「明成、これは?」 木の根のそばにしゃがみ込み、草をそっとかき分け、そこに見つけたものを指差し、 現代は傍らに立つハイキングルックの男を見上げて言った。 「それはだめだ。 誤って食べたら吐き下しは免れない毒きのこだ。 しかも、最短でも二日間は高熱で寝込むことになる」 「・・・。 なあ、この寂れた町にも一応スーパーは何軒かある」 「だからわざわざ自らきのこ狩り…
コダワリ派女の面倒くさい日常のくだらない話と主にpixivに掲載中の自作妄想小説の解説や進捗状況なんかを日々つらつらと書き殴っています。
「もしかして、きみ、人生初の恋煩いか?」 「ばっ!! ちがっ・・・ち、ち・・・・・・え、えぇっ?」 どうやら自分が恋煩いをしているという自覚もなかったらしい。 指摘され、両手でカボチャ頭の口元を覆うように驚き、困惑しているラーシュを見て、 久遠はとうとう中指で眉間を押さえた。 さすがにそこまで初心だとは思っていなかった。 とはいえ、初の恋煩いの相手が自分だというの…
「きみが何をするつもりかは知らないし、興味もない。 だが責任を取るというのなら、まずは私の要求に答えることが道理だろう」 「はぁ? 要求ってなんだ、俺はじきに消える。 もう二度とあんたに干渉することはな・・」 「俺は、おまえに楽をさせてやる気はない、と言ってるんだ」 紗城(すずしろ)の言葉を遮り、低く、ゆっくりと含むように言われて全身に緊張が走った。 その言葉が…
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「明成、これは?」 木の根のそばにしゃがみ込み、草をそっとかき分け、そこに見つけたものを指差し、 現代は傍らに立つハイキングルックの男を見上げて言った。 「それはだめだ。 誤って食べたら吐き下しは免れない毒きのこだ。 しかも、最短でも二日間は高熱で寝込むことになる」 「・・・。 なあ、この寂れた町にも一応スーパーは何軒かある」 「だからわざわざ自らきのこ狩り…
「その前に、聞こうか。 私の仔猫は、また一体どこで誰にナンパされたのか。 きみの回答によってはご褒美のデザートはもう少しお預けになってしまうかもしれないが」 「・・・あなたを探している人物に会った」 「ほう。 きみは本当によくその手の人物に遭遇するな。 これで何度目だ?」 明成の言うとおり、この流れは過去にも数回あり、互いにすでに免疫がついているため、 毎回尋ね人…
「もしかして、きみ、人生初の恋煩いか?」 「ばっ!! ちがっ・・・ち、ち・・・・・・え、えぇっ?」 どうやら自分が恋煩いをしているという自覚もなかったらしい。 指摘され、両手でカボチャ頭の口元を覆うように驚き、困惑しているラーシュを見て、 久遠はとうとう中指で眉間を押さえた。 さすがにそこまで初心だとは思っていなかった。 とはいえ、初の恋煩いの相手が自分だというの…
「きみが何をするつもりかは知らないし、興味もない。 だが責任を取るというのなら、まずは私の要求に答えることが道理だろう」 「はぁ? 要求ってなんだ、俺はじきに消える。 もう二度とあんたに干渉することはな・・」 「俺は、おまえに楽をさせてやる気はない、と言ってるんだ」 紗城(すずしろ)の言葉を遮り、低く、ゆっくりと含むように言われて全身に緊張が走った。 その言葉が…
「では、桜乃くんは私と設定の認識合わせをしておこうか」 「はい」 モヒートをもう一口飲んで、公央(きみちか)は頷いた。 「今回の上司と部下の設定は、これにも記載のとおり、もともと恋人未満の微妙な関係だ。 もちろんこの部分は、作品とともに掲載される文章で少し書かれるだけで、 実際に撮影するストーリーの内容には含まれない。 ただ、ごく普通の部下ではなく、そうい…
「どうした?」 ん? と問いながら耳たぶを甘噛みされ、そこから全身に甘ったるい痺れが広がっていく。 「うぅ・・・あなたは、昔から意地が悪すぎるんですよ・・・っ」 「表面を取り繕い本性を隠して相手の懐に入るのは簡単だが、 これから長く付き合っていこうと思う相手にそんなことをしても意味がないだろう。 互いに本性を見せ合い本音で語らなければ本物の信頼関係など築けな…
「すごいな、やはりきみのセンスも独特で素晴らしい。 きみはどちらかというと、洗練されたシャープな印象のものが好きなんだな」 動きやすいラフな服装でやってきた近衛はどこか無邪気な瞳で倉庫の中を見渡している。 ほとんど全身ジャージのような格好なのに、それでも品のある紳士にしか見えないから憎たらしい。 所詮住む世界の違う人間だとはわかっているが、 同じ男として、どこか…
「それはそうと、明成、おまえは気が付いていたか? 現代の中の あのパンドラの箱・・・。 あれが、本人の強い自己暗示だけで鎖されていたわけではないことに」 「・・・いや」 またもやほんのりと意地の悪い笑みを浮かべて問われ、明成はうんざりしながら首を横に振った。 「というか、そもそもわからない単語が多すぎる。 地下組織のグループに、オークションに、プレートに、…
「さあ、今日は僕の奢りです。 どんどん食べてジャンジャン飲んでくださいね!」 両手に花というのは本当に気分がいい。 どちらもかなり個性的な花だが、しかしとても美しいということには変わりがない。 一史はご機嫌な調子で、両隣を交互に見ながらにっこりと笑って言った。 しかし。 「嫌だ、奢りなんてお断りだよ」 「私も結構」 ・・・。 「せっかくセッティングしたのに、二…
「この店の前を通るたびにこのことばかり考えてしまって、辛くなるんだよっ。 もしかしたら、あの部屋に行けば何か解決法がわかるかもしれないって思ったけど、 でもあんた、あの部屋はもう使うなって言ったし・・・」 「ああ、約束させておいて正解だったと今改めて実感していたところだ」 「・・・そ、そういうわけだから、最後にあんたの料理が食えてよかったよ。 まだスタッフ…
ナイジェルがほんの一瞬、視線だけで退路を確認した瞬間、ズキッと右腕の古傷が痛んだ。 「暴れないほうがいい」 静かな声とともに腕を軽く捻りあげられて、思わず本気の悲鳴が口から零れてしまった。 「あ゛ッ、つ・・・ぅ」 「待てッ、崇嗣(たかつづ)! 右腕はやめてやってくれ、彼は・・・ナイジェルは、俺の・・・友人だ」 友人・・・? はっきりとそう言われ、心の奥底では…
静思はゆっくりと寝かされていたベッドから身を起こすと、 ほぼ同時に両側からすっと差し出された 時郎と董の手を交互に見た。 少し頑張れば、そのような支えに頼らずとも自分の足だけで歩くことは可能だと思うが・・・ 静思がわずかに迷っていると、逆に董のほうから手を取られた。 すると今度は反対側を時郎に取られる。 「とりあえず目標は十キロ増だな」 「時郎、そういうおまえだって…
「これは、随分大胆な行動に出たな」 陽も落ちた無明ヶ丘の寂びれた駅前。 その言葉とは裏腹に、近衛はとくに驚く様子もなく足を止めた。 「待ち伏せなどしなくても、普通に呼び出せばいいものを。 連絡先は教えておいたはずだが?」 「・・・話が、したい」 「そんな全身に毒がまわったみたいな顔をして。 せっかくの男前が台無しだ」 休日でもきちんとした格好をしているのはさすが…
「十五年も待たせておいて、まだ逃げるつもりか。 おまえが追いかけっこ好きな兎だということはよくわかったが、私はもうそろそろ落ち着きたい」 「だから、何の話を・・・」 「これ以上まだとぼけた態度を取り続けるというのなら、私にも考えがある」 片手でまとめられた手をそのままに、くちびるを塞がれた。 「ぁ・・・ふぅ、んんぅ・・・」 まずい、そう思ったが遅かった。 …
「だから頼れと言っているだろう」 ほんのりとうんざりさを感じるほど呆れた調子で言われて、景都はおそるおそる口を開く。 「・・・えっと、さっき、響生さん、なんて言いました? 接点がなくなるって言いました?」 「言ったが、それがどうした」 ・・・! やはり、聞き違いなどではなかった。 ということはつまり、響生は、自分と会えなくなってもいいのかとそう言ったのだ。 そん…
現代は固く目を閉じた。 もうあの頃とは違う、と何度も自分に言い聞かせる。 当時の、いつ消えてもいいと本気で思っていた 投げやりで、虚ろで、空っぽな自分ではない。 意志を持ち、目的のために生きているのだ。 こんなところで再び昔と同じ罠に落ちてしまうわけにはいかない。 「なるほど、本当にいい表情(かお)をする」 「・・・」 「こう思っているのだろう、どうしていつもこのよ…
「きみ、うちの派遣の女性たち複数人に手を出していたそうだが」 「あ」 それで思い出した。 そうだ、久満子の名刺に書かれていたロゴだ。 となると、久満子と、それ以前に親密な関係になった女子たちがこの男に相談でもしたのだろうか。 「心当たりはあるようだな」 「はぁ・・・まあ・・・」 しかし解せない。 先日の久満子も含め、基本的には誰ともとくに大きな問題も後腐れ…
「・・・殺すなよ」 「しつこいやつだな、おまえも」 景都を抱えながら、夕凪が背後に向かって再び言う。 それに対し返ってきた冷たく硬質な声は、紛うことなき響生のものだ。 「誰が後始末をさせられると思っているんだ。 しつこくもなる。 正直、私もその男がどうなろうと構わないが・・・今は、景都の処置を優先してやるべきだ。 どうせもうすでに関節の一つや二つ外しているん…
「・・・なんだ、ついに出迎えサービスまで始めたか?」 「ひっ、響生(ひびき)さんッ!? なんで・・・」 ドアを開けたのは背の高いハンチング帽の男、響生だった。 いつもなら待ってましたとばかりにカウンタの中で大きく振りまわしてしまう尻尾が、 今日は予想外のタイミングでの来店に驚き、ピンッと上に張っている。 「なんでも何も・・・。 おまえ、ひどい顔色だな。 もしかして…
「それで六年前のそのとき、やつは何をしていたんだ?」 「わかりません」 この質問に対しては御影も淀みなく答えた。 本当に知らないからだ。 「ん、つまりどういうことだ? 釈永紗城は今さら御影の前に現れて、 当時あの研究室に自分が現れたことを逢沢さんには話してくれるなと、そう言ったということか? 先日、あんたが自分と初対面だと思い込んでるのは、あちらさんにもわか…
「これは、随分大胆な行動に出たな」 陽も落ちた無明ヶ丘の寂びれた駅前。 その言葉とは裏腹に、近衛はとくに驚く様子もなく足を止めた。 「待ち伏せなどしなくても、普通に呼び出せばいいものを。 連絡先は教えておいたはずだが?」 「・・・話が、したい」 「そんな全身に毒がまわったみたいな顔をして。 せっかくの男前が台無しだ」 休日でもきちんとした格好をしているのはさすが…
「十五年も待たせておいて、まだ逃げるつもりか。 おまえが追いかけっこ好きな兎だということはよくわかったが、私はもうそろそろ落ち着きたい」 「だから、何の話を・・・」 「これ以上まだとぼけた態度を取り続けるというのなら、私にも考えがある」 片手でまとめられた手をそのままに、くちびるを塞がれた。 「ぁ・・・ふぅ、んんぅ・・・」 まずい、そう思ったが遅かった。 …
「だから頼れと言っているだろう」 ほんのりとうんざりさを感じるほど呆れた調子で言われて、景都はおそるおそる口を開く。 「・・・えっと、さっき、響生さん、なんて言いました? 接点がなくなるって言いました?」 「言ったが、それがどうした」 ・・・! やはり、聞き違いなどではなかった。 ということはつまり、響生は、自分と会えなくなってもいいのかとそう言ったのだ。 そん…
現代は固く目を閉じた。 もうあの頃とは違う、と何度も自分に言い聞かせる。 当時の、いつ消えてもいいと本気で思っていた 投げやりで、虚ろで、空っぽな自分ではない。 意志を持ち、目的のために生きているのだ。 こんなところで再び昔と同じ罠に落ちてしまうわけにはいかない。 「なるほど、本当にいい表情(かお)をする」 「・・・」 「こう思っているのだろう、どうしていつもこのよ…
「きみ、うちの派遣の女性たち複数人に手を出していたそうだが」 「あ」 それで思い出した。 そうだ、久満子の名刺に書かれていたロゴだ。 となると、久満子と、それ以前に親密な関係になった女子たちがこの男に相談でもしたのだろうか。 「心当たりはあるようだな」 「はぁ・・・まあ・・・」 しかし解せない。 先日の久満子も含め、基本的には誰ともとくに大きな問題も後腐れ…
「・・・殺すなよ」 「しつこいやつだな、おまえも」 景都を抱えながら、夕凪が背後に向かって再び言う。 それに対し返ってきた冷たく硬質な声は、紛うことなき響生のものだ。 「誰が後始末をさせられると思っているんだ。 しつこくもなる。 正直、私もその男がどうなろうと構わないが・・・今は、景都の処置を優先してやるべきだ。 どうせもうすでに関節の一つや二つ外しているん…
「・・・なんだ、ついに出迎えサービスまで始めたか?」 「ひっ、響生(ひびき)さんッ!? なんで・・・」 ドアを開けたのは背の高いハンチング帽の男、響生だった。 いつもなら待ってましたとばかりにカウンタの中で大きく振りまわしてしまう尻尾が、 今日は予想外のタイミングでの来店に驚き、ピンッと上に張っている。 「なんでも何も・・・。 おまえ、ひどい顔色だな。 もしかして…
「それで六年前のそのとき、やつは何をしていたんだ?」 「わかりません」 この質問に対しては御影も淀みなく答えた。 本当に知らないからだ。 「ん、つまりどういうことだ? 釈永紗城は今さら御影の前に現れて、 当時あの研究室に自分が現れたことを逢沢さんには話してくれるなと、そう言ったということか? 先日、あんたが自分と初対面だと思い込んでるのは、あちらさんにもわか…
「あっ、すみません! あとで掃除するときに一緒に片付けようと思って出しっぱなしに・・・」 突然背後から聞こえてきた、少し慌てた声に 秋一郎は振り返った。 そして軽く瞠目する。 「おい・・・」 智が腰にバスタオルを巻き付けただけの状態でこちらに小走りに向かってきたからだ。 「な、何やってるんだ、おまえ」 「え? シャワーしてました」 髪から雫をポタポタと零しなが…
「じきに分かりますって。そんなことよりも、さっきこの近くであの方とすれ違いましたよ。 ほらあの・・・あれ? 顔はしっかり思い出せるのに名前が出てこない・・・えーと、ほら、あのリュクスの・・・」 一史の勤めるジュエル製薬株式会社のライバル会社、株式会社リュクスの営業。 珍しくド忘れしてしまった男の名前を思い出そうとしていると「あぁ、彼ね」と廿楽はすぐにピンと来たよう…
暗い廊下を曲がるところで慣れ親しんだ気配を感じ、足を止めた。 「あ、ボス」 そこにいたのは側近の魔物、相樂(さがら)だ。 ちょうど文明に用があったらしい。 「なんだ」 言いながら、文明は相樂からふわりと漂った懐かしい香りに気付く。 この香りは・・・ 「・・・茶か?」 それも日本茶、緑茶だ。 中国を拠点にしている文明は普段あまり飲む機会はない。 「はい。 …