伊嶋村には、陶芸だけしか選択肢がなかった。陶芸の才能が無いからと、村を出て行った者も多い。ただでさえ若者に倦厭されがちな古い体質の村なのに、このままでは村が無くなってしまう危険だってある。それは伊嶋焼きの存続に直結しているのだ。それなら逆
教師率、裏社会率、オヤジ率、ストーカー率少々多め 短編もあります!
BL/MLの小説・イラスト・マンガを趣味で書いております。下克上やオヤジ受け、年の差カップルが大好物ですので、そのうち増えていきます(笑)スーツとか眼鏡属性も高いです。
伊嶋村には、陶芸だけしか選択肢がなかった。陶芸の才能が無いからと、村を出て行った者も多い。ただでさえ若者に倦厭されがちな古い体質の村なのに、このままでは村が無くなってしまう危険だってある。それは伊嶋焼きの存続に直結しているのだ。それなら逆
1階に降りて仏間でお線香を上げてから居間に入ると、若い連中はタブレットを持ち寄って早速計画表からデザイン画やら予算案やらを見せてくる。何故だか自分達が村おこしの旗頭にされてしまっていて、なんだか申し訳なくなってくる。『あのさ、えっと&he
みなさま、いつも真昼の月に遊びに来てくださってありがとうございます! すいません、ちょっと色々と立て込んでおりまして、今週お休みさせて下さい💦💦また来週再開できるように頑張っております。よろしくお願
◇◇◇ ◇◇◇ 駅に着くと、信吉の軽トラが見えた。その小さなトラックを見て、久義とウィリアムは、自分たちは日本に帰ってきたのだなと思えた。『じいちゃん、迎えは良いって言ったのに』『なぁに、せっかくお前らが帰ってきたんだ。俺が迎えに来な
(R18)です。そして今回、いつもよりちょっと長いです💦 当blogは18才未満の方は読んでいないはずですが、苦手な方、生理的に無理な方が読んでしまわないように、一応たたみます。大丈夫おっけーどんとこい!という方だけ「続きを
久義はぐっと唾を飲み込み、ゆっくり瞬きをした。「……ああ。ウィリアムを伴侶とし、病める時も、健やかなる時も、あなたを愛することを誓います。だから、だからウィル。俺も……ウィルに申し込
◇◇◇ ◇◇◇ イギリス最後の夜を過ごす場所として、ウィリアムが選んだのはロンドンでも最も階層の高いホテルだった。五つ星のついたホテルだが、彼が選んだ理由は「ロンドンの全てを1度に目に焼き付けようと思って」というものだった
「……だから、皆そろそろ、あの事故は誰のせいでもない、対向車のおっさんのせいだって、認めても良いと思うんだ」 その事故で父を亡くした息子はそう言った。 あの事故のせいでどれだけでも寂しい想いをしてきた筈なのに。「
大切な義信を失ってまで、何がイギリスだ。何が自分の夢だ。そんな物が何になる。愛しい義信と比べものになどならないのに。 何故自分はあの時義信のそばを離れた。一瞬でも、彼のそばを離れるべきでは無かった。ずっと一緒にいたかった。ずっと一緒にいる
「お母さん、おじい様は、あなたに謝罪を」 ウィリアムがそっとそう呟くと、謳子は何を言われたのか分からないような顔をした。 「謝罪? お義父様が……?」 何故? 何に対して? まさか、まさか自分に対してで
みなさま、いつも真昼の月に遊びに来てくださってありがとうございます! すいません、今週はちょっとお休みさせてください!! なんか、仕事が繁忙期だったり、風邪のせいで口内炎がひどくて飯が喰えないから風邪が治らなくて口内炎が
それから謳子は、眉を寄せ、目尻を下げて、微笑みながら「困っちゃったなぁ」と呟いた。それは本当に困った顔で、一瞬ウィリアムは謳子が泣き出すのかと思う程だった。「お母さん? 大丈夫ですか? あの、無理はしないで下さい。ハギスはイギリス人でも苦
「それで、なに? この後は伊嶋に行くの?」 謳子は2人の前の席に座り込むと、さっさとカップケーキを手に取って、そのまま齧り付いた。さすがにウィリアムが目を丸くする。それはそうだろう。今まで会ってきた謳子は、バーマストン伯爵の右腕として、上品
◇◇◇ ◇◇◇ 前もって知らせてあったので、サロンを出たウィリアムと久義を先導する為に、メイドのクラリスが廊下で控えていてくれた。「高野夫人の元にご案内します」 あくまでも、ウィリアムに合わせた対応
テオドアには分からなかった。ただ1人の友を想う気持ちがどこから来ているのか。 現在テオドアには婚約の話が持ち上がっているが、彼にとってはそんな降って湧いた婚約者など、取り替えのきく存在でしかなかった。そんな彼女との関係よりも、テオドアには
本日、2日分の長さとなっております💦ちょっと途中で切って2つに分けるのもどうかと思ったので、長いのですが一気に載せてしまいました💦どうかお付き合いくださると嬉しいです。 イヌ吉拝 &
皆様、コメントありがとうございます。お返事はコメントをいただいた順に書いております。先に書いていただいた方のリコメが下になっておりますので、もし自分へのレスがないな、と思われたら、下の方をググッとスクロールしていただけると嬉しいです。&nb
テオドアは、思わず頭を掻きむしった。髪型が崩れる事も気にならないようで、まるで癇癪を起こした子供のよう。いつも冷静なテオドアの面影は、今はない。「あんな何もない辺境に暮らして、苦労しない訳がないだろう!?」 そうして出てきたのはそんなあり
「……テオドア。君の重責も苦悩も、私は一緒に背負ってはやれない。君の言うとおり、ブリストンに行くが良い。そうして、君のその重責を共感できる友人と一緒に分かち合えば良い」「なにを……」
皆様〜、先週はお休みをいただきありがとうございました!ちょっとまだバタバタしておりますが、できるだけお休みの内容に頑張ります! イヌ吉拝 =============== 「ウィリアム
今週の更新はお休みさせて下さい💦💦
皆様、いつも『真昼の月」に遊びに来て下さり、ありがとうございます。 ちょっと今週は色々とプライベートがたてこんでおりまして、今週の更新はお休みさせて下さい💦💦 また来週ぜひ遊びに来て下さる
「どういうつもりだ! 私は認めないぞ!」 バーマストン伯爵がサロンを出て行くなり、テオドアはそう牙を剥いた。普段感情を表に出さないようにと己を律しているテオドアだが、事この事に関しては、その仮面をかなぐり捨てるらしい。 だがそれに対して、ウ
「父上! 今はそのような焼き物の話などより、ウィリアムの話でしょう!? フィッツガードの正当な後継者であるウィリアムが、日本人の男などと一緒に国を出ようというのですよ! ここで我々が彼を正しき道に導かねば、誰がそれをできるというのですか!」
「その台詞は私にではなく、トーマスにでも言ってやると良い」「え?」 伯爵の言葉の意味を図りかねている久義に向かって、伯爵はもう一度肩を竦めて見せた。 「もしも君が当家の使用人だったとしても、人事権は執事と家
サロンルームにはバーマストン伯爵とその息子のテオドアが待ち構えていた。久義は小さくぺこりと頭を下げてソファの端に座ろうとしたが、もちろんそんなことをウィリアムが許すはずもなく、堂々と真ん中を2人で共有する。 ソファに座ると馴染みのメイドが
◇◇◇ ◇◇◇ その城は、久義には見慣れた城の筈なのに、ずいぶんと大きく聳え立つように見えた。 暗い雲を背負って立つ名城、ローズウッド城。イングランドの歴史に名高い名門バーマストン伯爵家の居城であり、世界に名高い陶磁器メー
◇◇◇ ◇◇◇ その日の夜は、真理江から熱心にフィッツガード邸に泊まるようにと勧められ、とうとう真理江は二人を留め置くことに成功した。「せっかくなんだから、2人は2人で過ごしたいだろう?」 伯爵はそう言ってウィリアム達がよそ
皆様、先週はお休みをいただき、また、ご心配おかけしてすいませんでした。もうしっかり良くくなりましたので、またよろしくお願いします。 ヌ吉拝 ------------------------- &nb
皆様、いつも真昼の月に遊びに来て下さりありがとうございます。 すいません、最近流行しているという例のアレにかかってしまいまして……人生二度目のコロナでございますが、熱が39.2℃とか出ております&hel
フィッツガード伯爵は、厳めしい顔のまま言い放った。 だが、その口から出てきた言葉は、ウィリアムや久義が思った物とは全く違う物だった。「勘当はしない。お前はフィッツガードの継承権を持ったまま、ここではないどこかに行って、愛する人と暮らすの
それでも、ウィリアムは当然の事として、久義の腰にそっと手を添えて話し始めた。 それは、あまりにも当然で……まるで太陽が東から昇って西に沈むのだと言うような、それほどまっすぐな口調だった。「私は久義を愛しています
「そう、伊嶋のおじい様はそんなにフレンドリーな方なのね」「ええ、彼は私のことまで、まるで孫のように可愛がって下さいました」 ウィリアムが嬉しそうにそう言うと、真理恵は驚いたように目を見開いてから、嬉しそうに笑った。 「人間国宝だっ
◇◇◇ ◇◇◇ 空は重い雲に覆われていた。車の窓の外には、チラチラと風花が舞っている。 イングランド北部、フィッツガード。 夏に見れば真っ青な空にすっくと立って見えるフィッツガード城も、今は灰色の空気の中で押しつぶされそうに見える。
「ということで、俺、本当ならもっと早くにバーマストンに帰らなきゃいけなかったんだ」 光留の和菓子の出来を確認しないといけないし、急に放り出されたのだ、光留だってこれからは全てのレシピ作成を自分でしなければならなくなった。自分の修
「は?いくら久義さんが子供の頃からここで育ってきたからって、あんな横暴なことを言われながら働く必要ないですよね?何スか?子供の頃からここで育ってきたら、副社長様の人権無視な時代錯誤のパワハラに耐えろるのが当然だって言うんスか?久義さんが定時
すいません、更新遅くなりました💦💦ご心配とご迷惑をおかけしてすいませんでした💦💦💦−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−「そう、テオドアもそうだけど&hel
ウィリアムは一瞬固まった。どう反応したら良いのか分からなかったのだ。 久義がそう言ってくれたことは嬉しい。だが、彼と一緒に帰ったらどうなる? 信吉の言うように、きっとウィリアムの周りにいる者は皆、久義を悪者に仕立て上げ、彼に自重を求めるだ
◇◇◇ ◇◇◇ 久義の熱は夕方には下がり、夕飯は皆と一緒にこたつで食べられるようになった。『ちゃーちゃん、大丈夫?無理しないで、だるかったらすぐ上に戻るのよ?』 おばあちゃんはそう言って、久義に厚めの袢纏(はんてん)を着させ、ご飯の代わ
謳子はこの村を出てから、1度もここに来たことはないと聞いた。それでも、久義は幼い頃から冬になると1人でこの村に来ていたのだと。 信吉がいなければ、久義の父親は妻と子供と一緒に、もっと早くに村を出ていたのかもしれない。そうすれば、彼が死ぬこ
不思議そうな顔をするウィリアムに、信吉は苦笑した。「まぁ、とにかく、1度国に帰って、お父上やお母上とちゃんと話し合ってきな。やるだけのことをやって、久義にあんたを負い目に思わないようにしてやってくれ。それができて初めて、村の連中はあんたを
◇◇◇ ◇◇◇ 朝食を食べ終わったウィリアムに、「少しその辺を散歩しないか」と誘ったのは信吉だった。 信吉は結構な年だというのに、この村で育ってきた為だろうか、全く危なげなく雪の中を歩いて行く。『おじいさん』 信吉の後ろを歩
◇◇◇ ◇◇◇ 翌朝、情けないことに久義は熱を出してしまった。 体の節々が痛いのは、熱の為だと思いたい。決して、あんな事やこんな事をしたせいだとは思いたくない。「ヒ、ヒース、大丈夫か……?」 ウィ
(R18)です。そして今回、いつもよりちょっと長いです💦 当blogは18才未満の方は読んでいないはずですが、苦手な方、生理的に無理な方が読んでしまわないように、一応たたみます。大丈夫おっけーどんとこい!という方だけ「続きを
「私はヒースをとても可愛いと思うし、とても愛しいと思うし、とても美味しそうだと思っているんだよ」「そ、それは、俺が和菓子を作ってるから、とか、食いしん坊だから、とか、そういうことか……?」「違うよ。ふふ、だって、
(R15)です。当blogは18才未満の方は読んでいないはずですが、苦手な方、生理的に無理な方が読んでしまわないように、一応たたみます。大丈夫おっけーどんとこい!という方だけ「続きを読む」を押すか、もしくは下にスクロールしてお読み下さい。-
テオドアも、そうしてもちろんウィリアムも人知れぬ努力を積み上げてきた。日本人の久義からすると横柄で威圧的に見えるテオドアの態度だって、あれは貴族であろうとする彼の努力で作られた物なのだ。 それをこの人は、まるで何でも無い事のように弟に譲ろ
貴族としての体面を常に気にしていた、古いタイプの貴族に育てられた母は、自分が育てられたようにしか自分の子供を育てる方法を知らなかった。子供が生まれたら乳母に預け、長ずればパブリックスクールに入れて高等教育を受けさせる。たまの休暇に帰ってき
「さぁ、もう分かっただろう?ヒースが気にしなければならないようなことは何もないんだ。父だって、愛しい新妻との息子を手元に置いて跡を継がせる事に歓びを見いだす可能性は高いと思うぞ?」「そんな筈……!」「そう?でも、
◇◇◇ ◇◇◇ 窓の外で、木の枝からだろうか、雪が滑り落ちる音がした。そんな音が耳に入るほど、この村の夜は静かだった。 村の中に小さな呑み屋が無い訳では無いのだが、当たりの静寂を破るような大声を出す人はいない。 外は暗くて、
『待ってくれ!少なくともウィルはその計画から外してくれ!ウィルは由緒ある貴族の跡取りなんだよ!将来は伯爵家を継いで領地を運営しないといけないんだ!日本でそんな事をしている暇なんてないんだよ!』 必死な久義の声を、しかしその場の一
『古民家カフェだよ! 古い空き家なんていっぱいあるから、リノベーションしてうちの器でお前の和菓子を出せば絶対当たるぞ!ぶっちゃけ、お偉方みたいなうん十万の器じゃなくて、俺らヒヨッコの作った器でも、古民家カフェなら使ってもらえるだろ!?』 ほ
◇◇◇ ◇◇◇ こたつの中で、一緒にテレビを見ながらミカンを食べる。ここでは皆が当たり前にしていることが、久義やウィリアムにとっては奇跡の瞬間だ。 こたつという人類史上に輝く発明(いや中東や中央アジアにもあるけど)、ミカン
◇◇◇ ◇◇◇ 深い雪の中を、久義とウィリアムはゆっくりと歩いていた。この村はとても居心地が良いが、二人でいる時間が少し少ない。どちらからそう言った訳ではないが、今日は何となく、二人だけでいたかった。「寒くない?
◇◇◇ ◇◇◇ 祖父に「話し合う時間が必要だ」と言われたのには、きっと、何か理由があるのだろう。ほんの少しウィルに会っただけの祖父にすら見えて、自分には見えない物があるのかもしれない。そう思うと、久義ももうウィリアムに「帰れ
『初めまして。突然の訪問、は、失礼しました。ウィリアム・オーガスタ=オブライエンです。父は伯爵ですけれども、私は違います。私は会社で働いているなのでさら……サラリーマン?です。私はイギリスでヒースと友達になりまし
◇◇◇ ◇◇◇ どれだけの時間が経ったのか。襖の向こうから、祖父の信吉が声をかけてきた。『おい、久義。話が終わったんなら、茶でも飲みに来い』 まだウィリアムの胸の中でぼーっとしていた久義は、その声にハッとして慌ててウィリアム
「爵位を海斗様が継げるということは分かった。でも、問題はそこじゃないだろ?俺は男なんだよ?あなたが男の俺と一緒になるなんてそんなことは許されな……」 だが、その台詞も言いきる前にウィルに叩き落とされる。「爵位をマ
遅くなりましてすいません💦💦USB、見つかりました〜!ご心配おかけしてすいませんでした!!それでは、『金魚の恋』76話、お付き合いくださいませ。 イヌ吉拝 ーーーーーーーーーーーーーーーー
すいません、今週の更新は週明け月曜にさせて下さい💦💦
皆様、いつも「真昼の月」に遊びに来てくださってありがとうございます!すいません、今週のお話なのですが、いつもの土曜日ではなく、週明けの月曜にさせて下さい💦💦💦 USBが!!お話を入れ
「もしも私の自惚れでないのなら、ヒースは私を少なからず想ってくれていると……そう思っても良いのだろうか」 ウィリアムは久義の手を取って、下から覗き込むようにしてそう言った。「……っ」
皆様、明けましておめでとうございます!!いつも「真昼の月」に遊びに来てくださり、ありがとうございます! 昨年中は皆様にたくさん遊んでいただいて、本当に嬉しかったです!今年も亀の歩みではありますが、頑張っていこうと思って
「これは父の描いたデザイン画や……ああ、これは俺が描いた物で……」 そこには、たくさんの金魚が泳いでいた。父の手によるティーセットのデザイン画を久義の手で描き直した物は、父ほどの洗練さ
「良いか、ウィル。今からここに紙を貼る」「あ、ああ?」 そう言って久義は、襖と襖の間に一枚の紙を剥がせるタイプの糊で貼り付けた。「大昔、この紙は鍵だった」「は?」「もし誰かが勝手に箱を開けたり部屋や家に入れば、紙がちぎれて落ちる。そうすれば
先週はお話の入っているUSBメモリを職場に忘れてきたので、1日遅れでアップしました。もし前回のお話を読んでいない方がいらしたら、こちらからお読みいただければと存じます……💦💦
すいません!!お話の入っているUSBメモリーを職場に忘れてきてしまい、昨日は更新できませんでした💦慌てて取ってきましたよ〜〜💦💦💦遅くなりましたがお付き合いいただけると嬉しいで
窓を開け、細いつららを探す。ポキンと折って、口に運ぼうとして、こないだも祖母に怒られた事を思い出す。 子供の頃はいつもつららをアイスキャンディーだと言っては口に運び、『ばっちいからやめなさい!空気中の塵とか埃がついているんだから!!』と怒
◇◇◇ ◇◇◇ 世界に名高い伊嶋焼きの頭領、人間国宝・十三代高野彦左衛門こと高野信吉の作業場は、多くの人が想像している物よりも小さい。ここは祖父が作陶に没入する為の場所だ。 この作業場を使えと言われた時、正直久義は面食らっ
「義母上、伊嶋焼きというのは、日本のどこで作っているのですか?」「伊嶋焼き?ああ、久義さんのお父様の?」「教えて下さい」 いつになく真剣に真理恵に向かうウィリアムに、真理江は驚いた顔をした。だが、彼女はその理由も聞かず、すぐに晴れやかな笑顔
「だって私は日本人だもの!日本から送ってもらう海産の瓶詰めだけじゃ物足りないわ!日本とイギリスじゃお水が違うんだから、やっぱり日本のお水で炊いたお米が食べたいのよ。新潟はお米もお酒も本当においしいのよ。ああ、あなた達にも食べさせてあげたいわ
あなた達には分からない。我々のような身分の者があなた方のような身分の方と共に接するということがどういうことなのかを。友情などと言いながら、あなたは久義に何をした。幼い頃からこの地でどんな思いをしても、久義は日本に逃げるなんて今迄考えたこと
「久義と連絡が繋がらなくなりました。連絡先を教えていただけないでしょうか」 一瞬、謳子はどう返したものか考え込んだようだった。だが、口元に微笑を浮かべ、小さく肩を竦めて見せた。 「日本のあちこちで羽を伸ばしているのでしょうね。主人の里は山奥
「いつまでもあんな日本人に振り回されているつもりだ。お前は日本人が嫌いだったんじゃないのか」 思わずそう声をかけると、ウィリアムは携帯からテオドアに視線を動かし、意外そうな顔をした。 「私は今迄に一度も、日本人が嫌いだ
◇◇◇ ◇◇◇ テオドアは今日、フィッツガード伯爵からの招待で、バーマストン伯爵夫妻や久義の母謳子と共にフィッツガード邸を訪れていた。謳子も招待されたのは、先日届けてくれたお節料理に対する返礼のようで、お茶会の中でも最も格式の高いアフタ
『……なぁ、久義。ゆっくりしていくんなら、少し真面目にロクロでも回していくと良い』『うん、ありがとう』 久義の作る和菓子をいつも手放しで褒めてくれる伸吉だが、それでも何か少しでも良いから作陶するように
『ありがとう、ちゃーちゃん!』『あ、これ雑誌で見たことある!ちゃーちゃん、並んだんじゃない!?』 祖母がいつも久義を子供の頃の呼び名で呼ぶから、伊嶋の親戚達は祖母に倣ってみんな久義を“ちゃーちゃん”と呼ぶのだ。&nb
そうして暫く二人でたわいもない話に花を咲かせていたが、そのうちふと信吉が真面目な顔で久義を見つめてきた。『……どうした、久義。何だかいつもよりおとなしいな。日本語忘れたか?』 信吉の指摘に、久義は驚いた。どうし
本日から第二部となります。舞台が変わりますのでちょっと雰囲気が変わるかもです。なお、引き続き『』の会話は日本語での会話、「」は英語の会話となります。どうぞ第二部もお付き合いの程、よろしくお願いします。 イヌ吉拝
気がつくと、自分の両肩にウィリアムの手がかけられていた。ハッとして上を向く。すぐ目の前に、ウィリアムの美しいオリーブグリーンの瞳があった。 白い肌。金色の長い睫毛。高い鼻。その全てが久義が属する物とは違う。 ああ、ほら。自分とウィルはこん
◇◇◇ ◇◇◇ ウィリアムの部屋に入るのは二度目だった。前に来た時は水槽と金魚の数に驚いたが、今はそれも目に入らない。 久義はウィリアムと二人きりの空間にいることに戸惑い、何を言えば良いのか、そればか
◇◇◇ ◇◇◇ 謳子からは、久義が東京に帰る事を、ちゃんとフィッツガード伯爵家にも知らせておけ、と言われていた。真理恵夫人が久義のお菓子を当てにしていると悪いから、その期間はイギリスにはいないちゃんと伝えておけと言うのだ。そ
『ん〜、そうだけどさぁ。私いる?いらなくない?別にデザイナーの挨拶、いらなくない?クリスマスプレートは何ヶ月も前にデザイン搬入してるし、イベントの指示は十一月には終わってるじゃない?私いる?いなくても良くない?』『当日チェックがあるだろ』『
※『』内の台詞は日本語です💦 ◇◇◇ ◇◇◇ 久義があれだけの啖呵を切ったにもかかわらず、テオドアからはその後何も言っては来なかった。トーマスが何かを言ってくれたのかもしれないが、彼が金魚のティーセ
皆様、いつも「真昼の月」に遊びに来て下さりありがとうございました!8月1日に、当blogはありがたいことに開設10周年を迎えました!御礼ページをアップしておりますので、まだ見ていないよ、という方はぜひ覗いてみて下さい! 開設10周
皆様、コメントありがとうございます。お礼が送れていて、大変申し訳ありません💦💦お返事はコメントをいただいた順に書いております。先に書いていただいた方のリコメが下になっておりますので、もし自分へのレスがないな、
Happy 10'th Anniversary〜真っ白い世界〜
気がつくと、そこは辺り一面真っ白い空間だった。ふわふわして、なんだか天国みたいだ……と思ったとき、設楽は今自分が夢を見ているのだと気づいた。 そっか。夢か。 真っ白くて、ふわふわで、暖かくて、何だか幸せな場所だ
皆様、いつも「真昼の月」に遊びに来てくださってありがとうございます!10周年です!とうとう開設10周年を迎えました!!こんなに長い間、「真昼の月」を応援してくださりありがとうございます!! 昨年は時間が無くて開設ページにお礼イラス
目の前が赤くなるほど血が煮え滾っている。目の前のこの男は、友人の名誉と父の名誉を秤にかけて、父の名誉を踏みにじったのだ。 久義がテオドアを睨みつけると、テオドアは「何だその目は!!」と怒鳴りつけた。「だいたいウィリアムもウィリアムだ!父親
「お言葉ですが、金魚のティーセットは父の形見であり、完全に私の私物です」 久義が反論することは分かっていただろうに、テオドアは不愉快そうに目だけを上に向け、久義を睨みつけた。「だからどうした。私が売れと言っているのだ」「っ!」 その鋭い瞳に
◇◇◇ ◇◇◇ そこからどうやって帰ってきたのかよく覚えていない。まぁ無事に帰ってきたのだから、おかしな運転はしなかったのだろう。 車を駐車場に停め、久義は報告の為に本館に顔を出した。玄関ホールを入ってすぐに執事のトーマス
◇◇◇ ◇◇◇ ウィリアムを降ろし、彼の姿が見えなくなるまで走ると、久義はノロノロと車を路肩に停めて、ハンドルに覆い被さるようにして溜息をついた。 どうして、こんなに息が苦しいんだろう。 ウィルが自分を思いやってくれる気持ち
「ヒース!」 だが、勢い込んで言おうとした台詞は、そのまま口を出ることはなかった。 久義の固く結ばれた唇。穏やかに凪いでいると思った瞳は、今は何かを堪えるように僅かに揺れていた。 そうだ。ヒースも、何かを耐えている。彼だって、辛いのだ。「ヒ
ぐるぐると考え込んでいるウィリアムをどう思ったのか、久義は前を見つめながら、残酷な言葉を口にした。「……金魚の陶器が欲しいのでしょう?」 陶器よりも硬く、冷たい声だった。いつもの久義の声とはあんまりにも違うから
「……分かった。他でもない、ゲストの望みなのだからな。誰か、ヒースを呼んできてくれ」 それがあくまでも自分の意思であるかのように、テオドアは重々しく周りの使用人達に指示を出した。 周りで様子を伺っていたメイドの一
◇◇◇ ◇◇◇ 結局三回スヌーカーをプレイして、二対一でウィリアムが勝利した。テオドアに言わせれば、ビリヤードは背も高く、手足も長いウィリアムが有利だ、という事になるのだが、真相は明らかではない。 勝敗が思い通りにならなかったせいか、
◇◇◇ ◇◇◇ 真理江が温室で夫人方のお茶会を“楽しんでいる”間、ウィリアムはテオドアと遊戯室でスヌーカーに興じていた。 スヌーカーはビリヤードの一種だが、プールテーブルの大きさも違えばボールの数も
「よろしかったら、貴族の子息達を数多く教えている乳母を紹介しましてよ?ちゃんとした乳母を雇い入れることは大切な事ですもの。彼女たちは貴族としての振る舞いや常識を教えてくれることはもちろん、暴漢や誘拐だけでなく、パパラッチやSNSから身を守る
◇◇◇ ◇◇◇「まぁ、フィッツガード夫人!本日はようこそいらっしゃいました!」 結局、真理江はマウリッツ……海翔を連れてお茶会に参加することにした。個人的なお茶会なのだから、子供を連れて行っても良いかと打診
◇◇◇ ◇◇◇ ウィリアムの言うとおり、真理江は高野親子を諦めてはいなかった。既に一回、バーマストンと来訪の予定が合わず、お茶菓子を連続でポーターが運んできた時点で諦めても良さそうなものなのに、「次はいつバーマストンへ行こう
久義は見開いた目を伏せ、それからパチパチと何度も瞬きをした。そうして、どうやら彼は自分の中で、それを冗談にすることにしたらしい。「金魚を自慢したいだけだろう?」「そうとも言う!」 ウィリアムもすぐに久義の考えに乗ることにした。事を急ぎすぎ
「最近は、ヒースが届けに来ないから、義母が少し気にしていたよ」「ああ……パティシエの俺が届けるのもおかしいだろうと言われて……。今迄は、真理江夫人が領地に馴染むためにと俺が行くように言
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伊嶋村には、陶芸だけしか選択肢がなかった。陶芸の才能が無いからと、村を出て行った者も多い。ただでさえ若者に倦厭されがちな古い体質の村なのに、このままでは村が無くなってしまう危険だってある。それは伊嶋焼きの存続に直結しているのだ。それなら逆
1階に降りて仏間でお線香を上げてから居間に入ると、若い連中はタブレットを持ち寄って早速計画表からデザイン画やら予算案やらを見せてくる。何故だか自分達が村おこしの旗頭にされてしまっていて、なんだか申し訳なくなってくる。『あのさ、えっと&he
みなさま、いつも真昼の月に遊びに来てくださってありがとうございます! すいません、ちょっと色々と立て込んでおりまして、今週お休みさせて下さい💦💦また来週再開できるように頑張っております。よろしくお願
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久義はぐっと唾を飲み込み、ゆっくり瞬きをした。「……ああ。ウィリアムを伴侶とし、病める時も、健やかなる時も、あなたを愛することを誓います。だから、だからウィル。俺も……ウィルに申し込
◇◇◇ ◇◇◇ イギリス最後の夜を過ごす場所として、ウィリアムが選んだのはロンドンでも最も階層の高いホテルだった。五つ星のついたホテルだが、彼が選んだ理由は「ロンドンの全てを1度に目に焼き付けようと思って」というものだった
「……だから、皆そろそろ、あの事故は誰のせいでもない、対向車のおっさんのせいだって、認めても良いと思うんだ」 その事故で父を亡くした息子はそう言った。 あの事故のせいでどれだけでも寂しい想いをしてきた筈なのに。「
大切な義信を失ってまで、何がイギリスだ。何が自分の夢だ。そんな物が何になる。愛しい義信と比べものになどならないのに。 何故自分はあの時義信のそばを離れた。一瞬でも、彼のそばを離れるべきでは無かった。ずっと一緒にいたかった。ずっと一緒にいる
「お母さん、おじい様は、あなたに謝罪を」 ウィリアムがそっとそう呟くと、謳子は何を言われたのか分からないような顔をした。 「謝罪? お義父様が……?」 何故? 何に対して? まさか、まさか自分に対してで
みなさま、いつも真昼の月に遊びに来てくださってありがとうございます! すいません、今週はちょっとお休みさせてください!! なんか、仕事が繁忙期だったり、風邪のせいで口内炎がひどくて飯が喰えないから風邪が治らなくて口内炎が
それから謳子は、眉を寄せ、目尻を下げて、微笑みながら「困っちゃったなぁ」と呟いた。それは本当に困った顔で、一瞬ウィリアムは謳子が泣き出すのかと思う程だった。「お母さん? 大丈夫ですか? あの、無理はしないで下さい。ハギスはイギリス人でも苦
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◇◇◇ ◇◇◇ 前もって知らせてあったので、サロンを出たウィリアムと久義を先導する為に、メイドのクラリスが廊下で控えていてくれた。「高野夫人の元にご案内します」 あくまでも、ウィリアムに合わせた対応
テオドアには分からなかった。ただ1人の友を想う気持ちがどこから来ているのか。 現在テオドアには婚約の話が持ち上がっているが、彼にとってはそんな降って湧いた婚約者など、取り替えのきく存在でしかなかった。そんな彼女との関係よりも、テオドアには
本日、2日分の長さとなっております💦ちょっと途中で切って2つに分けるのもどうかと思ったので、長いのですが一気に載せてしまいました💦どうかお付き合いくださると嬉しいです。 イヌ吉拝 &
皆様、コメントありがとうございます。お返事はコメントをいただいた順に書いております。先に書いていただいた方のリコメが下になっておりますので、もし自分へのレスがないな、と思われたら、下の方をググッとスクロールしていただけると嬉しいです。&nb
テオドアは、思わず頭を掻きむしった。髪型が崩れる事も気にならないようで、まるで癇癪を起こした子供のよう。いつも冷静なテオドアの面影は、今はない。「あんな何もない辺境に暮らして、苦労しない訳がないだろう!?」 そうして出てきたのはそんなあり
「……テオドア。君の重責も苦悩も、私は一緒に背負ってはやれない。君の言うとおり、ブリストンに行くが良い。そうして、君のその重責を共感できる友人と一緒に分かち合えば良い」「なにを……」
皆様〜、先週はお休みをいただきありがとうございました!ちょっとまだバタバタしておりますが、できるだけお休みの内容に頑張ります! イヌ吉拝 =============== 「ウィリアム
◇◇◇ ◇◇◇ こたつの中で、一緒にテレビを見ながらミカンを食べる。ここでは皆が当たり前にしていることが、久義やウィリアムにとっては奇跡の瞬間だ。 こたつという人類史上に輝く発明(いや中東や中央アジアにもあるけど)、ミカン
◇◇◇ ◇◇◇ 深い雪の中を、久義とウィリアムはゆっくりと歩いていた。この村はとても居心地が良いが、二人でいる時間が少し少ない。どちらからそう言った訳ではないが、今日は何となく、二人だけでいたかった。「寒くない?
◇◇◇ ◇◇◇ 祖父に「話し合う時間が必要だ」と言われたのには、きっと、何か理由があるのだろう。ほんの少しウィルに会っただけの祖父にすら見えて、自分には見えない物があるのかもしれない。そう思うと、久義ももうウィリアムに「帰れ
『初めまして。突然の訪問、は、失礼しました。ウィリアム・オーガスタ=オブライエンです。父は伯爵ですけれども、私は違います。私は会社で働いているなのでさら……サラリーマン?です。私はイギリスでヒースと友達になりまし
◇◇◇ ◇◇◇ どれだけの時間が経ったのか。襖の向こうから、祖父の信吉が声をかけてきた。『おい、久義。話が終わったんなら、茶でも飲みに来い』 まだウィリアムの胸の中でぼーっとしていた久義は、その声にハッとして慌ててウィリアム
「爵位を海斗様が継げるということは分かった。でも、問題はそこじゃないだろ?俺は男なんだよ?あなたが男の俺と一緒になるなんてそんなことは許されな……」 だが、その台詞も言いきる前にウィルに叩き落とされる。「爵位をマ
遅くなりましてすいません💦💦USB、見つかりました〜!ご心配おかけしてすいませんでした!!それでは、『金魚の恋』76話、お付き合いくださいませ。 イヌ吉拝 ーーーーーーーーーーーーーーーー
皆様、いつも「真昼の月」に遊びに来てくださってありがとうございます!すいません、今週のお話なのですが、いつもの土曜日ではなく、週明けの月曜にさせて下さい💦💦💦 USBが!!お話を入れ
「もしも私の自惚れでないのなら、ヒースは私を少なからず想ってくれていると……そう思っても良いのだろうか」 ウィリアムは久義の手を取って、下から覗き込むようにしてそう言った。「……っ」
皆様、明けましておめでとうございます!!いつも「真昼の月」に遊びに来てくださり、ありがとうございます! 昨年中は皆様にたくさん遊んでいただいて、本当に嬉しかったです!今年も亀の歩みではありますが、頑張っていこうと思って
「これは父の描いたデザイン画や……ああ、これは俺が描いた物で……」 そこには、たくさんの金魚が泳いでいた。父の手によるティーセットのデザイン画を久義の手で描き直した物は、父ほどの洗練さ
「良いか、ウィル。今からここに紙を貼る」「あ、ああ?」 そう言って久義は、襖と襖の間に一枚の紙を剥がせるタイプの糊で貼り付けた。「大昔、この紙は鍵だった」「は?」「もし誰かが勝手に箱を開けたり部屋や家に入れば、紙がちぎれて落ちる。そうすれば
先週はお話の入っているUSBメモリを職場に忘れてきたので、1日遅れでアップしました。もし前回のお話を読んでいない方がいらしたら、こちらからお読みいただければと存じます……💦💦
すいません!!お話の入っているUSBメモリーを職場に忘れてきてしまい、昨日は更新できませんでした💦慌てて取ってきましたよ〜〜💦💦💦遅くなりましたがお付き合いいただけると嬉しいで
窓を開け、細いつららを探す。ポキンと折って、口に運ぼうとして、こないだも祖母に怒られた事を思い出す。 子供の頃はいつもつららをアイスキャンディーだと言っては口に運び、『ばっちいからやめなさい!空気中の塵とか埃がついているんだから!!』と怒
◇◇◇ ◇◇◇ 世界に名高い伊嶋焼きの頭領、人間国宝・十三代高野彦左衛門こと高野信吉の作業場は、多くの人が想像している物よりも小さい。ここは祖父が作陶に没入する為の場所だ。 この作業場を使えと言われた時、正直久義は面食らっ
「義母上、伊嶋焼きというのは、日本のどこで作っているのですか?」「伊嶋焼き?ああ、久義さんのお父様の?」「教えて下さい」 いつになく真剣に真理恵に向かうウィリアムに、真理江は驚いた顔をした。だが、彼女はその理由も聞かず、すぐに晴れやかな笑顔
「だって私は日本人だもの!日本から送ってもらう海産の瓶詰めだけじゃ物足りないわ!日本とイギリスじゃお水が違うんだから、やっぱり日本のお水で炊いたお米が食べたいのよ。新潟はお米もお酒も本当においしいのよ。ああ、あなた達にも食べさせてあげたいわ
あなた達には分からない。我々のような身分の者があなた方のような身分の方と共に接するということがどういうことなのかを。友情などと言いながら、あなたは久義に何をした。幼い頃からこの地でどんな思いをしても、久義は日本に逃げるなんて今迄考えたこと
「久義と連絡が繋がらなくなりました。連絡先を教えていただけないでしょうか」 一瞬、謳子はどう返したものか考え込んだようだった。だが、口元に微笑を浮かべ、小さく肩を竦めて見せた。 「日本のあちこちで羽を伸ばしているのでしょうね。主人の里は山奥