<良作>映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』ネタバレ感想&評価! 社会や政治の”匂わせ”が多い映画! - 物語る亀

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<良作>映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』ネタバレ感想&評価! 社会や政治の”匂わせ”が多い映画!

 

今回は『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の感想記事になります!

 

洋画ファンから圧倒的な支持を集める作品じゃな

 

ポスター/スチール 写真 チラシ A4 パターン2 シビル・ウォー アメリカ最後の日 光沢プリント(写真に余白あり)(※こちらの商品にはアクリルフォトスタンドは付いておりません。)

 

カエルくん(以下カエル)

こうして洋画、しかも注目作を扱うのも久々な気がするね

 

亀爺(以下亀)

様々な意見がある作品なので、気になって観に行ったが、語りたいことの多い作品じゃったな

 

カエル「それでは、早速ですが感想記事のスタートです!」

 

 

 

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Xの短評

 

 

Xに投稿した感想

#シビルウォー

話題の作品を観ました

ボクの感想は…うーむ、求めていたものとは違う、普通のエンタメ娯楽戦争(内戦)映画ですね

 

アメリカが2つに分かれて内戦が起こるという衝撃的な設定なのですが、本作は政治・思想・倫理などについて何も語らないことを選択します

 

なので両者がなぜ争ってるいるのか、その主義主張は何かという哲学については全く分からず伝わらない

 

その代わりに迫力と衝撃の映像が続くことで引きを作り、観客を楽しませるという構図だと解釈します

 

それはそれで良いのですが、ボクが求めていたものとは違うかなぁ

 

 

 

 

 

Xに投稿した感想

映画は政治や哲学には驚くほど何も語らない、その空白に観客が何を当てはめるのかという余地を多量に残すことに成功しました

だからこそ観客がそれぞれの解釈で語ることができる

 

悪い言い方をすれば「勉強した気になる映画」であり「観客が社会問題に意識が高いように感じることができる映画」ともいえます

それは娯楽・エンタメとして素晴らしい接待でしょう

 

ただボクはその接待よりも、この設定だからこそ語れる明確な政治哲学が聞きたかったですね

 

 

 

感想

 

それでは、感想からスタートです!

 

これは色々な”解釈”ができる作品であるの

 

カエル「うちでは今作を”娯楽エンタメ映画”という風に扱っているけれど……」

 

亀「ここにおいては、なぜ”社会派映画”として納得できていないのかは、後述するとしよう。簡単にいえば基本的には政治・社会を語っているようで、ほとんど何も語っていない映画という評価になるわけじゃな。

 その代わりに、戦争(内戦)という極限の環境下を描いた作品として、派手な映像表現が楽しめる映画じゃな」

 

今作はアメリカの映画制作スタジオのA24史上、最もお金をかけた映画とも言われています

 

それも納得の映像表現じゃったの

 

カエル「特に後半のシーンは迫力満載で、戦闘ヘリのシーンとか凄かったね!」

 

亀「その意味では内戦だからこそ描写できる規模だったかもしれんの。

 最後の戦闘シーン以外は、そこまで派手なシーンは少ない……あっても室内戦とか、あるいはスナイパーでのやり取り、カーチェイスなどのように、比較的映像的には地味というか、爆発などは少ないシーンが続いている。

 それでも緊張感があり、物語に引き込まれる作りというのは、まさに素晴らしいものじゃ。

 エンタメ映画、という言い方に少し引っかかる読者もいるかもしれんが、決して罵倒ではない。わしもXを読み返して結構厳しいように感じたが、その意図はない。むしろ、この題材でエンタメとして成立させた手腕を褒めたいし、もっと評価されてもいいのではないかの」

 

今作を観ながら連想した他作品

 

今作で連想した作品がいくつかあるということだけれど……

 

それを作品名だけあげていくかの

 

  • アメリカ第二次南北戦争(小説)
  • 虐殺器官(小説)
  • THE LAST OF US(ゲーム)

 

The Last of Us(ラスト・オブ・アス) the Best - PS3

The Last of Us(ラスト・オブ・アス) the Best - PS3

  • ソニー・インタラクティブエンタテインメント
Amazon

 

小説とゲーム作品だね

 

特に荒廃したアメリカの描写としては『THE LAST OF US』が最も連想したかもしれんの

 

カエル「今作もゾンビ映画みたい、という評価を多く見受けるけれど、ラスト・オブ・アスもゾンビものだから、やはり連想するものはあるのかも」

 

亀「それだけアメリカの中で滅亡というものが連想しやすいのかもしれん。

 それこそ昔からアメリカの崩壊というのは……例えば『ハルマゲドン』などもような娯楽作品も含めて描かれてきた。

 そしてこれだけアメリカという国が、多様な民族がおり、銃が容易に買えるという社会で内戦が起きやすい条件がありつつ、今でも維持されているというのは、1つの奇跡的なことかもしれん。

 普通に考えたら、いつ内戦が起きてもおかしくないからの。

 それだけに、今のアメリカがアメリカとして成立する要件……古い保守的な言い方になるが、アメリカの国体がなんなのか、気になった映画でもあるな」

 

 

 

今作と政治・思想・社会の空白

 

政治・思想を”語らない映画”

 

今作は政治や思想を語らない映画という評価だけれど、それって世間とは真逆の評価じゃないの?

 

その理由をこれから説明していこうかの

 

一般的には今作は社会派映画であり、今のアメリカの現況を語るような作品という認識の方が多いのではないでしょうか?

 むしろうちみたいに”エンタメ映画”と称する人の方が少ないかも……」

 

亀「無論、それ自体を否定するつもりはない。

 あくまでもうちの解釈じゃが……今作は政治や思想に関する”匂わせ”は多くても、それを語るような描写はかなり少ない

 

匂わせ?

 

今作は政治を直接的に語らないことを選択した映画ということもできる

 

亀「例えば、冒頭で『テキサス州とカルフォルニア州が組んだ』という説明があったが、これをどう解釈するか、じゃな」

 

カエル「一般的にテキサス州はアメリカでは共和党の重要拠点であり、カルフォルニア州は相対するアメリカの民主党の重要拠点で、両者ともにその党にとっては象徴みたいなところがある州だよね。

 ここは色々な解釈があって、テキサス州にテック系企業が移っているから民主党に傾いているという指摘もあるけれど……」

 

亀「もちろん、それも解釈の1つじゃ。

 しかしわしは、ここの描写を『共和党・民主党という既存の政党による対立として描かない、その意思はない』ということを暗に述べていると解釈する」

 

画像7

(C)2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

 

匂わせが多い映画

 

ふむふむ……では、今作の大統領のモデルはトランプではないと?

 

もちろん、それも解釈の1つであることは否定しない

 

カエル「一応、大統領役のニック・オファーマンは以下の記事で『今作の大統領ではトランプを意識しましたか?』という質問に『No』と回答しています」

 

 

◆インタビュー記事より抜粋◆

Nick Offerman plays the POTUS in the dystopian action film Civil War, but although some liken his character to Donald Trump, the actor didn’t think about him during filming.

 

“Honestly, no,” Offerman told Deadline during the film’s premiere. “When you see the movie, it’s so unattached to anything in modern politics, not only in our country but any country. It’s like doing a play where I’m playing a baseball player, and people say, ‘Did you ever think of your favorite team, the Cubs?’ And I say, ‘No, it’s a brilliant piece of fiction.'”

 

 

◆Chat GPTによるインタビュー記事の和訳◆

ニック・オファーマンはディストピアアクション映画「シビル・ウォー」でアメリカ大統領を演じていますが、彼のキャラクターをドナルド・トランプに例える人もいますが、撮影中にトランプのことを考えたことはないと彼は語っています。

 

オファーマンは映画のプレミアでDeadlineに対し、「正直、いいえ」と答えました。「映画を見ればわかるように、それは現代の政治とは全く関係がなく、私たちの国だけでなく他の国とも無関係です。まるで野球選手を演じる劇をしていて、人々が『あなたのお気に入りのチーム、カブスを考えたことはありますか?』と聞いてきて、『いいえ、それは素晴らしいフィクションです』と答えるようなものです」と彼は続けました。

 

↓以下の記事よりの抜粋↓

deadline.com

 

 

もちろん、解釈の1つとしてトランプを当てはめることを否定しない

 

カエル「色々なことを指して、今作は”匂わせ”が多い映画という評価なんだね」

 

亀「例えば今作の主人公がリーという名前なのも、南北戦争の南軍の英雄であり、今でもアメリカの名将として讃えられるロバート・エドワード・リーから来ていると推察する。

 このリー将軍というのが、現代アメリカでも話題になる人物である。なぜならば、リー将軍は南北戦争で争われた大きな要因である奴隷制を賛成する南軍側の将軍であるからじゃ。

 そして白人至上主義者がこの像を人種差別に対する1つの象徴にしている、という批判が起き、大きな事件や論争の末に撤去される事態に発展している

 

www.bbc.com

 

歴史的な人物の銅像が、大きな論争になって撤去まで発展しているんだね……

 

その人物の名前が主人公に命名されていることが1つの象徴的な出来事じゃな

 

亀「もちろん、その他にも様々なことがある。

 例えば途中で街の機能が維持している服屋などが出てきたが、あれはリバタリアン思想(自由主義・無政府主義者)の持ち主が集まって自警団を作り、過激派となり街を維持しているという解釈も可能じゃ。

 また多くの人が衝撃を受けたであろう中盤から後半にかけての、赤いサングラスの軍人の行為などが、まさに政治的な”匂わせ”じゃな」

 

画像5

(C)2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

 

あれこそ、まさに人種差別主義者ではないの?

 

そういう解釈もできるが、他にも様々な解釈ができる

 

カエル「あの香港出身の人を撃った時点で、人種差別をする白人至上主義者なのでは……?」

 

亀「難しいところじゃな。

 香港はご存知のように、中国に所属する地域じゃ。そして中国はアメリカにとって敵国に当たる。では、あれが日本であれば……同じように撃たれたのか、あるいは同盟国として見逃されたのか、そこは解釈になる。

 あの悍ましい光景もあるが、その中には白人の姿もあったので、単純な人種差別だけではない、ということは伺える。

 もちろん、人種差別の意味合いもあるじゃろうがな。

 じゃが、決定的な意図や語ることは、この映画は避けているわけじゃな」

 

 

 

人々の解釈で成立する映画

 

そういう意味で、色々な”匂わせ”が多い映画と評価するんだね

 

観客が様々な解釈をもって、今作は完成する

 

カエル「解釈が重要な映画……それだけの自由度が高い映画だと」

 

亀「その意味では日本のアニメ映画では『この世界の片隅に』に近いかもしれん。

 あの作品も、第二次世界大戦時の一般庶民の生活を描いている。見方によれば戦争に反対することもなく、人々を戦地に送り出していたという右派のような見方も、逆に戦争に対して疑問を投げかけ、悲惨な目にあうのはいつも弱い庶民であるという左派の見方もできる。

 もちろん、そのような政治的な意図がない、という見方も、の。

 そのように今作もまた、様々な政治的な意図が空白だからこそ、その空っぽの器に観客が何を投入するかが、問われる映画となっているわけじゃ

 

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それは”社会派映画”ではないの?

 

もちろん、社会派映画と名乗っても問題ないじゃろう

 

亀「しかしわしは……社会派映画を語るならば、社会を語ってほしい。

 政治を、思想を語ってほしいわけじゃ。

 それで言えば今作が語ったのは、アメリカの内戦状態という極限状態での人々の行動である。それはそれで重要であるが、しかし肝心の彼らが何を巡って……南北戦争での奴隷制の是非などのような、思想を感じるような描写が少ない。

 だからこそ、わしはもっと政治・思想を戦わせるような作品と思っていただけに、そうではなかったのでは……そこは残念であるし、社会性を感じなかったという評価になるかの

 

 

 

 

フィルターを通して観るということ

 

2つのカメラの存在

 

その言い方だと、この映画に不満が多いみたいだけれど?

 

そんなことはない、むしろ高く評価していると思ってくれていいぞ

 

カエル「その高く評価するポイントが”2つのカメラの存在”ということだけれど、そこについて説明してください」

 

亀「まず、1つ目のカメラは当然ながら、主人公たちの”ジャーナリストが撮影するカメラ”の存在じゃ。

 そのカメラを通して、様々なショットが生まれる。作中ではリアルの戦争が、カメラを通じて撮影され、そのショットが観客に伝わるという構図じゃな。

 そしてもう1つの……2つ目のカメラの存在。それは紛れもなく、映画のカメラの存在じゃ」

 

写真のカメラと、映画のカメラ……

 

わしは今作を通して、少しおかしいな、と思ったところがある

 

亀「それは作り物感というか……これだけ力を入れても、結局描写されるのはフィクションということじゃな」

 

カエル「え……それはフィクションの映画ということを考えれば、とても当たり前なことじゃ?」

 

亀「それはそうなんじゃが、同時に、この思いがわしの今作の評価を決定的にしたとも言える。

 つまり今作はジャーナリストを主人公とし、カメラを通して戦場を見る者とすることで、入れ子構造を生み出した。

 簡単にまとめると、以下の通りじゃ」

 

ポイント!

 作中での戦争描写

  ↓(写真のカメラ)

 ジャーナリスト

  ↓(映画のカメラ)

 観客

 

 

なるほど、2つのカメラを挟むことで、観客と繋げているんだ

 

ここをどのように解釈するか、というのが問題じゃな

 

 

 

ラストシーンの解釈

 

それじゃ、うちはどのように解釈するの?

 

いくつかは挙げられるが、大まかには以下の2つかの

 

ポイント!
  1. カメラを通すことによって、現実と異なる視点
  2. 傍観者でいられるのか? という問い

 

 

カエル「1についてまず説明していこうか」

 

亀「作品の終盤では、登場人物に大きな出来事が起きる。なぜあの人物は暴走のような行為をしてしまったのか? ということじゃが……それはカメラを通すことで、それらが”現実ではない”ということを感じてしまうためじゃろうな。

 よく一般の人の衝撃映像でもあるが、目の前でとんでもない事件が起こりながらも、カメラで冷静に撮っている構図が見受けられる。

 これはカメラを通すことによって、1つフィルターを通すことで現実感が薄まるということはあるじゃろう

 

そう考えると、映画や写真の根本的な原理かもね

 

目の前で衝撃の瞬間を目撃したら情緒が保たんが、TVのニュースならば他人事のように見れるからの

 

カエル「TVなどの報道で流れる事故の映像とかもそうだけれど、カメラ越しだからこそ……自分がその場にいなくて、何もできない状況だからこそ、冷静に見ていられるということもあるよね」

 

亀「そのフィルターが入ってしまったことによって、あの人物は暴走のような行為を起こすということじゃな。

 そして2じゃが……これは2024年公開の映画であれば『関心領域』に近い効果があるのではないかの」

 

blog.monogatarukame.net

 

傍観者でいる観客への投げかけ、ということだね

 

カメラを通して見ているのは、観客も同じじゃからな

 

カエル「その思いがあのラストシーンに繋がるのでは? ということだね」

 

亀「この映画は間違いなくフィクションじゃ。そしてアメリカの内戦というifを描き続けている。

 それと同時に、その状況下に陥った時、あるいは陥りそうな時、あなたはどう行動しますか? という問いかけがある。

 つまりあのジャーナリストは、もしかしたらわしたち観客の姿かもしれんわけじゃな。

 もちろん、これも1つの解釈にすぎん。しかしそのような解釈が可能なほど、様々な思いが感じ取れる……つまり余白の多い映画であり、他の人の感想が気になる映画でもあったの