「個人塾化」10月31日
株式会社やまとごころ社長村山慶輔氏が、『AIに負けない観光人材』という表題でコラムを書かれていました。その中で村山氏は、『旅行者は人のぬくもりや真心を感じたいのであり、ロボットやAIによる代替には限界がある』と述べ、『観光業はキャリアの安定性が高い』ことを強調されていました。私には、そのことの当否は分かりません。
ただ、次の記述はとても気になりました。『人手不足の悩みは深い、これを打破するため、経営者や採用担当者はビジョンと夢を語ってほしい。いいものを安く多くの方に届けるのではなく、付加価値を付けて、求める人にしっかり届ける、という発想の転換も必要だ』です。
AIやロボットでは代替できないという指摘は、教員にも共通するものだと思います。人手不足が大きな問題になっていることも、各自治体が教員採用に苦戦する現状に似ています。そして、採用に当たって、夢やビジョンを示すべきという提案にも賛成です。近年の、教員採用についての対策と呼ばれるものが、採用試験の前倒しや試験の負担軽減など、小手先の工夫に偏っていることに違和感を覚えていたからです。つまり、学校と観光業は似ていると感じたわけです。
それだけに、「いいものを安く多くの方に届けるのではなく、付加価値を付けて、求める人にしっかり届ける」という方向に将来の生き残りをかけるという発想に衝撃を受けたのです。私は公教育、特に義務教育は、少ない負担(=安く)で良い教育内容を多くの人(全国民)に届けるものであるべきだと考えてきました。
そこからは、望ましいと考えられるひな型(=学習指導要領)を作成し、全国共通で適応させ、類似の基準・内容で選考された教員が、一定の基準に基づいて準備された施設・備品の環境において、検定に合格した教科書を主たる教材として授業を行う、という現在の形が導き出されるのです。
しかし、そうした生き方を古臭いものとして否定し、「付加価値を付けて、求める人にしっかり届ける」という形にこそ学校教育の未来があると考えると、現在の学校制度は根本から変えられることになってしまうからです。
簡単に言えば、家庭教師や個別指導学習塾化を目指すということになります。当然、人件費等の経費が激増します。その対応策としては、公立校の中に、保護者が多くの負担を受忍するA型校=個別指導型と、B型校=従来の低廉な一般校という2種類の学校、あるいはその中間型として複数の折衷型の学校、という多様性をもたせる学校設置になります。A型校では、東大など難関校への進学や海外有名大学への留学、医師や弁護士などの「エリート」につながる訓練などが行われ、B型校では、A型校の教員にはなれなかった教員が従来型の授業をするのです。身も蓋もない言い方ですが、金持ち用の学校と貧乏人用の学校ということです。
A型校の教員になれる、となると教員志願者は増えるのでしょうか。教職は夢のある職になるのでしょうか。A型校の教員は、スーパーティーチャーと呼ばれ、選ばれたエリートになれるのでしょうか。否定しきれない自分がいます。
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