<辛口>映画『ふれる。』ネタバレ感想&評価 超平和バスターズの作家性が弱まっている……? - 物語る亀

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<辛口>映画『ふれる。』ネタバレ感想&評価 超平和バスターズの作家性が弱まっている……?

 

今回は超平和バスターズの新作であるの『ふれる。』の感想記事になります!

 

オリジナルアニメ映画の大作じゃな

 

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カエルくん(以下カエル)

久々の超平和バスターズなので、楽しみにしていました!

 

亀爺(以下亀)

先に言うと、少し辛口なのでそこはご了承願いたいの

 

カエル「それでは、早速ですが感想記事のスタートです!」

 

 

 

 

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Xの短評

 

 

Xに投稿した感想

#映画ふれる

うん?

う〜ん……?

う〜〜〜〜ん……

…………微妙!!!!

画像34

 

あの花トリオで知られる長井龍雪監督・岡田麿里脚本・田中将賀総作画監督の最新作ですが……いいところもありやりたいことも言いたいこともわかるのだけれど、全体としてはボヤけてしまい誰の顔も見えない、個性の少ない過去作では一番ピンとこない作品に見えてしまいました

 

ボクの中であの花トリオは物語の作家性に関しては岡田麿里が担当していたという認識なのですが、そこがナーフ(弱体化)されてしまったように感じて「大衆に受けそう(個性がない)」作品に見えてしまいました

 

それでも部分部分で見れば長井演出、田中作画監督の力もありアニメーションとしては見どころのある作品になっていますが、全体的にはボヤけてしまいますね…

 

う〜ん……東宝のオリジナルアニメ映画の迷走に見えてしまうかなぁ

 

 

 

感想

 

それでは、感想を始めていきましょう!

 

うちとしても評価が芳しくない映画ということになるかの……

 

カエル「あの花トリオ……超平和バスターズの新作ということもあって、かなり注目していたし、オリジナルアニメ映画ということで応援したい気持ちも強いんだけれど……でも、ちょっと褒めづらい作品に見えてしまったかな」

 

亀「良いところもあるが、全体としてはぼんやりとした、凡庸な映画に見えてしまったかの。

 なんというか……単純につまらないというか、の。もう少し語りがいのあるような作品になれば良いのじゃが、どこが悪いということも語りづらい。

 個性があまりなく、物語表現、映像表現を含めて、特筆する部分が少ない映画になってしまっておるな

 

 

 

映像面について

 

じゃあ、個別論として映像面についてはどうだった?

 

今回はかなり写実&邦画的な作りを意識したのではないかの

 

カエル「アニメの持つケレンみなどよりも、写実・邦画の持ち味を活かすというのは、これまでの超平和バスターズの方向性とも合致しているし、Clover Worksの持ち味も活かすものだよね」

 

亀「力のあるスタッフとスタジオだけに、映像表現は映画館で観るレベルに仕上がっておる。しかしながら、それ以上のものはあまりなく……悪くもないが、良くもないということになるかもしれん。

 写実なキャラクターデザインや動きに関しては……アニメっぽい作品にしたいのか、写実に寄せたいのか、よく言えばバランスがいい、悪く言えば中途半端ともいえるかもしれんな

 作品自体に目的や目標がはっきりとしているタイプではなく、日常的な物語がなんとなしに進むが、その物語と同じようにダラダラとしてしまった部分はあるかもしれんの

 

褒めるべきポイントはどこ?

 

まずわかりやすいのは、バーテンダー描写じゃな

 

カエル「バーテンダーとしてカクテルを作るところは、びっくりするくらいいい描写で、逆に浮いているまであるくらいだったね」

 

亀「ポイントポイントで見れば、目を見張るような描写もたくさんあったの。

 また後半のカタルシスの持っていき方なども、物語にのめり込んでいないのに映像に引っ張られているような感覚があり、やはり演出・作画表現の両方、あとは音楽も合わせた映像の総合能力を感じたかの」

 

あとは背景も緻密だったよね

 

今作は今までと異なり、地方ではなく東京の都会を舞台にしているからの

 

カエル「背景の緻密さなどは目を見張るものがありました!」

 

亀「ただ、それが個性になっていたか? というと、そこは難しいところじゃな。近年は東京の街並みを緻密に描く作品も増えておるし、綺麗なところが中心となっており、今作ならではの個性はあまり感じなかった。

 緻密で技術力は高いが、総合的に観るとパッとしない……これは今作全体に言えることかもしれんな

 

……ちなみに声優のキャストについては?

 

ここについては話が逸れる部分もあるので、別記事にした方がいいかもしれんな

 

 

 

 

超平和バスターズと作家性

 

それぞれの作家性の発揮

 

その個性があまりないというのは、どのような要因でそうなったと思う?

 

う〜む……色々あるんじゃろうが、それぞれの力が発揮できなくなっているということかの

 

亀「今作もそうじゃが……”超平和バスターズ”というような呼称をされるのは、かなり珍しいと思わんか?

 例えば……1ヶ月前の2024年8月に新作オリジナルアニメ映画を公開した山田尚子監督も、吉田玲子脚本、牛尾憲輔の音楽は『映画 聲の形』などがあり、お馴染みのトリオということもできる。そういう関係性は他にもあるじゃろうが、監督・脚本・作画監督の3名がセットで名前を大々的に宣伝されるというケースは、アニメ業界でもそこまで多くはない

 

カエル「あ〜……確かに長井監督はオリジナル作品こそあの花トリオで有名なったけれど、それこそ『ハチミツとクローバーII』『とある科学の超電磁砲』シリーズなども監督していて、この3人でないと力を発揮できない監督、というわけではないよね」

 

むしろ、ボクなんかは長井監督の代表作としては『とある科学の超電磁砲』を挙げたいかも……

 

そうなると”長井監督の新作”と宣伝されるのが、むしろ妥当な気がしてくる

 

カエル「でも、今は本人たちが……自発的かはわからないけれど『超平和バスターズ』と名付けて、さらにあの花トリオとして宣伝して、ここまでオリジナル作品を作り上げてきたよね?」

 

亀「そうじゃな、ということはこの3人が相互補完的にお互いを支え合っていたということじゃろう。

 わしの見立てでは、以下のような役割を各々が担ってきていた」

 

ポイント!
  • 長井龍雪監督 → 作品全体のコントロール・雰囲気作り(演出)
  • 岡田麿里脚本 → 物語性・物語における作家性の担当
  • 田中将賀作画 → 作画面での映像表現を担当

 

それぞれがそれぞれの足りないところを、補ってきたわけじゃな

 

 

 

長井龍雪の演出能力・岡田麿里の作家性・田中将賀の作画能力

 

ふむふむ……演出家・脚本家・作画監督としての役割分担だから、まあ当然と言えば当然だけれど……

 

あえて厳しい言葉で言えば、長井龍雪という監督は映像コントロールが一流であって、物語の作家性は薄い人なのではないかの

 

カエル「作家性がないというと語弊があるし、もちろん映像的な作家性はある監督・演出家なんだけれど……オリジナルだと、それが発揮されないということかな?

 

亀「そうじゃな。

 やはり個性のある原作の映像化を担当すると、抜群に上手い。

 エンタメ系のアニメ監督として、能力・実績共に十分な人じゃ。そこを疑う余地はないじゃろう。

 一方で物語では個性となるものが少ない。

 それは多くの原作を担当し、岡田麿里という強烈な作家・脚本家の作品を監督したから癖が見えづらいというのもあるじゃろうが、おそらくはエンタメとして特化するあまりに、物語における癖や思想が少ないということじゃろう」

 

よくいう”作家的な監督””職人的な監督”では、職人監督に分類するということなのかな

 

その分、物語面で個性を発揮してきたのは岡田麿里の役割じゃ

 

カエル「特に原作アリだけれど『トラどら!』やオリジナルだと『あの花』『ここさけ』などは、岡田麿里の個人的な体験が色濃くでていると言われるし、自伝でもそう振り返っているよね」

 

 

亀「ここは感覚的な問題じゃが……脚本家というのは、本来監督やプロデューサーなどの意向を汲んで、物語を構築する人じゃ。ここもタイプがあるじゃろうが、作家的な脚本家と、調整する役割という意味で職人的な脚本家がいるじゃろう。

 それでいうと岡田麿里は間違いなく作家的要素が強い、個性と癖が強い脚本家じゃな。

 だからこそ、脚本家出身としては数少ないアニメ監督に抜擢されるほどの知名度を誇るわけじゃ」

 

ふむふむ……そうなると、職人的監督・演出家と作家的な脚本家の組み合わせなんだね

 

その調整をしながら映像面を支えるのが田中将賀の作画表現でもあるわけじゃな

 

カエル「もちろん、A-1やClover Worksの作画スタッフの支えもあって、ということは忘れちゃダメだよね」

 

亀「岡田麿里の個性がある尖った物語を、長井監督の演出と田中キャラクターデザイン・作画でエンタメとして昇華する、というのがあの花トリオの真髄じゃと、ワシは思っておる。

 岡田麿里単独になると『アリスとテレスのまぼろし工場』になるわけじゃからな。

 うちは大絶賛じゃが、癖が強いのは明らかじゃ」

 

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今作の作家性の薄さ

 

それでいうと……今作がイマイチと感じられた理由って何?

 

それこそ、作家性があまりにも薄いということになるかの

 

カエル「作家性が薄い……個性が少ないという言葉にも置き換えられるのかな?」

 

亀「今作でなければ、この3人でなければダメだ、と感じさせるほどのものがあまりにもなかった。

 穿った言い方をすれば、大作だから作家性を少なくさせた、という考え方もできる。もしかしたら、岡田麿里が監督となったからこそ、大局を見て……という言い方でいいのかはわからんが、全体を見たのかもしれん。また、自分の監督作で手一杯だったという可能性もあるじゃろう。アリテレでは小説も執筆しているしの。

 色々な可能性は思い浮かぶが結果として……今作は個性があまり感じられなかった。

 もちろん、個人個人の仕事や癖はある。

 見どころもある。

 しかし全体として見た場合……間延びしてしまい、今作ならではの味がなかった」

 

もしかしたら、もう超平和バスターズの限界なのかもしれんな

 

カエル「限界、というのは厳しいけれど……どこかで転換の必要があるのでは? ということかな」

 

亀「そうじゃな。

 今作の男子3人が、超平和バスターズの3人と重なるように作られているのだと解釈すると、今作もまた、超平和バスターズの3人が新しい関係に発展する作品ということもできる。それが新たなる出会いなのか、別れなのか、それとも別の誰かを入れるのかはわからない。

 今作が卒業式でもそれはそれでいいが、岡田監督を他の2人で、あるいは田中監督を2人で支えるというのもいいじゃろう。

 もう3人とも50歳前。『トラどら』や『あの花』の、30代の時とは気持ちも立場も異なるじゃろう。

 その新しい3人の姿を見たいものではあるかの」

 

 

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