顧客管理とは、商品やサービスを購入した顧客に関する情報を管理することです。顧客管理で取り扱う情報は、顧客の社名や連絡先だけではありません。購入履歴や商談履歴、Webサイトの訪問履歴といったあらゆる情報を一元管理します。それにより、相手のニーズに合った最適な顧客体験を提供することが可能です。
CRM・MA導入の事前準備チェックリスト
CRMやMAを導入する際にマーケティング施策別に準備するべきことをチェックリストにしてまとめました。
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本記事では、顧客管理の概要やメリット、具体的な手法を解説します。記事後半では、顧客管理に必要な項目や起こり得る問題点などを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
顧客管理とは|徹底すべき3つの理由
一元管理を実現!営業案件&進捗管理テンプレート|HubSpot
顧客管理とは、商品やサービスを購入した顧客に関する情報を一元管理する手法です。企業名や所在地などの属性データだけではなく、過去の取引履歴や行動パターンまで、顧客に関するあらゆる情報を取り扱います。
顧客管理は、それぞれのニーズに合った顧客体験を提供するうえで欠かせない取り組みです。顧客情報をデータベース化し、プラットフォームを問わずに統一感のある顧客体験を提供することで、忠誠心や愛着を意味する「ロイヤルティ」が向上します。
多様化する顧客のニーズを的確に読み取り、営業活動を最適化するためには、徹底した顧客管理が重要です。ここでは、その理由を3つ紹介します。
顧客のタイミングに合わせたアプローチをするため
自社のビジネスモデルがBtoBの場合、「BANT」を意識してヒアリングを行うと良いとされています。BANTとは、下図のように「予算・決裁権・ニーズ・導入時期」の頭文字を取った言葉で、法人営業のフレームワークのひとつです。
商談までこぎつけたとしても、予算やニーズが合わないことで成約に至らないケースは多々あります。その際に顧客情報を蓄積しておくと、一定の期間が経過したあとや年度をまたいだときなどにアプローチすることが可能です。顧客のビジネスに変化が生じ、ニーズが高まっているタイミングであれば、再度商談の機会が得られるかもしれません。
接点がなくなってしまった顧客に対して、再度アプローチを行うことを「掘り起こし」といい、掘り起こしを成功させるにはタイミングが重要です。顧客に関する情報やコミュニケーションの履歴を詳細に残しておくことで、適切なタイミングを見極めやすくなります。
営業結果を分析し、改善するため
取引先名や電話番号などの属性データだけではなく、受注・失注理由や提案内容などの情報も顧客管理に紐付けておくと、営業活動の課題やその原因を分析し、改善できるようになります。
顧客管理で得た情報のなかでも、特に次のような情報は営業分析に役立ちます。
- 商談日時:アポイントメントを取りやすい時期やタイミングを掴める
- 進捗状況・進捗率:営業活動で遅れが生じやすい箇所を把握できる。遅れが発生しやすい担当者に対するヒアリングにより、適切なサポートや教育を行える
- 失注理由:受注に至らなかった原因が価格や機能面にあるのか、それとも営業担当者のアプローチ方法に問題があるのかなどの課題がわかる
- クレーム・トラブルの詳細:再発防止策の検討・実施により、顧客からの信用失墜のリスクを防げる
既存顧客や見込み客への価値提供を最大化するため
顧客にとって価値ある商品やサービスを提供し、継続的に利用するファンになってもらうことは、売上の安定と企業の将来的な成長にとって欠かせません。
近年は、それぞれの顧客とのコミュニケーションを最適化してLTV(顧客生涯価値)を高めようとする動きがあります。既存顧客をファン化できれば、新規顧客創出にかかる広告費用の割合を下げることができるため、利益率の向上が期待できます。
自社の商品を使い始めたばかりの顧客に対しては、商品の使い方やアフターフォローなどを充実させると良いでしょう。継続的に商品を購入しているロイヤルカスタマーに対しては、限定の商品やプランの提供、ランク制度の導入などが効果的です。
このように、それぞれの顧客に合ったコミュニケーションを実施するには、購買履歴や行動履歴などの詳細な顧客情報の管理が不可欠です。
顧客管理のメリット
ここでは、顧客管理の主なメリットを具体的に紹介します。
スムーズに顧客情報にアクセスできる
顧客管理を実施すれば、部門や拠点を越えて顧客情報を一元管理できます。関係者がスムーズに顧客情報へアクセスできるようになるだけでなく、情報の断片化や重複を避けることが可能です。
例えば、マーケティング部門がシステムに入力した最新の顧客情報を営業部門やカスタマーサービス部門もリアルタイムで確認できるため、一貫性のあるサービスを提供できます。その結果、全体的な顧客満足度の向上につながります。
パーソナライズ化した施策を実施できる
蓄積されたデータは、顧客の心理状況や行動履歴の理解に役立ちます。これにより、それぞれの顧客が何を求めているのか、どのような課題を抱えているのかを探れるため、各顧客のニーズに合わせたアプローチが実現可能です。
また、顧客ごとに最適化したアプローチの反応データを収集すれば、データドリブンな意思決定が可能となります。マーケティング施策ごとの効果や反響を客観的に評価し、次回以降の施策に反映できるでしょう。例えば、メールマーケティングを実施する際は、開封率やクリック率、商品購入率などのデータを分析し、より反応率が高い施策にフォーカスするなどの活用方法があります。
顧客と良好な関係を構築できる
パーソナライズ化した施策により、顧客と良好な関係を構築できる点も顧客管理のメリットです。顧客管理の実施により、顧客ごとに異なるニーズや要望に応じたサービスを提供できるようになるため、満足度の向上が期待できます。
既存顧客の場合は、これまでの取引記録や購入履歴、行動傾向などのデータを活用し、最適なアプローチを行うことで、より強固な信頼関係を構築できるでしょう。
顧客管理の手法
顧客管理には、次のようなツールが活用できます。
- Excel・スプレッドシート
- CRMツール
- SFA
- MAツール
各手法の概要やメリット・デメリットを解説します。
Excel・スプレッドシート
表計算ソフトのExcel・スプレッドシートは、テンプレートを活用することで顧客管理のツールとして活用できます。すでに導入している企業が多く、取り組みやすい一方で、顧客数や商品数が多くなると管理が煩雑になるため注意が必要です。
Excel・スプレッドシートで顧客管理を行うメリット・デメリットを具体的に見ていきましょう。
メリット
Excelを導入している企業であれば、顧客管理を行うにあたって初期費用がかかりません。Excelを導入していない場合は、スプレッドシートを無料で使用できます。従業員も使い慣れているので、学習・教育コストも抑えられます。
数値を入力して、グラフを自由に作成できる点もメリットです。例えば、受注率の推移や業界分布図など、用途に合わせてグラフを作成でき、視覚的に情報を判断できます。
また、Excelではマクロ機能を用いて売上登録や請求書の生成などの定型処理を自動化できます。簡易データベースの構築も可能で、処理をあらかじめ設定しておけば大幅な業務効率化が期待できるでしょう。
デメリット
Excel・スプレッドシートにはいずれも共同編集の機能がありますが、利用者が増えると入力ミスや誤って情報を上書きしてしまうなどの問題が多くなります。また、誤ってファイルを削除すると、復元が難しい場合もあるので注意しなければなりません。
また、Excel・スプレッドシートの主な用途は表計算で、複雑な分析やデータ連携には向いていません。
さらに、構築や管理が属人化しやすい点もデメリットにあげられます。例えば、Excelに詳しい担当者が初期構築を行い、それを引き継いだ別の担当者が仕組みを理解できずに、適切な運用が行われなくなるリスクがあります。
CRMツール
CRM(顧客関係管理)ツールは、顧客に関するあらゆるデータを活用して、企業と顧客との間に良好な関係を構築することを目指すためのものです。具体的には、顧客の状況に合わせて営業・マーケティング・カスタマーサポートなどの活用を最適化し、顧客体験の向上を目指します。
CRMには、主に次のような機能が搭載されています。
CRMを顧客管理に活用するメリット・デメリットを紹介します。
メリット
CRMは顧客管理に特化したツールであり、顧客に関する情報を一元管理できる点がメリットです。過去のやりとり履歴や現在のステータスも把握しやすく、担当者が変わった場合でもスムーズに引き継ぎできます。
また、Excel・スプレッドシートのように情報の蓄積に留まらず、メルマガの開封率やWebサイトへのアクセス履歴といった詳細なデータまで管理可能です。アクセス権を付与することで、他部門との情報連携も簡単に行うことができます。
デメリット
カスタマイズ性の高いCRMは特に費用が高くなりやすいので、自社の予算や目的に合ったツールを選びましょう。
また、顧客管理に特化したCRMを活用したからといって、すぐに顧客との関係性が強化されたり、満足度が向上したりするわけではありません。まずは情報を蓄積するところから始める必要があり、中長期的な視点で運用する必要があると認識しておきましょう。
SFA
SFA(営業支援システム)は、案件の担当者や商談の進捗状況といった営業に関する情報を一元管理できるシステムです。営業活動のプロセスを一部自動化することも可能で、パフォーマンスの均一化を図れます。
また、顧客データや商談履歴を一元管理し、マーケティング部と連携して施策を実行すれば、業務の効率化や受注率の向上も期待できます。
顧客管理にSFAを活用するメリット・デメリットを具体的に見ていきましょう。
メリット
SFAは、顧客情報や商談履歴をツール上で一括管理できる点がメリットです。営業担当者はこれらのデータをベースに営業活動にあたれるため、営業担当者によらず一貫した顧客体験を提供できます。
また、営業担当者がどの顧客にどのようなアプローチをしているのかも把握可能です。そのため、顧客へのアプローチの最適化とトラブルの未然防止につながります。顧客情報をリアルタイムで反映させることができ、迅速な意思決定にも役立てられます。
デメリット
SFAは営業に関する情報の一元管理に特化したツールであり、顧客情報の詳細な管理には不向きです。CRMで詳細な顧客情報を管理し、SFAで営業活動の進捗状況を管理することで、効果的な顧客管理が実現します。
また、SFAのようなツールは、機能が増えるほど導入コストやランニングコストが高くなる傾向があります。自社に必要な機能を見極めて、スモールスタートを心がけましょう。
HubSpotのSales Hubは、CRMを基盤としたSFAツールです。ツール内に蓄積された顧客情報をもとに営業活動に活かすことができます。無料プランから利用できるので、ぜひお試しください。
MAツール
MA(マーケティングオートメーション)ツールとは、Eメールマーケティングやソーシャルメディアへの投稿、広告キャンペーンなどマーケティング関連の作業の一部を自動化できるツールです。単にMAとも呼ばれます。
MAツールを顧客管理に活用するメリット・デメリットを解説します。
メリット
MAツールは、WebサイトやSNSといったチャネルを問わずにマーケティング活動を一元管理できるのが大きなメリットです。ツールで収集した顧客情報を活用し、Eメールの送信先を絞ったり、購買履歴に応じて関連商品・サービスを紹介したりするなど、顧客ごとに最適な体験を提供できます。
顧客とどこで接点を持つかに関わらず、一貫した顧客管理をサポートするツールとなるでしょう。CRMとの連携も可能で、より効果の見込めるマーケティング施策の実施にもつなげられます。
デメリット
MAツールは、データを活用して改善を繰り返すことで、施策の効果を高めていくためのものです。そのため、結果が出るまでには多少なりとも時間がかかります。ツールを活用する側にマーケティングの知識も問われます。
また、ほかのツールと同様に、機能が増えるとコストも増える傾向があるため、必要な機能をあらかじめ検討しておきましょう。
顧客管理に必要な項目
顧客管理をスムーズに進めるためには、次のような項目が必要です。
- 属性情報・企業情報
- 取引記録・購買記録・契約情報
- 商談履歴
- 対応履歴・顧客からの問い合わせ内容
それぞれの項目の詳細を解説します。
属性情報・企業情報
顧客管理で必要な属性情報の例を紹介します。
- 会社名
- 住所
- 電話番号
- メールアドレス
- 代表者名
- 代表者指名
- 所属部署・役職
- 資本金
- 従業員数
- 上場/非上場
- 決算月
- 業種
- 事業内容
- ホームページURL
- SNSアカウント
これらの属性情報は、名刺やホームページなどから収集しましょう。
取引記録・購買記録・契約情報
顧客管理で必要な取引記録の例は、次の通りです。
- 過去に取引・購買した製品やサービス
- 購入日時
- 過去の電話・メールの内容
- 契約金額
- 契約した商品・サービス
- 契約締結日
- 契約満了日
このような項目を把握しておくと、顧客のニーズが理解しやすくなり、適切な提案につながります。
商談履歴
商談履歴も顧客管理で重要な情報のひとつです。次に示す情報を管理しましょう。
- 過去の商談内容
- 進捗状況
- 提案内容
- 商談金額
- 契約数
- 仕入原価
- 対象商品・サービス
- 商談実施日
- 意思決定者の情報
- 商談後のアクション
商談時の情報をまとめておくと、より効果的なアクションや提案が可能となります。
対応履歴・顧客からの問い合わせ内容
パーソナライズされた良質な顧客体験を提供するには、対応履歴も残しておくことが重要です。次の情報を収集し、施策の実施に役立ててみましょう。
- 問い合わせ内容
- 問い合わせ種別
- 対応日時
- 担当者
- 状況(現在のステータス)
問い合わせ内容を記録しておくことはもちろん、対応漏れがないように現在のステータスを把握しておきましょう。
顧客管理を行うときに起こり得る問題
顧客管理を行う際、次のような問題が生じる可能性があります。
- 効果を感じるまでに時間がかかる
- 選定したツールが自社とミスマッチな場合がある
- 初期コスト・ランニングコストがかかる
- データを活用しきれない
それぞれの問題が起こる理由と対策を解説します。
効果を感じるまでに時間がかかる
顧客管理は、基本的にツールを活用して行います。導入初期は、複数の部署にまたがる大量のデータを入力する作業が必要になるため、本格的な運用開始までに時間がかかることがあるでしょう。
また、ツールの操作に使い慣れない間は従業員への教育が必要になり、運用できるまでに時間がかかる可能性があります。
こうした点を考慮し、長期的なプランを立てて計画を実行に移していきましょう。
選定したツールが自社のニーズとマッチしない場合がある
ツールを選定する際は、まず自社の課題を洗い出しましょう。そのうえで、課題の解決に役立つツールを選定し、長期的な視点で取り組むことが重要です。
知名度や価格のみでツールを選んでしまうと、あとから必要な機能が搭載されていないなどの問題が生じます。逆に、オーバースペックで運用コストがかさんでしまうことも考えられるので注意が必要です。
初期費用・ランニングコストがかかる
専用のツールを導入する場合は、導入時の初期費用やランニングコストがかかるケースが大半です。機能やオプションが充実するほどコストが高くなりやすいため、その機能は必要なのか、足りないものはないかなどの点を考慮して、慎重に選ぶ必要があります。
無料体験できるツールもあるので、使用感を確かめたい場合は体験版を利用してから導入の有無を決めるのが良いでしょう。
HubSpotのSFA「Sales Hub」には、無料で使用できるプランがあります。SFAの導入にご興味がある方は、ぜひお試しください。
データを活用しきれない
顧客情報を収集できても、データを活用するための知識やスキルがなければ有効活用しきれません。これらが不足していると、収集した情報をベースにした効果的なマーケティング施策の実施が難しいでしょう。
顧客管理の効果を最大化するために、データの活用方法の検討や体制構築もあわせて進めましょう。
効果的な顧客管理を行うためのポイント
顧客管理をさらに高い水準で実施するには、いくつかポイントがあります。主なものは、次の通りです。
- 目的から逆算して入力項目やツールを決める
- 管理ルール・権限をあらかじめ決めておく
- 最新の顧客情報に随時更新する
- セキュリティ対策に万全を期す
目的から逆算して入力項目やツールを決める
顧客管理表を作成する際は、事前に必要な項目を考える必要があります。ここで重要なのが、目的が達成できる必要最低限の項目に絞ることです。項目が多すぎると業務負荷が大きくなり、次第に入力されなくなる可能性があります。
「業界別」や「従業員規模別」などの分析軸が決まっている場合は、あらかじめ項目に加えておきます。目的を明確化したうえで、入力項目を定め、負担なく入力できる方法を考えましょう。
管理ルール・権限をあらかじめ決めておく
顧客管理は複数の部署にまたがり、かつ多くの人員が関わります。顧客管理のためのツールも複数人による使用が想定されるため、事前に明確な管理ルールを設定しておくことが重要です。管理者だけでなく、顧客管理に関わる全従業員に対してルールや管理方法を事前に共有・周知しておきましょう。
また、顧客情報を誤って更新・削除するなどのトラブルを未然に防止するために、管理者設定を含めた権限設定が必要不可欠です。データの誤操作を防ぐことができ、情報セキュリティも高められます。
最新の顧客情報に随時更新する
担当者や住所の変更があった場合は、システム内に登録している顧客情報も随時更新しましょう。
古い情報のままにしていると、いざ顧客へのアプローチが必要になった際に、誤って前任者に連絡してしまったり、宛先不明で戻ってきてしまったりと、スムーズな対応ができません。
顧客視点で考えた場合も、自社の情報が正確に管理されているかどうかは、企業との信頼関係を左右します。顧客情報を最新の状態に保つことは、顧客満足度向上や信頼関係維持の一環として重視すべき作業です。
セキュリティ対策に万全を期す
顧客管理では個人情報を取り扱うことになるため、セキュリティ対策は万全に行いましょう。
- 機密性:アクセス制限を設け、関係者以外がアクセスできないようにする
- 完全性:情報の改ざんが行われないようにする
- 可用性:必要なときに必要な関係者が、適切にアクセス可能な状態にする
上の3点を確認し、安全に取り扱うようにしてください。
顧客管理を良質な顧客体験につなげよう
顧客管理を実施すると、顧客に関する情報を一元管理できるだけでなく、パーソナライズされた施策の実行や顧客との関係構築に役立ちます。
顧客管理には、さまざまな手法がありますが、部門を越えて顧客データを管理するならツールの導入がおすすめです。
HubSpotは、CRMを基盤としたカスタマープラットフォームです。「Sales Hub」や「Marketing Hub」との連携によって、ツールに蓄積された顧客情報や行動をもとにしたアプローチも実現できます。
無料プランもあるため、顧客管理にツールの導入を検討中の方は、ぜひお試しください。