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藤井竜王防衛でタイトル戦19連勝。

2023-11-13 04:06:24 | 身辺雑記


 藤井将棋が一段と強くなったことが見られた竜王戦だった。絶好調だった伊藤七段がまったく歯が立たなかった。藤井将棋が一段上がったと感じるのは、勝負所での踏み込みがよくなったと、偉そうに言えば言える。4戦目の壱日目封じ手前の一手の飛車捨ての強襲は、私は予測して居た一手だった。

 解説者も予測はしなかった手だ。AIは予測したのかどうか分からないが、多分最善手とはされなかった強手だ。飛車を捨てても、角と金を2枚取って角が成り込める。確かにその先は香車が取られて、玉頭を攻められるだろうが、かろうじてしのげるという読みをした。

 ユーチューブの封じ手以降の将棋分析番組をいくつか見たが、AI予測では藤井竜王不利な展開があれこれ分析されている。しかし、AIが予測する、伊藤挑戦者の最善手は極めて指しにくい手だ。例えその指しにくい手を正確な手順で指したとしても、大きな差がつくわけではない。当てた飛車きりは正解だ。

 ここは飛車切りだと素人だからの判断だと、私には思えた。藤井竜王はこういう場面では踏み込む事は無かった。今回の伊藤7段との竜王戦では、かなり攻撃的な将棋を見せた。苦しくしても巧みな受けでしのぎから攻めへと、転換して勝ちきっている。特に勝ちに入ったときの読みのすごさは、AIを完全に越えている。

 今回の4勝目の勝利は37手詰めを読み切っての、あり得ない終盤である。実際に指した37手だけを読み切ることだって、普通は難しい。その37手には、きわどい分岐点がいくつもある。まさかこれを読み切るのかという、想像を超えた藤井竜王である。

 藤井竜王は明らかに竜王戦を通して、将棋の世界を一段上げた。その前の永瀬王座に挑戦した王座戦は、明らかに作戦負けをしていた。永瀬王座の研究が藤井挑戦者を上回っていた。それは当然のことで、永瀬王座は多分藤井7冠が挑戦者に来ることを予測して、一年間かけて序盤のこま組みを研究していたのだ。

 そして、その研究をぶつけた。そして序盤でほとんど有利を築き、そのまま押し切るかと思える将棋にした。その永瀬王座の研究もすごいものだと思った。しかし、永瀬王座はこれはもう勝ちには行った、というところで失着を出した。構想通りに進んで、これで良しというところで失着が出た。

 藤井竜王が失着が出るように仕掛けたと、分析している人が多いいが、そうではないと思う。当たり前の手が、いよいよというところだからこそ、永瀬王座は指せなかったのだ。永瀬王座に失礼なので、将棋界の人はそうとは書かない。一人、加藤一二三元名人だけは、奨励会員なら誰だって間違えない手を間違えたと書いた。

 勝負というものはそういう世界なのだ。好事魔多し。勝てると思うときに心に魔が入り込み、自分でも信じがたいようなへまが出るのである。人間だから起きる。それは、人生をかけて用意周到に準備を重ねた永瀬王座だからこそ、最後のとどめで、間違いが繰り返されたのだ。

 この永瀬王座の研究の見事さは今後の藤井戦を研究するためには参考になるはずだ。何時の日か藤井8冠からタイトルを奪う人は、永瀬研究を参考にするはずだ。永瀬研究には藤井将棋の弱点が見付けられていたはずだ。多分自信を深めて、一番参考にしてまた挑戦するのは永瀬自身であろう。

 だから人間が指す将棋がおもしろいのだ。将棋の勝負の舞台は劇場なのだ。命がけの将棋にはそうした不思議な場面が現われるのだ。だから永瀬王座の失着は語り継がれて良いものなのだ。これは藤井8冠が仕掛けたようなものではない。永瀬王座の一人相撲の敗着なのだ。

 ただ、江戸時代に人気を博した一人相撲と言う芸能がある。上手投げというように、観客から声がかかると、見事に上手投げを打つ。今で言えばエアー相撲である。その中でも一番人気を取ったものが、負け相撲だったそうだ。上手投げと声がかかると、見事に戦い最後には大きく上手投げで敗れる相撲だ。

 たかが遊びである将棋だ。伝統文化とか言うが芸能ではないと思う。遊びで良いと思う。遊びをとことん追求した文化である。最近オリンピックにまでコンピュターゲームを入れようという話がある。ゲームが将棋のように、奥深い遊びになるだろうか。到底無理だと思う。

 一〇年間は藤井8冠にタイトル戦で勝てる人は現われないだろう。それぐらい、藤井8冠は実力差を付けてしまった。藤井将棋が竜王戦で圧倒的強さを見せたのは、藤井8冠に余裕が出来たからだ。全タイトルを制覇して、対局数が減ったのだ。

 将棋連盟の対極割りも、対局数が減り余裕が生まれて、最善のタイトル戦になるように日程を割り振る事ができるようになった。そのタイトル戦に集中できると言うことは、対極相手も限られる。永瀬、豊島、羽生、そしてあと2人ぐらいに限定されてくるだろう。

 こうなれば、今まで以上に準備を万端に出来る。永瀬戦のように、研究で後れを取ると言うことは少なくなるだろう。対局数が半減すれば、当然疲労も減る。21歳だから、連日の対極でも乗り切れたが、疲労も蓄積したことは確かだ。

 これからの藤井竜王の対局は、タイトル戦とトーナメント戦に限定される。これならば、8冠としての行事や取材が増えたとしても、今までよりは勝負に関しては楽になる。コロナで対局が減ったときに、藤井竜王は強くなった。これから対局が週一ぐらいになって、頃合いになる。

 今後タイトル防衛が続くという予測はそこにある。羽生7冠の場合はすぐに三浦9段にタイトルを奪われたが、藤井8冠はそういうことがなさそうに思うのだ。何しろ84%勝つのだ。藤井竜王に7戦して4勝、5戦して3勝できる棋士は想像が出来ない。 

 その意味では、トーナメント戦も昨年は4つすべてに優勝したのだが、こちらは、もしかしたら負けるかも知れない。16%は負けるのだから、トーナメント戦全勝と言うことは普通はない。20連勝しなければならないだろう。4つすべてに優勝したこと自体が普通にはあり得ないことなのだ。

 将棋の興味は誰が藤井竜王から誰がタイトルを奪うのかである。今のところ、永瀬九段と考えることが自然だ。将棋では勝っていたのだ。負けたのは勝負のあやに過ぎない。平常心これ道である。どんな場面でも普通でいられれば力が出る。
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