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Fish On The Boat https://blog.goo.ne.jp/mask555

本や映画のレビューや、いろいろな考え事の切れ端を記事にしています。

本や映画のレビュー中心。「生きやすい世の中へ」をメインテーマとして、いろいろな考察、考え事を不定期記事しています。

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2014/07/08

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  • 「goo blog サービス終了」となり。

    「このブログ、終わっちゃうんだ!」とびっくり。数日ほど前でした。gooブログさんには長いことお世話になりました。発表、表現、楽しみの場として(ときに愚痴をこぼす場として)おおいに活用させていただきました。数えると20年くらい続けてましたね。ありがとうございました。感謝です。記録や思索の場としても活用できたし、よき仮想スペースだったなあ。そんなわけで、なかなかの量があるこれまで書いた記事たちをどうするかと考えていました。引っ越しデータを作っていただけるということなので、それはマストで作っていただこうと計画していますけれども、それとは別に、「カテゴリ映画」「カテゴリ考えの切れ端」「カテゴリ読書」の記事はとっておきたい。読書記事はすでにブクログを利用していまして、ここの記事と同様のものを数年前からアップしていま...「gooblogサービス終了」となり。

  • 『黄金の壺』

    読書。『黄金の壺』ホフマン神品芳夫訳を読んだ。ドイツ・ロマン派の異才と呼ばれるホフマンによる初期の傑作。1814年の作品です。ホフマンの作品には怪奇幻想小説の要素があり、超現実的小説の要素もあって、後年前者はポーへ、後者はカフカへと連なっていく。そういった系譜にある作家だと解説にありました。1974年の翻訳です。文字の小ささはしょうがないとしても、訳自体はとても読みやすかった。簡便で端的な言葉づかいによって小説世界がわかりやすく展開していきます。怪奇幻想・超現実のシーンが、クライマックスのみならず序盤から繰り広げられます。なんといっても、主人公の大学生・アンゼルムスがはなから外を歩いているだけなのに、老婆がリンゴを路上販売しているお店につっこんでいきます。その弁償として財布ごと有り金すべて失うんですが、そ...『黄金の壺』

  • 『対話のことば オープンダイアローグに学ぶ問題解消のための対話の心得』

    読書。『対話のことばオープンダイアローグに学ぶ問題解消のための対話の心得』井庭崇長井雅史を読んだ。オープンダイアローグという対話技法はフィンランドで生まれ、かの国ではまず統合失調症、うつ病、PTSD、家庭内暴力など精神疾患の治療で用いられ成果を上げてきました。日本には2010年代に紹介され、精神科医である斎藤環さんが書かれた書籍もあります。本書はそんなオープンダイアローグを他の問題への応用が効く技術として広くとらえます。つまり、心理療法のみならず、家族、職場、友人などの人間関係のこじれすべてに適用可能なものとしているのでした。そういった前提の上、パターンランゲージという技法で分節された抽象性の高い30個のパーツをひとつずつ学んでいくかたちをとっています。また、30個のパーツは3つのグループごと10の集まり...『対話のことばオープンダイアローグに学ぶ問題解消のための対話の心得』

  • 『陰影礼讃・文章読本』

    読書。『陰影礼讃・文章読本』谷崎潤一郎を読んだ。昭和8年に書かれた名エッセイ『陰影礼讃』と、翌年に書かれた文章道を説く『文章読本』の二作品を合わせたもの。他に、『厠のいろいろ』他二篇を収録。『陰影礼讃』は、当時の西洋化していく居住環境への違和感からはじまって、自然すたれていく和の美的感覚「陰影」をその手の中に取り戻すように言語化し認知し直すエッセイでした。電灯の明かりでぱあっと隅々まであたりを照らし出すのではなくて、燭台の灯などがぼうっと明かりを作り、部屋の中に闇のグラデーションのあるのが日本家屋の有りようです。僕にも相当うっすらと、そういった昔の暗い家の記憶があります。50年近く前に住まわれていた田舎の家というものにはそういった陰影は当然のものではなかったでしょうか。現代でも、「陰影」の美が好きな人は、...『陰影礼讃・文章読本』

  • 『ユリイカ 総特集*奈良美智の世界 2017 VOL.49-13』

    読書。『ユリイカ総特集*奈良美智の世界2017VOL.49-13』青土社を読んだ。2017年刊行。ずっと本棚で寝ていました。アーティスト・奈良美智さんの特集。作品のカラー写真はいわずもがな、奈良さんとの対談やインタビュー、寄稿、論評、そして奈良さん本人による紀行文や半生記まであります。全255ページたっぷり楽しめます。奈良さんの絵の有名な特徴といえば、前髪が短くぱっつんで目つきのきつい小さな女の子がちょっと小生意気なポーズをとっているものがまず浮かびます。それでもってロックな感じがする。美術畑の話を僕はまったく触れてきていないから面白さ満点でした。たとえばこういう話なんかもあります。古代ローマの博物学者・大プリニウスによると、絵画の起源とは恋人との別れを惜しんだ少女が壁に映った恋人の影をなぞった行為に始ま...『ユリイカ総特集*奈良美智の世界2017VOL.49-13』

  • 『教育格差』

    読書。『教育格差』松岡亮二を読んだ。裏の帯にこうあります----<「緩やかな身分社会」この国の実態。>教育格差についてざっくり言うと以下のようになります。父が大卒の子は大学進学率が高い。そして大学進学率には地域格差・学校格差もしっかりある。父大卒と関係ある条件だけれども、経済的に恵まれて幼少時から習い事をしていると大学進学率が高い。親の、教育に対する肯定的意識の多寡も子の進学に影響するのでした。個人的には、これらはでも、未就学時点ですでに薄く感じていましたよ。習い事したいなあって思う動機のなかにはこういうことを察している部分がありました、振り返ると。教育システムは選別機能を持っている。社会自体もそれを望んでいる。たとえば商品に、信用に基づいた値札がついていなくて自分で価値判断しないといけなければ大半の人は...『教育格差』

  • 『Quick Japan vol.175 齋藤飛鳥 詩を紡ぐ身体』

    雑誌を読書。『QuickJapanvol.175齋藤飛鳥詩を紡ぐ身体』を読んだ。齋藤飛鳥さんの特集。ご自身へのインタビュー二本と、関係者10人へのインタビュー、そしてアート性のあるフォト、トータル90ページといった構成だった。乃木坂46卒業公演から約1年半が経つころの企画。齋藤飛鳥さんは、今、何を考えているのか。使い古された言葉だけれど、彼女の「現在地」をフレームに収めようという努力の企画である。もちろん、フレームに収まりきるはずがないし、フレームに向けてさらけだすタイプでもない。共感を抱くような考え方がしばしばでてくる。これはちょっとうれしい。でもそれは、僕が大好きな乃木坂46、そして気になり続けた齋藤飛鳥さんから、意識的にも無意識的にもさまざまな影響をたくさん受けた結果、僕のほうが似たということなのか...『QuickJapanvol.175齋藤飛鳥詩を紡ぐ身体』

  • 型にはまる安心と、型にはまって負う傷。

    昨年10月期のドラマ『ライオンの隠れ家』の主人公には発達障害の弟がいた。弟は、時間に正確を期し、やることの順番も毎日おなじ。つまり自分を型にはめることで自身の状態を保っていた。これは、社会に自分をあてはめるやり方で、そうしないと不安になってパニックを起こすから。不安にならないため、秩序を求める。いっぽうで、メンタルを病んだり調子を崩したりする人のなかには、社会性に耐えられなくなったのではないか、と考えられるところがあったりする。現代の社会性による厳しい締め付け、型にはめすぎなところが、本来の人間性を発揮する時間やその実感を押しのけてしまう。人間ひとりの中でも、人間性と社会性の配分はあるし、社会自体も極端なありかただといけないんじゃないかと思う。社会的な事象については、モノのように見て扱えばいい、とデュルケ...型にはまる安心と、型にはまって負う傷。

  • 『こぼれ落ちて季節は』

    読書。『こぼれ落ちて季節は』加藤千恵を読んだ。いろいろな人たち、とくに学生など若い人たちが多くでてきます。本作は恋愛を扱う連作短編なのですが、そのなかで主人公を担っているひとたち、相手役の人たち、脇役の人たち、それぞれが、外向的だったり内向的だったり、興味の方向も恋愛観も、積極性の強い弱いも違うことがしっかり書き分けられている。ほんとうにいろいろな人が描けているので、小説世界が閉じていないです。だから、フィクションではあっても、誰かの(つまり著者の)独り舞台のような空想劇という感じは僕にはほとんど感じられなくて、好ましく、そして心地よく思えた作品でした、ときに屈折した心理を見せる人物がでてきてもです。読み心地の重さ、軽さといった重量感にしてみても、読み手として負担の少ないちょうどよい好感触でした。最初の短...『こぼれ落ちて季節は』

  • 『蛇の神 蛇信仰とその源泉』

    読書。『蛇の神蛇信仰とその源泉』小島瓔禮編著を読んだ。古より蛇は、「正・邪」善・悪」「敵・味方」など、相反する性質をもたされた揺らぎのある存在とみなされてきたそうです。矛盾が同居させられていて、同じ神話や言い伝えのなかでもケースバイケースでどちらかに転んだ行動を取らされていたり、物語の性質によってどちらかの側に立たされていたりする生きものでした。また、インドの神話では、蛇は宇宙蛇としてこの世界を根本から支える存在とされていますし、北欧神話でもミズガルズ蛇が大地の中心を担い、世界の軸としての役目を持つような神様だったりします。本書は、そんな「蛇」への人類の精神史といいますか、人間は蛇になにを感じ、またなにを見てきたかを、古文書や伝承などから読み取り考察したものを教えてくれます。蛇の神って伝統的にけっこうポピ...『蛇の神蛇信仰とその源泉』

  • 『TRIANGLE MAGAZINE 03 乃木坂46 遠藤さくらcover』

    読書。『TRIANGLEMAGAZINE03乃木坂46遠藤さくらcover』を読んだ。先陣を切るのは、3期生・与田祐希さん。沖縄での撮影でした。乃木坂に入ったときからのかわいさは色褪せないまま、瞳の輝きや表情に、大人になったこと、精神年齢をきちんと重ねてきたことがうかがえます。ずっとそういう香りがしていた「野生児感」というか「奔放な感じ」というか、そういったものも大人になっていくなかでどうやら昇華され、彼女の中で女の子感とともに統一されたような印象があります。彼女自身の中で収まりがついたような感じといったらいいでしょうか。先輩に可愛がられ、自分が先輩になると「先輩にしてもらったように」優しく後輩の悩みを聴いてあげたりするようで、面倒見の良さのある人でもあるようです。中学生の頃にはちょっとした嫌がらせを受け...『TRIANGLEMAGAZINE03乃木坂46遠藤さくらcover』

  • 『13歳からの法学部入門』

    読書。『13歳からの法学部入門』荘司雅彦を読んだ。著者は弁護士。法律はなぜあるのだろう、なぜ必要なのだろう、という初歩的で根源的な疑問から考えていく本です。前半では、正義、国家、自由、権利などを考えていくことで、法律の概念がくっきりとしてくるつくりです。後半では、法律の文章の読み方など、具体的な面を教えてくれます。「13歳から」とタイトルにありますが、初学者、あるいは、ちょっと興味を持った人に対しての間口が広いという意味で、万人におすすめできます。それでいて、法律周辺の深みに触れることができるでしょう。。中世ヨーロッパの思想家であるホッブス、ロック、ルソーがそろって国家は必要と説いたこと、そして産業革命以降の市場と資本主義の経済、法律が自己増殖するさまなどがまず第一章で語られていました。授業で13歳に語り...『13歳からの法学部入門』

  • 『明るい夜に出かけて』

    読書。『明るい夜に出かけて』佐藤多佳子を読んだ。山本周五郎賞受賞作品です。接触恐怖症でいわゆるコミュ障の二十歳の男性。彼が、主人公の富山(とみやま)で、とあるトラブルのために東京の大学を休学していて、実家も東京なのだけれど神奈川県の金沢八景に木造アパートの一室を借りている。富山はコンビニで深夜バイトとして働き、趣味は深夜ラジオを聴くこと。そのなかでも、アルコ&ピースのオールナイトニッポンにハマっている。トラブルの影響でやめていたハガキ職人も、ラジオネームを新しくし、細々と再開もしている。そんな彼と、同じコンビニで深夜バイトをする年上の歌い手・鹿沢や、奇しくも出合うことになったアルコ&ピースのANNヘビーリスナーで実力派ハガキ職人の女子高生・佐古田、そして、富山と高校時代の同級生で、この地の居住先を紹介して...『明るい夜に出かけて』

  • 『ヘビ学 毒・鱗・脱皮・動きの秘密』

    読書。『ヘビ学毒・鱗・脱皮・動きの秘密』ジャパン・スネークセンターを読んだ。全世界で約4100種を数えるヘビの生態のあれこれを解説し、さらに全体の2割程度を占める毒ヘビのその毒の種類などについて深掘りし、それからヘビにまつわる事件(違法飼育事件、脱走事件、咬傷事件など)を紹介し、最後に神話や伝承などから人類がヘビに何を見てきたかを辿っていく構成です。著者名義の「ジャパン・スネークセンター」は群馬県にある蛇専門の動物園で、一般財団法人「日本蛇族学術研究所(蛇研)」が運営しているそうです。執筆には、研究者四名があたっていました。本書で得られる知識の一端を箇条書き的に少しだけご紹介します。ヘビには聴覚がない。道にヘビがいてどいてくれないときに、大声で「どいてー!!」などと怒鳴ったり叫んだりしても、ヘビには聞こえ...『ヘビ学毒・鱗・脱皮・動きの秘密』

  • 『チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学』

    読書。『チョンキンマンションのボスは知っているアングラ経済の人類学』小川さやかを読んだ。香港にある安宿、チョンキンマンション。そこには貧困国タンザニアからやってきた多くの人たちなど、多国籍の人びとが住まっている。それぞれが、さまざまに、インフォーマルな仕事をしながら。ブローカー業、衣料や雑貨や家具そして家電製品などを仕入れて母国で売る商人、セックスワーカー、地下銀行業者など。そして明記はされていないけれども、麻薬の販売や窃盗、詐欺などをしている者も少なくはないはず。そんなチョンキンマンションの「ボス」を自称するタンザニア人のアラフィフ男性・カラマが、論考的エッセイである本書の最重要人物として登場します。著者は偶然にも彼と出会い、それから友好関係ができあがっていき、そのうち彼の連れのようになり、ともに日常を...『チョンキンマンションのボスは知っているアングラ経済の人類学』

  • 『故郷/阿Q正伝』

    読書。『故郷/阿Q正伝』魯迅藤井省三訳を読んだ。20世紀初頭、清王朝から中華民国、中華人民共和国へと激しく移り変わっていく時代に、文芸による革命を信条に創作をつづけた魯迅の新訳作品集。魯迅は若い頃、日本へ留学して東京や仙台で7年余り暮らし、漱石や芥川の影響を受けた人です。最初の短編「孔乙己(コンイーツー)」から心をぎゅっとつかまれました。「孔乙己」は馬鹿にされ舐められきってしまった、貧しい男です。科挙に受かるほどではないのだけど学はあるほう。彼に焦点を当てる意味とはいったい、と考えながら読んでいました。彼がひとときの楽しみのために通う酒屋、そして日々の暮らしのなかで、彼の周囲にいるあまり学のない庶民との対比、そして苦しい境遇に食い殺されて盗みを働きそれをあかるみにだされ、揶揄われ蔑まれる「孔乙己」。読者は...『故郷/阿Q正伝』

  • 『非線形科学 同期する世界』

    読書。『非線形科学同期する世界』蔵本由紀を読んだ。「同期(シンクロ)」をキーコンセプトとして、さまざまな興味深い現象を見ていき、そして、その都度、その現象を起こしている「同期」について解説しながら、「同期」そのもののイメージを深めていくような本でした。17世紀、オランダで活躍した科学者ホイヘンスのよって、並べたふたつの時計の振り子が同期する現象が報告されたのが、この分野の起源とされているそうです。ここからこの分野の話が開始されます。この時点で、「同相同期」と「逆相同期」が解説されているのですが、ならべた時計の振り子が同期して、同じように左右に振れているのが同相同期で、片一方が右に振れたときに他方が左に振れるのだけれどもリズムはいっしょというのが逆相同期です。同期はさまざまな現象の仕組みに備わっていることが...『非線形科学同期する世界』

  • ちょい出し「僕の人物像」

    「僕」という人について、たまにここで語ったりしますが、人物像についてあまり情報を公開していないかもしれません。今回は人物像情報の「かけら」とでもいうべき、些末なことがらをすこし書いていこうと思います。まず、「ハゲ」から。僕の親父も祖父もつるつるにハゲた人で、親父なんかは僕が物心ついたときにはもうハゲていました。僕が子どもの時分、親戚にも友達にも「将来はもう決まったな」みたいに言葉でも言われたし、言外の表現でも感じてきたものです。それは「諦めるほかない」「しょうがないことなんだ」というなぐさめの裏におかしみを隠した体でした。そういう周囲の環境で育つと、「ハゲ」はよくないこと、格好悪いことという意識が刷り込まれていきます。時代的にもハゲは大笑いされるものでしたし、負い目を負わすものとしてそれはあったような気が...ちょい出し「僕の人物像」

  • 『第5コーナー 競馬トリビア集』

    読書。『第5コーナー競馬トリビア集』有吉正徳を読んだ。競馬読み物です。記録、データ、ジンクス、血統ドラマ、人間ドラマ、競馬にまつわるおもしろい偶然。そういったもののトリビア集。書名の『第5コーナー』とは。競馬場は第4コーナーまでしかないコース形態をしています。そんな、存在しない「第5コーナー」という架空の名称を戴いたのは、まだ誰も触れたことの無い記録やエピソードを残すことに挑戦しようと決めたからだとありました。架空ではありますが、誰も走ったことの無いコーナーに読者を誘う意味合いにも取れ、ユーモアが感じられます。日本軽種馬協会発行の『JBBAニュース』という月刊誌に著者が2008年から書いているコラムがこの『第5コーナー』で、本書が書かれた2020年5月時点までのデータが元になっているそうです。繁殖の観点か...『第5コーナー競馬トリビア集』

  • 『残された者たち』

    読書。『残された者たち』小野正嗣を読んだ。五人しか住んでいない海岸沿いの集落、尻野浦。校長先生と若い女性教師、そして父、息子、娘、の一家がその居住者のすべてです。また、近くには干猿というガイコツジン(外国人)が住む集落があります。尻野浦と干猿ともども、限界集落以上に限界状態なので、もはや地図上からは消えてしまった土地だったりします。そんな土地での日常から生まれた物語でした。まず。純文学の語り方って、過去と今の間の垣根が低かったりします。混同まではしていないけれど、峻別とはほど遠い。時間認識が、人の意識の自然な再現に近いのかもしれません。人はいろいろ考えながら頭の中で自在かつ自由に時を超えながら1日を過ごしているものですから。そういった感覚かと思います。エンタメだったら、過去と今の垣根が低くなって、読者にも...『残された者たち』

  • 愛すべき、アイドル卒業後の彼女たち。

    卒業したアイドルさんが彼女たちのイメージに無いような卒業後の行動をふつうにとっているとき、それはたとえば、居酒屋とかスナックでおしゃべりしながら楽しく飲んでいたり、町中華の小上がりであぐらをかきながら瓶ビールをぐひぐびやっていたり。これらの、なんてことはないのだけど、ちょっと「どうしてだろう?」とファン側からは思えてしまう振る舞い。そんな彼女たちにたいして、僕には「現役アイドル時代、いろんなファンと向き合ってきたから仮説」がある。あくまででっかい仮説です。勝手な想像の産物に近いですが。仮説とはこういうもの。お金のないファン、人生負けっぱなしのファン、嫌われ者のファン、悲しみや苦しみを背負ってるふうなファン、身なりが汚いファン、言葉遣いが荒いファン、表情も口数も少ないファンその他などなど、いわゆる「少数派に...愛すべき、アイドル卒業後の彼女たち。

  • 謹賀新年 2025

    あけましておめでとうございます。僕は、体調とくにメンタルが落ち込んでいて休みを積極的にとりにいっている最中です。このぶんだと、長編執筆にとりかかるのはもう少し先になりそうです。書き始めても、途中でダウンするのが目に見えているので。ということで、今年は、心身の健康に気遣うことをいちばんに考えようと決めました。ネガティブにもポジティブにも休息する、身体をあたためる、無茶しない。あと、気に掛けるのは金銭面。noteで有料記事を書こうか、と考え中ですが、それじゃなくてもアクセス数が少ないのに、購読してもらえるものだろうか、とあんまり乗り気じゃなかったりはするのですが。昨年見たドラマやアニメでは、『君が心をくれたから』『アンメット』『推しの子(二期)』がよかったです。まだ、10月期に録画したものには手を付けていない...謹賀新年2025

  • 『日向撮 VOL.01』

    読書。『日向撮VOL.01』日向坂46を読んだ。2021年4月発刊の、日向坂46メンバーみんなによる日向坂46の写真集。気の知れた仲間同士だからこその、わちゃわちゃ感のあるショットや楽しくふざけているショット、隙を捉えたショットなどが盛りだくさんでした。日向坂46といえばハッピーを生み出すことをモットーとしたアイドルグループですが、彼女たち自身のあたかかな楽しさに満ちた幸福感が本書のページからあふれ出してくるような写真集になっていました。眺めているだけなのに、彼女たちのエネルギーに押され気味になるくらいです。また、メンバーみなさんの個が立っていますから、どのメンバーのショットにも惹きつけられるのでした。僕は小坂菜緒さんや山口陽世さん、加藤史帆さんや上村ひなのさんたち、名前をだしていくとどんどん出てきてしま...『日向撮VOL.01』

  • 『「利他」とは何か』

    読書。『「利他」とは何か』伊藤亜紗編中島岳志若松英輔國分功一郎磯崎憲一郎を読んだ。東京工業大学のなかにある人文社会系の研究拠点「未来の人類研究センター」に集まった研究者のうち、「利他プロジェクト」の5人のメンバーでそれぞれ<「利他」とは何か>について執筆したものをまとめたものが本書です。発刊は2021年。「利他」といえば、「利己」の反対の行為で、つまり自分の利益を考えて振舞うのではなくて、他者の利益になるように助けてあげること、力になってあげることとすぐにわかるじゃないか、とせっかちにも僕なんかはすぐに答えを出してしまったりするのですが、本書を読んでみると、一言に「利他」といっても、たとえばそこに「利己」が裏面にべったりとひっついていることがわかってきて、かなり難しいのです。そりゃあそうなんです。利他、と...『「利他」とは何か』

  • 『猫を棄てる 父親について語るとき』

    読書。『猫を棄てる父親について語るとき』村上春樹絵・高妍を読んだ。作家・村上春樹さんが、お父様が亡くなったことをきっかけに、自分の父親について、そして村上さんとの関係性について、時代背景である戦争について、実際に書きはじめてみることで考えを深めていったエッセイです。台湾出身の高妍さんが担当された表紙と挿絵は、なんだかぼんやりとした思索を静かに呼ぶような絵でした。村上千秋さんという人が春樹さんのお父様で、京都のお寺・安養寺の次男として誕生します。安養寺の住職が村上さんの祖父ですが、もともとは農家の子だったのが、修行僧として各寺で修業を積み、秀でたところがあったらしく住職として安養寺を引き受けることになったようです。僕は読む作家を血筋で選ぶことはないので(多くの人もそうだと思います)、作家と言えば全般的に、無...『猫を棄てる父親について語るとき』

  • 『心の野球 超効率的努力のススメ』

    読書。『心の野球超効率的努力のススメ』桑田真澄を読んだ。高校時代はPL学園で甲子園で大活躍をし、プロ野球選手になると読売ジャイアンツで長年エースとして実績を残し、最後はメジャーリーグに挑戦しパイレーツでユニホームを脱いだ野球人、桑田真澄さん。彼が2010年に出版した自らの野球哲学、ひいては人生哲学の本が文庫化されたものが本書です。彼がずっと背負い続けた背番号「18」と合致する、全18章仕立てでした。桑田さんといえば、天賦の才能を持った選手という印象と共に、日々一歩一歩、確実に向上していく選手というイメージもある方でした。努力を積み重ねていくことを愚直に体現した人、といってまったく間違いにはならないでしょう。他方、プロとして駆け出しのころには、不動産で騙されて多くの借金を背負ったり、先発投手情報をよそに流し...『心の野球超効率的努力のススメ』

  • 『かがみの孤城 上・下』

    読書。『かがみの孤城上・下』辻村深月を読んだ。かがみの孤城に集められた7人の中学生。彼らは5月から3月までのあいだ、鍵探しと鍵の部屋探しを課されます。鍵を見つけ、鍵の部屋を探し当てたものは、そこで願いをひとつ叶えられるというミッションです。また、7人の他にもうひとり、彼らを集めた張本人である狼面の少女が監督者として、たびたび出現しますが、年齢不相応の話し方がおもしろいです。ギャップの妙、というものがあります。「言葉が通じない」と主人公のこころが思うところがあります。こころがひどいいじめを受けた真田さんや、担任の伊田先生に対して強く。また、様々な地区から集まった中学一年のクラスで、最初から遠慮もなく自分たちが主人公というように自己都合優先で、つまりでかい顔をして学校生活をするタイプの人たちがでてきますが、こ...『かがみの孤城上・下』

  • 『恐怖と不安の心理学』

    読書。『恐怖と不安の心理学』フランク・ファランダ清水寛之・井上智義監訳松矢英晶訳を読んだ。著者はニューヨークで開業している心理療法士です。セラピー現場での経験と、学んできた知識とがうまく融合したような知見が語られていて、とてもエキサイティングな読書となりました。心理学や精神医学分野の読書感想ではそうなることが多いのですが、今回も勉強モードでの長文レビューとなります。今回はより箇条書き的なレビューですが、ご容赦ください。後半部はいくつか引用をまじえながら書いていますので、まずさらっと知りたい方はスクロールしてそちらから目を通してみてくださるとわかりやすいかもしれません。暗闇という状況に恐怖を感じるように、人間はできています。それは原始の頃から。夜行性の肉食動物に襲われる危険がありましたし、それでなくても、歩...『恐怖と不安の心理学』

  • 『黙って喋って』

    読書。『黙って喋って』ヒコロヒーを読んだ。本を読むことで旅をする。行ったことのない土地、異国、ファンタジーの世界、未来そして過去の世界。ひととき、日常を忘れ、本の世界に浸る。そうやって、本を読む人たちはリフレッシュしたりする。知らなかった世界を知るばかりか、考え方を教えられるというよりも発見するに近い経験をしたりもする。と、まあ、ここまで書いたことも、読書のほんの一面に過ぎないとは思います。ピン芸人・ヒコロヒーさんのよる全18編の短編集『黙って喋って』はどんな世界へ読者を連れて行ってくれるのか。簡単にいうとそれは、若い年代の女性がしっかりと地面を踏みしめながら歩いていく日常の世界へだと思う。そこには恋愛がもれなくくっついていて、テーマとしてはそっちがメインにはなっている。ただ、「薄い」ともいえず、「浅い」...『黙って喋って』

  • 異性関係の「圧」

    これはあくまで空想からの思考実験なのですが。しかしながら以下のような考え事が、小説執筆時の物語場面などに影響したりするんです。・・・・「まさかあなたがわたしに不満を言うなんてことはありえないよね」とおそらく疑いなく考えているんだろうなあ、という、そういう種類の「圧」ってある。で、「何かあるならどうして言わないの!」とくる。わざわざ目に見える地雷を踏みに行きません。僕は日常に平穏を望むタイプです。離婚はとても疲れるといいますけれど、こういう「圧」が張り巡らされている環境を打破することだからかな、と受け身の側に立って考えてみるとそう思います。ちょっと意見や提案を言っても、それを攻撃と受け取られて不機嫌になられてしまったりしがちなら、不満は避けたくなりますもの。「力関係で優位に立とうとするのは普通でしょ」ってい...異性関係の「圧」

  • 『ガリレオ ――はじめて「宇宙」を見た男』

    読書。『ガリレオ――はじめて「宇宙」を見た男』ジャン=ピエール・モーリ田中一郎監修遠藤ゆかり訳を読んだ。ガリレオの人物像とその時代を、カラー図画などをふんだんに使いながらコンパクトに伝える本でした。キリスト教カトリック派の力が強大だった中世ヨーロッパ、聖書と齟齬をきたさないプトレマイオス説(天動説・地球が宇宙の中心で太陽をはじめ他の星はすべて地球の周りをまわっているとする説)と、異端視されるコペルニクス説(地動説・現在の太陽系観である、太陽が中心で地球もその周りをまわる星であるという説)が、どちらが正しいとも決着を見ていない時代にコペルニクス説を確信しつつ、実際に当時オランダで発明された望遠鏡の風聞を聴いて自ら光学を勉強しながら作製し、性能をアップさせたものへと改良していき、宇宙をはじめて肉眼以外で観測し...『ガリレオ――はじめて「宇宙」を見た男』

  • 『人類と気候の10万年史』

    読書。『人類と気候の10万年史』中川毅を読んだ。古気候学者である著者によって、地球気候の最新10万年ほどの様子を福井県・水月湖に堆積した年縞などの解読を用いて解説しながら、そのメカニズムを解析するための挑戦的考察が語られます。地球の気候変動というのはとてもダイナミックで、人類が登場してからでも海面の高さが100m以上変動するような事件が繰り返し起こってきたそうです。大きく、氷期と間氷期というように、寒冷期や温暖期が区別されますが、そこで働いている力が何かについて大きな示唆を与えたのが、およそ100年前に唱えられたミランコビッチによるミランコビッチ理論なのでした。ミランコビッチ理論は、地球の公転軌道の変化によって、地球と太陽の平均的な距離が変化することで気候変動が起こる、とするもの。公転軌道が円に近い時期は...『人類と気候の10万年史』

  • 『R62号の発明・鉛の卵』

    読書。『R62号の発明・鉛の卵』安部公房を読んだ。20代半ばで芥川賞を受賞した安部公房が、30歳前後に書いた12の短編を収録した作品集。どれもシュールで実験的で、ユーモアやウイット、アイロニーに笑わせられる場面もちらほらあります。毒が盛られたような内容の話であっても、おかしみを感じさせるシーンをちゃんと作られているため、シリアスになりすぎずに、フィクションの中身と適度な距離を保ちつつ、楽しめるのでした。また、そこのところをちょっと角度をかえて考えてみると、たまに水面に浮かんでくるあぶくのように、ここぞのところで効果的に滑稽さが仕組まれているからこそ、これは小説つまり虚構なのだ、と読む者は踏まえることができるんだなあ、とひとつ気づくことになりました。知的な距離感を構築するような文体と構造なのかもしれません。...『R62号の発明・鉛の卵』

  • 『LGBTを読み解く――クィア・スタディーズ入門』

    読書。『LGBTを読み解く――クィア・スタディーズ入門』森山至貴を読んだ。性的傾向の少数派のひとたちのなかでも、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T)という比較的知られている傾向のタイプから頭文字をとって「LGBT」とよく呼ばれます。しかしながら、性的な傾向、それは自身の性に対する違和感のあるひとがいますし、いわゆる男らしさのつよい男もいれば、女らしさのつよい女もいるわけですし、性愛対象も、男⇔女という異性愛に限らず、男⇔男、女⇔女があれば、肉体は男でも性自認は女で性愛対象は女という傾向の人もいるわけです。つまり、LGBTと言ってしまえば、性的少数派をすべて網羅して言ってしまえていることにはならない。反対に、LGBTという言葉に性的少数派というバラエティの豊かさが無視...『LGBTを読み解く――クィア・スタディーズ入門』

  • 『学びのエクササイズ 文学理論』

    読書。『学びのエクササイズ文学理論』西田谷洋を読んだ。文学理論の概説書であり、おそらく教科書でした。記号論にメタファーなど文学をミクロな視点でとらえるところからはじまり、文法論、物語論などを経て、現代思想や哲学の領域といった文学へ影響を与えるマクロな地平に出て行くかたちで終わっていきます。ではまず、フォルマリズムから。__________フォルマリズムは、社会・政治・思想に関する側面を排除し、もっぱら形式・文体・技法を考察の対象とすることで、文学言語と日常言語とを区別し、言語が自らの特性を前景化することに文学性の根拠を求めたのである。(p10)__________→つまりは作家の技術的な面・力量ばかりを問うのがフォルマリズム、といえそうです。これは文学作品を審査するのには大きく関与する考え方ではないでしょ...『学びのエクササイズ文学理論』

  • 『さがしもの』

    読書。『さがしもの』角田光代を読んだ。「本」がテーマの短編集。世界を旅する本の話や、都市伝説となっているとある本を探すのがストーリーの支流みたいになっている話、もしかすると呪いがこもっているかもしれない本の話などなど、9編+エッセイそして解説というつくりでした。どの作品に対しても、なんだか安心感を持って読めました。読み始めてぴんとくるわけです、これはほぼ間違いなく、おもしろいかどうかの境界線をしっかり飛び越えてくる作家だぞ、と。軽めのテイストでわかりやすく、読者への負荷は少ない。でも、言いたいことはきちんと書いているし、表現だって上手です。短編作品だということがあるでしょうけれども、冗長さとは対極にある作品集です。丸くて軽くて柔らかい言葉でできているのに、無駄がない感じ。とってもおいしい水ベースのカルピス...『さがしもの』

  • 『馬が見たくて』(自作小説・29枚)

    指で撫でたらつるつる滑りそうな布地の薄紫色をしたワンピースを着て、彼女は草原をふんわりと過ぎていく蒼いそよ風に吹かれていた。夕焼けにはまだすこし早い頃、薄く引いたような雲が青い空に浮かぶ、初秋だった。その人の名前は、こなつ、といった。宮城県から来たそうだ。遠くで作業している何人かの牧場スタッフたちの他には私たちしかいない。そのせいもあって、牧草地の敷地に「特別ですよ」と入れていただいている。私は、戸田と申します、来年五十歳になる歳です、と自己紹介をしたのだった。「馬が見たくて」と、こなつさんは私のかけた言葉にそう応えてくれたが、こちらを振り向き浮かべた口元の明るさとは反対に、切れ長な両方の瞳からはまるで温かみが感じられなかった。放牧時間は終わっていて、馬たちはすでに厩舎へ戻っていた。だから、スタッフの方が...『馬が見たくて』(自作小説・29枚)

  • 短編新作をアップします。

    来年締め切りの応募用小説の設定を考えていましたが、しばらく振りの執筆をいきなりやるよりも、なにかひとつ短いものを身体ほぐしみたいにやっておいたほうがよいような気がしてきまして、10000字を目安にした短編を書いていました。一筆書き的な執筆で、設定すら考えず、いきなり本文を書いていくというスタイルでした。書いているうちに、今取りかかっている箇所ではないところで必要になる考えやアイデアがいきなり浮かんでくることが多々でてきて、それらを律儀にパソコンやスマホにメモしながらすすめていきました。なかでも、眠るときに横になったばかりのころにひらめきがやってきたり、目覚めてすぐのころに眠る前まではまとまっていなかった考えが短い言葉でまとまって浮かんできたりすることが僕にはありがちなんですが、そういったときってスマホのメ...短編新作をアップします。

  • 『5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人』

    読書。『5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人』熊谷徹を読んだ。タイトルのとおりのことを書いてある、労働改革を考えるための内容です。「◯◯では、」が多く、「出羽守」と揶揄されるタイプなのは否めませんが、なんだこりゃっていう本ではないですし、そればかりかタメになりました。日本人の労働時間が多いといっても、本書掲載のグラフを眺めるとアメリカや韓国に比べるとまだまだ少ない。ドイツと比べて1人あたりの労働生産性がだいぶ低いと言ってもアジア圏では最上位レベル。でも、もっとうまく労働しようという本は、本書以外にもちらほら本屋で見受けます。少子化と高齢化がますます進んでいく今後、国力や生活レベルががたんと落ちて落ちぶれないためには、ドイツなどを見習うのはリスクヘッジなのではないか。労働時間を減らそうというのは、もっと...『5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人』

  • 『ロリータ』

    読書。『ロリータ』ウラジーミル・ナボコフ若島正訳を読んだ。異形の大作家とも形容される著者の大ベストセラー作。ロシアに生まれ、アメリカにわたって、ロシア語から英語での執筆スタイルに変えて生まれたのが本作です。ヨーロッパからアメリカに渡ってきた主人公の容姿端麗な中年男性、自称名ハンバート・ハンバートは、少女性愛者です。偶然が重なって間借りすることになった家宅で、そこの娘、ドロレス、愛称・ロリータとハンバートは出会ってしまう。ハンバートは魅力を放つ特別な少女のことを、妖精のニンフをもじり、ニンフェットと呼びますが、ロリータこそが理想的なニンフェットだとして、本性を隠しつつ狙いを定めていく____。本書は初め、パリにあるポルノ小説のシリーズで悪評高い出版社のそのシリーズから出版されたそうです。アメリカではどこの出...『ロリータ』

  • 『いつまでも若いと思うなよ』

    読書。『いつまでも若いと思うなよ』橋本治を読んだ。作家・文化人の橋本治さんによる「老い」のエッセイ。著者が仕事に明け暮れたのは、バブルがはじけたために抱えた自分が住むマンションに関する借金が理由だったそう。月に150万円の返済を、70歳までやらなければいけない。借金を抱えた当時は40歳くらいです。その頃、貯金が2000万円ほどあったものも無くなり、自転車操業のようになりながら返済に苦労したみたいです。こういった苦労が作家として役に立つところはあったと著者は言っていますし、そうだろうなあと読んでいて思いはするのですが、それにしたってキツイです。108ページ目に書いてありますが、60歳くらいのときに、「死ぬ気でやります」と言って、二週間ちょっとで三百五十枚の長編小説を書きあげられている。さすがにそのあとはダメ...『いつまでも若いと思うなよ』

  • note創作大賞2024落選

    今年のnote創作大賞での中間発表が先日ありました。残念ながら、僕の応募作は通過とはなりませんでした。クオリティの問題なのか、恋愛部門への応募にしては変化球タイプだったのがまずかったのか。まあ、次はもっとおもしろいものを書けるように精進してまいります。次作は来年3/31締め切りの文芸誌応募用作品となります。いまはどんな設定にするかやどんなものを盛り込むかを考えて、パソコン上に作ったメモファイルの情報量をどんどん増やしているところです。そのうち、それらの材料を元に、おそらくふんわりとしたかたちになるでしょうけれども、プロットを作成していきます。けっこうなペースでぽんぽんと150枚くらいの作品を量産していけるとよいのですが、いまの自分のレベルと執筆環境では粗製乱造になるのはほぼ間違いなくてですね、なのでひとつ...note創作大賞2024落選

  • 『ひらめきはカオスから生まれる』

    読書。『ひらめきはカオスから生まれる』オリ・ブラフマンジューダ・ポラック金子一雄訳入山章栄解説を読んだ。もちろん秩序は大切なのだけれど、ひらめきを得て創造するためには(そして精神衛生面においても大切になる)カオスを取り入れようとする考え方があります。本書はそのような内容のものでした。米軍の大将から、偶然が重なるようにして著者へ依頼が来ます。それは、秩序だった組織である軍隊に、カオスを導入してみる試みを担当して欲しい、というものです。この話を大きな軸として、カオスの効果に関する話が、まるで物語のように語られもするエッセイ形式の論考として横に流れていきます。米軍がカオスを取り入れる挑戦をしたとき、従来の思考法は効率的でスピーディーだったけれども、深く考えるということをしなかったと気づいた、とありました。___...『ひらめきはカオスから生まれる』

  • 本当に大変な状況になったときにその人の本性が出る??

    「本当に大変な状況になったときにその人の本性が出る。」という言葉に触れたことはありますか。これは、人間の性質についてのひとつの達観的な見方だと思います。この言葉を聞いたときに、比較的「実はけっこう大変な家庭」で日常を過ごしている僕は、自分が他人からそういうふうな目で、そういったところに焦点を合わせられて見られてしまう可能性を想像して、ちょっと疲れた気分になりました。なぜなら、自制心や自立心の鎧を自分で作り上げて日々、自分なりにがんばって生活しているなかで、なにかのはずみでそんな鎧が壊れてしまうこと、そしてそのときに生身が見えることを期待されている気がするからです。さらにいえば、その生身に好奇の眼差しによる期待が注がれている気がしてきます。「おまえは善人か?それとも悪人か?」もっと言うと、「本当に大変な状況...本当に大変な状況になったときにその人の本性が出る??

  • 『雪平莉左ファースト写真集 「とろける」』

    読書『雪平莉左ファースト写真集「とろける」』雪平莉左撮影:佐藤佑一を眺めた。雪平莉左さんは、美しすぎるラウンドガールとして大きく知れ渡る前、週刊プレイボーイのグラビアに登場したときから、その魅力が360度につよく放たれている美女という感じがしていました。ファースト写真集を逃すはずもなく、でも入手してすぐに開封しなければ積読の山に埋もれさせてしまうのが、僕の悪い習性のひとつで、こちらの写真集も中身がすごく素晴らしいのに、2年以上も僕の目に触れずに部屋の中で積まれていたのでした。最初のページからのワンシーンは、雪の北海道です。「雪、ひらりさ」と誰かが呟くセリフのような情景。芸名をなぞった、ある種の夢想的な風景がそこにありました。雪がひらひら舞う雪原で、スキーウェアを着込んだ美女がひとり静かな微笑みをたたえてい...『雪平莉左ファースト写真集「とろける」』

  • 『自衛隊入門』

    読書。『自衛隊入門』宮本猛夫を読んだ。自衛隊発足の流れから始まり、どういった組織体系になっているのか、その実力はどれほどのものか、どういった任務をこなしているのか、自衛官はどういった日々を過ごしているのか、自衛官の私生活はどういったものなのか、などを各章にわけながら、シンプルな文章でわかりやすく教えてくれる本です。2015年の本ですから現在はどうかわからないですが、サイバー部隊の人員の少なさが気になりました。この部隊は約90人の体制で発足しているんです。アメリカや中国は数万人規模なんだそう。人員確保や防衛費の問題もありますけれども、これはおそらく規模は拡大されてるんじゃないかなと思います。各国の兵力との比較も、こんなに違うんだなあ、と思いました。自衛隊の人数24万人にたいして、北朝鮮は119万人。韓国66...『自衛隊入門』

  • 『ヒトラーとナチ・ドイツ』

    読書。『ヒトラーとナチ・ドイツ』石田勇治を読んだ。怠惰で自堕落だったヒトラーがどのように世に出てきたのか、そしてどうやって総統(それまでの大統領職と首相職を統合した地位)という独裁者の地位を手に入れたのか。本書は、ヒトラーとナチ党を中心に追っていくドイツ近代史です。学校の勉強だけでは隙間だらけだったその知識の空隙を埋めてくれる内容でした。前半、ヒトラーが徐々に実力や名声を得ていくところ。ヒトラーやナチスのようなとんでもない悪行をやった人たちであっても、その躍進していくさまには面白みを感じてしまうのでした。へこたれず、ときに無鉄砲で、暴力に訴えて、なのだけど、活きたエネルギーが渦巻いているんですよ。ただやっぱり、そこにある危険な香りとして、時代なんだろうけれど、アクセルを踏みすぎる空気感・社会環境があったよ...『ヒトラーとナチ・ドイツ』

  • 『喰ったらヤバいいきもの』

    読書。『喰ったらヤバいいきもの』平坂寛を読んだ。怪物みたいな顔と姿形をしたオオカミウオを兜煮にしたり、隊長2mのオオイカリナマコ(有刺・有毒)をナマコ酢にしたり、バラムツという怪物魚(ワックスエステルという蝋成分だらけの身・とても美味だが必ずひどい下痢をする)を刺身で大量に食べたり、とにかく生きている姿としては怪奇生物だとか不快生物だとかにカテゴライズされ、食べ物としてはゲテモノに分類される生き物を追い求め、喰らう。そのレポート本です。全27生物収録+著者の半生記といった構成です。そしてそのレポートは、自分が不快な目に遭う可能性の高さに怯まずに敢行される体当たり。著者は、生き物との触れ合い、それも食べるという行為で自らの体内に入れるレベルでの「わかりたさ」に突き動かされるようにそれに挑んでいる感がありまし...『喰ったらヤバいいきもの』

  • 『東京都同情塔』

    読書。『東京都同情塔』九段理江を読んだ。第170回芥川賞受賞作。近未来。東京オリンピック前に、新国立競技場建設コンペでザハ案が選ばれ、その費用がかさむことで廃案とされた現実とは違い、ほんとうにザハ案の国立競技場が建った世界の、その近未来までの物語です。始めの一行目から、__________これはバベルの塔の再現。シンパシータワートーキョーの建設は、やがて我々の言葉を乱し、世界をばらばらにする。(p3)__________と述べられている。だけど、続けて書かれていますが、バベルの塔の神話のように神の怒りに触れて人々が別々の言葉を話すようになるという理由ではありません。各々の勝手な感性で人々が喋り出すことで、言葉の濫用、捏造、拡大が生じ、排除が起こり、その当然の帰結として、互いの言っていることがわからなくなる...『東京都同情塔』

  • 『明恵(みょうえ) 夢を生きる』

    読書。『明恵(みょうえ)夢を生きる』河合隼雄を読んだ。鎌倉時代の高僧・明恵(みょうえ)が若い頃から何十年も書き続けた、いわゆる夢日記である『夢記(ゆめのき)』は、散逸してしまったものも多いながらも、大半が現代に残されているそうです。その夢についてユング派心理学者・河合隼雄が読み解くのが本書なのでした。フロイト以前に、こんなに夢の素材が残されているのは稀有な事例だとか。明恵上人といえば華厳宗の人ですが、浄土宗を起こして日本仏教界に革命を起こした法然を厳しく批判した僧侶として知られていると思います。ですが、だからといって、頭の固い守旧派というタイプでもないのです。たとえば江戸時代の終わりまで基本的なルールとなっていた北条泰時作成の「貞永式目」の基盤となっている考え方は、当時、泰時が明恵から大きな影響を受けたが...『明恵(みょうえ)夢を生きる』

  • 『Switch 坂道特集 坂道シリーズの創造術』

    読書。『Switch坂道特集坂道シリーズの創造術』を読んだ。僕は、乃木坂46から入って、坂道シリーズがもう大好きです。こうやってスタイリッシュな雑誌で「坂道特集」が組まれ、乃木坂46・櫻坂46・日向坂46三坂道のセンター経験者たち計6人が一堂に会し表紙を飾っているその姿を見ると、まばゆい非日常感にくらくらきてしまうほどです。6人を中心としたフォトやインタビューではじまり、衣装担当、作曲担当、振り付け担当などなどさまざまな、坂道に力を与える関係者たちのインタビューも重ねられていきます。読んでいくと、それまで見てきた可憐だったり凛としていたり青春の輝きだったりする若い女性アイドルさんたちがきらきらとした坂道シリーズのその表面ばかり眺めていたことに気付いてきます。裏方。つまり坂道の背後では、クリエイティブがかけ...『Switch坂道特集坂道シリーズの創造術』

  • 『生き抜く力を身につける』

    読書。『生き抜く力を身につける』桐光学園+ちくまプリマー編集部・編を読んだ。本書は、シリーズ<中学生からの大学講義>第5巻にあたります。神奈川県にある私立桐光学園の中学生が、さまざまな学者、研究者、知識人の人たちから受けた講義を収録した内容です。タイトルをそのまま信じると、なんだか「サバイバル能力」についてさまざまな角度からの示唆が得られるのではないかと思ってしまいましたが、実際に読んでみるとそこまでストレートかつシンプルではありませんでした。それぞれの講師役が、それぞれの得意分野の視座から見たこの世界を語っている。聴衆の中学生、そして読者にとって、経験したことのない新たな「世界の見え方」を体験させてくれるような中身です。講師役は7人。大澤真幸さん、北田暁大さん、多木浩二さん、宮沢章夫さん、阿形清和さん、...『生き抜く力を身につける』

  • 『エクソダス症候群』

    読書。『エクソダス症候群』宮内悠介を読んだ。未来の火星を舞台としながら、精神医療史を総括したうえで精神医療というものをクリアな目で見てみる試みのような性質のある小説でした。この分野の知識がない人には内容はむずかしいと思いますが、それでもすっきりとして無駄のない文体なので、すらすら読めてしまう。知識をかみ砕いて読者に伝えるワザにも長けた書き手という感じがします。地球帰りの精神科医・カズキが働きはじめる火星の精神病院・ゾネンシュタイン。「突発性希死念慮(ISI)」と「エクソダス症候群」という、未来世界で問題となっている架空の精神疾患が物語のカギとなっています。物語世界を築き上げるのには骨が折れそうな舞台設定なのですが、序盤からぐいぐい、そしてスマートに読者を本の中に引き込んでいく筆致でした。言うなれば「冷温な...『エクソダス症候群』

  • 『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』

    読書。『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』大城太を読んだ。世界中に散らばり、各々の土地に住み着く中国人たち。彼らは華僑と呼ばれますが、本国に居続ける攻撃的中国人とは違い、その境遇に適応するように身に着いた守りの哲学で生きているとされます。そして、困窮する者はいない。本書はそんな華僑たちの思考法則を教わり、自らもビジネスで成功した著者による柔らかな「生き方」「儲け方」の指南書です。46項目に分けて、解説してくれています。僕としては自分の価値観や考え方の死角にあるような話で、とても興味深かったです。華僑の人たちに特徴的なのは、商売がうまいこと。「商魂たくましい」などと評されますが、人間中心に考えながらの「経営思考」と「サバイバル思考」がそこにはあります。他国でチャイナタウンを作り上げるように、華僑である彼...『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』

  • 『プレヴェール詩集』

    読書。『プレヴェール詩集』プレヴェール小笠原豊樹訳を読んだ。この詩集は、プレヴェールの主要著作のうち四つから、60篇余りを訳者が選り抜いて訳したものです。プレヴェールはシャンソンの名曲『枯葉』の作詞家で他にもシャンソンの名曲をいくつも出がけており、他方、『天井桟敷の人々』や『霧の波止場』などの古い映画で脚本を担当した人です。まったく知らなかったのですけど、フランスの国民的詩人だそう。1900年生まれ、1977年没(ついでながら言うと、僕が生まれた日の二日前に亡くなっていました)。読んでみて、わかるなあ、というタイプの詩はとてもおもしろかったです。エンタメ的な柔らかくて甘い口当たりを期待してはいけません。とっつきやすい言葉が並んでいても、一文や単語同士の距離感によって読者が感じるものは、もっと尖ったものだと...『プレヴェール詩集』

  • 『家族シアター』

    読書。『家族シアター』辻村深月を読んだ。家族との関係が主軸となっている7つの短編が収録された作品。作者の辻村さんは、人のいろいろな「だめな部分」をうまく描いています。まるで隠さず、ときにぶちまけられているように感じもするくらいなときがあります。そういった「だめな部分」を起点に人間関係のトラブルなんかがおきるのだけれど、だからといって、その欠点を直してよくなろうよ、と啓発的にはなっていない。「しょうがないもんだよねえ」、とため息をつきつつ、その上でなんとかする、みたいな話の数々でした。相田みつをさんじゃないですが、「だって、『にんげんだもの』」。そういう前提があってこその作品群だよなあ、と感じました。それはある意味で、人に対して肩の力が抜けていると言えるのです。ただ、「やっぱり優れている!」と思うのは、そう...『家族シアター』

  • 『ヤフーの1on1』

    読書。『ヤフーの1on1』本間浩輔を読んだ。「LINEヤフー」に合併するより前に出た本です。合併後もこの「1on1」は続行されているのか、気になるところです。「1on1」とは、たとえば週に一回の頻度で一度につき30分の時間を業務内に取り、上司と部下が一対一で差し向っておこなう対話のことです。そこで行われるのは、上司から短い問いかけに応えるような形で部下が自らを語っていく、部下の内省を深める対話です。そのために、上司は講習を受けています。主に、コーチング、ティーチング、フィードバック、進捗確認の四つで構成されます。上司に求められる技術はその他、レコグニション(承認。本書では、その人をそのまま受け止めることにあたります)とアクティブリスニング(頷きや表情などで傾聴する技術)です。どうしてこのような直接利益に結...『ヤフーの1on1』

  • 『歪な愛の倫理』

    読書。『歪な愛の倫理』小西真理子を読んだ。DV(家庭内暴力)の渦中にある当人(当事者・被害者)のさまざまな語りを受け止めることで、第三者がどう彼らへ関わるとよいかを多方面から分析かつ考察し、よりより選択肢を模索していくような本です。僕にも経験がありますが、DV被害の相談をすると、もう行政の担当者の言動には「分離」の構えが顔をのぞかせていることに気づいたりします。暴力を振るう父親と、振るわれる母親を一緒の屋根の下では暮らさせることはできない、として行政や支援組織が、父親にはその住所を絶対に教えることのないシェルター住宅に母親を移動させる、というのが「分離」です。これはこれでパターナリズムと呼ばれもしますが、危害を加えられて命の危険があるのだから助けないといけない、という論理での行動です。実際に暴力で命を落と...『歪な愛の倫理』

  • 『予告された殺人の記録』

    読書。『予告された殺人の記録』G・ガルシア=マルケス野谷文昭訳を読んだ。ノーベル賞作家として名高く、代表作『百年の孤独』が文庫化されるニュースが話題にもなったG・ガルシア=マルケスの中編作品。殺人犯となる双子の男たちが「サンティアゴ・ナサールを始末する!」とあたりかまわず言いふらします。屠殺用ナイフを隠そうともせずに持ち歩きながらです。それから町中で急激にうわさが広まっていったにもかかわらず誰にも止められず、双子の殺人犯たちににしても誰かが止めてくれるのを期待していたところがあっただろうに、決行されてしまった殺人事件の物語。実際に著者が生まれ育った町で起きた事件をモチーフに小説化したものだそうです。事件から30年後の世界で、主人公が事件の調査をするというかたちで、事件の経緯が明らかにされていきます。多角的...『予告された殺人の記録』

  • 『パーソナリティ障害とは何か』

    読書。『パーソナリティ障害とは何か』牛島定信を読んだ。境界性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害などがパーソナリティ障害としてよく耳目に触れますが、本書ではおよそ九つの「パーソナリティ傾向」とそれらが暴走したときの「パーソナリティ障害」を解説しています。まず、基本として踏まえておく概念から。__________個人は、もともと遺伝素質的基盤にもとづく性格傾向(強迫性、演技性、スキゾイド、サイクロイド)をもって生まれ、幼児期、青年期の生育環境を通過するなかで精神的栄養に浴し、いろいろな社会体験を得て、より社会化された人格を形成するという経過をたどるだろう。これが健康なパーソナリティである。ところが、幼児期から青年期にかけて、さまざまな外傷をはじめとした有害な心理体験をもつと、本来の性格傾向の発達ラ...『パーソナリティ障害とは何か』

  • 『生田絵梨花 乃木坂46卒業記念メモリアルブック カノン』

    読書。『生田絵梨花乃木坂46卒業記念メモリアルブックカノン』を読んだ。もう二年半前になってしまいましたが、乃木坂46を卒業された生田絵梨花さんのメモリアルブックです。めちゃめちゃ好きな人です。お顔も表情も、声もスタイルも、表舞台に出ているところしかわかりませんがそのキャラクターや気持ちの持ちかたも、そして努力し続けて結果を出していく姿勢も、このうえなく魅力的に僕の目には輝いて映り続けています。でも、本書が発売されたころ、すなわち生田さんが卒業された頃のその前後の期間は、後進に道を譲るために支える側に回ったような生田さんだったので、ちょっと残念でしたし、グループから巣立っていかれる気配が感じられもしたので、「もはや、これまでか」と早い段階から推し卒みたいな感じになっていました。卒業したあとまではあまり追いか...『生田絵梨花乃木坂46卒業記念メモリアルブックカノン』

  • note創作大賞2024に応募しました。

    note創作大賞2024に応募しました。今回は恋愛小説部門です。26,000字ほどの短編です。半年くらい前に書いた17,000字の短編『死をめぐる、悲しみとまやかしの午後』を少々直したうえに続きを書いた、『古河蒼太郎の死をめぐる、悲しみとまやかしの午後』が応募作品となります。『古河蒼太郎の死をめぐる、悲しみとまやかしの午後』↑が一話目へのリンクです。全4話に分割しました。読んでいただけると励みになります。読了していただた上にスキをつけていただくと喜びます。どうぞ、よろしくお願いいたします。note創作大賞自体は、7/23が締め切りで、それから1週間ほどの読者選考期間が設けてあります。それから審査にはいるようです。どうでしょうね。応援よろしくお願いいたします。note創作大賞2024に応募しました。

  • 『自由論』

    読書。『自由論』ミル斉藤悦則訳を読んだ。民主主義のなかでの「自由」とは、どのように扱われ、どのように踏まえ、どう装備していったらいいのか。社会と個人との関係性を重視しながら、「自由」について深く考察した論考であり、19世紀に考えられ書かれていてもなお新しさがまばゆい古典です。民主主義による「画一性の傾向」とその具体的な現出である「多数派の専制」を危ぶみ、そういった現象に陥らないように多様性がどんなふうに社会にとって良いのかについて説いています。こう書くと自明なんだけど、他者への迷惑になる自由はだめだよ、ということであり、それ以外は個人の範囲内で許される、というのが大まかにですが自由の制限についてのところでした。あと、国家から個人への干渉については必要最小限までというような論説でした。また、行政という機関に...『自由論』

  • 近況2024年5月

    ひさしぶりに近況を書きます。相変わらず、キレてばかりいて暴力的だったり問題行動のある父親が要介護度4の母親の主介護者で、僕はそれを助けつつ主に家事をしながら過ごしています。たまに役所へ資料を作って相談にいったり、支援団体に話を聞いてもらったりしつつです。おそらく創作をしながらだからだと思うのですが、父親による家庭内の暴力が僕のメンタル面へのダメージとなりやすいのです。自分の内面を探りながら、また、さまざまに日常から感じられる情報の取り入れ量がクリエイターの場合は他の人よりも多くなりやすいそうなので、その処理にメンタルのエネルギーを使いもする(情報によっては、他者の気持ちになったり、できるだけ他者と同期しようとつとめたりするからです)ので、そういった自らのもろさを保護できていない状態で、叫び声のような怒鳴り...近況2024年5月

  • 『ヘヴン』

    読書『ヘヴン』川上未映子を読んだ。著者としては初の長編作品だったのが本作でした。いじめや嫌がらせを受けている主人公「ロンパリ」と、女子のコジマ。ふたりの物語です。斜視のことを俗に「ロンパリ」という人があるそうで、ロンドンとパリという離れたところを同時に見ているみたいな意味のよくない言葉だったりします。さて。第6章がすごかったです。あそこで書かれている善悪については僕も以前、自作短編執筆中に同じような考えを進めたことがありましたし、その短編に痕跡を残したものですけど、本書のほうはじっくりと分量を割いて書いていました。心から血を流すぐらい真剣に、対峙している。ひとつの気付きにとどまらずにいました。僕がこのような善悪観(本書で百瀬という少年によって語られているのは、物事や行為に善や悪はなく、それ以前に欲求がある...『ヘヴン』

  • 『自分の価値を最大にする ハーバードの心理学講義』

    読書。『自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義』ブライアン・R・リトル児島修訳を読んだ。最近その発展が目覚ましいといわれるパーソナリティ心理学の知見と幸福度をまじえて語られていく本です。著者は、ハーバード大学卒業生のアンケートによる投票で3年連続人気教授に選出された方です。ここぞというところのユーモアのセンスがよく、楽しみながら読み進めていけるうえに、わかりやすく学びや気づきを多く得られる良書でした。__________私たちは、他者を理解しようとする試みを通して、自分を深く理解することになり、自分を深く理解することによって、世界を違った視点で捉えられるようになり、もっと自分の能力をいかすことができるようになります。(p1)__________→本書を読み進めていくと、人ってほんとうに多面的にふるま...『自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義』

  • 人を型にはめ、指図する心理の三つのポイント。

    とくに私生活において迷惑に感じられる、他者からの「型にはめ、指図してくる」行為というものがあります。(くわしいところは、前回の記事で触れました。)今回は、そういった「型にはめる」心理を分析し、どう直してもらうかについての処方箋にまで触れる内容です。では、はじめます。他人に対して「こうやれ!」と指図するタイプの人々の心理は、一般的に次の三つのポイントで説明できます。楽をしたい欲求:他人に教えることは手間がかかりますが、型にはめて指示すれば自分自身は楽になります。他者をコントロールする欲求:他人を支配することで幸福感を得る人々もいます。支配によって自己満足を感じることがあります。理想主義(原理主義)による強制:自分の理想が絶対であり、それを他人にも強制することで、自己満足を得る人々もいます。しかし、このような...人を型にはめ、指図する心理の三つのポイント。

  • 『口語訳 遠野物語』

    読書。『口語訳遠野物語』柳田国男佐藤誠輔訳小田富英注を読んだ。原典の『遠野物語』は1910年、のちに民俗学の祖となる著者・柳田国男によって自費出版されたものです。その文語体の文体の美しさが本書の解説でも素晴らしいと言われていまして、こうして口語体にすることで、面白みや美しさが損なわれてしまうのですが、それでも文意をわかりやすく伝えるべく挑んだ冒険作と評価されています。「遠野」はアイヌ語が語源のようです。たとえば、「トオノ」の「トオ(トー)」は湖を表すのだ、と。アイヌは北海道のみならず、東北やロシアにもダイナミックに活動域を広げていたと、以前読んだことがあります。その痕跡をこうして身近に感じられると、遠い話ではないような気がしてきます。さて。61ページのあたりなどで、いくつかの段に渡って語られるザシキワラシ...『口語訳遠野物語』

  • 『ストーリー・セラー』

    読書。『ストーリー・セラー』有川浩を読んだ。「致死性脳劣化症候群」と名付けられることとなった、世界でひとつしかない奇病であり難病に患う妻。その妻は作家です。妻とのなれそめから語られていく、夫婦の物語でした。一人称にとても近い三人称視点での語りで、小説としてはどことなくくだけた感覚を覚えました。というのが、本書のSide-A。もうひとつ、Side-Aと対になる、ほぼ同分量の物語Side-Bも収録されています。著者の有川さんはラノベ出身のためか、軽めの文章なのですが、どことなく空虚なようでいて人肌の温度のしっかりある質感がよかったです。そして、ぐっと引き込まれるエモさもあります。では、ここからは引用しながらになります。ネタバレにもなりますので、ご注意を。__________「何も起こってないときに普通に付き合...『ストーリー・セラー』

  • 怒りたくなかったら人を型にはめない。

    たとえば子どもに「こうしなさい!」と指図する親がいる。それは子どもに「教える」のではなく「型にはめている」。型にはめるのは、子供のためになることではなく、親自身のためになること。型にはめておくと、自分が楽だからだ。これ、介護もそういうケースがある(うちの親父がそうだ)。薬の時間だからこっちへこい、早くしろ、何度言わせる、この薬から順に取れ、すぐに水を口に入れろ、早く飲み干せなどなど、一から十まで指図をして型にはめ通しにしたりする。それで少しでも滞ると激怒する。自分が楽にならないから。日常に於いて、人を型にはめ通そうとするのはかなりの暴力だ。また、型にはまらなかったら、激怒し怒鳴り散らすそのエネルギーの無駄使いもあるし、怒鳴り声を聞かされるほうのダメージもあって、Win-Winならぬ、Lose-Loseにな...怒りたくなかったら人を型にはめない。

  • 『詩の誕生』

    読書。『詩の誕生』大岡信谷川俊太郎を読んだ。1975年のこと、創刊第一号の対話(対談)誌に掲載された、同い年の詩人・大岡信さんと谷川俊太郎さんによる、詩の誕生とはなにかから始まり、詩や言葉を探っていく話し合いです。詩は、言葉が先にあってそこから想像が広がっていく形でできていくものなのか、それとも、言葉以前に精神面で感じていることがあり、それを言語化するという過程でできていくものなのか。この大きく二つのとらえ方から対話は始まっていきます。ちょっと興ざめなネタバレになってしまいますが、詩ができていくほんとうのものとしては、後者の、感性が先にあり言語化していくというものというとらえ方のほうにが対話の中で落ち着いていきます。ですが、言葉が言葉を呼ぶというテクニカルな方法のほうを否定しはしません。言葉先導の詩作は、...『詩の誕生』

  • 『H46MODE vol.1』

    読書。『H46MODEvol.1』日向坂46を読んだ。デビュー5周年を迎えた日向坂46の公式アニバーサリーBOOKです。「日向坂46」の前身は「けやき坂46」ですが、改名してデビューしたときに、僕はやっとそのグループを知りました。改名時期くらいのタイミングで『坂道TV』がNHKで放送され、デビューシングルの『キュン』のパフォーマンスもあったんじゃなかったかと思います。たぶん、これを見て僕は『キュン』を買ってるので。でも、冠バラエティー番組が僕の住む北海道でネットされていないこともあり、ほとんどのメンバーのお顔とお名前が一致しなかったのですが、昨年中頃よりツイッターのTLの影響を受けまして、手を伸ばすようにして彼女たちを知ろうとしていたら、魅力がわかってきました。僕はずっと乃木坂46推しですから、日向坂46...『H46MODEvol.1』

  • 『人権読本』

    読書。『人権読本』鎌田慧編著を読んだ。2001年刊です。当時の人権意識状況を取り上げて「これがよくないんですよ」というように訴えているのに、この2024年の現代になにひとつはっきりと解決されていない、と知ることになりました。日本の人権意識の低さは深いです。子どもの人権、高齢者福祉、DV、障がい者、女性労働、過労死、コミュニティ・ユニオン、沖縄米軍基地……など15項目にわたって、人権という権利を見つめていけるように編まれています。__________人権というのは感覚がにぶると守られなくなり、人権侵害していても、されていても気がつかなくなることがこわいのだ。(p6)__________→先ほども書きましたが、日本人は人権意識が低く、ここに書いてあるような心理状況にあるのかもしれません。なので本書のような、人...『人権読本』

  • 『サキ短編集』

    読書。『サキ短編集』サキ中村能三訳を読んだ。10ページ前後の作品が21編おさめられています。海外では、アメリカで活躍したO・ヘンリと「短編の名手」として並び称されるほど書き手だそうです。サキは、1870年に植民地ビルマで生まれ、2歳の時にイギリスに渡ったスコットランド人。第一次世界大戦のフランス戦線で戦死しています。序盤の3,4作こそ、牛や二十日鼠が「またなのか!」という具合にでてきて、どことなくほのぼのとしているというか、のっぺりとしたような地味さを感じましたが、その後の作品では味わいがそれぞれ違ってバラエティに富んでいましたし、地味ということもなく(キラキラと派手でもないのですが)、それぞれに独特の風刺があり、すごく楽しめました。というか、風刺が持ち味の作家です。蛇足ながら言わせていただくと、風刺とは...『サキ短編集』

  • 『孤独の科学 人はなぜ寂しくなるのか』

    読書。『孤独の科学人はなぜ寂しくなるのか』ジョン・T・カシオポ/ウィリアム・パトリック柴田裕之訳を読んだ。孤独感・孤立感には、高血圧や運動不足、喫煙などと同じくらいの健康リスクがあると言われています。本書はそういったステージからさらに深掘りした知見を教えてくれる良書でした。400ページ超の分量があります。孤独感は、それを感じやすい人と感じにくい人がおり、また、感じた孤独への耐性では、強い人と弱い人がいます。これらは遺伝的に決まってくる要素だそうです。「強迫症」や「認知の歪み」の大元に恐怖や不安があることはこれまでの読書などでわかってはいたのだけれど、では恐怖や不安の原因はなんなのかははっきりとはわかっていなかった。それが、エーリッヒ・フロム『愛するということ』を読んだときに、不安の源にあるのは孤独感だとあ...『孤独の科学人はなぜ寂しくなるのか』

  • 恋愛合戦のA-SIDEとB-SIDE。

    「攻撃力」「防御力」「素早さ」みたいな項目を重視するようにして、駆け引きばかりの恋愛合戦から恋の領域に入っていくのって、やっぱりそこにゲーム感覚があるからなのだろうか。気持ちよりもすこし頭のほうが優勢だからかもしれない。これは恋愛模様のA-SIDE(これは便宜的に名付けています)という気がする。このように名付けるくらいだから、B-SIDEもある。B-SIDEは頭よりも気持ちの部分が優勢で、恋愛戦略も気持ちが頭を引っ張って行われる感覚。だから、恋愛状況に対して頭がついていけない状態にもしばしば陥るので、冷静で客観視できている友達のアドバイスがとてもありがたくなる。B-SIDEがかわいいですな。A-SIDEの恋愛って、ファッションとしてだったりステータスを得ることだったり、すべてがそうではないとしてもそういう...恋愛合戦のA-SIDEとB-SIDE。

  • 『方法序説』

    読書。『方法序説』ルネ・デカルト山田弘明訳を読んだ。世界でもっとも読まれている哲学書とも言われる、デカルト初期の代表著作です。デカルトの生きた時代は、日本で言えば江戸時代の初期のころです。全6部構成。本書のはじめは、デカルトの自伝的叙述になっています。そこで、「書を捨て旅に出る」ことの大切さが、デカルト自らの経験から語られますが、世間の実態に触れて学ぶという意味では、大きく言うと社会学のススメとも言えるのではないか、と思えました。象牙の塔となるな、ということでもあります。かつて戯曲家・寺山修司にも「書を捨てよ、街に出よう」という言葉があり、デカルトに共感しての言葉だったのかもしれないですね。速断や偏見には厳重に注意せよ、とデカルトは言います。問題を解くためにはそれがまず大事だと。そうした仕事をやり遂げるた...『方法序説』

  • あとがきとして。

    本作は、2023年5月15日から設定などを作り始め、執筆に移り、推敲を終え完成したのが9月15日でした。あしかけ4か月の仕事です。その間、家庭問題の説明資料づくりにあらたな1万字を書き、何度か役所などとの面談もありましたし、今思えば笑ってしまいますが国際ロマンス詐欺に10日前後巻き込まれてもいました。例年以上に暑かった夏にはパート労働をしましたが、やっぱり家庭が落ち着かないなかでは続けていくのがむずしく、1週間ほどでリタイアしました。体調面ではずっと胃薬を手放せなかったので、本作品の主人公にもそういった影響が出たのだと思います。執筆は、朝方3~5時の間に起床して7時前まで、というスタイルになっていき後半二カ月半くらいは定着していたと思います。毎日は書けず、早朝に起きても読書に時間を費やすなどの日も多くあり...あとがきとして。

  • 『陽だまりのこちら、暗がりのとなり』 第五話(完結)

    *毎夜の悪夢のその途中で目が覚めた。罪の意識そのものよりも、この罪を隠し通さねばらないその重苦しさが堪えた。罪を贖うために、自分のこれからの人生の自由を放棄することにこそ耐えられない。だから、罪を告白して裁かれるか、無理をしてでも逃れ続けるか、という選択肢に、前者を選ぶなんてできないのだった。目が覚めると、罪の気配はすうっと去っていく。そのちろちろとうごめく尻尾の先だけは少しだけ確認できるくらいにして。だが今回はそれとは別に、こちらへ押し寄せてくるものがあった。永遠に思い出したくない記憶だった。スナッフビデオ。二十歳かそこらだったと思う。佳苗と出会うよりも少し前のことだ。フェイクビデオだった可能性もある。白黒の動画で、ドットが粗かった。でも、胃液がせりあがってきてしまうほど真に迫っていた。喉を掻き切られた...『陽だまりのこちら、暗がりのとなり』第五話(完結)

  • 『陽だまりのこちら、暗がりのとなり』 第四話

    *そんな出来事のあった日の夜でも、意識を席巻するあの夢は容赦なかった。僕は人を殺めてしまった想いに、やはり苛(さいな)んでいた。無条件にそんな夢の中へと放り込まれる。自分が罪を犯したときの記憶はなかった。具体的に思い出せることはなにも無いのだ。にもかかわらず、自責の念と、取り返しのつかないことをしたという想いだけが胸に充満し、全身を脱力させる。将来への希望は塵となり風のひと吹きで消え去ってしまう。そのあとすぐに無風状態の時間が訪れるのだけれど、その時間が表現しているものがまさになんら混じりけのない絶望というやつで、それはたった数十秒のワンシーンのたかだか五分の一を観ただけでも、無理やり泣かせようとしてきているのがわかるベタなドラマくらいわかりやすくそこに存在していて、心底嫌になった。何日か経った平日の休み...『陽だまりのこちら、暗がりのとなり』第四話

  • 『陽だまりのこちら、暗がりのとなり』 第三話

    車中ではまず、牧さんと自己紹介をしあった。牧さんは一月に六十九歳になり、仕事は数年前までコンビニのオーナー兼店長を務めていたそうだ。もともと自営業だった自分の小さな酒屋を二十数年前にフランチャイズのコンビニにし、今は息子夫婦に経営を譲っているのだ、と。顔なじみの客の多いまずまず安定した利益の出ている店で、このご時世でも安泰なほうらしい。自己紹介が僕の番になり、スーパーの従業員をやっていることを教えると、同じ商売だね、と牧さんの顔はほころんでいた。何年目なんですか?と聞かれて、二年目になったばかりです、と答えた。その前はどんな仕事をされていたのですか?とさらに聞かれた。「Uターンするまでは札幌に居たんです。いくつかの職には就きましたが、目立った職歴はありません」正直にすらすらと出た。職歴の無いことを見下すな...『陽だまりのこちら、暗がりのとなり』第三話

  • 『陽だまりのこちら、暗がりのとなり』 第二話

    *夕飯はとうに済み、両親と三人分の食器洗いを終えて風呂にも入り、上りしなの風呂掃除もやり終えて、Tシャツと下着という恰好で自室の布団に寝そべっていた。かつて、どれだけの闇を知っているか、で他人と張り合おうとしていた時期があった。スマホのニュースアプリの画面を眺めながら、それとはまったく関係なく大学生の頃を思い出していた。悪友というべき二人の男と僕はつるんでいて、彼らとだけは張り合っていたのだ。彼らはその後、どのような人間になっただろうか。それにしても、瑤子が僕をピーターパン・シンドロームと見なしていただなんて、実に心外だった。外からはそういうふうに見えてしまうらしい。ネット世界からの闇の見聞が多かっただけで、まともな社会経験の乏しい、おそらく世間離れしているに違いない自分が、他者からどう見られている存在な...『陽だまりのこちら、暗がりのとなり』第二話

  • 『陽だまりのこちら、暗がりのとなり』 第一話

    晴れ渡り、空気の澄んだすばらしい朝でも、今日一日つまづくことはない、と約束されたわけではない。坪野老人に呼び止められて、しまった、の心の声が顔に出てしまった。振り向く自分の右頬が軽く引き攣ったのだ。たぶんまた昔のことを尋ねられてしまう。正直に話すとややこしくなる僕の暗部を、どうやら坪野さんはその憎たらしい嗅覚で探り当てているらしかった。きまって気安く、好奇心だけでずいずいと踏み込んでくるのが坪野さんだ。僕という藪に蛇はいない、とあっさり決めつけているかのように。完全になめられているんだよなあと思いつつも、ただそうやって安牌扱いされているがための心理的な組みやすさはあった。まず、頼み事はされない。いわゆる味噌っかす扱いなのだ。でも、そうではあるのだけど、坪野さんを僕はやっぱり苦手としていた。年齢はたしか七十...『陽だまりのこちら、暗がりのとなり』第一話

  • 文學界落選

    『文學界4月号』を確認したわけではないのですが、新人賞には落選したようです。応募作『陽だまりのこちら、暗がりのとなり』を、本ブログに分割してアップします。Wordで46587文字の分量なので、5~6分割になります。落選作ですが、読んでくださるとうれしいです。それでは、明朝よりはじめます。文學界落選

  • 『ハンチバック』

    読書。『ハンチバック』市川沙央を読んだ。第169回芥川賞受賞作で、作家のデビュー作です。背骨が右肺を押し潰すようなかたちで湾曲しているせむし(ハンチバック)の要介護中年女性・井沢釈華が主人公。人工呼吸器も入浴介助も必要な人です。彼女は零細ツイッターアカウントで、零細であるがゆえに大胆なツイートをしています。「普通の人間の女のように子どもを宿して中絶するのが私の夢です」などがそう。読んでいて面白かった表現や描写は多かったです。たとえば会話を、長調、短調、そして無調と表現するだとか。また、「愛のテープは違法」事件って初めて知った事柄でした。視覚障がい者の方たちでも本が読めるようにという配慮として音読が録音されたテープを貸し出したことが、著作権違反になるとされたらしいです。そして、それが押し通されたのでした。障...『ハンチバック』

  • 『競馬の世界史』

    読書。『競馬の世界史』本村凌二を読んだ。サラブレッド誕生前夜どころか紀元前の競馬事情から2015年までの、日本を含めた世界の競馬の歴史を、総合的にたどっていく本。競馬の逸話がふんだんにちりばめられている本です。それこそ「名馬とは記憶に残る競走馬」のテーゼがあるとしたらそれにしたがって、記憶に強烈に残るからこその競走馬そして競馬、というその魅力をさまざまなエピソードから伝えてくれています。本書プロローグで触れられているデットーリ騎手による一日の総レースである7戦を全勝した出来事(マグニフィセント・セブン)を僕は知らなくて、レジェンドたるところのひとつの究極的達成がこういうことだったのか、とこれまで見つからなかったパズルのピースが思いもかけないところから出てきた、みたいな満足感を得るトピックでした。今や名手・...『競馬の世界史』

  • 自己犠牲試論。

    昨日とあるサイトで、齋藤飛鳥さんが自己犠牲について語っているインタビューを読んだことがきっかけで、それからずっと自己犠牲について考えていた。元乃木坂46の齋藤飛鳥さんは、大江健三郎や阿部公房などの骨太な純文学作品を読み倒すような方だ。もちろん、主なお仕事としての多忙なアイドルグループ活動の経験をお持ちだし、彼女だからこその色濃い精神活動をなされてきた方だろうなあ、という印象を僕は持っている。自己犠牲。他者のために、自らの時間や命など、自分にとって大切なものを相手に捧げるように使うこと。僕自身、在宅介護に携わっていて、他人事ではない行為であり、重くるしく感じる言葉だ。自己犠牲を考えていくと、「二種類あるな」とまず思いついた。ひとつは、会社や組織、グループ、社会などのための自己犠牲。もうひとつは、他者個人のた...自己犠牲試論。

  • 『話す力』

    読書。『話す力』イノベーションクラブを読んだ。ビジネス面でのコミュニケーションに役立つ能力のひとつ、「話す力」の基本スキルをシンプルに教えてくれる本です。「1対1でも何を話していいかわからない」「話せるけどわかりにくい」といった初心者の方から、「相手の反応に合わせて話し方を変えられる」中級者を経て、そして「相手を共感・納得させられる」上級者にとってのおさらいまで、ほぼオールレンジの指南書でした。文字はかなり少なく、すいすい読めていってしまう快感もあいまって、楽しく学べると思います(ただ、話しが得意ではない理由が、緊張やあがり症であった場合は、本書の範囲ではなく、また別の処方箋を頼る必要があります)。本書では、話す力の大筋に沿って、「シンプルしかけ」という簡単に行えるスキルもいくつか収録されています。これが...『話す力』

  • 『グランド・フィナーレ』

    読書。『グランド・フィナーレ』阿部和重を読んだ。第132回芥川賞受賞作。芥川賞作品だけれど、これ、売れなかったん違うだろうかと思いながら中盤まで読みました。なにせ、主人公がどうしようもないロリコン(実際に犯罪レベル)でDV加害者で薬物をやってたりする。世間からは視野の外に置かれるに違いない、恥ずかしい男を直視しないといけない作品だったからです。こういう作品を読むと、なんのために小説を書き、そして読むのか、読まれるのかという問いが急襲してきます。作品はフィクションではありますが、現実で生きる感覚を失くさずに読書に挑めば、多くの人たちが嫌悪感を感じざるを得ないのではないか、と推察される。自分の気持ちや、僕の想像の範囲内での他者たちの反応を考えて言うことではあるのだけれど、なぜ皆、反射的にこういう男を見ないよう...『グランド・フィナーレ』

  • 『くもをさがす』

    読書。『くもをさがす』西加奈子を読んだ。直木賞作家・西加奈子さんが、コロナ禍のあいだに乳がんに罹患しました。その治療の日々の、記録だけにとどまらないエッセイです。ご自身の気持ちの揺れを隠さず綴っておられます。体調の悪さにひきずられて精神面も沈んでいく日々がある。それでももちろんユーモアを忘れることなく、ときに看護師たちの言動などに大笑いもしている。がんという重い病気に罹患することで、心境はぐらりと変わるし、人生観も変わっていく。そうすると、見えているもの聞こえているものへの解釈も、また以前とは違うものになったりする。抗がん剤や放射線治療がこれほど大変なのだとは、恥ずかしながら知りませんでした。様々な恐怖や大変さが人生には必ずくっついてくるものだけれど、病気や薬によって身体が変化していき、そこに死の影が感じ...『くもをさがす』

  • もっと過ごしやすいX(旧ツイッター)の案

    誹謗中傷の投稿、いじわるな投稿、攻撃性が強い投稿、追いつめる投稿などなど、SNSにはダークな面がある。もっと過ごしやすいX(旧ツイッター)を望む人がどうやら多いようなので、雑ではあるけれどアイデアだけ言ってみる。上位Xをまず作る。そこは、下位X(今のX)でたとえば5000ツイート以上した人のツイートをAIが分析して合格したら登録できる場所。AIには誹謗中傷や暴力的なポストはないかだとか考慮してもらう。ポスト削除数の多寡も大切な要素だ。下位から上位にあがるためのAI診断は某アイドルグループのオーディションみたいに数年に一度とする。このような関門を設けることで、一定の品性というか常識というかリテラシーというか、そういったものをあまりに持たない者に、「もうすこし精進してから挑戦してみてください」と敷居をまたがせ...もっと過ごしやすいX(旧ツイッター)の案

  • ネットアングラ体験記 in 2000

    遠い昔。この国の遥か果ての大きな都市、札幌の地で。学生の頃、高価だったグラフィックソフトなどのソフトウェアがネットで拾えてなおかつそのシリアルナンバーも手に入れられた。アングラだったのだろう。中には、使ってみるとちょっと不具合のあるソフトもあった。今思うと、提供側がなにかをいじっていたのかな、と思う。2000年前後の時代だ。僕のアングラ体験。きっかけはこうだった。当時僕が夢中だったアイドル・Mを、同様に好きな人とネットで知り合い、その人がそのアイドル・Mのファンサイトをこれから作るにあたって、そのアイドル・Mが出演しているCM曲を僕が耳コピーして作ったMIDIファイルを使いたい、という話があった。いつもWEBやIRCソフトでチャットしていた仲間のひとりだった。そのうち、その人からいわゆる割れ物ソフトがたく...ネットアングラ体験記in2000

  • 答えを創ろう!

    身近な人に、これから述べるような感じの人がいるから考えた。「物事には正解がある」という考え方でいると、答えが見つからないときに、「誰かが正解を知っていて、そういう人と出会えば正解を教えてもらえる」というような態度になりがちだ。たとえば「人生」なんていう難しい問題に対してもそうで、誰かに教えてもらえないと、「答えがないから考えても無駄なんだ」となるときだってある。「誰も教えてくれないし、正解が存在しないようだから考えても無駄なんだ」なんて考えは、キツい言い方かもしれないけど、甘えであり子供じみてもいると思う。答えがわからない物事に対してだって、自分なりにいろいろ考えて、ほんの一歩であっても答えを創っていくものじゃないかなあ?クリエイティブがあるかないか、はこういうところにも関係する。学校では正解ばかり求めら...答えを創ろう!

  • 『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』

    読書。『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』坂本龍一を読んだ。2023年3月28日に亡くなられた音楽家・坂本龍一さんが口述筆記によって書かれた自伝です。2009年に発刊された『音楽は自由にする』の続きに位置づけられる、最晩年の活動の様子を知ることができる一冊です。江戸時代の貴族は月を愛でて酒を嗜んでいたそうなんだ、と本書序盤で坂本さんが述べています。音楽って不愉快な思いを忘れていられる、ともある。本書の題名の『あと何回、満月を見るだろう』とそれらの発言を、僕は重ねてしまいましたね。「ぼくはあと何回、素晴らしい音楽を得ることができるだろう」みたいにだって、ちょっと強引かもしれないけれど、読めてしまうじゃないですか。坂本さんは2014年に中咽頭ガンが見つかり、それから闘病生活に入られていますが、その放射線治療の...『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』

  • 『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』

    読書。『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』町田そのこを読んだ。5つの短編が繋がっていく、連作集。著者のデビュー作です。第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞作、「カメルーンの青い魚」を皮切りに、時間的にも空間的にも広がっていき、味わいが深まっていく世界でした。受賞作はもちろん面白いのだけど、その後に書いていったのであろう、その次に続いていく作品群を読んで、その受賞がさらにジャンプ台になって飛躍していったんじゃないかと思えてしまうほど、筆力も構成力も油がのっていってこちらはぐいぐい読んでいくことになり引き込まれながらたびたび、すごいな、とも思ってしまう。一作一作の構成力や仕掛けがよく考えられているし、アイデアも優れているのだけれど、連作としてその5編を通しての構成も「よく創ったなあ!」と著者の労...『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』

  • 『TRIANGLE MAGAZINE 02 日向坂46 小坂菜緒cover』

    読書。『TRIANGLEMAGAZINE02日向坂46小坂菜緒cover』小坂菜緒金村美玖正源司陽子を読んだ。日向坂46のメンバー、小坂菜緒さん、金村美玖さん、正源司陽子さんを50ページずつフィーチャーした写真集。それぞれインタビュー付きです。それぞれのメンバーのカバーがあるのですが、僕は小坂菜緒さんのバージョンにしました。本書のはじまりである小坂菜緒さんは「再会」がテーマです。旅館の一室にて、急須でお茶を入れている写真のたたずまいの美しさ。鎖骨がきれいでした。あと、表紙を同じ撮影セッションの何枚かも秀逸ですね。フリルのついた刺繍のすてきな衣装を着てらっしゃるのだけど、淡い光の加減もあいまって、幻想的非日常の時間が捉えられています。瞬間的にこの写真集の中に連れて行かれていってしまう、そんな引き寄せる強い力...『TRIANGLEMAGAZINE02日向坂46小坂菜緒cover』

  • 『新宿・歌舞伎町』

    読書。『新宿・歌舞伎町』手塚マキを読んだ。働く人も客も、新宿歌舞伎町でしか救われない人がいる。そんな歌舞伎町でグループ企業を持つ、元人気No.1ホストの著者が、歌舞伎町とはどんな街なのかを、自分の想いや経験を乗せながら綴った本です。酒を飲まない僕は水商売の世界をほとんど知らない。日本一の歓楽街である新宿歌舞伎町についても、知っていることがまるでなかったです。まず、飲み屋のシステムから。セット料金、ドリンク代、サービス料、テーブルチャージ、指名料と、ホストクラブなどの飲み屋では、こういったもろもろの料金が合計されて会計がいくらとなります。だから、慣れていない人にすれば、「ぼったくりだ!」となる、と著者は書いています。さっきも書いたように、僕は酒を飲まないし、こういったお店に行った回数は片手で足りるほどでもあ...『新宿・歌舞伎町』

  • 『「いき」の構造』

    読書。『「いき」の構造』九鬼周造藤田正勝:全注釈を読んだ。京都大学教授で哲学者の九鬼周造による1930年刊行の論考、解説・注釈付きです。日本人が何かに「いき」を感じる感覚、「いき」を自ら表現するふるまい、それをよしとする価値感、そんな「いき」がどういったメカニズムで成り立っているかを言葉にできる範囲のぶんだけ言い表しています。著者は「潜勢性」と表現していますが、現在で言えば暗黙知のようなことであり、「いき」を構成するそのものあるいはその現象は存在していても、言葉にならないものについては、諦めています。というか、「いき」には、概念的分析と意味体験とがあり、後者について言葉で表現を尽くすことはできないものだし、さらに通約不可能性(それぞれがそれぞれの論理を持っていて、お互いに通じはしないというようなこと)があ...『「いき」の構造』

  • いろいろと考えてしまう人には旅がいい。

    平均的な人よりも、いろいろと考えてしまう人。他の人は10個考えている程度なのに、自分は15個考えていて、他の人はそのうちの1個についてひとつかふたつかの可能性を考えているところ、自分はよっつもいつつも可能性が思いつき想像できている、そういう人は物事を決断するのにエネルギーがとても要る。頭が良くて思慮深いところがあるってことなんだけど、そういう人って、状況の複雑さがほんとうにきちんと見えてしまっていて、だから、決断がしにくい。けっして決断力がないわけじゃない。そこを無理に決断しなくてはならなくなるから、エネルギーを大量に使う。そういう人が「旅」をすると、それも「一人旅」をすると、選択や決断の経験を身近なところでいくつもすることになって、性格的だったり思考面だったり、まあ「これだ!」とは決めて言えないけど、な...いろいろと考えてしまう人には旅がいい。

  • 手持ちの札でやっていきませんか。

    プラトンの『ゴルギアス』をこのあいだ読んでいてびっくりしたのですが、「手持ちの札でとにかくやるしかないんだから、それで精一杯やるんだ」っていう考え方が古代ギリシャの時代にはあったと、その時代に生きた主人公のソクラテスが話していました。手持ちの札がしょうもなくても、それで頑張るしかないんだ、っていう人生訓について僕は、10年前後前になりますが、東野圭吾さんの小説で知ったのがたぶん初めてで、なるほどその通りだなあ、と膝を打ったのを覚えています。しかし、古代ギリシャの時代からあった考え方だったんですね。ただそれ以前に、「こんなクソ手で勝てるわけがない!だから降りる!」という選択のありかたがあることを、かっこいい女性ロックミュージシャンが、ハスキーな歌声で歌っていたのを好んで聴いていたりもしました。現代ではこうい...手持ちの札でやっていきませんか。

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