もう忘れてしまった感情やまだ知らない心境に触れる。普通の人の「人生」を読みたい - 週刊はてなブログ

もう忘れてしまった感情やまだ知らない心境に触れる。普通の人の「人生」を読みたい

週刊はてなブログを運営する「週刊はてなブログ編集部」と、クライアントのオウンドメディア記事を制作する「はてな編集部」が合同でブログを紹介する連載企画「編集部が気になるブログ」。今回ははてな編集部の竹野が「人生」にまつわるブログを紹介します。

こんにちは、はてな編集部の竹野です。

私は普通の人の「人生」にまつわるコンテンツが好きです。はてなブックマークも「人生タグ」が一番多くを占めています。

[B! 人生] matakenoのブックマーク

「人生」にまつわるコンテンツとは……? 最近だと、テレビ番組『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京)で語られる個人や家族のストーリーといえばイメージしやすいでしょうか。

書籍だと、ポール・オースター*1が全米から募った実話を厳選してまとめた『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』や、上原隆さん*2のノンフィクション・コラムを繰り返し読んできました。

普通の人の「人生」に触れられる記事、はてなブログにもたくさんあるんです!

今回は【恋】【誕生】【退職】【引っ越し】【死】【帰国】【病気】、いわば人生のターニングポイントに接したときの思いをピックアップしてみました。

あらためて読んでも素敵だなと思う記事、私の心を揺さぶる記事ばかりです。

【恋】人生で初めて彼氏ができた

突然彼が真剣な顔で「付き合ってほしい」というから、「いいけど、付き合ったことないから正解が分からないよ」と返す。それでもいいからというから、私の欠点をつらつら述べた。

「LINE返すのすごく遅いよ」「1日1回でいいよ」「毎週は会えないよ」「2週に1回会えたら十分」「ADHDってこの前診断されたよ」「教員免許持ってるから理解ある」「仕事辞めたいよ」「俺が養うから」「恋人とか分からないよ」「それでもいい」

人生で初めて彼氏ができた - 夏さ、また。

有機栽培さんの「初めて彼氏ができた」報告。リズム感のあるウキウキした文章を一気読みすると、幸せをお裾分けされた気分になりませんか?

私が特に好きなのは、彼氏との会話のラリー。恋の始まりって確かこんなやりとりがあった気が……しないでもない。はるか遠い昔に忘れてしまった甘酸っぱい感情が呼び起こされるのです。人を好きになるっていいですね!

muriyada444.hatenablog.com

【誕生】コロナ禍の中で産まれた君へ

君のこれからの人生は、平坦なものばかりではないだろう。これから君が生きる世の中が、どんな風になっていくのかは、誰にも予想が出来ない。

でも大丈夫。君は、沢山の人に望まれ、求められ、祝福されて産まれてきた。だから君は、うんと甘えればいいし、頼ればいいし、助けて貰えればいい。そして君は、君のなりたいものになればいい。

コロナ禍の中で産まれた君へ - ゆとりずむ

らくからちゃさんによる、コロナ禍の中で誕生したお子さんへのメッセージ。生まれてから10日も経たない日の、ミルク時間の合間につづられた思いです。

親から子どもへのメッセージなのに、全ての子どもたちや大人の私たちが生まれてきたことも肯定されているような、そして、私たちも世の中を支える一人なんだよと伝えられているような。そんな気持ちになる、何度も読み返してしまう名文です。

www.yutorism.jp

【退職】「トラブルもなく40年の仕事を全うしました」

仕事が終わりなんだか切なくなったので富山県のいつものチューリップ四季彩館さんへ行って来ました。

チューリップ四季彩館、夏の展示その1・・ - ライダーマン FINAL

転職をする人の「退職エントリー」は幾度も目にしてきましたが、何十年も勤め上げた人の「定年退職エントリー」は貴重ですよね。

鉄道マンだったライダーマンさんの「最後のお仕事の日」は胸を打つものがあります。駅で最後の泊まりから、早朝の仕事(4時半起床!)を終えて、切なくなってチューリップを見に行く……。40年間の思いが凝縮されています。

deechiyan.hateblo.jp

【引っ越し】206号室に、さようなら。

5年3ヶ月も住んだ賃貸ははじめてだった。

一人暮らしを含め、4つ目の賃貸物件だが、引っ越しの度に物悲しくなる。実家が持ち家だったことも関係していると思うが、住まいは自分の所有物という意識が強い。引っ越しのとき、他人のものなんだよなと認識する。もう何ヶ月か後には、こんなに愛着ある部屋に他の誰かが住んでいる。

206号室に、さようなら。 - No.26

引っ越しの日に段ボールが運ばれていって、部屋が空っぽになったときの空虚感。私も引っ越しをするたびに味わってきました。takchasoさんは、その寂しさを上手に表現しています。

60枚以上のスナップショットが続いて、まるで短編映画を見終わったかのような読後感。モノだけじゃなく、思い出が詰まっていたから寂しいんだと分かって、感情移入してしまいます。ブログに写真を記録しておくことの素晴らしさも感じる良記事。

www.takchaso.com

【死】「独り生きて来て20年の日を迎えたのだ」

12月28日は今は亡き(永く妻の役割で同志だった)初根さんの命日にあたります、特別な事はしませんが密かにもう一つの記念日とします。初根さんが居なくなってから、(もう20年です)という事は?この大橋学も独り生きて来て20年の日を迎えたのだ⭐︎

20年前の28日は命日、そしてあれから20年経ち1人生きた!簡単では無かった最初から1人なら何も怖くはないけど大橋学は出逢うべき初根さんと二十歳で結ばれた結婚したのです2人は幼かったけどお互いに信頼して小さな信念も情熱も 全てもっていた⭐︎ - らむど夢幻 Lamdo Mugen

2022年2月、73歳で死去したアニメーターの大橋学さん*3のブログ。生前最後の記事は、20年前に亡くなった妻への思いがあふれていました。

亡くなって3年は「立ち直ることは難しかった」。そこから、徐々に自分を取り戻し、独りで生きて20年の「新成人の日」を迎えたといいます。長年、一人の人を大切に思い続けてきたことが伝わってきて、心が震えるのです。この記事を残してくれてありがとうございます。

maolamdo.hateblo.jp

【帰国】「ハノイが恋しくて、たまらなく寂しい」

ハノイでビアホイに行ったこと自体は数えるほどしかないけど...

このグラスで呑んでいたら、ハノイの6年間が鮮やかに蘇ってきて、ハノイが恋しくて、たまらなく寂しい。

それと同時に、寂しいと思えるほど、ハノイが自分の人生で特別な街になっていたことがうれしくもある。

酔っ払いの勢いで - ハノイ駄日記

学生時代に住んだ街、転勤で住んだ街……。数年も暮らすと街に愛着が湧いて、人生において忘れられない土地になります。

ザボン犬さんはベトナムのハノイで暮らしていましたが、この3月に帰国。船便約70箱が届いた後の晩酌の様子をアップしています。短い文章に「恋しい」「寂しい」「うれしい」と感情が入り混じっていて、複雑な胸中が想像できますね。

zabon-inu.hatenablog.com

【病気】「そこから何があったか記憶がない」

そのうち、世の中から孤立する感覚になった。自分に血縁のある人がいなくなるのだ。親戚もいるが、深い縁がある人はいなくなる。段々と頭のぼんやりとし始めて、何も考えられない状態になった。しかし、生活をしなければならない。会社に行き、仕事をする。そんな日常を過ごしていた。

そこから何があったか記憶がない。

生きるとはなにか - 森は生きている

家族や大切な人が病気になったら、どのような気持ちになるのでしょう。なるべく考えたくないし、不安でちょっと怖いと思っている自分がいます。

そういう状況に陥ったenoshigeさんの心境です。一人で自分を育ててきた母親が、余命「半年ぐらい」と告げられる。セカンドオピニオンを求めるもどこを探してもダメ。「世の中から孤立する感覚」「そこから何があったか記憶がない」という心情描写が突き刺さります。

enoshige.hatenablog.com



2000年1月から直近の2022年5月まで、印象に残っている記事7本を日付順に紹介しました。

あなたの「人生」の記事が、誰かの「人生」を救うかもしれない

私が普通の人の「人生」を読んでブックマークするのには、二つ理由があります。

一つは、素敵な人生の記事に触れると、それだけで優しい気持ちやポジティブな気持ちになれるからです。

もう一つは、これから困難に直面したときに、誰かの人生の記事が役に立つはずと思っているからです。同じ状況を経験した人の心境を知っていれば、少しは穏やかに乗り越えられるかもしれない、と考えているわけです。

最後に「ブログと人生」に関する記事を。

何かこう、不思議でありながら、素敵なことではないだろうか。自分で言ってしまうのも小恥ずかしいのだけど、誰かに影響を受けた私が、また誰かに影響を与え、おそらく、おソースさんが編集された雑誌やその他のメディアに、また誰かが「!!」を灯すのだろう。個人のサイトやブログ、ひいてはテキストには、こういう可能性がある。それ自体が、何より素敵なことではないか。いただいた手紙を読みながら、そういった「巡り巡る」ものを感じてしまい、何かをアウトプットすることの面白さを痛感したのであった。

個人のテキストが誰かの人生に影響を与えるということ - ジゴワットレポート

結騎了さんのブログに影響を受けた読者が、現在はフリーの編集者として働いているという素敵なお話です。

私もこの記事に共感しています。この記事のように他人の人生を変えるまではいかなくても、あなたの「人生」の記事が、誰かの「人生」を救うかもしれません。

だから、ブログであなたの「人生」を読ませてほしいのです。

www.jigowatt121.com

今回紹介できなかった記事もたくさんありますし、探し切れていない記事もたくさんあると思います。人生にまつわる記事を書いている方は、ぜひタグ機能を使って「#人生」のタグをつけてみてください!

この記事の著者の関連情報

はてな編集部では編集者を募集しています

blog.hatenablog.com

*1:アメリカの作家。プロフィールはこちら → https://www.shinchosha.co.jp/writer/16/

*2:上原隆さんについてはこの記事が詳しい → https://www.gentosha.jp/article/11302/

*3:https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2202/15/news088.html

By 竹野雅人
Profile

竹野雅人

はてなスタッフ。出版社、ポータルサイト運営会社を経て、2019年にはてな入社。編集に関わる。