ブログからアドベントカレンダーに参加することがすっかり年末の風物詩になっていて楽しいですね - 週刊はてなブログ

ブログからアドベントカレンダーに参加することがすっかり年末の風物詩になっていて楽しいですね

アドベントカレンダーとブログのいい関係
アドベントカレンダーというものがあります。本来はクリスマスまで数える楽しいカレンダー飾りですが、ブログでは年末恒例のバトン企画としてすっかり定着した感があります。アドベントカレンダーとブログの関係を、人気記事・記事編集TIPS・歴史の観点で眺めてみました。

12月はアドベントカレンダー(Advent calendar)の季節です。はてなブログでも、毎年この時期にはたくさんの人気エントリーがアドベントカレンダーから生まれています。

はてなブログに集まっている「アドベントカレンダー」のトピック

この記事ではブログとアドベントカレンダーの関係をあれこれまとめてみたいと思います。

技術系ブログを中心に2021年の人気記事から

はてなブログはとくにMarkdownで執筆できることもあって、企業の開発者ブログを中心に技術系のブログがたくさん運営されています。ここでは昨年(2021年)に話題になった記事をいくつか振り返ってみましょう。

tech.mobilefactory.jp

まず、モバイルファクトリー Advent Calendar 2021最終日から、ややメタ視点っぽさのあるエントリーですが、この発言が印象に残りました。

「半年経って、技術ブログに書くことがなかったら、何かがおかしい。」

ブログを開発の目的にするということではなく、日々の仕事の中にある「課題解決」をブログ記事にしていこうという提案です。

www.m3tech.blog

続いてエムスリー Advent Calendar 2021の11日目からビジュアル的にも話題になっていた機械学習系の挑戦企画。ストリートビューの風景を学習させ、任意の写真が東京23区のうち何区なのかを当てさせています。

柵は場所を知る手がかりになる

これは何かの推理クイズとかに使えそうな話だと思ったりしました(機械学習に関係ない感想ですみません)

tech.classi.jp

engineers.ntt.com

アドベントカレンダーの面白いところは、さまざまな技術ブログが毎日のように更新されるので、エンジニアリングそのものではない視野の広い記事にもたくさん出会えることです。Classi developers Advent Calendar 2021の7日目では独特な研修の紹介が、NTTコミュニケーションズ Advent Calendar 2021の11日目には1on1(ワン・オン・ワン)の工夫が話題になっていました。

こういった記事は開発者だけでなく、いろいろな業種のスタッフにも参考にできるところが人気を集めた理由でもあるのかなと思います。

元々エンジニア向けに企画した研修でしたが、部署を超えエンジニア以外の方も含めて50名近く集まってくれました。講義内容は弊社メンバーも思い当たることや気付きも多かったようで、講義中のチャットも大変盛り上がりました。

両者とも、日々の気付きや自分の内部にある知見をどのように言語化して共有するかということの大切さにも気付かされる記事だと感じました。

rhiroe.hatenablog.com

最後に技術ブログを離れて、大都会岡山 Advent Calendar 2021の23日目から。土地や住宅といった物件は人生でそう何度も経験することもふつうはまずない大きな買い物だけに、どういった仕組みで売買されているのか戸惑うことも多そうです。はてなブックマークのコメント率も高く、課題に直面しても解決が容易ではない領域なのだなと感じさせられました。

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アドベントカレンダーを書くときの小さなTIPS

ここからアドベントカレンダーを書くときのちょっとしたヒントを2つ紹介します。アドベントカレンダーだけでなく、はてなブログやそれ以外のプラットフォームで記事を書いたり編集するときにも参考にしてもらえるのではないかと思います。

カテゴリーやタグを活用しよう

先ほども書いたように、はてなブログでは企業の開発者ブログもたくさん運営されています。次のリンクは、私的に趣味で集めている「はてなブログで運営されている企業公式の技術ブログなど」のタイムラインです。

企業公式の技術ブログ - 大チェッカー

アドベントカレンダーについては公式技術ブログを中心に更新する、という運用にしている企業もあるようです。そういったブログではアドベントカレンダーの記事がたくさん公開されますから、一覧性のためカテゴリーを活用するとよいでしょう。以下は、いくつかの開発者ブログで実際にアドベントカレンダーのカテゴリーが付けられている様子です。

このようにアドベントカレンダーの記事にだけアドベントカレンダーのカテゴリーを付けておくと、ほかの記事(例えばセミナーの案内など)からフィルタリングもできますし、年号を入れておくと翌年以降に見直すときにも分かりやすくなります。

カテゴリーによく似た機能として、はてなブログにはタグもあります。こちらは単一のブログに閉じず、はてなブログ全体から人気記事を見つけることもできます。

それぞれヘルプの「記事にカテゴリーを設定・表示する 」と「はてなブログ タグとは」などを参考にしてください。

目次を表示して構造を分かりやすくしよう

この記事の冒頭にも表示していますが、はてなブログでは目次を簡単に表示できます。

ヘルプの「記事中の見出しから目次を自動的に作成する(目次記法)」に説明がありますが、Markdownやはてな記法で更新しているブログの場合は、次の1行が目次に展開されます。

[:contents]

目次を表示すると、記事の構造が分かりやすくなるため内容もより伝わりやすくなりますが、それだけでなく記事の構造を確認して、改善につなげることもできます。

例えば、次のように記事の大まかな構成からアウトラインとして見出しを立てておいて、それぞれの見出しにふさわしい内容を書いていく方もいるでしょう。

  • はじめに
  • どのように実施したか
  • まとめ

ここで「どのように実施したか」には当然ですが、施策の内容がすべて含まれるので、次のようにひとつ低いレベルのアウトラインが立てられます。

  • はじめに
  • どのように実施したか
    • 使用した技術
    • スケジュールの工夫
    • 振り返りで見つかった課題
  • まとめ

このように施策の重要な部分には書くべき内容が多いため、同じようにアウトラインを立てていくとやがてこのようになります。

  • はじめに
  • どのように実施したか
    • 使用した技術
      • フレームワークの選択
      • 実装で工夫したこと
        • 前例を生かしたこと
        • 独自に工夫したこと
          • なぜ工夫したのか
          • 苦戦したこと
    • スケジュールについて
  • 振り返り
    • 見つかった課題
  • まとめ

アウトラインとしてはこれでよいかもしれませんが、書き上がったところでいったん目次を見直してみてください。

この記事の最も核となり読者に伝えたい部分は「苦戦したこと」の見出しの下に書かれていることが想像されます。それがこれほど深いレベルに配置されていると、ひと目では目につかなくて、何が重要なのかが目次からは伝わりにくくなっています。

記事を公開する前に記事を見直す時間があるのなら、見出しレベルはできるだけフラットになるよう編集することをおすすめします。上記のように目次が深くネストされている記事であっても、おそらく次のような2レベルに構成し直せるでしょう(ここでは少し具体的な見出しに付け直したりもしています)。

  • 技術選択の方針と概要
    • フレームワークには「●●●」を採用
    • 以前にも使用した「●●●」を今回も
  • 初めての「●●●」にも挑戦
    • なぜ工夫したのか
    • 苦戦したこと
  • スケジュールについて
  • 振り返り
    • 今後への課題
    • まとめ

このように、書き上がった記事が伝わりやすい構造になっているかどうかを見直す際には、目次をヒントにできるのではないかと思います。

記事を作る人たちのアドベントカレンダー2022

この記事は文を紡ぎ編む人たちの Advent Calendar 2022の1日目です。このようにブログのカテゴリーや見出しの付け方について日々考えているような、テキストコンテンツについての知見が集まるといいなあと開催しています。

adventar.org

今年はまだ全日程が埋まっているわけではないので、もしライティングや編集を仕事にしていたり、文章を書くことが生活になっている方がいましたら、これからでもぜひご参加いただけるとほんとうに嬉しいです。編集やライティングはふだんあまり知見が活発に共有されている領域でもないので、こうやってクリスマスまでの期間を利用して楽しんでいきましょう!

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おまけ:アドベントカレンダーの日本で定着するまで

日本のブログサービスがアドベントカレンダーを書く場所として一般に利用されるようになって10年ほどたちます。

アドベントカレンダーのホスティングサービスであるAdventarのアーカイブを見ると、10年前に42だったカレンダーは、2020年代に入って1,000以上が運営されています。ほかに技術系のアドベントカレンダーがQiitaにもありますから、あわせてかなりの広まりだと言えるでしょう。

ところで、このムーブメントを始めたのは誰でしょう? これまでにどんなターニングポイントがあったのでしょう? ネットで分かる過去の出来事をいくつか拾い集めてみました。

酔った勢いでPerlアドベントカレンダー

現在の日本の状況につながるアドベントカレンダーの元祖として語られているのは、2000年のホリデーシーズンに登場した「Perl Module Advent Calendar」です。これは毎日ひとつずつ興味深いPerlモジュールを紹介していくというもので、現在ではperladvent.orgという独自サイトにまとめられています。初年度のアーカイブが以下にあります。

A Perl Module Advent Calendar

開いてもらうと分かりますが、サイトの見た目が伝統的なクリスマス飾りとしての「アドベントカレンダー」を模しています。

Christmas Advent Calendar アドベントカレンダーブッククリスマスカレンダーには、クリスマスまでの24の引き出しカウントダウンがあります

海外のさまざまな行事風習を取り入れてきた日本でもまだあまり一般的になっていませんが、欧米では毎年12月1日からクリスマスまで数える特別なカレンダーが用意されます。その日の「窓」をあけるとお菓子が入っているという子どもたちにとってお楽しみなクリスマス飾りのようで、その「お楽しみ」に素敵なモジュールの紹介文を仕掛けたものと考えられます。

開始にあたってのAboutページには「二日酔いのときに最高のアイデアを思いつく」などの記述もあり、酔った勢いのアイデアを速攻でハックして形にしたものだったようです。設計と実装はロンドンのPerlコミュニティで活動するMark Fowler@2shortplanksさん。このアドベントカレンダーは翌年2002年と開催を続け、サイトには2020年までのアーカイブが残っています。リポジトリでは今年も用意されているように見受けられます。

perladvent/Perl-Advent: the Perl Advent calendar

なお、2011年以降は現行と同じデザインで統一されているようですが、2010年までは凝ったレイアウトが採用されていて、実物のアドベントカレンダーのユーザー体験に寄せようと努めていたことがうかがえます。ラクダが寂しそうな2009年など、その年ごとのよさがあります。

なお、実物のアドベントカレンダーでは、25日のクリスマス当日になるまでの期間を楽しみながら数えるため、前日の24日が最後になるようです。ところがMark Fowlerさんのページでは当日の25日までが用意されていて、現在の日本のブログ界隈のアドベントカレンダーが25日終わりなのも、この影響があるからかもしれません。

日本のPerlユーザーから各プログラミング言語の界隈に

Perlモジュールアドベントカレンダーに影響を受けて、日本のPerlコミュティも2008年からアドベントカレンダーを始めます。

JPerl Advent Calendar 2008

ここですでに「実物のアドベントカレンダーのレイアウト」は考慮されていません。日本人で実際にアドベントカレンダーをあけてキャンディを取り出した人は当時ほとんどいなかったでしょうから、模擬的にユーザー体験を再現することは考えられなかったでしょう。

一方でこのときから一種のブログバトンとして運営され、日によって書き手が変わるスタイルは早くも定着したと言えるでしょう。すでにウェブ日記やブログの文化が定着していたこともあったのかもしれません。このスタイルのアドベントカレンダーを紹介するテキストには、今でも参考になる考え方が書かれています。

手元にあるネタで書くことになるので、実践的な tips が集まりやすいということもあります。5分でさくっとかけるような tips でいいのです。そういう tips の方が意外と有用だったりもします。やってみると、自分では Perl のことに詳しいつもりでも、知らないことが多かったりするものです。
Perl Advent Calendar Japan - Articles Advent Calendar

そして2年ほどたつと、いくつかのプログラミング言語のコミュニティに広まります。その様子がgihyo.jpでレポートされています。

本日12月1日より、プログラマ有志による技術系Advent Calendarが各所ではじまる

@ITには2011年の様子が紹介されています。

師走を楽しもう。技術系アドベントカレンダーの魅力とは:安藤幸央のランダウン

こうして年ごとに成長する様子がちょうど6年前のブログ記事にまとめられています。

日本における技術系アドベントカレンダーの歴史 - yhara.jp

アドベントカレンダーをホストする文化の始まり

日本でアドベントカレンダーが広まっていく様子を見ると、2008年のJPerlはコミュニティのサイトにホスティングされており、まだブログに分散して執筆される現在のスタイルは実現していません。記事をすべて一箇所に置くのではなく、まとめサイト的に一覧だけをホストするという現在のスタイルに至るには、今はなきATNDが重要な役割りを果たしたようです。

ATNDとは、現在のconnpassDoorkeeperPeatixのはしりとも言えるイベント開催支援ツールで、リクルートが2008年から2020年まで無料で提供していました。全国でIT系の技術勉強会を開催するコミュニティの動きが加速する中で必然的に登場したサイトで、当初はたいへんな熱量をもって歓迎されたサイトだったように記憶しています。

本来はイベントに参加表明するための機能を、アドベントカレンダーの執筆枠を予約するために転用するということが2010年ごろにはもう起こっていたわけです。そしてこれが発展し、現在のQiitaアドベントカレンダーAdventarといった専用のサイトに一覧ページをホストして、記事本体はブログなどに記述するスタイルが定着することになるわけです。

アドベントカレンダーに関するアレコレ、QiitaアドベントカレンダーとAdventarの中の人に聞きました。

こういった経緯は上記の対談にも詳しく紹介されていました。

さて、20年以上のアドベントカレンダーの流れを振り返ってきました。最初に二日酔いで思いつき、面白いから日本でも始めようとしたコミュニティの熱意があり、一覧ページのホスティングを立ち上げるという仕組み化によって、アドベントカレンダーは現在の活況を呈しているのだと言えます。文化を作り上げていく素晴らしさを感じます。

みなさんもぜひブログからアドベントカレンダーに参加してみましょう!

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今回紹介したブログ

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※ この記事のアイキャッチ画像にはUnsplashElena Mozhviloが撮影した写真を使用

by モーリ
Profile

毛利勝久

はてなスタッフ。IT系の書籍編集者やフリーライターを経て2012年から現職。かつて制作した書籍に『MySQL徹底入門』『へんな会社のつくり方』など。現在はテック系企業のオウンドメディアや記事広告の制作を主に手掛ける。個人ブログは「in between days」。