かっている現時点でポジションを持とうとは思わない。しかし、そこから回復するときには、電気自動車への動きや政府が後押しするであろうインフラストラクチャ法案の支出を考えると、銅価格が大きなリターンを得られないと考えるのは難しい。 S&P Globalの予想をみると、今後急速に銅の需要(青線)が伸びていくことが分かります。これに対して、棒グラフが供給の予測であり、左側が野心的な目標を達成した場合、右側が苦戦した場合を表しています。 なお、銅価格は過去に以下のように推移しています。 なお

  • カンファレンスボード:2023年2Qから米国実質GDPはマイナス入りする

    5月10日に全米産業審議会(カンファレンスボード)の最新GDP予想が公開されています。今回はそちらの内容をお伝えします。 毎朝メールで受け取る 第2四半期から実質GDPはマイナス入りする 最新のカンファレンスボードの予想では、第2四半期から年率換算した実質GDPは-0.6%とマイナス入りします。 第3四半期には-1.6%、第4四半期には-1.2%となるということで、第2四半期から米国経済の不調が始まり、それが続くことになります。これは先日、ドラッケンミラー氏が「すでに景気後退が始まっていてもおかしくない」という趣旨の発言をしたこととあわせて注目です。 * ドラッケンミラー氏:すでに景気後退が始まっている可能性もある 景気後退のタイミングは今年の第4四半期から2024年の第1四半期だとされているが、最近の逸話や銀行の問題を考えると、1年後に今年を振り返って、第2四半期から景気の悪化が始まっていたとしても驚かない。確信はないが、投資を生業にしているので、経済予測をせざるを得ない。 また、もうひとつ注目すべき点は在庫(Inventory change)でしょう。第2四半期か

  • 東京都物価指数(5月):日本のインフレ加速は継続中、長期金利は上昇へ

    2023年5月26日に発表された東京都物価指数によると、日本のインフレが加速を続けていることが確認されました。東京都物価指数の「総合」は前年比+3.5%と前回の+3.1%から減速しましたが、これはエネルギー価格の下落が要因であり、「エネルギー価格および生鮮食品を除く総合」では+3.9%と前回の+3.8%から加速しています。 毎朝メールで受け取る 2023年5月の東京都物価指数 東京都物価指数は、月前半の数値を用いて発表されるため、全国の消費者物価指数が発表される前に、インフレの傾向を先取りすることができます。 一番右の2023年5月の数字は以下のようになっています。 * 総合:+3.2%(前回比0.3ポイントの減速) * 生鮮食品を除く総合:+3.2%(前回比0.3ポイントの減速) * 生鮮食品及びエネルギーを除く総合:+3.9%(前回比0.1ポイントの加速) エネルギー価格が下がったため、インフレ率は「総合」と「生鮮食品を除く総合」について順調に低下しました。しかし、価格変動の激しい生鮮食品とエネルギーを除いたベースのインフレは加速していることがわかります。

  • ドラッケンミラー氏:リーマンショック以上の危機が起きても不思議ではない

    引き続き、ドラッケンミラー氏のSohn2023のインタビュー内容をお伝えします。今回はハードランディングのイメージについて話している部分をまとめています。 毎朝メールで受け取る ハードランディングの具体的なイメージ まず、ハードランディングとはどのような状況かと聞かれて、以下のように回答しています。 企業の利益が下がり、失業率は現在の3.4%から5%以上に上昇するだろう。経営破綻は、1880年以降で最も秩序のない経済状況のおかげで今はほとんど破綻がない。2008年と比べても全然低い。インフレかデフレかという点については非常に難しい。2年前はインフレ率が上昇することに確信があった。この前スタッフミーティングを行ったが、インフレ率8%という状況も想定できるし、デフレという状況も想定できると話した。それは回答としてはあまりに幅があるが。 企業利益の減少や失業率の上昇という一般的なハードランディングの定義までは良いとして、名目ベースでインフレとなるかデフレとなるかについては、予想が難しいとしています。 インフレ要因は、過去数年で行われた過剰な金融緩和 まず、インフレ的になりう

  • ドラッケンミラー氏:すでに景気後退が始まっている可能性もある

    ソロスのポンド売りの裏の立役者であったりと、伝説のマクロトレーダーであるドラッケンミラー氏のSohn2023のインタビューから、何回かに分けて内容をお届けしていきたいと思います。 毎朝メールで受け取る FEDの歴史上最悪の失策が資産バブルを引き起こした まず、ドラッケンミラー氏ほどの伝説のトレーダーでも、現在の状況は、過去で最も難しい局面だとしています。 45年間、経済予測をしなければいけない仕事をしてきたが、今はどう考えても一番難しい時期だ。巨大な金融緩和と急激な変化があった。新型コロナが色々と状況を変えた。新型コロナから脱出したモメンタムは本物か偽物か、持続的かそうでないか。それからウクライナの戦争があり、中国の経済再開がある。だから、今はそれほど経済予測に自信がない。 これは、過去にも別のインタビューで述べていた通りです。 * ドラッケンミラー氏:今はリスクを取るタイミングではない さて、目先の見通しが得にくいときほど、大局観を持つことが重要です。ドラッケンミラー氏は、過去500年の経済を研究したエドワード・チャンスラーの本に触れて、低金利が長く続いたあとには、

  • チューダー・ジョーンズ氏:債務上限問題後の株価ラリーを経て、3Qに景気後退へ

    1987年の株価大暴落「ブラックマンデー」を予測したり、2020年前半からのビットコイン投資を成功させたりと、著名なグローバルマクロ投資家として知られるポール・チューダー・ジョーンズ氏がCNBCに出演していたため、今回はその発言内容をお伝えします。 毎朝メールで受け取る 短期的には米国株は上昇余地がある まず、ポール・チューダー・ジョーンズ氏は、短期的には米国株には上昇余地があるとしています。 我々は債務上限問題に対する恐怖があるため、その問題が去れば、株式は少し上昇するだろうし、債券は少し下がるだろう。なぜならリスクプレミアムが無くなるからだ。それが最も短期の見通しだ。 債務上限問題というのは茶番に過ぎないので、(米国債のデフォルト等まで繋がらない限り)中長期でみると大した影響はなく、わざわざ取り上げたり・解説をするようなものでもありません。 しかし、茶番ではあるとはいえ、それがいくらかリスクプレミアムを持ち上げているのであれば、理論株価のバリュエーション時の割引率を上昇(= 株価を下落)させているはずです。ですから、セオリー通りに考えれば、債務上限問題が過ぎればリスク

  • 米国小売売上高は前年比マイナスに迫る水準で景気後退を示唆

    5月16日に発表された小売売上高は前年比+1.6%で、前年比マイナスに向かう勢いを見せました。過去には、小売売上高の前年比がマイナス入りする前後で景気後退が見られているため、いよいよ米国の景気後退は迫っているようにも見えます。 一方で、景気後退はある程度まで債券市場に織り込まれてしまっているため、今後は他のリターンの源泉を探してく必要もあるでしょう。 毎朝メールで受け取る アメリカの小売売上高は前年比マイナス水準に迫る 5月16日に発表された最新の小売売上高は前年比+1.6%でした。 この調子でいくと、早ければ第二四半期、遅くとも第三四半期には前年比でマイナスに陥るように思われます。 また、これはインフレ率が前年比+5.0%ある中での+1.6%であることにも注意が必要です。 もちろん、CPIにはサービス業など小売以外のさまざまな要素が含まれていますから、一概に比較することはできません。しかし、乱暴に計算してしまえば、小売売上高の+1.6%から、インフレ率の+5.0%を引くと、実質的な前年比は-3.4%となります。実質的にはマイナス成長に陥っている可能性は高そうです。

  • 日本の消費者物価指数は前年比+3.5%へとインフレ加速

    5月19日発表の国内消費者物価指数は前年比+3.5%で、国内のインフレが再加速していることを示しました。日本の金利には上昇圧力が働くこととなるでしょう。 毎朝メールで受け取る 日本の消費者物価指数(CPI)は前年比+3.5% 2023年5月19日に発表された国内の消費者物価指数(CPI)は、前年比+3.5%でした。前回の+3.2%からは0.3ポイントのインフレ加速となりました。 総務省の発表している元データも確認しておきましょう。 表の一番右にある4月分を見ると、以下のようになっています。 * 総合が+3.5%(前回から0.3ポイントの加速) * 生鮮食品を除く総合が+3.4%(前回から0.3ポイントの加速) * 生鮮食品及びエネルギーを除く総合が+4.1%(前回から0.3ポイントの加速) 3つすべての指標においてインフレ(消費者物価指数の前年比)が加速していることが分かります。 日本のインフレは再度加速基調へ 本ニュースレターでは何度もお伝えしている通り、今年に入ってインフレ率が抑えられていたのは、原油などのコモディティ価格が下落していたからです。 昨年

  • 日本はGDPデフレーターでもインフレ率2%に到達、日本の金利は上がる

    2023年5月17日に発表された国内GDPでは、GDPデフレーター(インフレ率)が前年比+2.0%となりました。これで、消費者物価指数に続いて、GDPデフレーターベースでも、日銀のインフレ目標である2%が達成されたことになります。 日本でもインフレが始まったことを受けて、今後、日本の長期金利はいくらか上昇すると思います。 毎朝メールで受け取る 日本のGDPは前期比年率+1.6% 日本のGDPは前期比+0.4%、年率換算すると+1.6%でした。 前期比年率+1.6%というのは、弱くはないものの、強い数字とも言い難いです。プラスではあるものの、微妙な数字だといえます。 GDPベースでもインフレ率は+2.0%へ また、今回最大の注目ポイントはついにGDPデフレーターが前年比で+2.0%となったことでしょう。インフレ率+2%というのは、日銀のインフレ目標だからです。 そもそも、消費者物価指数でみた日本のインフレ率は加速を続けており、本ニュースレターでも過去にお伝えしている通り、

  • ドラッケンミラー氏:AI関連のNVDIAやMicrosoft株を購入

    アメリカでは、大きな金額を動かしている投資家は四半期に一度、そのポジションを開示する必要があります。今回は世界的なグローバルマクロ投資家であるドラッケンミラー氏のポジションを見ていきたいと思います。 なお、ドラッケンミラー氏の経済の見立てについては、以下のニュースレターで紹介していますので、あわせてご覧ください。 * ドラッケンミラー氏:今はリスクを取るタイミングではない 2023年1QはAI関連銘柄に積極投資 ドラッケンミラー氏は、2023年1QはNVDIAとMicrosoftを買い増して、AI関連銘柄に積極投資していました。彼はネットでは株式ポジションはほぼ0であると発言しているため、同時に他の株式をショートしているものと思われます。 ショートポジションは開示対象ではないので、具体的な銘柄を見ることはできませんが、彼が経済がハードランディングするという見方をしていることからも、NYダウやラッセル2000などの景気に敏感な指数や個別銘柄をショートしているのではないかと考えられます。 NVDIAについては、35%ほど株数を増やして、ポートフォリオの9%程度を占めています

  • 国内企業物価指数は前年比+5.2%まで急減速

    日本の国内企業物価指数は前年比+5.2%であり、企業物価のインフレ率は前回の7.2%から大幅に減速しました。今回は軽めの内容となります。 毎朝メールで受け取る 国内企業物価指数は急減速した 予想の前年比+5.7%に対して+5.8%と0.1ポイント上回りましたが、前回の+7.2%からは1.5ポイントのインフレ減速となりました。 これは何度も書いてきた通り、原油などのコモディティ価格が下落していることが大きな要因です。 昨年の3月〜5月といえばウクライナ戦争が始まったことで原油や穀物の値段が大幅に上昇していた時期です。そのため、前年比はマイナスになりやすい環境が続いていました。 本ニュースレターでは、3月上旬に発表された東京都のCPIから、そうした兆候を読み取ったため、3月〜4月は米国債を中心にポジションを大きめにとっていました。(現在は縮小済み) * 東京都の消費者物価指数(2月)、全体はインフレ減速もコアコアは加速 インフレ率は前年比で見るため、昨年の原油価格が高かった分、今年の2月〜6月頃にかけては、エネルギー価格は大きなデフレ要因となります。エネルギー価格のデフ

  • 目先の投資戦略を再整理する

    本日は、少し早いですが6月以降の投資戦略について考えたいと思います。 毎朝メールで受け取る 3月〜5月相場のふり返り まず、まだ5月は終わっていませんが、3月〜5月の相場をふり返っておきましょう。 本ニュースレターでは、2月末に米国10年国債金利が4%近くなったことから、米国債の買い増しを行ったことをお伝えしました。 * 米国長期金利は4%近い水準、米国債の買い増しを開始 今回、米国長期金利が4%近い水準に達したということで、債券の買い増しを開始しました。 その後、3月には昨年ウクライナ戦争で原油価格が高騰していた反動で、今後数ヶ月はインフレ率が順調に低下する可能性が高いことから、金利低下の恩恵が受けられる債券をメインに、ポートフォリオのサイズを拡大するという判断を取りました。 * 米国のインフレは、エネルギーのデフレの恩恵を受けて減速する可能性がある 昨年3月に原油価格が110ドルといった水準をつけていたことを考えると、原油価格が80ドル程度のまま推移すれば、3月のエネルギー価格は前年比-27%程度になると考えられます。 * 2023年の3月〜5月相場はリ

  • 米国CPI:アメリカのインフレ率は4%台で横ばいへ

    2023年4月の米国消費者物価指数は前年比+4.9%で、コンセンサスの+5.0%を下回ったものの、インフレが下げ渋りを見せていることが分かりました。 引き続き、FEDは高金利を維持して、債券市場は景気後退を予想しているという状態が続くでしょう。 毎朝メールで受け取る 消費者物価指数は前年比+4.9%で横ばいへ 2023年4月の消費者物価指数(CPI)は前年比+4.9%でした。前回の+5.0%からは、0.1ポイントの減速となりました。 エネルギーと食品を除いたインフレ率は前年比+6%台が続いている エネルギー価格は-4.9%と前年比でデフレが続いています。 * 米国のインフレは、エネルギーのデフレの恩恵を受けて減速する可能性がある エネルギー価格のデフレが続いている中で、インフレ率が下げ渋りを見せているのは、エネルギーを除いたインフレ率が高止まりしているからです。 こちらの数字は、大きな景気後退でも起こらない限り、目先なかなか大幅に下がることは見込めないでしょう。 そうすると、インフレ自体は減速基調にあるので追加の利上げまでは必要なさそうだけれど、しばらくはFF

  • ガンドラック氏:FEDの予想する年末インフレ率3%は実現できず、インフレは高止まりする

    引き続き、FOMC後のガンドラック氏のCNBCインタビューの内容をお送りしたいと思います。 * ガンドラック氏:投資家は景気後退に備えて米国債を買うべき インフレは簡単に収まらない まず、ガンドラック氏は、この先インフレ率が順調に減速することはないと指摘しています。 パウエル議長が「インフレーションは以前考えていたいたほど早く減速しないかもしれない」と言ったのは興味深かった。覚えているだろうか、(FEDの予想する)ドットプロットは年末にインフレ率が3%程度に下がると予想していた。私にはそれが実現するとは思えない。そして、(会見では)パウエル議長もその予想にもはや自信を持っていないように聞こえた。 これはガンドラック氏が以前から指摘していることで、彼は年初の時点からインフレは前年比+4%程度で下げ止まると予想していました。 * ガンドラック氏:景気後退で金利が下がり、インフレ率は4%で下げ止まる いま、消費者物価指数は4月に発表された3月の数値が+5.0%程度であり、5月10日に発表される4月の数値も+5.0%と横ばいが予想されています。 * 前年比+4%台まで減

  • 4月の米国雇用は強く、高金利の維持が必要

    少し遅くなりましたが、2023年5月5日に発表された米国雇用統計では、まだ雇用が強いことが示されました。 前回の3月雇用統計がほっと一息つける内容だったとすると、今回はまた「やはりインフレは油断ならない」と感じさせる内容となっています。 * 無難な3月米雇用統計:失業率の上昇は見られず、賃金インフレは順調に減速 毎朝メールで受け取る 予想を大きく上回った4月の米国雇用統計 まず、失業率は3.4%でした。前回の3.5%から0.1ポイント低下しました。 非農業部門の雇用者数は、前年比で2.6%増で、ほぼ前回と同じでした。推移をみると、雇用ペースは緩やかに減速しているものの、新型コロナ前と比べると、まだまだ強い水準にあることが分かります。 賃金インフレは4%台 賃金の伸び率は前年比4.4%増で、前回から0.1ポイント加速しました。 こちらも少し長期でみると緩やかに減速していますが、新型コロナ前の水準には程遠いことが分かります。 目先は高金利の維持が必要 雇用が強いこと自体は、本来悪いことではありません。 しかし、現在のインフレ環境においては「まだ雇用が強いのだ

  • ガンドラック氏:投資家は景気後退に備えて米国債を買うべき

    先日のFOMCを受けて、CNBCの番組に出演したガンドラック氏は投資家は景気後退に備えて米国債を買うべきだという意見を述べました。 毎朝メールで受け取る FEDは白紙の態度を示した 今回のFEDの感想を聞かれたガンドラック氏は、以下のように回答しました。 とても柔軟な態度を示した。債券市場は、そうしたFEDが次回のFOMCの見通しを示さないという態度を予想していた。それは債券市場が価格に織り込んできたことと全く一致している。 FEDはインフレを抑えるために、インフレ率よりも高い水準にFF金利をなんとか持ってきました。あとはこれを維持して様子を見てみようということで、この先については、現時点では何も作戦があるわけではないということです。 これは、以下のニュースレターにも書いた通りです。 * 5月FOMCでは0.25%の利上げを実施、FF金利はインフレ率を上回った 続いて、ガンドラック氏は、どちらかというと鷹派だったとコメントしました。 いくらか鷹派のトーンが見え隠れしていた。インフレ率2%をターゲットとすることからは決して離れないという断固たる姿勢を見せた。彼(パウ

  • レイ・ダリオ氏:信用収縮による債券売りが金利上昇かハイパーインフレを招く

    レイ・ダリオ氏がModern Wisdom 620の動画に出演していたので、その中からポイントをお伝えします。 レイ・ダリオ氏の経済見通しは、たびたび紹介してきており、今回も内容としては変わりませんが、少し丁寧に解説されているため、参考になれば幸いです。 毎朝メールで受け取る 多くの企業がバランスシートを毀損している そもそもシリコンバレー銀行で何があったかは、過去に以下のニュースレターでも解説していますが、改めてレイ・ダリオ氏の言葉も読んでおきましょう。 * シリコンバレー銀行が経営破綻、米国債金利は低下へ レイ・ダリオ氏の説明は、以下の通りです。 シリコンバレー銀行の件をみると、それは彼ら特有の問題ではなく、世界中で起こっている問題だ。銀行が預金を受けて、預金金利よりも高い金利のあった米国債をたくさん買った。次に、預金金利が上がり、米国債の価格が下がった。そして経営が破綻した。 次に、レイ・ダリオ氏は、地銀以外にも多くの企業がバランスシートの問題を抱えていることを指摘しています。 それは銀行だけでなく、保険会社や世界中で同じことが起こっている。ヨーロッパでも起

  • 5月FOMCでは0.25%の利上げを実施、FF金利はインフレ率を上回った

    5月3日のFOMCでは、0.25%の利上げが実施され、FF金利は5.00~5.25%になりました。これはコンセンサス通りでした。これによって、FF金利はついにインフレ率(CPI)を上回る水準となりました。 毎朝メールで受け取る FF金利はインフレ率(CPI)を上回った さて、FF金利が5.00%〜5.25%になったということが何を意味するかというと、それはFF金利がインフレ率(CPI)を上回ったことを意味します。 振り返っておくと、前回のCPIが前年比+4.98%とぎりぎりで+4%台でしたから、今回のFF金利5.00%〜5.25%というのは、それを上回る水準だというわけです。 * 前年比+4%台まで減速した米国CPIと市場参加者の読み間違い 以下のニュースレターでも見たように、1970年代の高インフレを終わらせたポール・ボルカー議長のFEDも、景気後退時を除いて、常にFF金利をCPIよりも上の水準に持っていくことを徹底していました。つまり、今のFF金利を維持できる限り、

  • 2023年5月上旬現在、検討しうる3つの投資アイデア

    最近は、ポートフォリオのサイズを小さくして様子見をしていることは、すでに何度もお伝えしてきた通りです。 この様子見はまだしばらく続くと思いますが、何か相場でトレードしていないと気が済まない方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は待機資金の一部を使ってポジションを取ることを検討しうるアイデア候補を3つほど書いてみたいと思います。 なお、現時点(2023年5月3日時点)では、筆者自身はまだいずれのポジションも取っていませんし、今後取るかどうかも決めていません。あくまでもアイデアだということでお読みいただければと思います。 毎朝メールで受け取る 日本債券のショート まずは、日本の金利上昇にかけるトレードアイデアが考えられます。日本のインフレが続けば、いずれ日本でも金利を上げざるを得ないでしょうし、黒田総裁も退任したため金融政策の見直しが行われる確率も上がっているためです。 このアイデアについては、4月下旬の以下のニュースレターで触れました。 * 国内CPI:日本の長期金利上昇には投資妙味があるか 日本の金利上昇からリターンを得るのにどのようなポジションが良いかを、上の

  • 4月のISM製造業景況指数はスタグフレーション的な再加速

    5月1日に発表された2023年4月のISM製造業景況指数は、雇用や価格インフレの影響で再加速しました。一方で、注文や在庫は減少しており、企業活動は縮小されていることが分かりました。 毎朝メールで受け取る 再加速した4月のISM製造業景況指数 2023年4月のISM製造業景況指数は、予想の46.7を上回る47.1でした。前回の46.3からは0.8ポイントの増加となりました。 とはいえ、相変わらず、50を下回っていますし、下落トレンドにあることに変わりはありません。また、前回同様に依然として新型コロナ前後の水準にあります。全体として、景気が強いというわけでは決してありません。 * ISM製造業景況感指数は新型コロナ前後の水準まで後退している 雇用と価格インフレによる再加速 続いて、内訳を見ておきましょう。 前月からみると、雇用(Employment)が+3.3ポイントで50.2と再び50の水準を超えています。それから、価格(Prices)も+4.0ポイントで53.2と50を超えています。 一方で、注文残(Backlog of Orders)や在庫残(Inventor

  • ドラッケンミラー氏:今はリスクを取るタイミングではない

    ポンド売りでイギリス銀行に勝利した男として知られるジョージ・ソロス氏のファンドで、投資アイデアを練って実務を担当していたのが、スタンレー・ドラッケンミラー氏です。 そんなスタンレー・ドラッケンミラー氏は、現在は自身の個人資産を運用しているだけで、資産運用業の第一線を退いているため、メディア露出は多くありません。しかし今回、NBIMのカンファレンスに出演しており、最新の見通しを知ることができました。そこで、今回はその内容をお届けしたいと思います。 毎朝メールで受け取る チャンスボールがなければバットを振るべきではない まず、現在の状況は過去に見たことがなく、先行きの予想が難しいことを打ち明けています。 金融経済環境の先行きを予想するのは非常に不透明だ。私は、投資を45年行っているし、経済史をたくさん勉強したが、金利ゼロの状況が11年も続き、あらゆる資産クラスがバブルな中で、12ヶ月の間に5%も利上げがされた、今のような状況は見たことがない。私のように、歴史から今後のありうるシナリオを考えるスタイルの人間にとっては難しい時期だ。 その上で、どのような運用をすべきかと訊かれると

  • 米国GDP(2023年1Q)は民間企業の投資が急減速

    今回は、4月27日に発表された2023年1Qの米国GDPを見ていきます。 毎朝メールで受け取る 米国GDPは+1.1%で予想を下回った 4月27日に発表された米国GDPは、前期比の年率換算で約+1.1%でした。 前回が+2.6%なので、1.5ポイントの低下となりました。全体としても長期で右肩下がりの減速トレンドが続いていることが分かります。 以下、詳しく内訳を見ていきましょう。 個人消費は堅調 個人消費は前期比年率で+3.7%と好調でした。 個人消費は再加速しており、2023年1Qの米国消費者には消費余力がまだあったことが分かります。 思い返せば、消費者関連の指標は比較的強いデータが続いていました。 例えば、雇用は2023年1Qを通じて堅調でした。失業率は低い水準で推移しており、賃金も上昇速度は減速しているものの、前年比+4%台の水準で時給が上がっていました。 * 無難な3月米雇用統計:失業率の上昇は見られず、賃金インフレは順調に減速 * 米国雇用統計は労働市場がまだ堅調であることを示した また、物価のインフレ率は3月にはぎりぎり4%台まで減速して、時給

  • 1980年代インフレ終息時の、景気後退、金利低下、ドル安、株価を振り返る

    1970年代のインフレが終息した1980年代前半に何が起こったかを時系列に並べ直して、整理してみました。今回は、この内容をニュースレターでお届けした上で、現在の状況についても整理します。 毎朝メールで受け取る 銀行融資の増加がピークを迎える:1979年9月 まず、1979年9月に銀行融資の増加速度がピークを超えました。 この頃、長期金利が10%に到達しており、金利の上昇を受けて、急激に融資が減速していたことが分かります。 失業率の上昇(1回目):1980年1月 銀行融資の減速を受けて、4ヶ月後の1980年1月に景気後退に突入しました。 このとき、株価は少し遅れて1980年3月にピークをつけて下落に転じています。 一般的に株価は景気後退を先取りして下落するため、これは少し珍しい動きともいえます。この背景には、実質GDPが1980年1Qまで前期比年率プラス圏で推移していたことが考えられるでしょう。 失業率は上昇していたものの、インフレもまだピークをつけておらず、実質ベースでもGDPは高く、ぎりぎりまで景況感はそこまで悪くなかったのだと思います。 しかし、その後、失業

  • 2月のケースシラー住宅価格指数は下げ渋りを見せた

    2023年4月25日に、2023年2月分のケースシラー住宅価格指数が発表されました。 予想は前年比-0.05%でしたが、結果は+0.36%で予想を上回りました。また、前月比では8ヶ月ぶりにプラスに転じて、下げ渋りを見せました。 毎朝メールで受け取る 前年比のインフレ率は順調に低下 以下は、ケースシラー住宅価格指数の前年比の推移です。 前年比でのインフレ率は順調に減速しており、次回からはマイナス圏に入る、つまり前年比で住宅価格がデフレに入ることが予想されます。少なくとも今後半年くらい(2023年3月分〜2023年9月分)の間、住宅価格は前年比でデフレとなるでしょう。 ケースシラー住宅価格指数の前年比がマイナス圏に入るのは、上のグラフからも分かる通り、2012年以来のことです。6月以降はエネルギーのデフレ効果が剥げ落ちていきますが、住宅価格のデフレがしばらくはインフレ率を抑える形となるでしょう。 前月比では下げ渋りを見せた 一方で、今回気になったのは、1月分からわずかに反発して下げ渋りを見せたことです。 ケースシラー住宅価格指数は前月比で+0.05%となり、前月比は8

  • モハメド・エラリアン氏:債券市場は非常に混乱している

    モハメド・エラリアン氏が、債券市場は株式市場ほど楽観的ではなく、不透明性の高まりを表しているとして、警戒を呼びかけました。 毎朝メールで受け取る 不可解な債券市場 モハメド・エラリアン氏は、株式市場が落ち着いてきたように見える件について意見を求められ、以下のように述べました。 株式市場だけを見ていたらそう考える(悪いニュースを織り込み済みだと考える)だろう。いま混乱を招いているのは債券市場だ。長い間、見ていないような状況が発生している。 続いて、債券市場で起こっている不思議な現象について、具体例を挙げています。 1ヶ月金利と3ヶ月金利の乖離 3ヶ月の米国債金利が、過去に見たことのないような水準で、1ヶ月の米国債金利を天文学的な水準で上回っている。 1ヶ月や3ヶ月といった短期米国債の金利を普段見ることはあまりありませんが、この機会に確認してみましょう。 まず、米国1ヶ月国債の金利は、以下のように推移しています。 2023年3月の開始時点では4.7%近くあった金利が3.4%まで低下しています。つまり、米国1ヶ月国債は物凄い勢いで買われているということです。 続いて

  • 米国経済指標の総点検

    引き続き、特段注目すべき指標や発言もないので、今回は米国経済を一度総点検することで、全体を俯瞰してみたいと思います。 毎朝メールで受け取る 債券市場はインフレ減速と利下げを予想している 経済指標に先行するのが金融市場です。その中でも、金額が大きく、数多くの機関投資家が参加しているため、最も賢くて重要だとされるのが債券市場です。そのため、まずは米国債金利から見ていきましょう。 米国の長期金利は、3月にシリコンバレー銀行の経営破綻を受けて、3.4%を割り込む水準まで下がっていましたが、今は少し上昇して3.5%前後で推移しています。 * シリコンバレー銀行が経営破綻、米国債金利は低下へ 現在のFF金利が5.00%で、次回のFOMCでは5.25%への利上げが予想されているため、長期金利は現在のFF金利と比べると、だいぶ低い水準にあります。つまり、債券市場は「今後の大きな流れとしては金利が下がっていく」と予想していることが分かります。 続いて短期金利も見ておくと、3月に3.7%台まで下がりましたが、現在は4.17%まで上昇しています。 今後2年間の平均金利がざっくりと4%前後

  • ポートフォリオの再確認

    今回は、あまり共有すべき経済指標や著名投資家・経済学者の発言もないため、普段とは少し趣きを変えて、自分の現在のポートフォリオを共有しようと思います。 これはあくまでも現時点でのポートフォリオであり、日々の各資産の値動きだけでも割合は勝手に変化しますし、少し時間が経つと全く参考にならないものとなってしまいます。 なので、あくまでも現時点(2023年4月22日執筆時点)の僕の考えを理解する手助けとなる資料として見ていただけると嬉しいです。 また、あまり多くの方に見せるものでもないと思うので、普段は結論部分以外は全体公開していますが、今回はニュースレター全体を購読者の方のみお読みいただけるようにしたいと思います。

  • 国内CPI:日本の長期金利上昇には投資妙味があるか

    日本の国内CPIは前年比+3.2%と前回から0.1ポイント低下したものの、エネルギー価格の下落による恩恵を除くとインフレは加速しています。6月以降は、エネルギー価格の前年比での下落という恩恵がなくなるため、インフレ率の下げ止まりや再加速が意識されるようになるでしょう。 毎朝メールで受け取る 日本国内の全国消費者物価指数は前年比+3.2% 総務省が4月21日に発表した日本国内の全国消費者物価指数は前年比+3.2%で、前回の+3.3%からは0.1ポイントの減速となりました。 アメリカから数ヶ月遅れる形で、昨年の12月に前年比+4.0%とピークをつけた後、インフレは減速に転じて、+3.2%まで順調に下がってきました。 今年の3月〜5月には原油価格が昨年比で大きくデフレしているので、インフレ率が下がりやすいことは、以前から繰り返し述べてきた通りです。 * 東京都の消費者物価指数(2月)、全体はインフレ減速もコアコアは加速 インフレ率は前年比で見るため、昨年の原油価格が高かった分、今年の2月〜6月頃にかけては、エネルギー価格は大きなデフレ要因となります。エネルギー価格のデフレは

  • ハワード・マークス氏:商業用不動産から次の破綻が始まる

    ウォーレン・バフェット氏やチャーリー・マンガー氏も愛読していると言われている、オークツリーキャピタルのハワード・マークス氏のメモが更新されました。今回は、その内容について見ていきたいと思います。 シリコンバレー銀行の破綻に関する固有の問題 まず、シリコンバレー銀行が破綻した理由については、本ニュースレターでも過去にお伝えしてきた通りです。 * シリコンバレー銀行が経営破綻、米国債金利は低下へ 改めてざっくりと説明すると、以下のようになります。 1. 新型コロナ禍の量的緩和と給付金で預金が大幅に増えた 2. その預金をデュレーションの長い債券に投資していたが、2022年の利上げで大きな評価損を出した 3. 心配した預金者が取り付け騒ぎを起こし、債券の売却(評価損の確定)を迫られて破綻した 本メモにおいて、ハワード・マークス氏はこうした仕組みを解説した上で、まずはシリコンバレー銀行特有の問題をあげています。 例えば、スタートアップ投資ブームの中で、テックカンパニーからの預金が大幅に増えて、預金者の属性に偏りがあったことがあげられます。 近年、スタートアップは投資家

  • レイ・ダリオ氏:米ドルの覇権は失われる

    前回に引き続き、レイ・ダリオ氏のインタビューから気になる点をお伝えします。 * レイ・ダリオ氏:債券の保有者は元本を満額で受け取れない 毎朝メールで受け取る 覇権通貨の没落は繰り返し起こっている そもそも、僕たちは米ドル覇権の時代に生きてきたので、多くの人は米ドルの覇権が失われるということを想像するのが難しいでしょう。しかし、歴史を研究してきたダリオ氏は、覇権通貨の没落は繰り返し起こってきたことだと指摘します。 覇権通貨の没落は繰り返し何度も起こっていることだ。イギリスのポンドも没落したし、オランダのギルドも没落した。それらは全て同じ理由で起こる。 覇権通貨が没落する理由として、ダリオ氏は2つの事象をあげています。 1. 政府が負債をたくさん抱えてインフレ(通貨価値の下落)を招く 2. 覇権通貨が武器として利用される 1つめについては、本ニュースレターの読者であれば改めて説明する必要はないでしょう。 * レイ・ダリオ氏:金融市場の信用収縮を受けて、FRBは1年以内に金融緩和を再開する 以下のグラフを見ても、米国のGDPに対する負債の金額は121%であり、過

  • レイ・ダリオ氏:債券の保有者は元本を満額で受け取れない

    世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエイツの創業者レイ・ダリオ氏がImpact Theoryのインタビューの中で、現在の経済状況を説明しました。 毎朝メールで受け取る 金利高騰で損したのは銀行だけではない まず、レイ・ダリオ氏が強調したのは、米国債への投資で損をしたのは銀行だけではないということです。 シリコンバレー銀行に起きたことは、世界中の数多くの会社に起きていることだ。銀行は預金を受け入れて債券を購入するが、金利が上がると、債券の価格が下がり、預金者への金利支払いも高騰した。また、預金者は市中金利と比べて競争力のある金利を求めて、銀行から預金を引き出した。 銀行は、預金という形で負債を抱えて、米国債という形で資産を持っています。負債の金利が上がる中で、資産の価格が下落すれば、当然ながらバランスシートの状況が悪化します。それを見た債権者(預金者)が負債の返還を求めると、破綻してしまうわけです。詳しい説明は、以下のレターで行なった通りです。 * シリコンバレー銀行が経営破綻、米国債金利は低下へ このバランスシート悪化の問題は、銀行特有の問題ではな

  • サマーズ氏:米国経済はスタグフレーションに向かっている

    サマーズ氏はBloombergの番組に出演して、米国経済がスタグフレーションに向かっているという認識を示しました。 毎朝メールで受け取る スタグフレーションに向かっている 冒頭でサマーズ氏は、経済がスタグフレーションに向かっているという認識を示しました。 経済が停滞している兆候が見え始めているが、インフレの継続にも悩まされている。これは手強い組み合わせだ。 スタグフレーションとは、経済が停滞している(主に失業率が上昇する)中で、同時に物価がインフレしている状況を指します。 通常、経済が停滞するときはデフレになりがちなので、金融緩和で景気対策を行います。実際、リーマンショック後や新型コロナショック後には強力な金融緩和が行われました。 しかし、インフレが発生している状況では、金融緩和を行うと物価がどんどん上がってしまい、消費者や経済が混乱してしまいます。そのため、中央銀行は難しい判断を迫られることとなります。 景気後退の兆候が見られる 経済の停滞側について、サマーズ氏は以下のように述べました。 経済の停滞側では、デフォルト率は上がっているように見えるし、お金を借りる

  • 前年比+4%台まで減速した米国CPIと市場参加者の読み間違い

    2023年4月12日に発表された米国CPIは予想の前年比+5.2%を下回る+5.0%でした。厳密には+4.98%であり、インフレ率はついに4%台まで減速しました。 毎朝メールで受け取る インフレ率はついに4%台まで減速 昨年の夏頃には9%台に迫る勢いだったインフレ率も、FEDの急速な利上げを受けて、ついに4%台まで落ち着いてきました。 本ニュースレターでは、年始に債券王ガンドラック氏の展望を紹介していましたが、これまで見事にその通りとなっており、頭が下がるばかりです。 私たちは、将来6ヶ月程度について正確に予想ができるインフレーション予測モデルを持っている。私たちは、インフレ率が急速に下がっていくと考えており、6月に発表される5月の数値では4%程度まで下がると思っている。 * ガンドラック氏:アメリカのインフレ率は5月に4%まで下がり、債券市場はその後のデフレを意識している 以下のニュースレターでも書いたように、昨年の3月〜5月はウクライナ戦争によってエネルギー価格が上昇していたため、ガンドラック氏の言う通り、5月までは順調にインフレは減速するでしょう。 * 米国

  • 国内企業物価指数PPIのインフレ率は3月も順調に減速

    国内企業物価指数は前年比+7.2%で、インフレは順調に減速しました。5月まではこの傾向が続くと考えています。 毎朝メールで受け取る 国内企業物価のインフレは3月も順調に減速 日本国内の企業物価指数は前年比+7.2%で、前回の+8.2%から1ポイントの低下となりました。 内容をみると、木材・木製品が前月からさらに-3.3%と低下して、前年比では-14.8%となりました。また、石油・石炭製品も前年比-3.2%と値下がりしています。また、電子部品・デバイスは前月比-0.1%、電気機器は-0.2%と、前月から値下がりしました。 一方、企業間取引でのインフレが続いている領域も、パルプ・紙・同製品(前年比+14.3%、前月比+0.4%)、繊維製品(前年比+

  • モハメド・エラリアン氏:利下げするとスタグフレーションになる

    前回に引き続き、モハメド・エラリアン氏のブルームバーグのインタビューの内容をお伝えしていきます。 * モハメド・エラリアン氏:米国経済はQ3〜Q4に悪化する 毎朝メールで受け取る 利下げを行うとスタグフレーションになる エラリアン氏は、今後FEDが取りうる施策について、以下のように述べています。 彼ら(FED)が取りうる最悪の手段は、「信用収縮が起こるから、利下げを行おう」というものだ。もしも彼らがそうしたなら、私たちはスタグフレーションと金融不安に陥る。 エラリアン氏は、金利を高く保ったままで、金融不安の対策を行うことができるという意見を持っているようです。彼が賞賛しているのは、3月の銀行危機の中でも断固とした利上げを実施したECBのラガルド総裁の対応です。 私はラガルド総裁の発言は完全に正しかったと思う。その発言とは「金融政策において、政策金利はインフレ率を目標としており、そしてそれ以外の全ての政策手段は金融の安定を目標としている。これらを混同してはいけない」というものだ。ECBはそれを理解しているが、FEDはそれらを混同するリスクがある。 例えば、FEDは現在

  • モハメド・エラリアン氏:米国経済はQ3〜Q4に悪化する

    元PIMCOのCEOで、現在は経済学者として活動しているモハメド・エラリアン氏が、シリコンバレー銀行から始まった銀行の経営破綻騒動と、今後Q3〜Q4にかけて経済が悪化するだろうという見通しについて、ブルームバーグのインタビューで語りました。 毎朝メールで受け取る 銀行の取付騒ぎは終わった 3月の一連の銀行関連の騒動をふり返って、エラリアン氏は以下のように述べています。 銀行業は信用に基づいているので、信用が失われると悪いことが起こる。良いニュースは、赤信号(最悪の危機)は過ぎ去ったことだ。今は黄信号のフェーズにある。我々は流動性の問題から資本の問題へと移行しているし、金融危機から経済危機へと移行している。 流動性の問題というのは、預金が引き出せなくなることを意味しています。シリコンバレー銀行がどのように破綻したのかは、以下のニュースレターでも解説した通りです。 * シリコンバレー銀行が経営破綻、米国債金利は低下へ 昨年からの急速な利上げと金利上昇によって債券価格は低下しているので、債券のエクスポージャーが高い米国の銀行は含み損を抱えています。これらの債券を満期まで保有

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