はてなブログで技術に関するブログを書いている方に、“ブログを書き続けること”について教えてもらう企画「エンジニアのブログ探訪」。第6回は、3つのブログを使い分けているはてな社員・papix(id:papix)です。
技術や仕事について書くブログ、日常や趣味についてブログに加え、とにかく何でも書くという“雑多なブログ”を続けているid:papixにどういった理由で使い分けているのか、どういうモチベーションで更新をするのかなどを尋ねたところ、それぞれのブログが果たす役割・効能が見えてきました。
ブログを書くことによって自分の知識を“丸ごと記録”(dump)するというid:papixに、ブログの使い分け方や書く内容について聞きました。
──ブログを始めたきっかけについて教えてください。
大学生の頃、研究室でPerlというプログラミング言語と出会い、そのコミュニティに参加したのがきっかけだったと思います。
その頃に出会ったPerl Monger(Perlエンジニアを指す言葉)が、ほぼみんなはてなブログ、またははてなダイアリーを使って記事を書いていたので、それにならって自分もはてなブログを開設した記憶があります。
──ブログにはどのようなことを書いていますか?
ブログは3つ運用しています。 1つは技術ブログ、1つは私生活について書く趣味ブログ、1つは雑多に何でも書くブログです。 はてなブログは1つのアカウントにつき無料で最大3つまでブログが作れます!
最初はすべて1つのブログで書いていたのですが、さまざまなトピックが1つのブログにまとまっているのも統一性がないと感じて、一時期自分の周りではブログのセルフホスティングが流行ったこともあり、いったんはてなブログをやめてGitHubでセルフホスティングするようになりました。その時何を思ったのか、全部の記事を消してしまっていて、今めちゃくちゃ後悔しています……。
その後セルフホスティングをやめてはてなブログに戻ってきた時に、技術と趣味でブログを分けたところ、自分にはそのやり方がピッタリで、いい感じにすみ分けることができるようになりました。
papixの技術ブログ「Masteries」
ブログの書き方は、正直に言えば我流です。ただ、個人的に大事にしているのは、「煽るような書き方をしないこと」「参考にした情報(本、Webサイト、ブログなど)は明示すること」「分からないこと、確信がないことはきちんとそのように書くこと」あたりでしょうか。後は「自分のために書く」です。特に技術ブログは、全てのことを覚えきれない自分のために、外部メモリとして書くことを意識しています。
──ブログを書いていて良かったことは何ですか?
記憶力が弱いと自認しているため、技術ブログを書くことで自分の知識をdumpできているのが大変良いです。たまに分からないことを検索してみたら自分のブログ記事が検索結果に出てきてびっくりすることがあります。同僚が分からないことを調べてみたら自分のブログが出てきた、ということもありました。
コードレビューの時に自分のブログを参考文献として貼って「これはこういうことなんです」と説明できるのもいいですね。また、技術ブログに書いた記事がきっかけでイベントへの登壇を依頼されたことが何度かありました。
日々あれこれ試して、それをアウトプットして、自分の血肉にして……ということを積み重ねた結果、気がついたらはてなに入社してはてなブログの開発に携われたのも、最高の出来事だったと思っています(現在は違うチームにいます)。
──「雑多なブログ」には何を書いていますか?
雑多なブログの方は、「アウトプットのし損ないを防ぐ」という目的のほかに、“自分の定点観測”ができるというのが良いところだと思います。例えば、過去の記事を見てみると、花粉が飛ぶ時期になると明らかに調子が落ちている様子が分かります(笑)。また、仕事や日々の生活での気付きや考察なども思い出せます。
ブログはTwitterと違って長文が書きやすいので、とにかく考えたこと、思ったことをダダッと書き残しておくと、「あの時こんなことがあったんだな」「こんなことを考えていたんだな」と振り返りやすくて良いです。
──普通のブログと「雑多なブログ」の違いについて教えてください。
先に「ブログは自分のために書く」と言いました。とはいえ、ブログという形で公開する以上、どうしても「ちゃんと書かなければ」という意識が働いてしまい、一時期アウトプットをし損なうことが増えました。具体的には、書くものが自分の求めるクオリティにならず、記事を書かずに終わったり、下書きのままになったりします。
その対処として2017年に始めたのが、「雑多に何でも書くブログ」です。とにかく低クオリティでもいいから、思ったこと、考えたこと、日々の様子をどんどん書いていくという運用です。
これによって、考えたことをアウトプットし損ねる機会は減った気がしています。また、日々考えをどんどんアウトプットすることで、考えていることをまとめる訓練になったのか、仕事で文章を書くスピードが上がったような感覚もあります。
「雑多なブログ」の月間投稿数を見ると、なんとなく「寒くなる、あるいはメンタル面で弱っていると記事が減っている」という傾向があるような気がします。自分の精神衛生の状態は、案外すぐには気付けないものなので、「雑多なブログ」の記事数から何か気付くことはできないか? と考えています。
──ブログを書き続けてきた中で苦労したことはありますか?
日常のブログや「雑多なブログ」については、気軽に書いていることもあってあまり苦労した記憶はないですね。一方で、技術ブログについては、「良いネタが浮かんでくるかどうか」が苦労ポイントといえるでしょうか。
元気な時は、いろいろ気付いてあれこれ試したり調べたりして、どんどんブログに書くネタが湧いてきますが、調子が悪い時や忙しい時は、どうしてもそういった余裕を作れず、ネタが湧いてこないことがあります。書くネタが浮かんでこない時は、無理やりひねり出すのではなく、まずは「体調が悪くないか?」「忙しくないか?」という、根本的なところから考えるようにしています。
記事の書き方は我流ですし、「自分のため」を優先してあまり読者のことを考えていないため、ぶっちゃけ「書いた記事がバズることが少ない」というのが、目に見える悩みといえば悩みかもしれません。ただ、読まれることだけを目的にブログを書くのはいいことではないと考えているので、その辺はあまり気にしないようにしています。
今後の課題として、「雑多なブログ」にいったんdumpしたものをうまく整理して、技術ブログでアウトプットできるようになりたいです。
──執筆時の様子について教えてください。
ノートパソコンさえあればブログはどこでも書けるので、特にこだわりなく、いろいろな場所で書いています。書きたい時がブログを書く時!だと思っているので、「とにかく書くぞ!」という気持ちになったら即座にはてなブログを開きます。
これまでブログを書いた場所を挙げると、自宅はもちろん、近所のカフェやホテル、温泉の休憩スペースなどがあります。飛行機に乗る前に空港のラウンジでサクッと書いたり、フェリーの上でなんとか電波を拾って投稿したり、海外に行く時にノートパソコンをあえて持っていかずにiPadで「雑多なブログ」を更新したりしたことも(飛行機や鉄道などで移動している時は酔ってしまうため書きません)。
本当にいろいろな場所で書いてきました。はてなブログはスマートフォンアプリやiPadアプリもあるので便利ですね。
──これまでブログを続けられたのはなぜでしょうか?
仕事(技術)も日常も、いろいろなことがあって、良いことも悪いことも、どうしても忘れていってしまいがちです。ブログを書くことで、良かったこと、楽しかったこと、あるいは悔しかったことや反省点について記事を通して後で振り返ったり、思い出したりできるのが醍醐味だと思っています。
いっとき開発を担当していた自分が言うのも何ですが、はてなブログは「書き、残すツールとしてちょうど良い」のですよね。書きたいことをシンプルにシュッと書ける。そして書いたものをいい感じに表示してくれる。それを、何もしなくても保存し続けてくれる。一時期はてなブログをやめていたのにまた戻ってきたのは、自分だけの力ではどうしてもその「ちょうど良さ」を実現できなかったという要因があると思っています。
お話を伺った人:id:papix
株式会社はてなにWebアプリケーションエンジニアとして中途入社して、はてなブログの開発に携わった後、最近はマンガメディアの開発をしています。趣味はPerlと旅行です。
Twitter:@__papix__
技術ブログ:Masteries
日常ブログ:絶対笑顔でまだまだいっぱい夢見るブログ
雑多なブログ:パピッター
Webサイト:papix.net