TICAD7リレーエッセー “国連・アフリカ・日本をつなぐ情熱” (21) - 国連広報センター ブログ

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国連のさまざまな活動を紹介します。 

TICAD7リレーエッセー “国連・アフリカ・日本をつなぐ情熱” (21)

第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が2019年8月28-30日、横浜市で開催されます。日本では6年ぶりとなるTICADに向けて、国連広報センターはアフリカを任地に、あるいはアフリカと深く結びついた活動に日々携わっている日本人国連職員らに呼びかけ、リレーエッセーをお届けしていきます。

 

取り上げる国も活動の分野も様々で、シリーズがアフリカの多様性、そして幅広い国連の活動を知るきっかけになることを願っています。第21回は、国連訓練調査研究所ユニタール)で持続可能な繁栄局長を務める隈元美穂子さんです

 

第21回 国連訓練調査研究所(ユニタール)持続可能な繁栄局

隈元美穂子さん


広島から世界へ 南スーダンの将来を支える若手人材を育てるために〜

 

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九州電力勤務を経て、米国コロンビア大学にて開発経済で修士号を取得。2001年から国際連合開発計画(UNDP)に勤務。ベトナム事務所(2001年~2003年)を経て、ニューヨーク本部へ。アフリカ適応プログラムを含む様々な能力開発のプログラムに取り組む。サモア太平洋事務所での勤務の後、2012年よりインドネシア事務所にてシニアアドバイザーとして勤務。2014年より国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所長を務め、2019年7月より現職。

 

広がる赤い土。縦と横に伸びる舗装されていない道。平たい大地に突起する丘。幾度となく目にしたこの景色を飛行機の窓から見るたびに、懐かしさ、嬉しさ、緊張感と色々な思いが頭をめぐる。国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所での仕事を始めて5年。南スーダンにかかわる仕事は、着任してすぐに着手した思い入れの深い大切なものだ。南スーダンとの付き合いも早5年が経過した。

 

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南スーダンの首都ジュバ(執筆者撮影)

 

平和の担い手を育てる-国連ユニタール広島事務所

国連ユニタールは、「国の将来を支える人々を育てる」人材育成の研修を行うことを専門とした国連機関である。研修の対象は成人で、国家公務員、地方公務員、市民団体職員、大学職員、会社員、起業家、活動家、ジャーナリストなど多様な職業の人々が参加している。研修内容も多岐に渡り、外交官を対象とした外交術の研修もあれば、気候変動などの環境問題、平和交渉、平和維持、平和構築、防災、ジェンダー問題などもテーマとなる。その国々、人々にとって重要な分野に特化した研修を実施しているのである。

 

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広島市内の風景。原爆ドーム平和記念公園を望む(執筆者撮影)

ユニタール本部はスイスのジュネーブにあり、それ以外にニューヨーク事務所と広島事務所がある。広島事務所は2003年に設立され、平和を基軸とした様々な研修を行っている。世界に名をはせる平和の拠点—広島。第二次世界大戦中、軍事都市として多くの兵士を送り出したこの街は、1945年8月に原爆により壊滅し、そこから年月をかけて平和拠点として復興を遂げた。人間が持つ狂気、慈愛、崇高さ―。様々な面を見つめてきたこの街は、影を持ちながらも明るさを解き放つ復興の象徴だ。そんな明暗を持つ広島に、人々は心を揺さぶられる。紛争や暴力に直面している人々はなおさらだ。そんな広島を拠点に、平和のための研修を実施することの意義、そして責任を常に肝に銘じながら活動を行っている。

 

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研修参加者や運営を支える職員たち。ジュバにて(©国連ユニタール広島事務所)

 

世界でもっとも新しい国・南スーダン

南スーダンは2011年にスーダンから独立を遂げた新しい国家だ。日本の約1.7倍の面積に、64の部族から成る約1,200万人(2017年推定)の人々が生活をしている。首都ジュバでは英語を話す人も多いが、英語よりもアラビア語が得意な人が多い。アラビア語をもっと勉強しておけばよかったとつくづく思う。平和が完全に定着したとは言えないこの国では、全てがまだまだ開発初期の段階だ。道路を含むインフラ基盤もあまり整っておらず、教育、医療、経済や雇用、食料事情、難民など非常に多くの問題が存在し、ひとつひとつが大きな壁となっている。平和を築いていくためには包括的なアプローチが必要であり、インフラなどのハード面の強化と並行し、人材などのソフト面の強化が必須である。

 

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ジュバでのワークショップでプロジェクト実施に向けて学びを深める研修生たち(©国連ユニタール広島事務所)

 

実践的なプログラムで研修生を取り巻く環境の変革を促す

そんな中、私達は南スーダンの人々のための研修を、日本政府の支援のもと2015年にスタートした。現地の若手公務員や市民団体の職員などを対象に、プロジェクトマネージメントとリーダーシップに関する研修を実施している。南スーダンでは行政サービスがまだまだ弱い。教育・医療・経済・インフラ整備・司法など様々な行政サービスを滞りなく提供する事は、国造りにおいて不可欠だ。そうする事で、政府と人々との信頼関係が生まれる。私達が提供する研修では、どのようなサービスが必要とされているかを分析する手法、その結果に基づき適切なサービスを計画し、実施する手法、サービスを実施する上でそれがうまくいっているかをモニタリング評価する手法、チームを構成し率いていく手法などを6ヶ月かけて学んでいく。私達は、新しい知識をただ学ぶだけでなく、それを実践できる高いレベルまで引き上げていく深い学びを目指している。そうする事で、研修の参加者と彼ら・彼女らを取り巻く環境を変革させていくことを最終目標としている。

 

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広島を訪れ、紛争後の平和構築や起業、リーダーシップについて学ぶ研修生たち(©国連ユニタール広島事務所)

 

参加者は書類審査、面接を勝ち抜いて選ばれた人々だ。全ての参加者が異なる組織から参加しており、研修で初めて顔をあわせる。物事というのは往々にしてつながっているものである。異なる分野、異なる組織で仕事をしていても、横のつながりというのは良い仕事をする上で助けになることが非常に多い。この研修はそのようなネットワーク作りも目的としている。そして、南スーダンの重要な課題の一つが多様な部族の人々が共存していくことである。この研修には様々な部族の人々が参加しているが、彼ら・彼女らが6ヶ月かけて研修の苦楽を共にすることで、部族を超えた友情の形成を促している。2015年に始まったこの研修は5年目を迎え、卒業生も80名を超えた。

 

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2018年度研修卒業生と関係者での集合写真。南スーダン首都ジュバにて(©国連ユニタール広島事務所)

 

この研修を通じ、多くの南スーダンの人々と出会うことができた。皆それぞれの人生のストーリーがあり、多くの卒業生が今の日本では想像できないような困難に直面している。そんな中でも彼ら・彼女らは逞しく明るい。研修生はプログラム中に一度広島を訪れる。そこで、かつての軍都広島は被爆を経験し廃墟と化したが、平和拠点として復興を遂げたことを目の当たりにし、大きな勇気と希望を持ち帰っている。日々を大切に懸命に生き、南スーダンをより良い国にしていこうと全力を注ぎ、研修に没頭する彼らや彼女らこそ、将来のリーダーであり、将来の希望なのだと強く思う。国際連合を通じて、広島を拠点に、南スーダンを含むあらゆる国々の人のための人材育成を仕事にできることに感謝している。