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  • 日々の恐怖 11月23日 コンビニの災難(1)

    日々の恐怖11月23日コンビニの災難(1)取引先のコンビニで店員さんから聞いた、数年前の話です。大抵の場合、今のコンビニはゴミ箱を店内に設置している。これは家庭で出た未分別のゴミを投棄されたり、収集車に回収してもらえなかったゴミ袋をゴミ箱の前に放置していったり、衛生上問題のあるゴミを入れられたり、充分に火を消していないタバコの吸い殻や熱を持った状態の灰皿の中身を捨てられて火事になるのを防ぐ為でもある。そのコンビニも最初はゴミ箱を店の外に置いていたそうだが、レジカウンター周辺の改装を期に店内へと移設した。やはり家庭ゴミの放置等が問題になっていたのと、立地的に店舗のすぐ裏の山に稲荷神社があるということで近所からも”神様が見渡す範囲にゴミが散乱しているのは良くない”と苦情が入っていたのだ。店内に移動したとはいえ...日々の恐怖11月23日コンビニの災難(1)

  • 日々の恐怖 11月16日 国有鉄道宿舎(3)

    日々の恐怖11月16日国有鉄道宿舎(3)とりあえず何とかなってるからいいか、と思っていたのも束の間、ある日、夜8時過ぎに電話がかかって来た。障子の向こうから、とうに亡くなったはずの自身の祖母から語りかけがあった、という電話だった。今現在、襖が開かないので外に出られない。どうしよう、というものだった。内容が内容だけに、合鍵を持って今から宿舎に行くことになり、中学生の私も同行することになった。ただでは行けないので、知り合いのお寺でお札と御守りを貰って行くことにして、さっそくお寺に電話すると、「すぐ来なさい。」とのこと。お寺でお経をあげてもらい、お札と御守りを持って父のいる宿舎へと向かった。片道1時間半ほどで着き、玄関を開けた。確かに父のいる寝室だけ電気が点いていたが、すぐに宿舎中の明かりを点け、寝室の襖を開け...日々の恐怖11月16日国有鉄道宿舎(3)

  • 日々の恐怖 11月10日 国有鉄道宿舎(2)

    日々の恐怖11月10日国有鉄道宿舎(2)日は山に沈もうとしている。私は、”一見してのどかでいい街だなぁ・・・。転校してこの街に来たら、どんな毎日だったかなぁ・・・。”と考えながら、玄関を出て通りまで歩いて自販機のジュースを買って戻ると、縁側に座った母が驚いて声をかけて来た。「今までお前がトイレから風呂場にかけて掃除をしていたのではないか?下から登って来たから驚いた。今の今まで音がしていた。」という。私は縁側から駆け上がってトイレから風呂場、台所、寝室と見て回ったが、何の姿も無かった。私がさっきトイレから出たら人の気配がしたと母に告げると、とりあえず戸締りをきちんとして暗くならないうちに帰ろうということになった。台所の窓を閉める時、北側の斜面の高いところに墓地が見えた。上の方に墓地があると母に言うと、斜面の...日々の恐怖11月10日国有鉄道宿舎(2)

  • 日々の恐怖 11月2日 国有鉄道宿舎(1)

    日々の恐怖11月2日国有鉄道宿舎(1)かつての国有鉄道には宿舎があった。アパートみたいなところから一軒家のようなものまで様々で、家族が住んでいる、管理局のある街とは離れたところへ転勤命令が出た場合、単身で赴任先の街に行く事がしばしばあった。父も、とある街へ首席助役として赴くことになったが、機関区の近くの宿舎ではなく、300mほど離れた小さな山の中腹にある一軒屋、いわゆる高級宿舎に入ることになった。最も、山と言ってもその街の駅前にある繁華街の傍なのだが、山のふもとにある専用の駐車場に車を止め、斜面を歩いて20mも登るかどうかの距離でその宿舎の玄関まで行くことができた。昭和の終わり頃の当時でさえ、その宿舎がかなり古い建物であることが分かった。中学生だった私は、母と共に宿舎の鍵を開けて玄関から中に入り、荷物をク...日々の恐怖11月2日国有鉄道宿舎(1)

  • 日々の恐怖 10月25日 足(2)

    日々の恐怖10月25日足(2)もう一度自分の置かれている状況を思い出す。個室に、ひとり。顔を上げてもそこには誰の姿も見えない。それなのに、足がある。体は金縛りのように動かなかった。俺はその姿の見えない存在に言いようのない恐怖を感じていた。足が触れ合ったまま動けないでいると、ふとその足の感触が消えた。おそらくその足が消えてなくなったわけじゃない。机の下で足が当たった時に誰しもが取る行動。どけた。ただ足をどけたのだ。目の前の存在が多少人間的な行動をとった事で多少冷静さを取り戻した俺は、とりあえずトイレに向かった。さっきのは何だったんだ。幽霊?妖怪?用を足しながら1人考えを巡らせる。いや、あれには感じなかった、何か、意志のようなものを。まるでそこにいるのが当たり前の様に、そこにいた。考えがまとまらないまま個室に...日々の恐怖10月25日足(2)

  • 日々の恐怖 10月19日 足(1)

    日々の恐怖10月19日足(1)ある日、俺は友人と2人で飲みに行く約束をした。その日は予約を取っていたので、待ち合わせの時間の少し前に店に到着した。用意された個室に案内され、俺は席についた。部屋には、まだ誰もいなかった。畳敷きの個室で、床には座布団があり、背の低いテーブルの下は床が一段低くなっていて、足を下ろして座れるような作りになっている。とりあえず座りながら上着を脱ぎ、自分の横に置く。何の気なしにメニューを眺めながら友人の到着を待っていると、俺は足の先に何かが当たるのを感じた。覗いてみても何もない。テーブルの脚かと一瞬思ったが、よく見るとテーブルからは短い脚が畳敷きの床の上に伸びている。つまり、今俺が足を下ろしている空洞には、何も無いはずなのだ。俺は足を少し動かしてもう一度先程の感触を探す。”あった。”...日々の恐怖10月19日足(1)

  • 日々の恐怖 10月14日 IPad(2)

    日々の恐怖10月14日IPad(2)姉は赤ちゃんを膝に乗せなおし、「はい、おじいちゃんって言ってごらんー!」と赤ちゃんにIPadを向ける。赤ちゃんはその日一番長々と、「うあうあー!きゃきゃー!!あーい~、きゃきゃ~!」とIPadの画面を叩きながらはしゃいだ声を上げた。すると画面に、”大宮さんがきよる”と表示された。姉が、「えー、なんか文章になった!すごい~!大宮さんて誰かな~??」と笑う。すると祖父母が、「えっ!?」と画面に顔を近づける。「大宮さんて、この機械に入れよるんかね?名前を入れよるんかね?」祖父が不思議そうに画面を眺める。姉は、「えっ??」と祖父を見る。祖母が、「大宮さんて網元の、おじいちゃんのお友達じゃった人じゃが。大宮さんが来よる、いいよるね・・・・。」と、同じく不思議そうに画面を見る。する...日々の恐怖10月14日IPad(2)

  • 日々の恐怖 10月5日 IPad(1)

    日々の恐怖10月5日IPad(1)四国の田舎に帰ってきてるんですが、姉夫婦が1歳の娘を連れてきてるんだけど、夜が蒸し暑くてなかなか寝付いてくれなくて、祖父母、父母、姉夫婦、俺、そしてその赤ちゃんの8人で、居間で夜更かししていた。田舎は海沿いの古い家で、庭に面した窓からは離れが母屋の明かりに照らされて浮かんでいて、それ以外には姉夫婦の車が見えるだけ。海沿いなので網戸越に波うちの音が聞こえて、蒸し暑いけど田舎の心地よさに包まれていました。皆でお茶を飲んで語らっていると、姉はIPadを持ち出してきて、「面白いもの見せてあげるわ!」とボタンを押した。メモ帳画面でマイクのボタンを押すと、口述筆記みたいに話した言葉を文字にしてくれる機能。姉はそれを赤ちゃんの口元に寄せて、「何か話してごらん~。」とあやすと、赤ちゃんは...日々の恐怖10月5日IPad(1)

  • 日々の恐怖 9月22日 40男の夏(3)

    日々の恐怖9月22日40男の夏(3)更に月日は流れ、数年前の夏。小5の息子が夏休みと言うこともあり、家でダラダラと過ごしていた。そこに、暑さでイライラしていたのか、俺の嫁から外で遊べとカミナリが落ちた。昼飯を食べたあと、仕方なく息子は3DSを握りしめ自転車に跨がり、友達が集まっているであろう図書館へ行こうとした。が、何を思ったのか、息子は自転車に乗って件の山へ向かった。「名前を呼ばれたから。」と後で言っていた。それから夕方になった。が、17時になっても息子は帰って来ない。友達のとこで時間を忘れて遊んでいるのかと、あちこちに電話したがいない。町内も探してみたが、全然見付からなかった。19時になっても戻って来なかったので、警察に捜索願いを出そうとした時、やっと帰ってきた。怒鳴る嫁を尻目に、息子が俺に言ってきた...日々の恐怖9月22日40男の夏(3)

  • 日々の恐怖 9月13日 40男の夏(2)

    日々の恐怖9月13日40男の夏(2)そして月日は流れ、俺がまだ鼻たれ坊主で、ファミコンが出るちょっと前の夏休みのことだった。当事小4だった俺は、友達3人と一緒に朝から山へクワガタを取りに行った。その辺りの山は一族(と言っても、親父を含めその兄弟)で所有している山だ。だから普段からよく遊んでいた。迷った事は一度もなく、その日も奥へ奥へと進んで行った。最初のうちは四人仲良く虫を捕っていたが、やはり虫の大きさで争いが起こり、「自分だけででっかいの捕ってやる!」となり、それぞれがバラバラに虫捕りを始めた。木を蹴飛ばしたり、登ってみたり、根元を掘り返してみたり、夢中になって虫を探していた。太陽も真上になり、お腹も減ったしそろそろ一度戻ろうかと辺りを見回すが、自分が何処にいるのか分からない。まあ、小さい山だし、下って...日々の恐怖9月13日40男の夏(2)

  • 日々の恐怖 9月1日 40男の夏(1)

    日々の恐怖9月1日40男の夏(1)40男の夏は妙に熱い。もう100年は前のことだ。父方の祖母には2歳離れた兄(俺の大伯父)がいた。その大伯父が山一つ越えた集落にいる親戚の家に、両親に頼まれ届け物をしに行った。山一つと言っても、子供の脚で朝一に出発すれば夜には帰って来られる位の距離だ。歩き馴れた山道で、大伯父はいつも朝一に出て、夕方ちょっと過ぎには帰って来ていた。しかしその日は、夜を過ぎても大伯父は戻らなかった。向こうの親戚の家に厄介になっているのだろうと、両親はあまり心配もしていなかったが、2日経ち3日経ったところで、そろそろ畑仕事も手伝ってもらいたいからと、親戚の家に大伯父を迎えに行った。が、大伯父は親戚の家に居なかった。居ないどころか、来てもいなかった。慌てた両親は、自分の村と親戚の集落の人に頼んで、...日々の恐怖9月1日40男の夏(1)

  • 日々の恐怖 8月20日 監視カメラ

    日々の恐怖8月20日監視カメラコンビニの店長さん(故)から聞いた話です。最近のコンビニは死角を無くすために監視カメラだらけにしてるんだけど、店長さんがいたコンビニも、通常より2台増設して万引きなどの犯罪対策に熱心だった。(実際、深夜に発生した強盗未遂では犯人逮捕に繋がった)「時々カメラが止まるんだよね。」店長さんは眉を八の字に傾けながら愚痴を漏らした。カメラ自体や録画機器の故障で一斉に止まるのではなく、順番に止まるのだという。「どんな順番で?」「駐車場から自動ドア、本の棚がある窓際の通路からソフトドリンクのコーナー、お菓子の棚、弁当のコーナー、自動ドア側とは反対のレジ、自動ドア、駐車場。」つまり、誰かが入ってきて買い物をして帰る動線の順にカメラが止まるのだ。カメラの前を通りすぎると問題なく録画を再開するそ...日々の恐怖8月20日監視カメラ

  • 日々の恐怖 8月13日 ゆっくりと歩く女の人(2)

    日々の恐怖8月13日ゆっくりと歩く女の人(2)しばらくして、祖父母ともに相次いで死に、俺とオカンは介護から解放された。正直、祖父母が死んだ時、俺はほっとした。やっと死んでくれた。もう夜中にトイレにつれていけと喚く人はいなくなったんだ。その癖、わざと目のまでうんこもらして、お前のせいだと、さっさと処理しろと喚く人は消えたんだ、と嬉しくて泣いてしまった。後ろめたさから、その後俺は祖父母のことについて話を一切しなかった。オカンも同じような感じだったから、きっと同じように思っていたんだろう。俺は逃げるように実家から出て、一人暮らしをはじめた。一周忌・三回忌・七回忌、すべて理由をつけて拒否した。死んだことを喜ぶ人間が法事にでちゃいけない気がしたからだ。先日、祖父母の十三回忌が行われた。嫁さんが一度くらい顔だしてあげ...日々の恐怖8月13日ゆっくりと歩く女の人(2)

  • 日々の恐怖 8月3日 ゆっくりと歩く女の人(1)

    日々の恐怖8月3日ゆっくりと歩く女の人(1)12年前の話です。当時、俺はオカンと2人で父方の祖父母を介護していた。もともと祖父が事故で身体障害になり寝たきり、その後介護していた祖母が認知症になり、長男である父が引きとったものの、本人は介護する気なし。姉は既に結婚していて、弟はその話がでた直後に遠方の専門学校に入学を決めて逃亡。仕方なく、母と当時大学生だった俺と2人で介護することになった。介護は想像以上にきつく、俺もオカンも交代で精神科に通いながらの介護で、夜は眠剤つかって寝ていた。お互いギリギリのなか、俺も介護だけじゃなく家事も手伝うようになっていた。その日、夕方にうんこもらした祖母のパジャマとシーツを洗ったものを干すタイミングを失って、夜10時過ぎに2階のベランダで干していた。ふと気づくと、俺と同じ高さ...日々の恐怖8月3日ゆっくりと歩く女の人(1)

  • 日々の恐怖 7月29日 飲食店の紹介の仕事(4)

    日々の恐怖7月29日飲食店の紹介の仕事(4)無視して撮影続けて1時間くらい経った。一発目の定食でシャッター押す前、モニターで店長と構図確認してたら、フレームの左上からいきなり赤い何かがさっと入って引っ込んだ。一瞬だったけど、見えたのは真っ赤に爛れてる手だった。ひどい火傷した状態の手。ただ被写体と比較すると実物はかなり小さいし(3歳児くらいの大きさ)、店長も一緒にモニター見てるんだけど何も言わないから、”見間違いかなぁ・・・・。”と思って続けて、また30分くらい経った頃、いきなり店長が、「も~。」って呆れたように呟いて上を向いた。で、厨房から戻ってくると小皿1枚。”もしかして料理長が漬物間違えたかな?”撮り直し勘弁、と思ったら塩盛ってる。それ奥にちょこんと置いて、「すいません。」と一言。そんなことされても、...日々の恐怖7月29日飲食店の紹介の仕事(4)

  • 日々の恐怖 7月21日 飲食店の紹介の仕事(3)

    日々の恐怖7月21日飲食店の紹介の仕事(3)とある地下街の和食店。ここも長く続く繁盛してる店だ。撮影メニューが多く、個室もない店舗で人の出入りがアイドルタイムでもそこそこあるから、”何処で撮影すんのかな?”と思ってたら、厨房から降りられる地下室があるってことで、そこでやることになった。厨房に入口ってなんだそれと思いながら、人1人強通れるくらいの階段を降りていくと、蛍光灯一本の薄暗い空間だ。「こんなのあるんですね?」と聞くと、どういう経緯で出来たのか知らんが地下街がオープンする前からあって、元々別の所有者が別の用途で使っていたものを、場所がちょうど上だからってんでつなげてもらったとか。”そんなことあるのか?”と正直思った。場所で言うとB4くらいになって、インフラ設備との兼ね合いもあるだろうし。壁もちゃんとし...日々の恐怖7月21日飲食店の紹介の仕事(3)

  • 日々の恐怖 7月13日 飲食店の紹介の仕事(2)

    日々の恐怖7月13日飲食店の紹介の仕事(2)その部屋だけリニューアルしてなくて、クロスも古いまんまだった。”なんでだろ?”と思って聞くと、普段は使わない部屋になっているとのことだった。理由は、そこで頻繁に出るかららしく、どうしてもという時以外は封印しているのだとか。まあ実際、開けて中見た瞬間に嫌な雰囲気のする部屋ではあった。空気がさらに重い。店やってて開かずの個室なんかもったいないな、と思いながら撮影は終了した。帰り際、”何も起こんなかったな~。”と思いながら階段を降りようとした時、後ろからついてきてる助手くんが、荷物をひっぱりながら何もない空間に頭下げて、「ちわっす!」とか言ってる。店を出た後に、「従業員の女の人に挨拶したけど無視されましたわ~。」とか言ってる。どんな人か聞いてみると、「白い和服の女の人...日々の恐怖7月13日飲食店の紹介の仕事(2)

  • 日々の恐怖 7月8日 飲食店の紹介の仕事(1)

    日々の恐怖7月8日飲食店の紹介の仕事(1)飲食店の紹介の仕事で、料理の写真や飲食店の室内を撮影をしている。場所バレすると不味いんで、フェイク入れながら話すけど、そこは割と歴史ある大型中華料理店で、5階建のビル全てがその店になっている。特にそこの3階に出るという噂があって、仲の良い店長や関係者から色々話を聞いた。聞いた話を要約すると、3階の一室だけ突然停電。停電後に、光った白い和服の女性が部屋に入ってきて消える。深夜誰もいない3階から1階の事務所に内線が入る。出たら、水が滴る音だけがする。部屋の下見の際にお客さまが見てしまう。(たいてい白い和服の女性)宴会予約の客が、屋上に首のない人間がいっぱい立ってるから入れないと言って入店拒否。飾ってあった絵に描かれた女性が店内を歩いていた。(複数人目撃)などだった。「...日々の恐怖7月8日飲食店の紹介の仕事(1)

  • 日々の恐怖 6月30日 コンビニ(6)

    日々の恐怖6月30日コンビニ(6)そこまで話して作業に入った俺は、”どうやら、あいつ、生きているみたいだし・・・。それにしても、呪い殺す話は、どうなったのかな?ま、違う方向からのバチはあたったみたいな気もするけど・・・。”と思いつつ、客も退けた深夜に件の出来事をオーナーに作業をしながら聞いてみた。「いや実は、大体5時過ぎに来るおばさんがいて・・・・。」そこまで言うとオーナーの顔つきが変わった。「何!?あのおばはんまだ来とんか!?この店!!」「いや・・・、え?知ってんすか?」「何時頃や!来んの!?」「5時、過ぎぐらいっす」「もうすぐやん・・・・。」オーナーはおもむろに豚まん二つを袋に取りだすと、「後捨てといて!!食いたかったら食ったらええし!!」そういうと、雑誌コーナーの写真週刊誌と共にバックに大急ぎで消え...日々の恐怖6月30日コンビニ(6)

  • 日々の恐怖 6月20日 コンビニ(5)

    日々の恐怖6月20日コンビニ(5)俺は相方に質問した。「で、どうなったの?」「おばはんと一緒にトンネル往復して・・・。なんか途中でお菓子バラまいてましたね。頭おかしいっすよ。」「それからなんとも無いの?」「全然。俺小さい頃はそういうの見えてた気ぃするんすけど。あのおばはんは、多分偽物っすよ。」「あのおばさんがよく言う兄弟って、その幽霊のことなんかな?」「さぁ・・・・。中華まんもう捨てます?どうせ売れないでしょ?」「食っていいよ、10時間以上経ってると思うけど。」だそうで、俺が、「それ、やばいんじゃないか・・・・?」と相方に聞いてもヘラヘラ笑ってるだけ。本人が何とも無いと言うのだし、多分そのおばさんも怖がらせるつもりでやったんだろうと思っていた。それから数日経って、その相方とのシフトの曜日になったが、時間に...日々の恐怖6月20日コンビニ(5)

  • 日々の恐怖 6月13日 コンビニ(4)

    日々の恐怖6月13日コンビニ(4)それから数日経ったある日、そのことを相方に聞いてみた。「え!?行ったのお前!?」「ハイ暇だったんで、バイクで。」おでんの具を仕込んでる俺の斜め前で、相方はホット飲料を補充しながら普通にそう答えた。「よくやるね。で、おばさんいたの?」「いませんでした。帰ろうかと思って振り返ったらババア登場。」「怖っ!!」「さすがにビビリましたよ。」「で、どうなったの?」コンニャクの水切りをしながら、俺は背中で相方の話を聞いていた。「よう来たね。私はあんたが今日ここに来ることを分かっていた、なんちゃら、かんちゃら・・・。」「気味悪りぃな。で、トンネルがなんちゃらっては・・・・?」「あぁ、それなんすけどね。俺も初めて知ったんすけど、ホントにトンネルがあったんすわ。多分、昔に使われてたかなんかじ...日々の恐怖6月13日コンビニ(4)

  • 日々の恐怖 6月9日 コンビニ(3)

    日々の恐怖6月9日コンビニ(3)そんな事を考えてポカーンとしていると、相方がおばさんに向かって、「怖いことですか~?良いですねぇ、僕好きですよそういう系統。でも、おばさんが住んでる所の方が怖いですよ。」そういって左の方向に指を指した。「おばさんの家、○○でしょ?」○○というのは、いわゆる店の近辺にある大きな施設の事で、日曜の昼間は、決まって付き添いの人と一緒に老人がお買いものに来る。「おい、お前な・・・・・。」さすがに焦った俺が相方を咎めようとすると、おばさんが、「あんたトンネル連れて行く。」急にそう言いだした。それに対して相方は、「ハァ?トンネルっすか?心霊スポット??まぁ、いいっすわ。○○に電話入れるから。おばちゃん、そこおっちんしとき。」と言って、電話の子機に向かって歩きはじめると、おばさんは財布か...日々の恐怖6月9日コンビニ(3)

  • 日々の恐怖 6月2日 コンビニ(2)

    日々の恐怖6月2日コンビニ(2)バックから相方が出て来て、俺のレジ補助につく形で、おばさんのお買い上げ商品を袋詰めをし出した。突然、おばさんが相方に話し掛けた。「あんた初めて見るねぇ。」「あ、○○と言います。いつも一応店の中にはいるんですょ~。」相方はかなり明るい奴なので、いつもの調子で、悪く言えば馴れ馴れしい口調で話し出した。俺が、「○○円になります。」と言うと、おばさんは財布から1万円札を取り出してレジに置き、相方を見てこう言った。「あんた、怖いもん見た事ないやろぅ。」突然のおばさん強い口調に、俺も相方もギョッとした。相方が、怪訝そうに、「ハイ・・・?」と答えると、「いっぱい、いっぱい悲しい。あんたあかんよ。」店員二人沈黙。「うちが喋り出したら皆そんな顔しよる。うちが日本語使えへん思てるんちゃうか?」...日々の恐怖6月2日コンビニ(2)

  • 日々の恐怖 5月30日 コンビニ(1)

    日々の恐怖5月30日コンビニ(1)うちのコンビニに、週3回毎朝5時過ぎにやってくる初老のおばさんがいる。週3回全て俺が入ってる日、決まって俺が店内で一人で作業してる時に来る。雨の日でもズブ濡れになりながら来る。毎回水鉄砲、水風船、関連性の無い漫画やレディコミ、お菓子をカゴ一杯に詰めてレジにやってきては、「子供がね、いっぱいいるんよ、いっぱい。」「○○言います私。」「機嫌のええ時はいいんやけどね。また、かんしゃく起こすさけね。」などと、聞いてもいないのに訳の分からない事を一人で喋っている。”あぁ・・・、若年層の認知症かなぁ・・・。”自分の子供が小さい時の事で時間が止まってるんだろう。そんな事を考えて適当に接客していた。「○○円になります。」と言うと、ピタっと話しを止めてキチンと代金は支払うし、店にとって害は...日々の恐怖5月30日コンビニ(1)

  • 日々の恐怖 5月26日 女の幽霊

    日々の恐怖5月26日女の幽霊私のおばが大型ショッピングモールで清掃のパートをしてた時の話です。当時オープンから一年ほど経ってはいたものの建物も設備もまだまだ綺麗で、田舎の割に繁盛していた。しかし、そこに勤める従業員の間で不穏な噂が流れ出した。それは、二階のトイレに女の幽霊が出るというものだった。話としてはありがちだが、記述の通り建物も新しく、元々はただの田畑で曰く付きの土地でもない。おばが初めてその噂を耳にした時は、学校の怪談とか都市伝説くらいの感覚だったらしい。しかし、その噂が出るのと時を同じくして、従業員の怪我や病気が増えていった。とはいえ何百人もの人が働いていれば多少の偶然はあるだろう。だか不思議な事に、怪我や病気になった従業員の大半は二階フロアで働く人ばかりだった。そこのショッピングモールは防犯も...日々の恐怖5月26日女の幽霊

  • 日々の恐怖 5月21日 じーちゃん

    日々の恐怖5月21日じーちゃん前にじーちゃんが亡くなった時の話です。俺ん家とじーちゃん家は隣り町で、ジジババっ子の俺は小さい時は毎週末のように遊びに行って、サザエさん見てみんなで飯食って帰るのが日曜の楽しみだったんだけど、社会人になってからは仕事が忙しいのと住んでるトコも離れちゃって、ここ4、5年は盆暮れ正月くらいしか顔を出さなくなってた。それでもジジババは満面の笑みで迎えてくれたりして、もっと短い間隔で来れたらなぁとか思ってた。んである日の朝、会社行く支度してたら突然ばーちゃんから電話があって、『朝起きたらじーちゃん突然冷たくなって全然動かない』って震えた声で言われて、会社に連絡すんのも忘れて飛んでった。じーちゃん家についたら、俺の両親とばーちゃんと親戚の人が先に来てて、じーちゃんの寝てる布団の周りに座...日々の恐怖5月21日じーちゃん

  • 日々の恐怖 5月18日 心が弱ったとき思い出す、ある人の”じーちゃんの話”

    日々の恐怖5月18日心が弱ったとき思い出す、ある人の”じーちゃんの話”うちのじーちゃんは、とある伝説の持ち主である。じーちゃんは何の病気か知らんが、俺がちっさいころに死んだ。そのとき、ハートビートセンサーっていうのか?心拍が止まった時に、”ピーーーーーー!”てなる奴あるじゃん?アレが、”ピーーーーーー!”って鳴って、脈とって医者が、「ご臨終です。」って言ったのよ。その瞬間、じーちゃんが”がばっ!!!!”って上半身はね起きて、ニッカリ笑って、「根性の勝ちや!」って言った。一同、心臓が飛び出るくらいに驚いた。看護婦さんが、点滴のつり下げる台に引っかかってこけてたのを覚えてる。おかげでじいちゃんの死に顔はニッカリ笑顔だった。そのまま上半身だけ起こした姿で、もっかい死んだ。遺書にこうあった。”昔、軍に居た頃に、先...日々の恐怖5月18日心が弱ったとき思い出す、ある人の”じーちゃんの話”

  • 日々の恐怖 5月11日 コースターの顔

    日々の恐怖5月11日コースターの顔あるとき、会社の飲み会である同僚の隣になったことがありました。飲み会は盛り上がり、かなり時間が経ち、寝始める人や帰る人もいる中、お酒が強い私と同僚はほとんど飲み比べのようになっていました。しばらくして、ふと同僚がグラスを載せる紙の丸いコースターに、人の顔を描いていることに気がつきました。”ずいぶん子どもっぽいことをするなァ・・・。”と思った私は、「それ何してるの?」と同僚に訊ねました。すると同僚は、「ああ・・・・。」と返事をして、「酔っていると思って聞いて。」と言いました。「はなから、そのつもりだよ。」と私が答えると、同僚はこんなことを話し始めました。「実はさ、俺むかしから、しょっちゅうのっぺらぼうを見るんだよ。」同僚の地元は温泉街で、家にあるお風呂に入るよりも近所の温泉...日々の恐怖5月11日コースターの顔

  • 日々の恐怖 5月2日 再会(5)

    日々の恐怖5月2日再会(5)激しく混乱しているのは明らかだった。話をしている最中も奇妙な仕草を取った。奴はバシバシ自分の頭を叩きながら、ごくごくお茶を飲んだりした。突然額の上の部分を押さえて、「また声が聞こえてきた。」などとうめいた。俺に耳を当てて聞いてくれと言うのでその通りにしたが、何も聞こえなかった。だがその間、奴は聞き取れないほどの早口で、時代がかった言葉を唱えたりした。支離滅裂な話に数時間付き合わされたせいで、こちらもひどく消耗してしまった。「俺はお前のことを覚えていない。」奴にそう言われて、かなり安堵したのは確かだ。こちらの手におえる話ではない。係わり合いになるのも嫌だと感じ始めていた。「お前もすぐに俺のことを見失うさ。」一瞬奴の表情が変わった。はっきりと悪意を感じた。「こいつは俺のもんだ。」背...日々の恐怖5月2日再会(5)

  • 日々の恐怖 4月25日 再会(4)

    日々の恐怖4月25日再会(4)その声は、ある時は歌いながら、またある時は怒鳴りながら、しつこく奴に語りかけた。奴はとうとう根負けして、その声に耳を貸した。「会話が成立したんだよ。ここが分裂病と違うところだ。」奴は声の主にその証拠を見せろと言ったらしい。「あの体育教師が事故って死んだだろ。」奴を目の敵にしていた教師が死んだと言うのだが、そんな事実は無かった。「A子から告ってきたよ。」学校でも美人で人気があった女の子が、奴に付き合ってくれと言ってきたそうだが、彼女は他の男とずっと付き合っていた。俺がその事を否定すると、奴は自信ありげに答えた。「新聞の切り抜きもあるし、A子からもらった手紙もあるんだ。」おまえの妄想だと言うと、奴は笑いながらぼろぼろになった学生証を見せた。「最初のうちはうまくいってた。受験勉強な...日々の恐怖4月25日再会(4)

  • 日々の恐怖 4月17日 再会(3)

    日々の恐怖4月17日再会(3)俺は悲しくなって奴の肩に手をかけた。「俺××だよ。そっちこそ俺のこと忘れたのか?それより、どうしてここにいるんだ?向こうの大学に行ってたんじゃないのか?」奴は何も答えず、自分の頭を手でなでている。「立ち話もなんだ、どっかファミレスでも入るか?」「いや、人がいる所じゃ緊張してしゃべれない。誰もいない静かな場所がいい。」奴はそれだけ言うと、自分の自転車にまたがった。そして行く先も告げず、いきなり立ちこぎしながら走り出した。辿り着いた場所は、倉庫が立ち並ぶ埠頭だった。奴は自転車を降りると、自動販売機でお茶を買った。それから防波堤に腰掛け、ポケットから薬袋を取り出すと、幾つかの錠剤を飲んだ。その間、会話は無かった。俺が隣に座り、二、三話し掛けるが、目を閉じてうつむいている。成す術もな...日々の恐怖4月17日再会(3)

  • 日々の恐怖 4月11日 再会(2)

    日々の恐怖4月11日再会(2)それから二年の月日がたったある日、俺はバイト先の古本屋で奴に再会した。うだつのあがらない退屈な日々を過ごしていた俺は、時々奴のことを思い出していたのだが、その再会は思いも寄らぬ事だった。奴は深夜閉店間際に現れた。一目でその異様さに気が付いたが、それが奴だと分からなかった。つるつる頭に銀縁めがね、白髪まじりの無精ひげ。がりがりに痩せこけていた。「すいません、もう閉店なんすけど。」俺は立ち読みに耽る奴に声をかけた。顔の肌はアトピーで荒れ、眉毛は無かった。それでもかすかに面影があった。「もしかして○○?」思わずそう訊ねると、奴はあらぬ方をきょろきょろ窺いながら、後ずさりするみたいに店を出て行った。ショックだった。あれが本当にあいつなら、完全に気がふれていると思ったからだ。その夜、複...日々の恐怖4月11日再会(2)

  • 日々の恐怖 4月6日 再会(1)

    日々の恐怖4月6日再会(1)かなり前の話になる。ある日、俺は中高時代に友人だった男と二年ぶりに再会した。まず、そいつのことを紹介しないと話は始まらない。少し長くなるが、興味のある人は聞いてくれ。そいつと俺が通っていた高校は、まあ平凡な進学校というのか、市内で五番目くらいのレベル、というと想像できるだろうか。そんな高校の落ちこぼれグループに、俺とそいつはいた。中途半端なヤンキーですらない、今思うと恥ずかしいツッパリみたいなものか。くだらない事でいきがる、バカそのものだった。で、そいつは三年になってからがらっと人が変わった。何があったのか知らないが、受験勉強に専念し始めた。学校にいる間は、休み時間もずっと勉強していた。俺らとの付き合いを一切断ち、傍から見ると呆れるくらい一心不乱に勉強した。成績も夏休み前くらい...日々の恐怖4月6日再会(1)

  • 日々の恐怖 3月29日 鍵

    日々の恐怖3月29日鍵ある男性とのおつき合いが始まった頃、彼がアメリカに2週間程出張するというので、当時、仕事もなかった私は、彼の三匹の猫の世話で、彼の家で2週間留守番することにしました。でも、彼の家では前の奥さんが亡くなっていて、(もっとも、亡くなって7年ほどになりますが)亡くなっているとはいえ、私が先妻の立場だったら、嫌なんじゃないかと思っていました。そして、アメリカに行く彼を見送った帰り、彼の家に戻ってほっと一息ついたとき、ふと飾ってある亡くなった奥さんの遺影に、「私がここにいてもいいのかしらん?」と尋ねました。次の日、買い物に行こうと玄関に置いてある鍵をみると、家の鍵だけがなくなっています。車の鍵と一緒にコイル状の金具できっちり付いていたはずなのに見つかりません。家中探しましたが、その日は結局見つ...日々の恐怖3月29日鍵

  • 日々の恐怖 3月20日 石の家(3)

    日々の恐怖3月20日石の家(3)会社に戻るといきなり社長に俺たちは怒られた。コウさんが激怒して会社辞めるって飛び出した。「お前たち何したんだ!」って怒られたけど、俺たちに分かるわけがない。だから社長に、「あの石のある蔵を壊そうとしたらコウさんは怒り出して、いきなり帰ったんでわかりません。」て言ったら、社長は俺たちを突き飛ばすようにダンプに積んだ石の所に行って、「早くこれを運ばんか!」って怒鳴り始めた。本当に訳がわからなかったけれど、社長の言う通りに応接間にその石を社員総出で運んだ。そして社長は、それを応接間のソファーの上に置かせた。それから暫くして、社長はその石にお茶を出したり話しかけたりするようになった。俺たちと社長の息子は気持ち悪いと思ってたけれど、何も言わなかった。1週間くらいしたら、社長が突然、「...日々の恐怖3月20日石の家(3)

  • 日々の恐怖 3月14日 石の家(2)

    日々の恐怖3月14日石の家(2)興味の出た俺は、その家に入って社長たちを探すことにした。門から入ると、母屋と荒れてはいるが広い庭。そしてその庭の片隅には蔵が三つ並んでた。ちょうどそこに社長の息子の姿があったから、俺は蔵の方に歩いて行った。社長と息子がいたのは、三つの蔵のうち真ん中の蔵。社長はその中にいたんだけど、その蔵の中が変わっていた。その真ん中の蔵だけ正方形で、その中央に土俵みたいに円の形で、白い石が埋め込まれてて、そのまた円の中央に、1m真っ角くらいの黒い石の板と、直径1mくらいの白い石の板が向かい合うように立っていて、社長はそれをずっと眺めていた。俺は、”モノリスみて~だなァ~、気色ワリィ~。”としか思わなかった。その日はその家を調査して帰ったが、数日後すぐにその家の解体を請けることが決まった。解...日々の恐怖3月14日石の家(2)

  • 日々の恐怖 3月7日 石の家(1)

    日々の恐怖3月7日石の家(1)昔、解体屋でバイトをしていた。家屋を解体してると、いろんな変わった家もあるし、中から変わったもんも出てくる。特に、山の方の古民家や古民家はアツい。押入れの中に骨がギュウギュウに入ってたり、漆喰っていうか塗り物の壁の中に、長い髪の毛が入ってたり、家の真ん中に入口のない部屋があって、そこに小さい鳥居が立ってたり。結局は、何でもかんでも壊してダンプに乗せて捨てちゃうんだけど。余りにも気味の悪いもんや縁起モンは酒と塩かけて、まあ結局は捨てる。そんな中でもある日、某渓谷のとある古くからの豪邸を壊す仕事を持ちかけられた。そして俺は社長と一緒に運転手として下見に行った。家の中の残置物とかの確認は、見積もりする社長とその息子が見るから、俺は車外でタバコ吸ってジャンプ読んでた。すると田舎に珍し...日々の恐怖3月7日石の家(1)

  • 日々の恐怖 2月26日 建物を間違えちゃったのかな?

    日々の恐怖2月26日建物を間違えちゃったのかな?不動産会社にいたときの話です。入居して1ヶ月もしない入居者から、『この部屋、以前何かありましたか?』とTEL。俺:「イイエ、特に何もありませんが。」数日後、また同じ入居者から『本当に何もありませんでしたか?』とTEL。一応、先輩社員から確認したが特に何もないので、俺:「調べましたが、特に何もありませんでした。」と返答。またまた数日後、入居者から、『一度きてください、絶対なにかあります。』俺:「では近くに行ったときか、時間ができたら伺います。」でも、どうせ池沼のクレーマーだと放置。またまた、数日後、『あんた来てくれるっていたじゃないか!』ってお怒りモード。少々お怒りなので詳しく話を聞くと、特に浴室、『暖かい風呂に入っていても寒気がする。』とのこと。まぁ、怒らせ...日々の恐怖2月26日建物を間違えちゃったのかな?

  • 日々の恐怖 2月22日 佐藤さん

    日々の恐怖2月22日佐藤さん親父から聞いた話です。親父が大学3~4年の間、男3人で小さくて古い一軒家を借りて住んでいた。といっても、家賃をちゃんと払ってるのは親父と鈴木さんだけ。もう一人の佐藤さんはあまりにも貧乏なので、居候させる代わりに家の掃除、ゴミ出しなどをやってもらうことにしていた。親父と鈴木さんは、佐藤さんの困窮ぶりを助けてやろうということだったようだ。間取りは3LDKで、LDK6畳・6畳・6畳に4畳半。佐藤さんが4畳半。この佐藤さんの4畳半に出た。親父も鈴木さんも何度も見たのが、恨めしそうに正座する白髪の老婆。出るタイミングも朝昼晩関係なし。多い時には一日に三回くらい見る。4畳半の襖が開いている時、何気なく目をやると、中に白髪の老婆が恐ろしい形相で正座している。来客の中にも見た人が5人ほどいたら...日々の恐怖2月22日佐藤さん

  • 日々の恐怖 2月11日 町内会長

    日々の恐怖2月11日町内会長23区内私鉄沿線住宅地での話。10年ぐらい前に爺さん地主が死んで、50代の息子夫婦が越してきた。越してきて1年ぐらい経ってから、奥さんの姿が見えなくなり、一人残された旦那の奇行が始まった。・一日中、隣近所に聞こえるような大音量でクラシック音楽(主にベートーベン)を鳴らし続ける。・庭に裸のマネキン人形を運んできて並べる。そして、金色に塗りたくってライトアップ。・昼間は冬でも海パン一丁でベランダに出て、不思議な体操を何時間も踊り続ける。・隣近所に対して罵声を浴びせまくり、洗濯物にホースで放水。うちの家からこの地主の家は良く見える位置にあったんだが、しょっちゅう隣近所からの通報でパトカーが来ていた。そんな日々が3~4年続いて、ある日、迷惑行為がプツリと止んで、息子の姿が見えなくなった...日々の恐怖2月11日町内会長

  • 日々の恐怖 2月1日 服

    日々の恐怖2月1日服知人の祖母・Nさんが若い頃体験した話だ。Nさんにはお気に入りの服があった。生成り地に小花が少し刺繍された、可愛らしいデザインのワンピース。Nさんはその日も、お気に入りのワンピースを着て買い物に出かけた。そして帰宅後はすぐに着替え、ワンピースをハンガーに通して鴨居にかける。湿気を飛ばしてからしまう為だ。そうしている内に、外出の疲れからか、ついうたた寝をしてしまったのだそうだ。しばらくして目が覚めたNさんは、ぼんやりとあたりを見回した。すると、鴨居にかけたワンピースが、風もないのに揺れているではないか。不思議に思い目をこらすと、裾から見え隠れする物がある。生成りのワンピースより、もっと白い何か。それは音もなく降りて来た。人の爪先であった。凍りつくNさんをよそに、白い脚はゆっくりと降りて来て...日々の恐怖2月1日服

  • 日々の恐怖 1月25日 足(2)

    日々の恐怖1月25日足(2)同じ先輩がやはり小学4年生晩秋の頃に体験した話です。その日は風邪気味で学校を休んでおり、自宅の2階にある自室で布団にくるまっていた。ぼんやりとベッド横の窓から外を眺めていると、家の前にある道に、喪服のような黒い服と帽子をまとった髪の長い女性が、俯いて立っていることに気がついた。何故かその女性のことが気になり、彼女はベランダに出ていった。なぜそのようなことを考えたのか、後になって振り返ってみてもよくわからないという。すると彼女がベランダに出ると同時に、その女性がふっと顔をあげた。その顔は雪のように白かった。比喩ではなく本当に肌が真っ白だったのだ。そしてつぶやいた。そのつぶやきは離れているはずの彼女にもはっきり聞こえたという。「足が欲しい。」気がつくと彼女は部屋で倒れていた。時計を...日々の恐怖1月25日足(2)

  • 日々の恐怖 1月21日 足(1)

    日々の恐怖1月21日足(1)大学時代、一つ上の先輩(女性)から聞いた話です。小学4年生の夏頃、学校から帰るときいつもある脇道からでてくる中年の男性がいた。しかも常に彼女がその脇道を通りかかる時に出てきてぼんやりと立っていたという。幼心ながら不気味に思っていた先輩はそのことを母親に相談した所、しばらく車で送り迎えをすることになった。1ヶ月ほど車で送り迎えを行った後、もうそろそろいいだろうと言いことになり再び徒歩での登下校になった。そして実際、それからしばらくは何も無かった。しかし、その男は再び現れた。彼女がいつものように帰り道を歩き例の脇道にさしかかったときだった。ヌッと誰かが脇道から出てきた。あの中年の男だった。そしていつも黙って立っているだけだった男は、彼女の方をみてこう言った。「足が欲しい。」気がつく...日々の恐怖1月21日足(1)

  • 日々の恐怖 1月14日 輸入雑貨(3)

    日々の恐怖1月14日輸入雑貨(3)しかし、俺の主張に彼女は難色を示した。「あれが原因とは限らないじゃん。違ってたらもったいないもん。」どうしても捨てるのは嫌だと言う彼女と折衝を重ねた結果、とりあえず何日か俺が預かってみることで話が付いた。俺はネックレスを持ち帰り、彼女がしていたようにベッドの脇に置いて眠ってみたが、特に悪夢は見なかった。だが、彼女の方は効果覿面だった。ネックレスを手元に置かなくなってから、悪夢を見る事がなくなったのだ。明らかな変化に、今度は彼女の方から処分を頼んできた。彼女は俺が鈍感だから影響を受けないのだと茶化したが、「だからって普通に捨てたりしないで、ちゃんとした人にやってもらってね。」と俺の身を案じてくれた。俺は彼女の言葉に従い、神社で禰宜をやっている知人に処分をお願いした。そのネッ...日々の恐怖1月14日輸入雑貨(3)

  • 日々の恐怖 1月6日 輸入雑貨(2)

    日々の恐怖1月6日輸入雑貨(2)結果的に上手く騙されたような気がしないでもなかったが、彼女はああいう妙な小技を瞬時に繰り出せるほど器用なタイプではない。あの時の嫌な感じはただの気のせいだと自分に言い聞かせ、「今後、記念日は月一回だけな。それ以上は認めん!」と彼女を小突いた。夕食を摂ろうと入ったレストランで、注文の品が来るまでの暇つぶしに、彼女はさっきのネックレスを取り出し、さっそく首に掛けた。「どう?似合う?」と笑ってみせる彼女は実に嬉しげだったのだが、胸元にかかったそのネックレスをまじまじと見直してから、「あれ・・・・?」と首をかしげた。「なんか思ったより地味。こんなだったっけ?」そのネックレスはバッファローの角を楕円に削った黒と白の大きなビーズの間に、緑と黄色の小さなガラスビーズが交互に挟まれているだ...日々の恐怖1月6日輸入雑貨(2)

  • 日々の恐怖 12月31日 輸入雑貨(1)

    日々の恐怖12月31日輸入雑貨(1)今の彼女と付き合い始めたばかりの頃の話です。とある駅前で彼女と待ち合わせをしていたのだが、その日は時間より早く着いてしまった。近くに喫煙所があったのでそこで煙草を吸っていると、すぐ近くで黒人男性が露店の準備をし始めた。並べているのは、カラフルなビーズで作られたネックレスやブレスレット。どれも鮮やかな原色が多用されており、大ぶりなビーズが多く使われた派手なものばかりだ。退屈なので横目で品物を見ていると、その黒人が視線に気付いて声をかけてきた。「オニイサン、見テッテヨ。コレ、アフリカ本物ネ。ケニア、コンゴ、スーダン、イロンナ国ノヨ。安イ安イヨ。」いや俺そんなの付けないし、と断ろうとした時、運悪く彼女が来てしまった。「お待たせ~、あ、カワイイ!」俺の顔もろくに見ないうちから、...日々の恐怖12月31日輸入雑貨(1)

  • 日々の恐怖 12月24日 病院の夜の巡回

    日々の恐怖12月24日病院の夜の巡回前勤めてた病院での話です。夜中に巡回してたら、二人部屋からうなり声がした。二人部屋の一人は入院したてで症状が重く、全然意識のないおじさんA。もう一人も時々弱くうなるだけで、1ヶ月ずっと夢の中にいる寝たきりのおじいちゃんB。”Bさんがうなったのかな?”と思い訪室すると、寝たきりのはずのBさんのベッドが空だった。”えっ?”と思って部屋を見回し、巡らせた目が真後ろの開いたドアをとらえた時、廊下の光を背にして立つガリガリのBさんがいた。点滴抜いて左半身血まみれだ。あごが外れるくらい口を開いて、目は前方斜め上を見ている。”えっ、えっ、なにこれ?”と混乱していたらBさん、「ぅうぅうううおおおーー!」と雄叫びとともに、両手を横に広げて倒れ込んできた。突然のことに私は悲鳴を上げてしりも...日々の恐怖12月24日病院の夜の巡回

  • 日々の恐怖 12月17日 モニター

    日々の恐怖12月17日モニター俺が警備員やってたのは、テナントがいくつか入ってるビルだった。常駐警備員ってのは途中に待機時間あるくらいで、基本的に交代制の24時間勤務だ。故に深夜ビル内の巡回や駐車場の巡回なんかもやるんだけど、必ず決まった時間に発報するパッシブセンサー(人影とかで反応する)箇所がある。先輩や隊長からは、「あのパッシブはオカルト発報だから。」って聞いていたから、あまり気にしていなかった。でも、発報あれば一応行かなきゃいけないのが警備員だから、一応行く、6階に。でもって毎度のことながら発報したんだが、俺は駐車場の巡回をしていた。無線で、「また発報したよ、外から何か見える?」って言われたから、「見て来ます。」って言って、ビルの表に回って6階を見上げた。外から見て初めて気付づいたんだけど、6階のパ...日々の恐怖12月17日モニター

  • 日々の恐怖 12月9日 二つ目の玄関(2)

    日々の恐怖12月9日二つ目の玄関(2)どうやら彼女の生まれた集落では、死者が彼女の家を訪ねることは、死者を送る一連の手順に含まれているようだ。いや、送られるための手順といったほうが正確か。死んでから四十九日を終えるまでの間に、彼女の家を訪れることで、迷わず向こうへ旅立てる。そんな風習というか、思想のようなものを集落全体で共有している。なにがどうなってそんな話になったのかは、誰も知らない。知らないが、そういう考えがある以上、軽々に玄関を変えるのも気が引ける。古い玄関を残したのは、そういう理由らしい。「ドアのほうには来ないんだ?」「そう。なんでか知らないけど、古いほうだけ。」昔は普通の客も死者もそちらに来たから、区別はできなかった。今は、普通の客はドアのほうに来るのでわかりやすいらしい。「昔は嫌だったな~、お...日々の恐怖12月9日二つ目の玄関(2)

  • 日々の恐怖 12月3日 二つ目の玄関(1)

    日々の恐怖12月3日二つ目の玄関(1)彼女の家には玄関が二つある。ひとつは、ドア。ご家庭にある玄関ドアをイメージして貰えばおおむね合っているだろう、普通のドアだ。もうひとつは引き戸。星のような放射状の模様がある型板ガラスを使った、古い引き戸だ。開け閉めするたびガラガラうるさいという。ドアが二つあるというと二世帯住宅を想像するが、そうではない。彼女の家は普通の一軒家だ。玄関が二つあるということと、それに付随して変則的な間取りになっている以外、特筆するところはない。なんでも古い家を壊すとき、祖父母の希望でわざわざ残したらしい。つまり、引き戸のある場所が元々は玄関だったわけだ。それを残して新しい家を建てた。そしてわざわざ新しい玄関も作った。そういうことらしい。「なんだってまた、そんなことを?」「死んだ人が訪ねて...日々の恐怖12月3日二つ目の玄関(1)

  • 日々の恐怖 11月24日 Reserved seats(2)

    日々の恐怖11月24日Reservedseats(2)私が頷くのを見届けてから、彼は話しはじめた。「いや、大した話ではないんですけどね。親父が定食屋を改装してこの喫茶店をはじめてから、なぜだかあんなことになったんです。あの予約席のプレート、いくら片付けても、朝になったら勝手にあそこに置かれてるんですよ。もちろん、誰も触ったりしてませんよ。プレートを捨てても、いつの間にかあそこに戻ってきてるんです。それにあの席、妙にひんやりとして寒気がすると思ったら、別の時は、今しがたまで誰かが座ってたような温もりが残っていることもあって。正直、気味が悪いんです。一度椅子ごと撤去したこともあったんですがね。次の日私が来たら、店の窓ガラスが全部割れていて、それも内側から。その後も雨漏りやら空調の不調が続いて、結局椅子を戻した...日々の恐怖11月24日Reservedseats(2)

  • 日々の恐怖 11月20日 Reserved seats(1)

    日々の恐怖11月20日Reservedseats(1)雰囲気の良いジャズ喫茶だった。中に入るとコーヒーのかぐわしい香りが漂い、音楽は耳に心地よい。何時間でも居座れるような空間で、実際店内にはいつも、長居の常連客の姿があった。現在切り盛りしている店主は二代目で、初代は戦後の混乱期、小さな定食屋からこの店を始めたそうだ。そして晩年、念願だったジャズ喫茶へ趣旨変更したらしい。この店のカウンターの一番奥の席には、いつでも予約席のプレートが置かれている。しかし、実際に誰かが座っていることはない。その席は、先代店主の戦友専用のものらしい。先代店主は戦時中、出征先で戦友たちと夢を語らった。そして、いつか自分が大好きなコーヒーとジャズの店を開くから、その時はお前たち必ず来いよと約束したそうだ。先代店主はなんとか生きて帰る...日々の恐怖11月20日Reservedseats(1)

  • 日々の恐怖 11月11日 校庭を通る人達

    日々の恐怖11月11日校庭を通る人達生前小学校の教員をしていた祖父が大学生だった頃の話です。ちなみに場所は宮城県です。先に学校を卒業して県内の小学校に勤めていた先輩に、「年末年始の宿直を代わってほしい。」と頼まれた祖父は、先輩の頼みをバイト感覚で引き受けました。その小学校は村外れに建っていて、学校の西の方には村の人たちの作業場(木を切ったりとか何かしていたそうです)があり、学校を挟んで、東の方には村の人たちの家がありました。学校の北側に作業場と村の人たちの家をつなぐ道があって、校舎はその道の南側に建っていました。ところが、日が暮れると村の人たちは、西の作業場から東の自宅まで、校舎の北の道ではなく、校舎の南側、つまり校庭の中を通って帰っていたそうです。宿直係の祖父としては校庭に勝手に入られると困るんですが、...日々の恐怖11月11日校庭を通る人達

  • 日々の恐怖 11月6日 子供の幽霊

    日々の恐怖11月6日子供の幽霊友人Kの家には子供の幽霊がいた。右の頬に赤アザのある、小さい女の子だった。歳は小学校低学年か、もしかしたら未就学児だったかもしれないというから、幼いと言っていい。ごく普通のシャツとスカート姿だったけれど、季節を問わず、あかね色のはんてんを着ていたという。その子はKが中学生の頃に現れるようになったそうだ。最初に見つけたのは中廊下だった。L字の廊下を曲がっていく背中を見たのだという。驚いて追いかけたが、女の子は煙のように消えていた。廊下の先の部屋も調べたが、見つけることはできなかった。その日以降、Kの家の中では女の子がたびたび目撃されるようになった。最初はKだけが見ていたが、そのうち家族も見るようになった。女の子は、家の敷地の中ならどこにでも現れた。母親の家庭菜園を眺めていること...日々の恐怖11月6日子供の幽霊

  • 日々の恐怖 10月30日 石鹸

    日々の恐怖10月30日石鹸小学校の教員をしていた友人から聞いた話である。当時友人が勤務していた小学校は、都市部と田園部が半々といった場所だった。ある初夏の頃、学校の校庭にある手洗い場の石鹸が盗まれるという小さな事件が続いた。水道の蛇口の根元に縛り付けられた、赤いビニールネットに入ったレモン石鹸である。新しいものに付け替えても、すぐに何者かがカッターのようなものでネットを切り裂いて、中の石鹸を持ち去ってしまうのである。始めのうちは、「物好きもいるものだ。」と職員室の軽い話題でしかなかったが、事件が頻発し目撃者がだれもいないという事で、やがて校舎の内外を管理する教頭が乗り出してきた。教頭は、「いたずら者を捕まえて、しっかりと指導しなくては!」と意気込んで、付近の見回りを強化したのだが、犯人の目星もつけられない...日々の恐怖10月30日石鹸

  • 日々の恐怖 10月22日 不動産屋(6)

    日々の恐怖10月22日不動産屋(6)一昨日、男の姉がKさんに謝罪に来てくれたのだという。そして男の奇怪な行動について話してくれた。姉が男から聞いた話によると、男は彼女が自殺をした後、部屋に篭りがちになっていた。しかし夜になると誰からか見られているような不安な気持ちになる。気になって窓から外をそっと覗いてみると、近くの道路に死んだはずの彼女がこちらを見て立っていた。女性はしばらくそのままでその後、どこかに去っていく。毎日それが続き、我慢できなくなった男は彼女の後を追うことにした。彼女に気づかれないよう静かに後を追うと、Kさんの住んでいるアパートに行き着いた。しかし彼女は部屋の前まで来ると姿は消えてしまう。彼女が部屋に入ったのだと思って、部屋の前まで忍び寄り、様子を伺うのだがどうにもならない。どうにもならない...日々の恐怖10月22日不動産屋(6)

  • 日々の恐怖 10月14日 不動産屋(5)

    日々の恐怖10月14日不動産屋(5)俺は警察官から男の素性について聞いて驚いた。男はKさんの部屋で自殺した女性と知り合いだった。以前、男は女性と付き合っていたがしばらくして別れたとの事だった。しかし女性の方が未練があり、ストーカーになってしまったのだという。女性はその後自殺、男も女性からの激しいストーカー行為に心を病んでしまい、病院の精神科に通院していたようだ。Kさんの部屋に行った動機に関しては、あいまいな事を言っていて良く分らないとのことだった。結局、男は家族に向かいに来てもらい、そのまま実家で療養することになった。事件はとりあえず解決し、Kさんも一安心した様子で別れた。翌日、仕事に行きMさんに昨日の出来事を話した。「幽霊の正体見たり、ですよ。」俺は得意そうに言い、「いわくつきの物件は出る出るというけど...日々の恐怖10月14日不動産屋(5)

  • 日々の恐怖 10月7日 不動産屋(4)

    日々の恐怖10月7日不動産屋(4)Kさんの住むアパートまでは俺の自宅から自転車で十分位の所にあり、急いで現場に向かった。アパートの隣接する道路まで来て遠目に部屋を見ると、アパートの電灯の中に人影が見える。自転車を降り、静かに歩いてアパートの入り口まで来ると、そこには黒い薄手のジャンパーに青色のジーパン姿の男が、Kさんの部屋の前で何か怒鳴っているのが見えた。警察はまだ来ていなく、どうしようか迷って立ち尽くしていると、男が不意にこちらに顔を向けた。男は人がいる事に気づいて驚いたが直ぐに顔を隠すように俯き、こちらに向かってくる。そして入り口で立ち止まっている俺の脇をすり抜けるように男は立ち去ろうとしていたので、逃げられると思い咄嗟に男の腕をつかんだ。男は俺の手を振り払い逃げ出そうとしたので、今度は男の腰にしがみ...日々の恐怖10月7日不動産屋(4)

  • 日々の恐怖 9月29日 不動産屋(3)

    日々の恐怖9月29日不動産屋(3)しかし、それから二週間ぐらいが経って、またKさんから以前と同じような事が起きたと言う連絡を受けた。俺はただ事ではないと思い、彼に直接会って話を聞きくことにした。それによるとKさんはその日の夜、二時ぐらいまでゲームをしていた。すると突然、どこからか革靴のコツコツと鳴る足音が聞こえてきた。足音はだんだんと近づいてきて部屋の前まで来ると止まり、その後ドアを激しく叩く音が聞こえ、それと同時に男の怒鳴り声が聞こえてきたという。男は、「いい加減にしろ!」「もう俺に付きまとうな!」などと言っていて、十分ぐらいそれが続いた後、静かになったということだった。霊とかオカルトが平気なKさんもこれには参ったらしく、青ざめた表情を浮かべていた。警察に通報しようかどうか考えたが、またその男が来るかも...日々の恐怖9月29日不動産屋(3)

  • 日々の恐怖 9月19日 不動産屋(2)

    日々の恐怖9月19日不動産屋(2)興味を持った俺は、Kさんに紹介する部屋の事について聞いてみた。その部屋は一人暮らしの二十代の女性が半年くらい前に自殺した部屋で、事件後は誰も借り手がついていない物件だった。実際に部屋を見てみたくなった俺はKさんの担当を代わってもらい、二日後にKさんと共に部屋を見に行った。部屋に行く途中、Kさんと話をしたのだが、彼は霊などのオカルトは全く信じていないようで、以前にもいわくつきの部屋に住んでいたという。その時も特に霊体験をしたことはなかったそう。アパートは築八年ほどの二階建てのごく平凡な建物だった。以前は近くにある機械の部品組み立て工場で働く、一人暮らしの派遣労働者がほとんど入居者だったようだが、不況の煽りを受け派遣切りがあったので、今ではアパートの入居率は2割ほどしかいない...日々の恐怖9月19日不動産屋(2)

  • 日々の恐怖 9月12日 不動産屋(1)

    日々の恐怖9月12日不動産屋(1)俺は一年前から不動産の仕事をしている。主な仕事は部屋の紹介など。そこの不動産会社は高校の部活の先輩、Mさんが勤務していて、そのつてで紹介してもらった。ある時、二十代ぐらいの男性が部屋を探しに来た。その男性、Kさんからいわくつきの物件を紹介して欲しいと言われたのだ。突然の事に要領の得ない俺の様子をみて、先輩のMさんが間に入ってくれた。「お客さん、そうゆうものをお探しならこちらへ。」「後は俺がやるから大丈夫だ。」と代わってくれた。Kさんが帰った後、Mさんが事情を話してくれた。Mさんによると時々、Kさんの様にいわくつき部屋を狙ってやってくる客がいるのだそう。目的は大体二つに別れていて、一つは怖いもの見たさや興味本位で、もう一つは家賃が安いからとの事。Kさんは後者だった。この仕事...日々の恐怖9月12日不動産屋(1)

  • 日々の恐怖 9月5日 オッサンの家(6)

    日々の恐怖9月5日オッサンの家(6)それからは見知らぬ人達が家を出入りするようになった。たぶん霊媒師だと思った。その頃から家の中は変なお香の匂いと、訳の分からない念仏みたいのが聞こえ続け、近所から苦情が来る毎日だった。俺の高校の入学式にも両親は顔も見せず、家族バラバラで部屋で過ごす日々が続いた。夏頃に異音と泣き声は無くなった。どっかの霊媒師が成功したみたいだと俺は思ったが、誰も居間に寄り付かなかった。その後、俺は高校3年になり東京の大学に進学が決まり、母とオッサンと縁を切りたかったので新聞奨学生の手続きをしてた2月の終わりに、また異音が鳴り始めた。しかも今度は家中で聞こえるようになった。俺は話すタイミングはここしかないと思って、卒業式の次の日に弟と妹に兄から聞いた話をした。当然、その夜に母とオッサンに呼ば...日々の恐怖9月5日オッサンの家(6)

  • 日々の恐怖 9月1日 オッサンの家(5)

    日々の恐怖9月1日オッサンの家(5)ある日、オッサンが納骨も終わって落ち着いたぐらいに、「今夜は帰らん。」と言ってどっかに行った。兄が夜1時過ぎにトイレに行ったら、オッサンが血相変えて帰ってきて、仏間に飛び込んで念仏みたいのを唱えてた。それで、また母親が出たんだなと理解したそうだ。さらに、兄が中学に上がる頃から異音が鳴るようになり、赤ちゃんの鳴き声がするようになった。家の中でしか寝れないし、原因不明の物音と赤ちゃんの泣き声にいたたまれなくなったオッサンは、霊能者にすがりまくったらしい。兄は、「ガキだったから分からないけど、親父は凄い大金使ったと思う。効果が無ければ霊能者に電話でがなりたて、また新しい霊能者を探す。そんなのが1年間ぐらい続いたよ。」と言った。ちなみに、兄はその頃から非行に走って家にあんまり帰...日々の恐怖9月1日オッサンの家(5)

  • 日々の恐怖 8月29日 オッサンの家(4)

    日々の恐怖8月29日オッサンの家(4)そんな状況がしばらく続き、兄が小学生高学年になった年に奥さんはその部屋で死んでいた。自殺した形跡もなく、ただ動かなくなってたと兄は言った。(実際に警察も来たが心筋梗塞と言われたらしい)その時点で自分も正直、母親のバカさ加減が原因とはいえなんでこんな家で暮らさなきゃいけないのか分からなくなったし、それとオッサンがこの家を離れないのも疑問に思った。で、兄に聞いた。「なんでそれでもこの家に住んでるの?」すると兄は、「ここ離れたらお袋が出るんだってよ、鬼の形相で。」と言った。俺の疑問を感じ取ったのか、兄は話を続けた。葬儀を終わらせて、オッサンの実家に休養を兼ねて行ったらしいんだが、オッサンは毎夜、亡くなった奥さんが動かない赤ちゃんを抱いてオッサンに縋りつく夢を見たらしい。夜中...日々の恐怖8月29日オッサンの家(4)

  • 日々の恐怖 8月25日 オッサンの家(3)

    日々の恐怖8月25日オッサンの家(3)そんな状況でもなんとか第二志望の高校に合格できて、中学最後の春休みになった。たまたま自分一人が家にいた時に兄が帰ってきた。「探し物しにきただけだから。」と言う兄に、半年ほど起こってる異音と泣き声について話してみた。兄はまじめに聞いてくれて、「ちょっと待ってろ。」と言って居間の棚から知らない鍵を持ってきた。そして、「誰にも言うなよ。」と言って、2階の入ってはいけない部屋の前に連れてきてくれた。そして鍵を開けて入った。俺はてっきり御札だらけとかの怖い部屋を想像してたんだが、いたって普通の和室だった。ただ、襖の後ろに張られた1枚ずつの御札と、仏壇と異様なほどに供えられた人形を除いては。人形の数は30~50ぐらいだったと思う。兄に、「誰の仏壇?」と聞くと、「俺の姉らしい。」と...日々の恐怖8月25日オッサンの家(3)

  • 日々の恐怖 8月22日 オッサンの家(2)

    日々の恐怖8月22日オッサンの家(2)オレ達が家に入ると、入れ替わるようにオッサンの息子(義理の兄)が家を出て行った。兄は俺達兄妹に優しかったから、”自分達のせいで出て行ったのかな?”と思うと兄に凄く申し訳なかった。その後もオッサンに虐待されるでもなく無事に過ごしていたのだが、俺が中3の夏に奇妙な事が起こり始めた。それは、家族で居間にいると2階から異音が鳴り始めた。今で言うと壁ドンみたいな音が。居間の真上の2階の部屋は、”仕事道具があるから。”という理由で立ち入りを禁じられ、鍵がかかってて入る事は出来なかったから、最初は”荷物が崩れたんだろう。”ぐらいにしか思ってなかった。オッサンもネズミかなんかだと言ってたので気にしないようにしてたが、だんだん異音が鳴る頻度が増え、仕舞いには赤ちゃんの鳴き声が聞こえ始め...日々の恐怖8月22日オッサンの家(2)

  • 日々の恐怖 8月20日 オッサンの家(1)

    日々の恐怖8月20日オッサンの家(1)お嬢様育ちで世間知らずな母が、俺と弟と妹を連れて父と離婚したのは俺が小学校低学年の時だった。母の実家が地方都市のそこそこの名家っだったんで、自由で裕福な暮らしが出来ると思ったらしい。しかし祖父母は激怒し1年足らずで絶縁状態となり家を追い出され、地元でも評判の悪い土建屋のオッサンと再婚した。オッサンはいかにも成金で趣味の悪い男だったが、両親に絶縁され頼る者が無かった母からすれば最高の男だったんだと思う。しばらくのホテル暮らしのあと、オッサンの家に引っ越す事になった。オッサンの家は無理に増改築をしたのか、大きいのだが和風の家にプレハブ小屋みたいのを足した感じで、歪な感じだった。しかしガキで何も知らないオレ達は、無邪気にデカイ家を見て喜んでいた。童話・恐怖小説・写真絵画MA...日々の恐怖8月20日オッサンの家(1)

  • 日々の恐怖 8月13日 故郷

    日々の恐怖8月13日故郷小学2年の夏休みだった。8月の始めに一人でおじいちゃんの家に行った。1週間くらい遊んで、お盆に母と弟が合流して帰るという方法だった。夏休みなので朝はラジオ体操があるわけだが、地元の子たちに混じってやるのがなんか恥ずかしい。知らないやつらだし、スタンプだって違うだろうし。でも、いざ行ってみると、別に普通に受け入れられた。「スタンプカード違う!」とかって最初に話しかけてくれたのが、5年生のお兄ちゃん。そのお兄ちゃんとは帰るまでの間、ラジオ体操をやる家に集合してから開始までに結構話した。最後の日は、「来年もくる?」って言ってくれた。結局その年以降は、おじいちゃんの家にお盆に行っても日帰りという方法になり会えなかったんだけど、この間おじいちゃんの家に行ったときに、従兄弟と犬の散歩をしてたら...日々の恐怖8月13日故郷

  • 日々の恐怖 8月7日 異国の悪魔(2)

    日々の恐怖8月7日異国の悪魔(2)親父は、”これは身ぐるみはがされるかな・・・・・。”と思ってたらしいんだが、(インドネシアに限らず、日本製の物とか日本人が不用意に持ち歩く多額の現金目当ての奴らなんかはいっぱいいる)仲間の大事には変えられないんで了承した。別室に連れて行かれ、ポケットの中身を全部出させられた。あ、この時点で親父は雨と泥でめちゃくちゃになったスーツは既に脱いで手に持ってる状態、本人は下着だけだったらしく、オマケで掘られるかもとかビクビクしてた。結局そんなことはなかったんだが、シャーマンの目にとまったのが定期入れ。日本で通勤してる時に使ってる定期しか入ってないんで、おかしいなと思ったそうだが、中身を見せろと言われたので見せた。そしたら、シャーマンは定期の後ろに入ってた俺の写真を持って、これのお...日々の恐怖8月7日異国の悪魔(2)

  • 日々の恐怖 7月30日 異国の悪魔(1)

    日々の恐怖7月30日異国の悪魔(1)十数年くらい前、俺の親父がインドネシアに出張した時の話。親父は語学堪能な人だから、現地のガイド、中国支社の人、日本の同僚の三者通訳みたいな感じで行っていた。郊外の工場行った帰り、夜になってきた頃にスコールにあって、街灯もガードレールもなく舗装もされてない山路を車で走ってたらしい。二台に分乗してて、親父は後続の方に乗っていた。すると前の車がスリップ、親父の乗ってた車もそれ避けようとして横転した。前の車は山肌を回転しながらズルズル落ちて、みんな骨折してたり手足ザックリ切ってたり、死人はいないけどかなり酷い状態だった。後続の方もガラスはめちゃくちゃで、負傷っぷりはおんなじ感じの中、親父だけが奇跡的に右手の側面を削っただけで済んで、血もそんなに出てなかった。ガイドが言うには歩い...日々の恐怖7月30日異国の悪魔(1)

  • 日々の恐怖 7月24日 空き地

    日々の恐怖7月24日空き地俺のうちは親父が地元企業に勤めていたから、生まれてから一度も引っ越しをしたことがなく、生まれた時から高校を卒業するまで18年間、同じ所に住んでいた。(大学は東京の私大だったのでそれ以降一人暮らし)家と同じ並びで4軒ほど離れた家に、おじいさんが一人暮らしをしていた。俺が地元を離れる時もぴんぴんしてたから、実際はそれほど年じゃない初老の人で、子ども目線だから年寄りに見えたのかも知れない。近所づきあいはあまりしない人だけど偏屈ということもなくて、普通だった。おじいさんの家は敷地の奥まった所に建ってて、前は小さな空き地みたいになっていた。駐車スペースみたいな感じだが、車はなかった。あとコンクリートやアスファルトで固めてもないから、夏は雑草が伸びて、たまにおじいさんが草刈りしてた。親からは...日々の恐怖7月24日空き地

  • 日々の恐怖 7月17日 左手(5)

    日々の恐怖7月17日左手(5)「それ以来さ、寝る時はずっと左手吊ってんのよ。もう30年だぜ。」Kさんは力なく笑うとリストバンドを捲って左手首を見せてくれた。「だからさ、手首が擦れすぎてこんななっちゃった。」同じ場所で擦り傷を何度も繰り返すと、こんななんとも言えない跡になるのか。「左手ちょっと長いのもそのせいですか?」と、ぶっちゃけついでに聞いてみた。「多分そうだと思う。こうなると右手と両足も吊しとけば良かったなって今は思うよ。」そう言うとKさんは普段のようにからっと笑った。「お祓いとかは行ったんですか?」「行った行った。何回もお祓いしてもらった。あの祠にも行って何回も謝ったけどダメ。許してくんない。」「投げた石は?」「探したけど結局分かんない。まあただの石だからね。あの時投げなきゃって、今でも後悔してるよ...日々の恐怖7月17日左手(5)

  • 日々の恐怖 7月10日 左手(4)

    日々の恐怖7月10日左手(4)異変が起きたのは彼女が亡くなって7日目の夜だった。ベッドで寝ていたKさんは、激しい息苦しさで目を覚ました。「ハッ、ハッ、ハッ・・・・。」呼吸を整えながら周囲を見るが、おかしな所は何もない。再び横になって眠りにつくが、また息苦しさで目を覚ます。まるで誰かに首を絞められているようだった。たまらなくなったKさんはもう眠るのはやめようと思い、顔を洗おうと洗面所に行き鏡を見てギョッとした。首に手で絞めた赤い跡がくっきりと残っている。「なんだよ、これ・・・・。」そこで初めて心霊現象が頭を過ったKさんは、部屋に戻ると電気をつけたまま布団をかぶってガタガタと震えた。が、それでも睡魔がやって来る。ウトウトするKさんを再び息苦しさが襲う。布団を跳ね上げたKさんは、そこで初めて自分の首を絞める物の...日々の恐怖7月10日左手(4)

  • 日々の恐怖 7月4日 左手(3)

    日々の恐怖7月4日左手(3)彼女は祠に手をつっこむと無造作に石を掴み、「ねえ、せっかくだから、おみやげにこれ持って帰ろうか?」と、Kさんに差し出した。Kさんは彼女から石を受け取ると、「やめとけよ、バカらしい。」と言いながら、元に戻せば良かったのに、石を林の奥に放り投げてしまった。肝試しはこれで終わったが、その翌日に大事件が起こった。電車通学だったKさんは、いつものように駅で彼女と待ち合わせ、2人で電車が来るのを待っていた。ホームでの彼女はかなり様子が変だったらしい。酔っ払ったようにふらふらしてて、今にも倒れそう。「おい危ないぞ。体調悪いのか?」心配するKさんの問いかけに彼女は、「大丈夫、大丈夫。」と言うだけで相変わらずふらふらしている。そのまま彼女は身体を揺らしながら、線路に落ちそうになった。「危ない!!...日々の恐怖7月4日左手(3)

  • 日々の恐怖 6月28日 左手(2)

    日々の恐怖6月28日左手(2)しばらく沈黙が続いたが、失言に酔いが一気に覚めた俺は、「なんか変なこと聞いちゃってスイマセン。」と、心から詫びた。その間、リストバンド越しに手首をさすっていたKさんは不意に、「君さ、お化けとか幽霊とか、そう言う話信じるタイプ?」と、意外なことを聞いてきた。唐突な質問に面食らったが、俺はこう答えた。「いや、むしろ好きっすね。昔、稲川淳二のライブとか行ったことありますよ。」Kさんは、「そうか、好きなんだその手の話が・・・。」と言うと、ゆっくりと傷跡の由来を語ってくれた。Kさんは高校の頃、彼女と肝試しに行ったことがあるそうだ。肝試しと言っても本格的な心霊スポットではなく町外れの小さな雑木林で、幽霊が出ると噂が流れた程度の場所らしい。放課後、彼女と2人で雑木林に来てみたが、それらしい...日々の恐怖6月28日左手(2)

  • 日々の恐怖 6月22日 左手(1)

    日々の恐怖6月22日左手(1)以前勤めていた会社の取引先の営業にKさんって人がいた。歳は40代で見た目は平凡、仕事もそつなくこなす、いわゆる普通のサラリーマンだ。変わったところと言えば、常に腕時計の下にリストバンドをしているくらい。あと、左手が右手より少しだけ長かった。それは初対面の時から気になってたけど、身体的なことだから特に話題にもせずスルーしていた。その理由を初めて聞いたのは、一緒に仕事するようになって何年も経ってからだ。あるプロジェクトが終わり、俺の会社とKさんの会社で合同の打ち上げが催された。その席でKさんの隣に座った俺は、仕事の話や雑談に花を咲かせ、楽しい時間を過ごしていた。Kさんは俺より二回りも上だけど気さくないい人で、営業だけに話もバツグンにうまい。小一時間ほど差しつ差されつ杯を重ねていた...日々の恐怖6月22日左手(1)

  • 日々の恐怖 6月17日 妹の話(2)

    日々の恐怖6月17日妹の話(2)父は気のせいだろと言い、相手にはしてくれませんでしたが、学校が終わり帰ってくると母が青ざめてました。「天気いいから窓を開けといたんよ。そしたら知らない人が縁側に座ってて話しかけてきたんで、近所の人かと思ったらいきなりおかしくなって・・・。」空中を見上げ突然笑い出し、大声で威嚇されたらしい。「変よこの家、もう嫌。」母は父に事の顛末を話したが、父は一軒家を買ったのにそんなにすぐに引っ越しできるかといい取り合ってくれませんでした。しかも、そのあと何度もその変な人が現れたと聞きました。そしてこの剥製の家にすんで5年たったある日、夜中に私は目を覚ましました。チャイム音と窓をたたく音が聞こえるのです。”ピンピンピンピンピン・・ドンドンドンドン!!バンバンバンガツン!”ヒ...日々の恐怖6月17日妹の話(2)

  • 日々の恐怖 6月13日 妹の話(1)

    日々の恐怖6月13日妹の話(1)兄が中学生になるとのことで、家族で近くに家に引っ越しをしたときの話です。築40年以上の家で古臭い一軒家なのですが、その家に変なものが大量にありました。カラフルに色ずくミラーボールや甲冑、大量の漢字が書かれた札。そして、大量の剥製でした。大きいものは虎から小さいものはネズミまであり、私は親から穢れるから触るなと言われました。お祓いをし、何度も清めました。もうないはずとのことで家に入れてもらえることとなり、落ち着いたときに私が兄と家でかくれんぼをしました。私が隠れたのは畳の間で押し入れみたいなところの上の部分です。おとなしくしていると、横に何かがあるのに気が付きました。這って近寄ると黒いさらさらしたものに触れました。「〇〇みーっけ!」兄に見つかり、襖を開けられ光が入ってくると、...日々の恐怖6月13日妹の話(1)

  • 日々の恐怖 6月9日 窓の外

    日々の恐怖6月9日窓の外3年ほど前、関東のとある古い大学病院に入院したときのことです。換気のために病室の窓を開けていると、部屋付きの看護助手のおばちゃんが、「ごめんね~。ここ、閉めさせてね!」とバタバタ閉めていく。「暑いよ~。」と不満を言うと、おばちゃんは、「落ちる人がいるから・・・・。」みたいなことを言う。それで、「朝、病院に来るとね、この窓の外に患者さんが立っているのよ。で、下から見上げた私たちと目が合うと、ニッコリ笑ってから飛び降りるの。そんなことが何回かあってね・・・・。」同室の人たちは思わず顔を見合わせて沈黙した。”何でそんな話をここでする?”と、こっちの顔に書いてあったのか、おばちゃん、「ああ、余計な話をごめんね~。」と、そそくさと出て行ってしまった。その後、手術を受けて別の病棟に移動になった...日々の恐怖6月9日窓の外

  • 日々の恐怖 6月6日 襖

    日々の恐怖6月6日襖祖父母の家では、”襖を間違っても逆に閉めるな”という厳しい戒律がある。というのも、左右逆に閉めた時だけ、その隙間からぼんやりとした人型の白い影が出てくるから。私は見た事ないけど、子供の頃に面白がって祖父母宅の近所の友人に話したら、友人がやってしまい泡吹いて倒れた。祖母は見えないけど、祖父や娘である私の母、おば達は見える。おばの一人が商売人だからか、やたら縁起を担ぐ人で、お祓いを試した事があった。神主、お寺さん、仙人のような修験者、皆ダメだった。皆、「何かもわからない。」「祓う事も出来ない。」と言ったらしい。修験者が帰った後、たまたま襖が互い違いのままで、またぼんやり影が出ていた。その影が頭を何回も下げているのを見て、おばはお祓いをやめたらしい。で、今もそのまま。私が結婚した時は旦那にそ...日々の恐怖6月6日襖

  • 日々の恐怖 6月2日 キーホルダー(2)

    日々の恐怖6月2日キーホルダー(2)閉じ込め事件から数年後。自分が転職するかしないかで悩んで田中に相談したときのことだ。田中から思いっきり罵倒された。小学校からずっと勉強で苦労したことのないお前がむかついていた。こっちは結婚もしたし子供もいるし国家資格もとった、お前より人間できてるんだ、勉強で苦労してないんだからもっと苦労しやがれ、大学出た贅沢者の世間知らずが、って感じに延々言われて、縁が切れた。田中の家は学歴至上主義の最低でも大卒、理想は博士って考えだった。俺と田中は幼稚園から高校までずっと同じで、自分は大学、田中は専門学校に進学している。田中は自分で、好きな科目は夢中になって勉強して学年一位の点数取るけど、嫌いな科目は無視ってタイプだと言っていた。だから自分の好きなことができる専門に行くって、高校の時...日々の恐怖6月2日キーホルダー(2)

  • 日々の恐怖 5月30日 キーホルダー(1)

    日々の恐怖5月30日キーホルダー(1)友人田中からキーホルダーをもらった。ガラス製の人形と、ナザールボンジュウがついていた。ナザールボンジュウは青いガラスでできた目玉。トルコのお守り。多分どこかで見たことあると思う。ガラス製品だから壊したくなくて、透明なプラスチックの容器に入れて自分の部屋の棚に飾った。しばらくするとキーホルダーから視線を感じる、ずっとただ観察されてるような。なんか見られてるなって顔を上げたら誰かと視線が合うあんな感じ。だが見回してみても一人暮らしだから自分以外誰もいない。生理的に気持ち悪くてプラスチック容器からキーホルダーを取り出し、中身が見えない箱に片付けた。数日過ぎて、夜、田中から電話がきた。約二日間、ずっとトイレに閉じ込められてたそうだ。取っ手が壊れてドアを開けられなくなっていた。...日々の恐怖5月30日キーホルダー(1)

  • 日々の恐怖 5月27日 ぎい(2)

    日々の恐怖5月27日ぎい(2)思い出すのは、いつもそこだけだ。きっかけもなく、白昼夢のように、ふと思い出す。前後の記憶はどれだけ頭をひねっても思い出せない。だからそこに至る経緯も、その後どうなったのかも、彼女にはわからない。ただ、思い出した直後は、不思議と懐かしむような気持ちになるそうだ。「そういえば、そんなこともあったなあ。」そんな心持ちになるそうだ。首吊りのシーンを思い出した感想としては、かなり変だと思う。怖いとか、悲しいとかなら、わかるのだが。「一応、調べたけどね。私が小さい頃にそんな死に方した人はうちにはいなかったよ。」「じゃあ、実際に見た記憶じゃないのか。」「それは、わからない。」彼女曰く。彼女の実家に晴れ着の幽霊が出る、という話は昔からあったそうだ。建て替える前の実家は昭和の初めに建てられた古...日々の恐怖5月27日ぎい(2)

  • 日々の恐怖 5月24日 ぎい(1)

    日々の恐怖5月24日ぎい(1)彼女には、たびたび思い出す古い記憶があった。記憶のなかの彼女は、おそらくはまだ未就学児。本当に小さい頃の記憶だという。小さい彼女は、廊下にいる。実家の二階の廊下だ。小さい彼女はすぐにそれを理解する。今ある実家ではない。古い実家だ。彼女が小学生の頃に建て替えた。今はもうない古い実家。板張りの廊下はよく磨かれて、艶々としている。右手には閉めきられた障子戸が整然と並ぶ。左手には窓があり、そこから庭を見下ろせる。廊下はまっすぐで、突き当たりで右に折れている。折れた先がどこへ通じているのか、彼女は知らない。夢の中の彼女は、障子戸に手を掛ける。するりと、音もなく障子戸が開く。その先は二間続きの和室。二間を隔てる襖は開け放たれている。そして、そこで女が首を吊っている。こちらに背を向けていて...日々の恐怖5月24日ぎい(1)

  • 日々の恐怖 5月16日 白狐(14)

    日々の恐怖5月16日白狐(14)「神罰があるとかないとか言い出しても水掛け論だからその辺りはどうでもいいけども、俺はあると思っていた方が人生楽しいからそう思うことにしてるよ。」と小豆さんは返した。私もそう思うことにした。神社を燃やすというメンタルを持った人間がどういう人なのかはわからないけど、犯人は家具の角に足の小指毎日ぶつけてればいい。正直今も、神様と一緒にいたなんてあんまり信じてない。現実世界でこんな話大声で出来ない。でも信じることと、あると思う事はまた少し別だと思うから、そういうこともあるんだなぁと思うようになった。あんなに思い焦がれた神様に、一時でも使われたのならこんなに嬉しいことはない。修復してからの節句の祭りでは、拝殿奥の扉が開かれて石像が公開されるようになった。一年に一回、遠くからあの白い世...日々の恐怖5月16日白狐(14)

  • 日々の恐怖 5月13日 白狐(13)

    日々の恐怖5月13日白狐(13)「破!とか出来るんすか?」「そんな便利なこと出来たら、この神社大儲けしてるよ。」「形だけでも御祈祷とかすればいいじゃないですか。」「めんどくせぇよ~。」来年もきっとこの神社は寂れたままなんだろうと思った。次の年の夏だった。実家でぐだぐだしていたら、急にぴーちゃんが肩に乗り私の髪を毛づくろいし出した。珍しいこともあるもんだと思った次の瞬間、はっとした。”もういないんだ。だから、ぴーちゃんが寄ってきたんだ。”こんなあっさりしてるものなんだと思った。それ以外のことは、特に何も思わなかった。ぴーちゃんが寄ってきたこと以外、特に何も変わりはなかったから。その年のツアーでも、小豆さんの県に行った。1年振りに会った私の顔を見て、「そうかぁ、そうかぁ・・・・。」と呟いて、また缶コーヒーをく...日々の恐怖5月13日白狐(13)

  • 日々の恐怖 5月7日 白狐(12)

    日々の恐怖5月7日白狐(12)基本は年始→節句→ツアーが基本の流れだったので、節句祭りを見届けてその年も小豆さんに会った県に行くことになった。確認したくなった。社が修復されて神田様が戻ったのかどうかを。その年の小豆さんはエメラルドグリーンのジャージだった。社務所に訪いを入れた私を見て、「まだ見つからんかぁ・・・・・。」と言い放った。社には戻っていないらしい。1年前と同じ縁台に座って、神社が修復されたことを話した。簡単に見れなくなったことも寂しかったけれど、やっぱりあの白さは覆い隠すべきだと思う。あんなに綺麗なものは極力人の目に晒さない方が、綺麗なままでいられる気がする。そのようなことを話すと小豆さんは、「分かる分かる。」と同意してくれた。「女子高生のスカートと一緒だな。見えそうで見えないから見たくなるんだ...日々の恐怖5月7日白狐(12)

  • 日々の恐怖 5月3日 白狐(11)

    日々の恐怖5月3日白狐(11)開場時間が差し迫ってきたので、小豆さんとはその辺りで別れた。別れ際、「あんま深く考えずに普通に過ごすといいよ。」と言われた。正直この時点で、小豆さんの話は全く信じていなかった。神様が付いていると言っても、特に良い事があるわけでもなし。生活は底辺だ。でもよくよく考えると、再び神田神社に行ってから地元に戻るようになった。犬猫には嫌われるようになった。そして極め付けは実家のぴーちゃんだ。ぴーちゃんは私の首と髪の間に入って寝るのが好きだったのに、実家に戻って以降近寄ってさえくれなくなった。愛鳥に明確に避けられている。本当に一緒にいるのかもしれない。信じきるわけではないけれど、極力地元を歩くようになった。地方に行く時は初めて行く場所を回るよう心掛けた。一度は行ったことある観光名所なんか...日々の恐怖5月3日白狐(11)

  • 日々の恐怖 4月30日 白狐(10)

    日々の恐怖4月30日白狐(10)巫女さんは処女が務めるものだと思っていたし、生贄なんかも基本は生娘という知識があった。処女じゃなくとも清廉潔白な人間が、神仏と関わるものだと。当時の仕事も清らかなものではないし、生活は自堕落極まりない。欲望と損得勘定で成形された私に、神様が付くとは到底信じられなかった。小豆さんに、「情を寄せたからだよ。綺麗、悲しい、寂しい、悔しいってそのお狐さんに向けて長年情を寄せた。そこまで思われて悪く思う神さんはいない。」と言われた。「それなら、他の神社とかには余り行かない方がいいんですかね?」「日本の神さんは結構大雑把だから大丈夫だよ。でも大雑把で大らかだけど基本は嫉妬深いものだから、他所に信仰を向けるのはやめた方がいいと思う。」「そういうもんですか。」「君のお狐さんは、君と色んな所...日々の恐怖4月30日白狐(10)

  • 日々の恐怖 4月25日 白狐(9)

    日々の恐怖4月25日白狐(9)おっさんから貰った缶コーヒーを飲みながら、縁台で話をした。おっさんと書くには少々失礼なので便宜上、小豆さんとする。ここは代々小豆さん家が管理している神社で、一応神職の資格は持っているけれど本職の方がメインだから最低限の管理しかしていない。「御朱印でも始めれば参拝客も増えて金になるんかね~。」と言う小豆さんはとっても俗っぽい人だった。それでも神田様の事は何一つ話してないのに、小豆さんは神様と断定する。「最初に見た時、白い狐がやってきたと思った。よく見たら人間だったけど、神さんが来るなんてどういうことかと混乱した。信仰しているところのお狐さんかな?」私自身、特に神田神社を信仰しているわけではない。どちらかといえば限りなく浅ましい欲求のみで神田神社のことを思っている。執着以外で表せ...日々の恐怖4月25日白狐(9)

  • 日々の恐怖 4月22日 白狐(8)

    日々の恐怖4月22日白狐(8)話は変わるが、私はとあるバンドが好きで割と全国を歩き回っている。所謂おっかけだ。実家に帰ってからというもの生活に回す出費が減ったので、以前よりも遠征が多くなった。開場時間までの空き時間、会場の近くを歩き回るのが常だ。全国各地の御朱印を貰うのも好きなので、基本は神社を見て回るようにしている。その活動の中、東北のとある県に行った。霧雨が降る中、いつも通り近くの神社に行った。寂れた神社だった。参拝客もいない神社なので朱印がない可能性が高かったけれど、一応念の為に社務所らしき建物に訪いを入れた。おっさんが出てきた。小豆色のジャージを着たおっさんだった。おっさんは私の顔を見ると凄い驚いた顔をしてから、上から下まで全身を眺め回す。失礼なおっさんだった。「御朱印頂けますか?」「うちはそうい...日々の恐怖4月22日白狐(8)

  • 日々の恐怖 4月17日 白狐(7)

    日々の恐怖4月17日白狐(7)話を聞いた次の日、姉と一緒に以前住んでいたところに行ってみることになった。駅から歩き、変わったところや以前通りのところを見かける度にわくわくした。以前住んでいた家も、あーちゃんの家の立派さもなにも変わっていなかった。小学校も殆ど変化がなかった。しかし、神田神社だけが、変わっていた。大鳥居も御神木もそのまま。本殿もぱっと見は以前通り。なのに子供の頃からあんなに焦がれ、中を見たいという欲求を阻んでいた外壁が、真っ黒になっていた。外壁の一部は焼け落ちて、あんなに見たくて仕方なかった白い世界がだだ漏れだった。外壁は真っ黒だけれど、中は子供の頃見た時のままに真っ白で、変わらず綺麗だった。だからこそ悲しい。白い世界を汚す黒さが、ただただ悲しかった。あんなに見たくて仕方なかったのに、こんな...日々の恐怖4月17日白狐(7)

  • 日々の恐怖 4月15日 白狐(6)

    日々の恐怖4月15日白狐(6)それからずっと、あの石像を見ることは叶わなかった。木を登ってみてもずり落ちて傷が出来るだけ。窓から身を乗り出してみても先生に見つかって叱られるだけ。欲求が溜まるまま、高学年になって転校をすることになった。引越し先はそんなに離れているわけではないけれど、別の町に行くと神田神社に行くことはなくなった。思い出すことも少なくなった。けれど他の神社に立ち入る度に、あの白さを思い出した。あそこほど綺麗な場所には出会えなかった。それから大分年を取って、高校を出て一人暮らしを始めた。それと同時に実家は以前の地元近くに戻ることになった。それでも一人で住んでいる場所から実家まで1時間もかからなかったので、実家に帰ることはなかった。なので神田神社に行くこともなかった。地元に立ち入ることはなかったけ...日々の恐怖4月15日白狐(6)

  • 日々の恐怖 4月12日 白狐(5)

    日々の恐怖4月12日白狐(5)お祖母さんの話を、麦茶を添えてあーちゃんと二人で聞くこととなった。あーちゃんのお祖母さんの麦茶は、砂糖が入ってるから余り好きじゃなかった。麦茶に手を付けず、とくちゃんに聞いた話をする。この謂れは本当かと。「そんな話は聞いたことないねぇ。」お祖母さんはあっさり否定する。「でも犬に殺されたってのは聞いてるよ。その狐を鎮めるために、神田神社は建てられたのね。節句の祭りで神楽をやってるでしょう。あの時に付けるお面は狐面だからね。お狐様を奉って、この辺りを守ってくださいってお願いしてるんだよ。」すごい信憑性があった。寂れた小さな神社だけれど、とある節句の時はわりと大掛かりなお祭りをしていた。初詣よりも縁日よりも、節句のお祭りは派手。神輿も出て神楽も催される。それでも御神体は、本殿の奥は...日々の恐怖4月12日白狐(5)

  • 日々の恐怖 4月8日 白狐(4)

    日々の恐怖4月8日白狐(4)山葵の茎に棘なんてないことは知っていた。茎のおひたしは、うちでよく出るメニューだったからだ。この辺りはずっと宿場町だった、と生活かなにかの授業で聞いていた。大昔は農地もたくさんあったのかもしれない。それでもこの辺りに山葵が自生出来るような清流があったとも思えない。でも、話はまとまってるし、犬に殺されたというリアリティは感じ取れた。それでも私の感想は、”よく出来た話だなぁ・・・。”止まりでしかなかった。なので私の顔には、不信感が浮かんでいたのだと思う。今思い返せばとくちゃんには申し訳ないことをした。とくちゃんは、この辺りに古くから住んでる人に聞いてみてたらいいよとアドバイスをくれた。当時の私の親友は、大地主の家の娘だった。近隣一体にあるマンションや賃貸物件、空き地や農地に至るまで...日々の恐怖4月8日白狐(4)

  • 日々の恐怖 4月3日 白狐(3)

    日々の恐怖4月3日白狐(3)稲荷神社の意味は図書室の本で調べた。狐を奉っているのが稲荷神社。ならばあの白い狐は神様だ。余計見たくなった。そこで私に救いの手を差し伸べたのは同じクラスのとくちゃんだった。私が図書室で神社仏閣の本ばかり読み漁っている姿を見て、声をかけてくれた。とくちゃんのお祖父さんは別の地方で神社を管理しているらしく、そういうことなら少し分かるよと話を聞いてくれた。神田神社の由来を、少しなら知っているととくちゃんは言った。”とくちゃんのお話”大昔、この辺りに一匹の狐が住み着いた。畑を漁って細々と生き抜いていた狐はある日犬に襲われた。追いかけられた狐はとうきびの畑の中に逃げ込んだけれど、葉っぱで体に切り傷が出来た。びっくりして畑から逃げ出した狐を、犬はまた追いかける。慌てた狐は、次に山葵の群小地...日々の恐怖4月3日白狐(3)

  • 日々の恐怖 4月1日 白狐(2)

    日々の恐怖4月1日白狐(2)なんせ徒歩2分、自宅はすぐに見えた。ウォーリーを探せより簡単だった。今度はピアノの先生の家を見つけてみようと思った。ピアノの先生の家はうちとは反対側の、学校の裏にある。なのでみんなから離れて、反対側の下を覗き込んでみた。神社があった。陰鬱としてただ怖いだけの神社が、真上から見るとだいぶ違う。祭事でも公開されない本殿の奥が、上からだとよく見えた。塀に囲まれた四角い何もない空間一面に、真っ白な砂利が敷き詰められていて、そのど真ん中にこれもまた真っ白な狐の石像があった。私はこの時生まれて初めて何かを見て、綺麗だと思った。薄暗い神社の一番奥、そこだけが本当に一面真っ白。綺麗で、ちょっと寂しかった。結局富士山は見えなかった。富士山の方角に、少し大きめのマンションが建っていてちょうど視界を...日々の恐怖4月1日白狐(2)

  • 日々の恐怖 3月29日 白狐(1)

    日々の恐怖3月29日白狐(1)今日はイブなのに暇してるから話してく。私は首都圏で生まれ育った。別段都会でもなく、田舎でもない。至って普通の住宅地のど真ん中。小学校まで徒歩2分という素晴らしい立地に生まれ、順調に進学した。進学した小学校の真裏には、神社があった。便宜上、神田神社とする。幼稚園の頃から毎日前を通っていたけれど、初詣や縁日、お祭りなんかでしか立ち寄ったことはなかった。理由は一つ、怖かった。神社の入り口にある大鳥居も、その側にあった樹齢百何年の御神木も、それらを守るように覆い茂った何十年もかけて育ち上げた木々たちも、全てが子供心に怖かった。神主も宮司もいない鬱蒼とした神社だけど、本殿が古臭いくせにいつも整って綺麗で、そのアンバランスさも少し不気味に感じてたのかもしれない。なのでその神社が何を奉って...日々の恐怖3月29日白狐(1)

  • 日々の恐怖 3月26日 井戸(3)

    日々の恐怖3月26日井戸(3)気持ちも心機一転して工事も順調に進んだかに見えた。現場に資材荷揚げするタワークレーンのフックに、玉掛けワイヤーを掛けたまま鳶が休養に入ってしまった。その玉掛けワイヤーから、シャックル(※U字形の連結金具)が現場に隣接する交差点の横断歩道に落ちた。地上13階に立ててあるタワークレーンだから、40m位の高さから1kg近い重さのものが落ちたのだ。怪我人が出た。それが一般人ではなく、現場に出入りしてる営業の人の足に跳ね返って当たった。幸い怪我は大した事なく明るみには出なかった。躯体工事も終わり工事は設備内装工事にと移った。内装工事で何が起こったか起こらなかったか俺は知らない。俺は立体駐車場の追加工事を頼まれ再び現場に戻った。所長に、変な事は続きましたが何とか終わりましたねと言ったら、...日々の恐怖3月26日井戸(3)

  • 日々の恐怖 3月22日 井戸(2)

    日々の恐怖3月22日井戸(2)鳶にあれは何だと聞いたら、井戸らしいと答えた。現場は海の近く、地下10mに井戸?水が嫌って程湧き出る場所に石板で蓋された井戸?誰がどの時代にどんな方法で、この水が湧き出る地下10mに井戸掘って、しかも石板で蓋して埋めたんだ?そして地上には古いお地蔵さんが収められている祠。ここは弄ってはいけない場所なのは明らかだった。所長にここには何があったのか聞いたら、ここには立体駐車場があって車が落下する事故もあり、不吉な場所だから御祓いを何回もしたと言った。とにかく事故だけは気をつけてやってくれと念を押された。地下にあった井戸らしきものも基礎工事のコンクリートで埋められ、工事は地上階に移った。とにかく現場が上手くいかない。言い訳を埋め立てた井戸のせいにするわけじゃないけど、計算出来ない人...日々の恐怖3月22日井戸(2)

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