今回はアニメ映画を3作同時にレビューしていく記事になっています!
『コロボッコロ』と『サンタカンパニー』は同時公開だから、実質2作品になるのかな?
カエルくん(以下カエル)
「今回は短いレビューが3作品になります」
主
「この形態だと色々と語ることができるからいいなぁ。
ただ、全体的には否定評が続いてしまいますので、ご容赦ください」
カエル「では、記事のスタートです!」
HUMAN LOST 人間失格
「HUMAN LOST 人間失格」Official Teaser Trailer② Theme Song:m-flo「HUMAN LOST feat. J. Balvin」
感想
では、Twitterの短評からスタートです!
#ヒューマンロスト
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年11月30日
…何これ案件だよなぁ
そもそもなんでこのタイトルにしたの? 太宰にHUMAN LOSTって作品があるのは当然知っていると思うけど、人間失格だけを題材にしたのは知名度の問題?
お話に目新しさはなく散らかった印象、映像面は面白いところもあるが全体的には見慣れた感じに… pic.twitter.com/qlhuoA6dki
う〜ん、面白みは感じない作品でしたね
カエル「今作の場合はうちでもかなり酷評をしたアニゴジシリーズを製作したスタッフ・キャストが多いこともあって、そちらの印象に引っ張られた部分もあるだろうけれど……」
主「もともとポリゴン・ピクチュアズ作品が苦手な部分も大きいのかもね……あのCG作品で好きな作品は……0とは言わないよ。『デジタル所さん』とかは熱中してみていた部分もある。
でも、近年の……特に2010年以降のSFアニメに関しては全くと言っていいほど惹かれない」
カエル「それはCGの出来という面で?」
主「それもあるかもね。ディズニー・ピクサーとまでは言わないけれどさ、2019年だけでも賛否はあれども『ドラゴンクエスト ユアストーリー』の白組だったり、あるいは放送中の『BEASTARS』のオレンジなどが意欲的な表現をしていたし、また『HELLO WORLD』のグラフィニカはCGでなければいけない物語を構築し、手書きの良さも取り入れて可愛らしいキャラクター造形も生み出した。
じゃあ、今作のウリってなんなのだろうか?
『ブレードランナー』から影響を受けたと思われる『AKIRA』『攻殻機動隊』などの作品のSF感を引き継いだ世界設定? それはもう見飽きたし、今作だからこその特別なものは感じなかった。
一部シーンは”なるほど”とうなづく部分もあったけれど……全体的には見飽きた、退屈な作品だった」
なぜ本作は『HUMAN LOST』なのか?
今作は『人間失格』が原案としてクレジットされていますが……
ぶっちゃけ、開始30秒で”こりゃダメだ”って諦めたんだよね
カエル「えー、見切るの超早くない?」
主「そもそもさ、なんでこの作品が『HUMAN LOST』なワケ?
太宰にも同名の作品があることは、当然制作スタッフは知っているんだよね?
これで知らなかったとなったら、さすがに問題だと思うよ。青空文庫にもあって無料で読めるし、検索すればすぐに出てくるでしょう」
カエル「そんなに名前かぶりって大変な話?」
主「大変な話でしょう!
例えばキング原作と言って『IT〜スタンド・バイ・ミー』なんて作られたらどう思うよ? いやいや、ITなのかスタンドバイミーなのか、しっかりしてくれ! となるでしょ? いくら原案だからって、そりゃないよ……」
カエル「その『HUMAN LOST』ってどんな話なの?」
主「太宰は1936年に今でいうドラッグのやりすぎなどでパビナール中毒というのもにかかり、その時に入院している時のエッセイというか、日記みたいなものだけれど、話としては単なる愚痴みたいなものが多い。
まあ……よほどのファンでなければ読む必要はないかなぁ。
ただし、意味不明な中にも太宰らしい価値観がわかる部分もあって、それはそれで面白いけれどね。
『私は、享楽のために売春婦買ったこと一夜もなし。母を求めに行ったのだ。乳房を求めに行ったのだ』とか『私は享楽のために、一本の注射打ちたることなし』などは、太宰なりの倫理観と少しの見栄が感じられる」
カエル「じゃあ、この作品と関係はないんだね……」
主「まあ、深読みすれば”病院の中で暮らす太宰の思想”を中心にしているから、高度医療社会が成立した世界の下敷きになっている、ということもできるかもしれないけれど……作品そのものが明確な物語でない以上、単なる深読みに過ぎないってことになるのかなぁ」
太宰の人間失格を原案として作品として最低の出来?
こりゃまた、手厳しい話だね……
なんで人間失格を原案としたのよ? ということだ
主「まあさ、自分も『人間失格』を読んだのはもう何年も前だからきちんと覚えているとは言わない。だけれど、中高生の時に読んで、それなりにハマった……太宰は中二病文学だから、それくらいの時分にハマるもんなんだけれど、そんな人間としては受け入れがたい。
太宰の……人間失格の魅力って物語ではない。
その文章力から発せられる、没入感にあるんだ」
カエル「自己同一性とでもいうのかなぁ……太宰のファンて『まるで自分のことを語っているようだ』っていうほど、熱い人が多いよね」
主「じゃあ、本作を見て『これは自分の物語だ!』と思う人ってどれだけいるのよ? 多分0ですよ。
『恥の多い生涯を送ってまいりました』って言葉から映画もスタートするけれど、単なる名言などを踏襲すればいいって話じゃない。あのセリフが名言なのは、太宰という人間の人生観を理解するため、あるいは自分の気持ちの代弁者として心に響く人が多かったからだ。
それをあんな始め方としたら……いくら原”案”だとしても、冒涜なのではないか?」
カエル「太宰の文章の魅力や、作品の意味を理解しているのか? という疑問になってしまったんだね」
主「まあ、自分よりよっぽど深く理解しているのかもしれないけれどね。
部屋が三鷹で太宰が暮らした部屋を再現していたり、そういった工夫は感じられた。でも太宰らしさがなくて、9割冲方丁の世界。人間失格でなければいけない理由も感じなかった。だったら、こんなタイトルにする必要はないじゃない。
あとさ……この手のCGアニメ映画に共通すけれど『あした世界が終わるとしても』などでもそうなんだけれど、大量虐殺描写って入れないとダメなわけ?
SF表現も含めて、全体的に既視感がある表現の連続で……それらが全く合わなかったね」
コルボッコロ
続きまして『コルボッコロ』の話になります!
こちらは色々語りづらいなぁ……
カエル「後述するサンタカンパニーとセットの短評は以下のようになっています」
コロポッコロとサンタカンパニーの2本立てを見た
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2019年12月3日
ふむ…何とも言い難い
コロポッコロは全てにおいてレベルが低いと言わざるを得ないのだが、サンタカンパニーは特に褒めも批判もでない作品かなぁ
作られた経緯を知りたい
学生や若手アニメーター育成企画ならばよくやったと思うかな pic.twitter.com/9dCoURttqg
主「……ぶっちゃけ、全部においてレベルが低いと言わざるをえない。
映像表現も時間や技術が足りないんだろうなぁ、と思わせる省略ぶりや手抜きと思われる作画もあったし、何より西野七瀬の声の演技がひどすぎて……
自分は芸能人声優だからといって、無条件に批判的な言動をとることはどうかと思っているけれど、この作品に関してはそういう言論が出てきてしまうのも仕方ないと思う」
カエル「なんか、擁護のしようがない演技だったね……」
主「だけれどさ、この作品って鑑賞後に知ったんだけれど、ほぼ1人で糸曽賢志が手がけた作品を劇場向けにリニューアル・新規シーンを追加したんだよね。
それなら話は大きく変わるのよ。
それで”レベルが低い”というのは可哀想だなぁ、と思う。
どうしても劇場アニメだから、他の劇場作品と同一視して観てしまう部分はあるけれど、1人であれば、よくできていると言える」
カエル「手のひら返しかもしれないけれど、その事前情報を知っているか否かで印象が変わるかもね……」
主「見ている最中に懐かしいなぁ、と思っていたけれど、2000年台前半くらいのテレビアニメでそこまで力が入っていない回ってこんな感じだったなぁ、と思い出した。それくらい現代では”動かない”と称してしまうような作画もあったけれど……それも2007年に自主制作版を作成と聞けば納得。
強いて言えば新海誠の『彼女と彼女の猫』や、自主制作に近い作品である『センコロール』のように動かないシーンに魅力があれば、もっと引き込まれたかもね」
サンタカンパニー クリスマスの秘密
そして同時上映のサンタカンパニーです!
こちらはコルボッコロよりは、普通のアニメとして観れると思う
カエル「こちらは色々な人の手が入っているような作品だったね」
主「この2本立てはちょっとびっくりするくらいクオリティが違ったなぁ……それも制作年代も経緯も違うから当然といえば当然かもしれないけれど。
あくまでも小規模で作られた作品、という観点からの感想となるけれど……まあ、良くもなく悪くもなくって作品かなぁ」
カエル「……それって一番印象に残りにくいってことじゃ?」
主「まあ、そうなるね。
コルボッコロもそうなんだけれど、悪い意味で子供向けになってしまっている気がする。
色々と設定を語ってしまったり、その割にはご都合だったり……子供むけアニメ映画って実は色々と攻めている作品も多いし、個人や小規模制作アニメだからこそ、もっと作家性を出してもいいのではないか? という印象がある。
大手ではできないことをやるチャンスでもあるからさ……
でも、アニメ映画を作り上げたこと、それだけでも賞賛するべきことだろうし、このクオリティであれば、まあまあと言えるのではないだろうか?」