なるほどね、うまくはいかないものだよ。 バルムンクの生み出す闇の中で、ジョルジュ・ベルリオーズは呟いた。朝
私のオリジナル小説「セイレネス・ロンド」本文および関連情報・設定などを徹底的に網羅すべく作ったサイトです。常時成長中。まだまだ増築構想があります。是非覗いてみてください。
小説の作り込みとかそういうのを作者自らがとっことんマニアックに語っています。作品で語り尽くせなかったわけではなく、作品を読んだ上で更に楽しんでいただけるようにということから手元の設定を「読み物」に変換しました。
なるほどね、うまくはいかないものだよ。 バルムンクの生み出す闇の中で、ジョルジュ・ベルリオーズは呟いた。朝
カティは純白の空間に立っていた。一面の白だ。それはセイレネスの生み出す論理空間の中だった。 「やぁ、カティ」
くそッ! カティは思わず計器類を拳で叩いた。頑丈なハードウェアたちは鈍い音で抗議し、カティの拳に鈍い痛み
敵艦隊を殲滅し、母艦リビュエに着艦するや否や、カティは 艦橋《ブリッジ》へと急いだ。 「状況は! 状況はどう
エディタたち五名の V級歌姫《ヴォーカリスト》と C級歌姫《クワイア》たちは、クララとテレサを先頭に押し立て
薄紙を破るかのように、 C級歌姫《クワイア》たちの小型艦艇が粉砕されていく。マリオンとアルマの PTC《完全
二〇九九年一月一日未明――。 イザベラ率いる反乱軍と、マリオンとアルマに率いられた討伐艦隊は、ほんの三十五
混乱している、と言っても良いだろう。イザベラは半ば呆然と、モニタの中のマサリク大統領を見つめていた。 マサ
二〇九八年十二月二十二日――第二艦隊撤退より一週間後。 マリオンとアルマは航空機によって統合首都へと帰還さ
闇《バルムンク》の中にて、その戦いの一部始終を見下ろしている姿がある。銀髪に赤く輝く左目の持ち主、ジョルジ
闇《バルムンク》の中にて、その戦いの一部始終を見下ろしている姿がある。銀髪に赤く輝く左目の持ち主、ジョルジ
レオノールはエディタとの約束通り、 V級《ヴォーカリスト》および全ての C級《クワイア》を統率していた。エデ
イザベラの号令一下、第一艦隊の火砲が 猛《たけ》る。轟音と共に放たれた弾丸は正確にアルマとマリオンの 制海掃
二〇九八年十二月十五日――。 あと三十分というところか。 イザベラは督戦席から立ち上がり、艦長に右手を上
レオノールが隣接の士官学校にあるシミュレータルームに着いた時、エディタを初めとする残存 V級歌姫《ヴォーカリ
その日の夜、レオノールはエディタたちを引き連れて、マリオンとアルマの部屋を訪ねた。二人と、そしてレニーは、士
エディタは小さく咳払いをする。純白の論理空間の中に、ロラ、ハンナ、パトリシア、そしてレオノールが、それぞれに
エディタの呼びかけにより、残った V級歌姫《ヴォーカリスト》の全員がシミュレータルームに集っていた。エディタ
レベッカ姉様……! マリアの声にならない叫びが、闇の中に消えていく。マリアは、セイレネス・シミュレータを経
セイレーン EM《イーエム》- AZ《エイズィ》とウラニアが、持てる火砲のそのすべてを撃ち放つ。極至近距離で
セイレネス《《なんかに》》賭けなくちゃならない。 思えばその時点で私たちは間違えていたのかもしれない。
あらあら――。 アトラク=ナクアはレベッカとイザベラのためだけに存在しているはずの論理空間を、 闇《バルム
海は 静寂《しじま》に沈む。 暗い海、星の消えた空、焼けた空気。 しかしそこには風の音も水の音もない。
修羅――。 その決意の表れに、レベッカもマリオンもすっかり圧倒されてしまう。アーシュオンのやりかたは、イザ
海域は夜の静寂に沈んでいた。続いていた暴風雪も嘘のように 鎮《しず》まり、月のない空は 燦然《さんぜん》たる
もはや思い悩む 段階《フェイズ》ではない。 理解《わか》っている。だけど。 マリアのいない 艦橋《ブリッジ
マリアの指示により、シミュレータルームからは C級歌姫《クワイア》たちの姿が消えた。事情の説明は後回しにして
レベッカは統合首都にて、静かに《《その時》》を待っていた。ガラスの向こうのシミュレータルームには黒い棺のよう
《《生首の歌姫》》が口を開いた。響いたのは絶叫だ。 イザベラはそのあまりの音圧に圧倒される。至近距離で、し
レネ・グリーグが操る戦艦ヒュペルノルと合流した第一艦隊は、アーシュオンの三個艦隊と正対していた。イザベラはセ
第七艦隊旗艦、航空母艦ヘスティアの提督席にて、クロフォードは小さく唸る。ヘスティアの展開する隠蔽システムの傘
二〇九八年十一月末――。 アーシュオンは驚くべき作戦を展開した。アーシュオン本土を縦断するように、巨大なト
それから三日後。 エディタは暗いセイレネスシミュレータの筐体に乗り込むと、大きく息を吐いた。エディタが部屋
23-2-2:私たちはもう、とっくにどっちも正気じゃないわ。
そこまでして、命を捨ててまでして、いったい何が得られるというのですか――エディタが掠れた低い声で尋ねる。イザ
二〇九八年、十一月も間もなく終わる頃――。ヤーグベルテ統合首都の秋は足早に過ぎ去り、間もなく初雪が観測される
床も、壁も、天井も、ない。色もない――黒や白の感覚もない。上下左右の概念すら消失してしまっているこの場所は、
バルムンクの創り出した闇の中から、アトラク=ナクアは「あらあら」と戸惑うカティを眺めていた。アトラク=ナクア
無事に着艦を済ませ、艦上に降り立った時の疲労感は、今まで感じたことのないほどのものだった。水の中にでもいるの
この、一方的な力が、セイレネス!? カティの一撃で空域が焼け焦げた。それを目にした瞬間に、カティは寒気を覚
翌日正午過ぎ、カティはさっそくエキドナに搭乗していた。移送と慣熟飛行を兼ねた無茶なプランだったが、カティには
イザベラが人間弾頭を処理した戦いから三日後、十一月も中旬に差し掛かり冬の前触れのような寒風がヤーグベルテ統合
目まぐるしく動く状況の推移を確認しながらも、イザベラは艦首 PPC《粒子ビーム砲》の発射シーケンスを進めてい
二〇九八年十一月上旬、訓練航海を終えたイザベラの艦隊は補給を済ませるなりアーシュオンとの中間海域へと取って返
二〇九八年十一月上旬、訓練航海を終えたイザベラの艦隊は補給を済ませるなりアーシュオンとの中間海域へと取って返
まったく、きみってやつはさぁ――イザベラも手近な椅子に腰を下ろして足を組み、頬杖をついた。 「ベッキー、きみ
レベッカがよろめきながら入った室内には、マリオンが一人、座っていた。その顔は、目の下に濃い影を作っていた。出
第二艦隊旗艦ウラニアの 艦橋《ブリッジ》の窓際にて、レベッカは物思いに 耽《ふけ》っていた。照明すらほとんど
システム・バルムンクの創り出した闇の中に、ジョルジュ・ベルリオーズと黒髪の少女―― ARMIA《アーミア》が
マリオンによるその圧倒的の一言に尽きる一撃、タワー・オブ・バベルは、アーシュオンの艦隊を文字通りに潰滅せしめ
正規空母を二隻!? 指定攻撃目標を確認して、マリオンは絶句する。シミュレータでも単艦撃沈はしたことがある。
正規空母が四、駆逐艦が十八、フリゲートが四十……それが敵の総戦力か。 レベッカはセイレネスを通じて、敵艦隊
その一時間後には、レベッカの姿は 制海掃討駆逐艦《バスターデストロイヤー》の 艦橋《ブリッジ》にあった。戦艦
卒業式から二週間が経過した頃、二〇九八年十月の半ば――。 ヤーグベルテ第二艦隊グルヴェイグは、訓練航海の帰
二〇九八年九月末日、士官学校の卒業式が執り行われた。 D級歌姫《ディーヴァ》――表向きは S級《ソリスト》―
しばらくの沈黙の末、レベッカは絞り出すような口調で言った。 「イズー。私にはあなたの決意をどうしたら覆すこと
イザベラの宣言が、レベッカとマリアの頭の中を跳ね回る。 遠くない未来に、わたしは反乱する――。 「な、何を
それからしばらく、ただ沈黙の時間が過ぎた。イザベラが最後に言葉を発してから、三十分近くが経過した頃になってよ
レベッカ邸にて、イザベラは事の顛末を話して聞かせていた。今日はマリアは不在で、久しぶりの二人きりの時間だった
だがしかし、その PPC《粒子ビーム砲》での一撃は、例の不審な駆逐艦たちによって張り巡らされたフィールドによ
《《コーラス》》……だって……!? その不意打ちには、イザベラの力をもってしても対処できなかった。第一艦隊
アーシュオンの艦隊が、獰猛な牙を剥いた。死をも恐れぬ勢いで怒涛のように迫ってくる。普通に考えれば勝ち目のない
マリア……? コア連結室の中にいるイザベラは、マリアの不審な行動を追っていた。エレベータで別れた時にもどこ
ver.13もまとめてUPします。描いてからだいぶ日が開いてしまったので。 ■2023/10/04 珍しく大き
二〇九八年五月――。 ヤーグベルテ三隻目の戦艦となるヒュペルノルが進水した。ヒュペルノルは唯一の S《ソリ
二〇九八年五月――。 ヤーグベルテ三隻目の戦艦となるヒュペルノルが進水した。ヒュペルノルは唯一の S《ソリ
年が明け、カレンダーが二〇九八年に切り替わった頃――。 アーマイア・ローゼンストックは、バルムンクの作り出
そこは頭が痛くなるほどに、真っ白な空間だった。イスランシオは目眩を覚えて額に手をやった。何度訪れても慣れるこ
ver.12はまとめてUPします。描いてからだいぶ日が開いてしまったので。 ■2023/04/09 まずは、ヴ
カティの真紅の機体――スキュラが、薄緑色に輝く F108+IS《インターセプタ》と正対する。双方の多弾頭ミサ
その翌日には、 S《ソリスト》級 歌姫《セイレーン》、レネ・グリーグが第一艦隊に配属された。 V級《ヴォーカ
あの戦いで受けた被害は甚大――その一言に尽きた。クロフォードが育て上げた虎の子の第七艦隊は事実上潰滅させられ
レベッカ率いる第二艦隊が、セイレネスの射程内に暗礁海域を捉えた時にはすでに、友軍艦隊は壊滅状態に陥っていた。
アーシュオンの狙いは、第七艦隊《《そのもの》》だった。 クロフォードはようやくそのことに気が付いた。つまり
バーザック提督率いる第八・第七連合艦隊は大いに奮戦していた。暗礁地帯で巧みな艦隊運動を見せつつ、着実に時間を
それから約五十時間が経過した。クロフォードの搭乗する第七艦隊旗艦ヘスティアは、ノトス飛行隊の支援を受けつつ対
第七艦隊司令官、リチャード・クロフォード准将は苛々とした表情で髪の毛を掻き回した。 艦橋《ブリッジ》中央にあ
その海戦より約一ヶ月後、二〇九六年十二月二十四日は、第二艦隊の新旗艦、戦艦ウラニアの進水日だった。それまでの
クララとテレサは未だにマイノグーラを沈められていない。 「いつまでかかっている。 M《量産》型も減っていない
イザベラは督戦席で頬杖をついて、遠く東の空を見つめている。太陽はとっくに背中側に落ち、現在目の前に広がってい
戦闘の被害は想定よりも小さかった。しかし、ゼロではない。死者も少ない。少ないがゼロではない。確かに、悪くはな
第一の目的、それは M《量産》型ナイアーラトテップを殲滅することだ。第二の目的は新人 V級歌姫《ヴォーカリス
制空権の心配など、最初からしていない。カティたちが 制《と》れないというのなら、いったい誰にそれが可能だろう
次で仕留める――! カティは紺色の目を細め、HUDの向こうに見える白い機体を追った。背面飛行に移り、コック
被弾! いや、しかしまだだ。まだだ、が――。 シルビアは真後ろにつけている真紅の大型戦闘機をカメラで確認
カティの眼下に第二艦隊旗艦、レベッカの座乗艦・エリニュスが見え始める。その両サイドを固めるように、エディタ・
二〇九六年十一月――。 アーシュオンが着々と M《量産》型ナイアーラトテップの頭数を揃え、また、 I《改良
シルビアの執務室から出た直後に、ミツザキはふわりと姿を消した。もっとも、誰かがその瞬間を見ていたとしても、そ
ミツザキは無遠慮に室内に入ってくると、そのままフォアサイトの隣に腰をおろした。その表情には僅かな陰りが見える
ヤーグベルテの V級歌姫《ヴォーカリスト》を仕留めてから半年後、二〇九六年十月――。 シルビアは硬いデスク
あなたは……なぜ私にこんな 役割《ロール》を与えたのですか。 バルムンクが生成した闇の中で、マリアはベルリ
ちょうどその頃、エディタ、クララ、テレサの V級歌姫《ヴォーカリスト》三名は、士官学校のセイレネス・シミュレ
イザベラ・ネーミアの初陣、大勝利――。 ほとんどあらゆる 情報媒体《メディア》が、その戦闘をそのように総括
イザベラはアーシュオンの残存艦隊に向けての第二射を放つことを決意する。 薄緑色《オーロラグリーン》の輝きが、
エディタとトリーネは、新型の クラゲ《ナイアーラトテップ》との交戦を開始しているようだ。物理的には対潜攻撃を
先陣を切る三機の白い戦闘機――確認するまでもない。マーナガルム飛行隊だ。マーナガルムに率いられた各航空隊の連
二〇九六年三月――イザベラ・ネーミアが歴史の表舞台に現れてから一ヶ月が経とうかという頃。 ヤーグベルテ第一
二〇九六年一月――年始は、《《ヴェーラ死去》》のニュースで埋め尽くされた。そのニュースはヤーグベルテ国内にと
レベッカとレネの食事の日から二日後、二〇九五年の大晦日、夕刻――。 レベッカの邸宅にカティがやってきた。
レベッカはそれからしばらく口を 噤《つぐ》み、じっとレネを見つめた。レネは唾を飲み込んでその視線を受け止め、
レベッカは 携帯端末《モバイル》を 弄《もてあそ》ぶ。マリアは電話をしながら 何処《いずこ》かへと去っていく
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なるほどね、うまくはいかないものだよ。 バルムンクの生み出す闇の中で、ジョルジュ・ベルリオーズは呟いた。朝
カティは純白の空間に立っていた。一面の白だ。それはセイレネスの生み出す論理空間の中だった。 「やぁ、カティ」
くそッ! カティは思わず計器類を拳で叩いた。頑丈なハードウェアたちは鈍い音で抗議し、カティの拳に鈍い痛み
敵艦隊を殲滅し、母艦リビュエに着艦するや否や、カティは 艦橋《ブリッジ》へと急いだ。 「状況は! 状況はどう
エディタたち五名の V級歌姫《ヴォーカリスト》と C級歌姫《クワイア》たちは、クララとテレサを先頭に押し立て
薄紙を破るかのように、 C級歌姫《クワイア》たちの小型艦艇が粉砕されていく。マリオンとアルマの PTC《完全
二〇九九年一月一日未明――。 イザベラ率いる反乱軍と、マリオンとアルマに率いられた討伐艦隊は、ほんの三十五
混乱している、と言っても良いだろう。イザベラは半ば呆然と、モニタの中のマサリク大統領を見つめていた。 マサ
二〇九八年十二月二十二日――第二艦隊撤退より一週間後。 マリオンとアルマは航空機によって統合首都へと帰還さ
闇《バルムンク》の中にて、その戦いの一部始終を見下ろしている姿がある。銀髪に赤く輝く左目の持ち主、ジョルジ
闇《バルムンク》の中にて、その戦いの一部始終を見下ろしている姿がある。銀髪に赤く輝く左目の持ち主、ジョルジ
レオノールはエディタとの約束通り、 V級《ヴォーカリスト》および全ての C級《クワイア》を統率していた。エデ
イザベラの号令一下、第一艦隊の火砲が 猛《たけ》る。轟音と共に放たれた弾丸は正確にアルマとマリオンの 制海掃
二〇九八年十二月十五日――。 あと三十分というところか。 イザベラは督戦席から立ち上がり、艦長に右手を上
レオノールが隣接の士官学校にあるシミュレータルームに着いた時、エディタを初めとする残存 V級歌姫《ヴォーカリ
その日の夜、レオノールはエディタたちを引き連れて、マリオンとアルマの部屋を訪ねた。二人と、そしてレニーは、士
エディタは小さく咳払いをする。純白の論理空間の中に、ロラ、ハンナ、パトリシア、そしてレオノールが、それぞれに
エディタの呼びかけにより、残った V級歌姫《ヴォーカリスト》の全員がシミュレータルームに集っていた。エディタ
レベッカ姉様……! マリアの声にならない叫びが、闇の中に消えていく。マリアは、セイレネス・シミュレータを経
セイレーン EM《イーエム》- AZ《エイズィ》とウラニアが、持てる火砲のそのすべてを撃ち放つ。極至近距離で
レベッカとレネの食事の日から二日後、二〇九五年の大晦日、夕刻――。 レベッカの邸宅にカティがやってきた。
レベッカはそれからしばらく口を 噤《つぐ》み、じっとレネを見つめた。レネは唾を飲み込んでその視線を受け止め、
レベッカは 携帯端末《モバイル》を 弄《もてあそ》ぶ。マリアは電話をしながら 何処《いずこ》かへと去っていく
一人でICUに入ったレベッカは、ベッドに横たわるその人を見て、言葉を失った。これまでずっと顔は包帯で覆われて
二〇九五年も間もなく終わろうかという頃、レベッカはまだ慣れてもいない新居の窓から、雪がしんしんと降る様子を眺
その日の夜、午後八時を過ぎた頃――。 エディタは艦隊旗艦エリニュスへと召喚されていた。 艦橋《ブリッジ》の
セイレネスによって威力を 増幅《アンプリファイア》された砲撃が、数百キロ彼方のアーシュオン艦隊に大打撃を与え
エディタたちが軍に正式配備されてから約三ヶ月後、二〇九五年十二月――。 重巡洋艦アルデバランの 艦橋《ブリ
ヴェーラの《《事故》》から一週間後、士官学校では卒業式が執り行われていた。この日は、エディタラ歌姫養成科第一
その 手紙《メッセージ》を読み終えて数分後、参謀部第六課、レーマン少佐からマリアの 携帯端末《モバイル》に着
親愛なるベッキーへ わたしは今日、ここでわたしを捨てようと思う。 もしこれで死ぬっていうなら、それはそれ
巡洋戦艦エリニュスから走り出るなり、マリアはレベッカの手を掴んで自分が乗り付けてきた参謀部の黒いセダンに導い
ASA《反歌姫連盟》という謎の組織による襲撃事件から二週間が経過した、二〇九五年九月。 レベッカは、新型
自宅へと向かう車中では、ヴェーラもレベッカもひたすらに沈思し、ひとつも口を開かなかった。家に送り届けた時も、
思い当たるフシはなくもない――ヴェーラはそう言い残すと、それきり何も言わず何も応えず、自分の執務室に立て 籠
死ぬかな――それは一種の淡い期待だったのかもしれない。 そう感じたその瞬間、それまでずっとヴェーラの心を侵
それから約四ヶ月後、新曲「セルフィッシュ・スタンド」がリリースされてから一ヶ月が経過した、二〇九五年八月――
それから数日後、戦艦エラトーを見上げるレベッカは、少し寂しそうな表情だった。エラトーは明日から長期間のメンテ
レベッカは大いに混乱していた。昨夜着ていたはずのブラウスが、自分の隣にきちんと畳まれて置かれているという事実
なし崩し的にマリアを加えた三人は、当たり障りのない話題を面白おかしく広げて話し、食事を進めていった。途中でヴ