2018年3月にギラン・バレー症候群を発症してから米国ハワイで治療とリハビリを行なってきた。アメリカと日本の比較も含めて参考までに治療の経緯を記録する。
5月10日に2ヶ月ぶりに自宅に戻った。 ホノルルから直接日本に行ってリハビリをすることになっていたら、もう2度とヒロには戻らない可能性もあった。しかしヒロでも自宅から通ってリハビリを続けられることが分かったので、それが一番いいということになった。 日本に戻っていたら、まずリハビリ施設や病院に通うのが大変だったかもしれない。東京でわざわざ車を買おうとは思わないし、電車やバスで通うとしたらそれだけで疲れてしまうかもしれない。 それに対してヒロでは、リハビリ施設も病院も家から車で10分足らずの距離にあって妻の運転で連れて行ってもらえる。この町がこんなに便利だとは今まで気付かなかった! ホノルルのRe…
米国は医療費が高いというイメージがあるので、家族はどうなることかと思ったそうだが、ちゃんとした保険に入っていれば大丈夫である。 アメリカの医療保険は複雑で周りに正しい知識を教えられる人もいないので、退院後に保険会社に行って確認して初めてどれだけの自己負担が必要なのか分かった。僕が入っているHMSAという会社の保険プランでは、年間の自己負担額の上限が$2,500と決まっていてそれ以上は払う必要がない。どれだけ医療費がかかったとしても年間で$2,500だけ支払えばよいと分かって驚いた。 日本とアメリカでは診療報酬に大きな違いがある。 診療報酬というのは医療保険から医療機関に支払われる治療費のことで…
2018年5月10日 いよいよRehabを退院する日が来た。ヒロメディカルセンターも含めると2ヶ月に及ぶ入院生活が終了する。 米国のリハビリ病院は患者をどれだけ早く自宅に戻せるか?で評価されるらしく、入院日数の短さを売りにして病院が競っているようである。Rehabも平均の入院日数は12日間と短い。考えてみれば患者が求めていることは早く自宅で生活できるようになることなので、当たり前の評価基準なのだろう。でも日本ではこういう評価の仕方はしないんじゃないかな? 僕は体の運動機能の状態から言えばすぐに退院させられてもおかしくなかったが、おそらく目に問題があったので3週間も入院させてもらったのだと思う。…
Rehabには3週間入院してリハビリを行った。その間の回復状況をまとめると、 下半身は・・・ 入院時も器具無しで何とか歩くことはできたが、どうすれば自然に歩けるのか分からなくなってしまっていた。 セラピーでは廊下や屋外で自然に見える歩き方の練習から始めて、退院時にはある程度意識せずに歩けるようになった。階段は手摺りがあれば上り下りできるようになった。また多くのバランストレーニングを行ったが、片足で立つことは難しかった。 上半身は・・・ 入院時から箸を使って食事をすること、風呂で自分の体を洗うことなど生活に必要なことはひと通りできていた。 退院時でも上半身全体にしびれがあって体がずっしりと重い感…
いよいよ本格的なリハビリが始まる。 最初に説明を受けて、リハビリの時間は1日3時間で基本的には、理学療法(フィジカルセラピー:PT)、作業療法(オキュペーショナルセラピー:OT)、言語療法(スピーチセラピー:ST)の3つをそれぞれ1時間ずつ受ける。そして休みが週に2日ある。それを聞いて、 「何だ、そんなに休みがあるのか。休みなんていらないからもっとリハビリをやりたい。」 なんて思ったけれど、すぐにアメリカのリハビリの恐ろしさを知ることになる。。。 Rehabilitation Hospital of the Pacific(以降、Rehab)はハワイ州で実績No.1と言われるリハビリ専門病院で…
2018年4月17日 午前中に飲み込みのX線テストが行われて合格した! 経鼻チューブはテストの前に外されていたので、昼ごはんから普通の食事をすることになった。普通というのが本当に普通のご飯やおかずを食べていいということでびっくりした。日本だとおかゆ等から始めるのだと思うが、アメリカは違うらしい。 久しぶりに口からご飯を食べてうれしかったが、口が麻痺しているため食べ物を噛むのがとても大変だった。疲れてしまうので、半分位は残した。 昼ごはんのメニュー・てりやきチキン・ミックスベジタブル・ごはん・スープ・オレンジジュース これでホノルルのリハビリ病院に行く準備ができた。ドクターにもリハビリ病院側の準…
2018年4月12日 スピーチセラピーでは、小さい氷を飲み込むトレーニングをしている。口を洗浄して雑菌を除去しておけば、飲み込んだ氷が間違って肺に入ってもあまり問題はない。 この頃は手がしびれていて手作業がうまくできなかった。PTではセラピストに補助されながら歩行器無しで歩く練習を始めた。 2018年4月13日 PCUから一般病棟に移動した。 少しずつ目は開いてきていたが、まだ文字を読んだりテレビを見たりするのは難しかった。スマートフォンを見たり、本を読むことができないのは退屈だった。 妻は毎日、朝8時半頃に来て夜8時頃まで病院にいた。ICUでも一般病棟でもアメリカの病院には面会時間の制限が無…
2018年4月9日 前日に引っ越して来た病室にはシャワー室があったので入院してから初めてシャワーに入った。それまでは、ベッドに寝たままの状態で洗剤やイソプロピルアルコール!を使って体を洗ってもらっていたので、シャワーは気持ちよかった。 スピーチセラピーの時に、明日嚥下(飲み込み)のX線テストをすると言われた。飲み込んだ時に誤嚥(誤って食道ではなく気道に入ってしまうこと)すると肺炎になることがあるので、正しく飲み込めているかどうかX線画像を見ながら確認するのである。このテストをクリアすると、経鼻チューブを外して口から食事をすることができるようになる。 2018年4月10日 嚥下のX線テストを受け…
2018年4月6日 スピーチセラピー(ST)が始まった。食べ物、飲み物を飲み込むことができなくなっていたので、まずは主に飲み込みのトレーニングが行われた。リンゴピューレで練習をして、約1ヶ月振りに口から食べ物を入れたのがうれしかった。 またこの日から急にたくさん喋り始めた。口が麻痺していて呂律がまわらず聞き取りづらいが、口頭でコミュニケーションが取れるようになって非常に楽になった。 2018年4月7日 病室で妻とPT、STの自主トレーニングを毎日行うようになった。この頃の目の状態は、左目だけまぶたが半分位開いていて右目はまだ閉じたままだった。 早ければ来週にホノルルのリハビリ病院に転院できると…
2018年4月4日 前日に口から肺と胃まで通していたチューブを取り外したが、栄養を胃に送るチューブはまだ必要なのでそれまでより少し細いチューブが新たに鼻から胃まで通されていた。 まだあまり喋ることができず、妻の名前を呼んだり、Cough(咳)、Yes、Noと言っただけだった。この日は頭痛がひどかったようである。 2018年4月5日 人工呼吸器が外れたので、病室に看護師が常駐する必要はなくなった。 入院してからずっと使用していた尿バッグの管を取り外した。この日から便器で尿を足すことになった。それはいいのだが、夜はあまり眠れていなかったので頻繁に看護師を呼んで用を足すのは面倒だった。 目が見え始め…
2018年4月2日 朝7時からリハビリで椅子に座る練習をした。また午後には理学療法士(PT)が来て歩行練習が行われた。この日は歩行器を使って38m歩いたのだが、もっと歩きたかった。 もう2、3日前から悪夢は見ていなかったので、両腕をベッドに縛っていた紐を外してほしいと言った。紐が外されて腕が自由になりうれしかった。人工呼吸器に触らないでねと看護師に言われた。 人工呼吸器のチューブを口から挿管している状態は体に負担がかかるので一般的に14日が限度と言われている。この日ですでに22日経っていたので、普通であれば気管切開手術をして喉からチューブを挿管しなければならない。しかし、まだ若くて体力があるの…
2018年3月30日 前日の夜に便が出たのだが、昼の看護師さんがお腹をポンポン叩いてまだ残っていると不吉なことを言った。 朝のエクササイズで椅子に1時間半座った。これまでで一番長い時間座ることができた。午後のエクササイズでは病室から少し外に出たところまで歩行器を使って歩いた。少し歩いただけでも息が切れて、手も足も疲れてしまった。 2018年3月31日 Self Suctionを習った。Suctionというのは吸引器で吸引することで、咳をした時に痰を吸引するものと口の中に溜まった唾を吸引するものがある。唾を飲み込むことができない患者にとってSuctionは必須であり、頻繁に看護師さんにSucti…
2018年3月29日 便器に腰掛ける練習をした。しかし便を出そうとしても腸の機能が麻痺しているので出ない上に、背もたれがない便器に腰掛けるのは体力的に辛くてとても疲れてしまった。 そして、この日急に目が見えなくなったと言い出した。 「さっきまで見えていたのにどうして見えないんだろう?」 すると次のように言われてショックを受けた。 「今までもずっと目は見えていないんだよ・・・顔が麻痺していてまぶたが開かないから・・・」 すでに入院して20日経っていたが、何と僕は自分の目が見えないことをこの時まで知らなかった。 今まで見ていた物はすべて幻覚だったのだ。 これが夢と現実を全く区別できなくなっていた理…
2018年3月27日 日本に帰りたいと言った記憶がある。この時点で自分の病気や容態を理解していなかったので、死ぬ前に日本に戻ろうと思っていたのかもしれない。 日本への移送について産業医を通して神経内科の先生の見解を伺った。人工呼吸器を付けたままの搬送は危険を伴うので勧められないということだった。また費用が700万円かかることも分かった。 また、妻によればヒロの病院の医療レベルや対応は満足の行くものだったそうで、無理に日本に搬送する必要はなかったようである。 2018年3月28日 職場から上司など3人が見舞いに来てくれた。僕は半分眠っている状態だったが、みんなの話し声は少し聞こえていた。病院のド…
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