©2021 FLIM GURU CO. LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
『卒業 ～Tell the World I Love You～』
2023年8月25日（金）シネマカリテ ほか全国順次公開
優等生のケン、ケンと同居する親友のタイ、薬の密売組織から足を洗いたいボン。その夜の出会いが、彼らの運命を大きく動かしていく。
監監督・脚本：ポット・アーノン
出演：バース（スラデット・ピニワット）、パース（タナポン・スクムパンタナーサーン）、ネット（シラホップ・マニティクン）
配給：ギャガ
卒業 ～Tell the World I Love You～公式サイト
劇場情報
ここ数年、BL（ボーイズラブ）という言葉をよく聞いたり、見かけるようになった。
昔は少女漫画や同人誌界隈などで使われていた言葉だったけれど、一気に広まったのは田中圭と吉田鋼太郎主演の「おっさんずラブ」や、内野聖陽と西島秀俊主演の「きのう何食べた？」「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい（通称チェリまほ）」と言ったドラマだと思う。
先の２本についてボーイズラブというにはちょっと異論が出るかも知れないけど、世間的なカテゴリーでは一応、BL作品にカテゴライズされている。
個人的にはBLモノはあくまでもファンタジーであり、少女漫画の延長線上にあるものという認識からか、それほど興味を持っていなかったのだけど、腐女子界隈で人気だというタイ発BLドラマ「2gether」を試しに見て、自分の中で忘れていた“キュン”という感情の扉を開かされてしまった。
男子大学生同士の恋愛を描いたこの作品、アジアのイケメンを再認識したと同時に、昔から恋愛モノでこすり倒されてきた表現を、あえて男性に置き換えてやっちゃうことで新鮮な感じを受けてしまった。
タイではすでに「Yシリーズ」というジャンルでBLドラマは確立されていて、あくまでも「2gether」はそのジャンルの中の一本だそうだけれど（ちなみにYシリーズのYは、日本でそのジャンルを称する“やおい（Yaoi）”から取られている）、日本ではコロナ禍で外出を控え、映像世界に新鮮なものを求めていた腐女子と呼ばれる人たちから火がついて、盛り上がった（それで僕は知ったのだけど）。
その後も様々なタイを中心としたBL作品が動画配信チャンネルなどで次々と配信され、日本でも地上波でBLモノが作られたりと、そのジャンルとして円熟してきている。
さて8月25日（金）から公開される「卒業～Tell the World I Love You～」は、BLの本場、タイからの作品。
高校の同級生で幼馴染であるタイの家に居候しているケン。彼は生き別れた母親を探すため、奨学金で母がいるという中国への留学を目指していた。
そんなある日、半グレたちにボコボコにされている青年ボンを助ける。そのことがきっかけとなって薬の密売組織から追われることになるボンとケン。
組織の男たちはケンが居候しているタイの家にもやってきて嫌がらせをし、ケンは出て行かざるを得なくなる。
ボンと行動を共にしているうちに彼は次第に惹かれ、ボンもケンを意識するように。そしてタイは出て行ったケンに対して、友情を超えた心情でサポートするが、彼らの行く手には組織の男たちが立ちはだかっていた・・・。
主要キャストは全員がYシリーズ畑出身者で、それぞれが魅力的。特にケン役のスラデット・ピニワットは子犬系、作中では本人意識せずとも周りの男たちを惑わす女豹系キャラ。
そんな彼が強がったり、泣いたり、笑ったり、殴られたり、血で汚れたり、一緒に寝たり（何もしない）、女装したりと数多のBLモノで繰り広げられるシチュエーションを体現してくれている。
正直、ストーリー展開としてはユルさたっぷりでつっこみたくなる場面は小山ほどあるんだけど、時折感じさせてくれるキュンな部分が許してしまう。
BLモノをまずは知ってみたいって方には今作はオススメ。
仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。
テアトル虹 今改めてオススメしたいLGBTQ＋映画 すべての記事はこちら
