原田マハ氏の
「リボルバー」を読んで以来史実に基づくフィクションの面白さにハマってしまった。
「楽園のキャンバス」では、時間の流れを逆走してハラハラしつつ、先が知りたいような読み終えたくないようなフシギな感覚を与えてもらい、「たゆたえども沈まず」では、自分がテオになってしまったかのように感じさせられ、兄フィンセントに対しての愛情と歯痒さに翻弄させられてしまった。
原田マハ氏の本には、瞬時に本の中の世界のその時代に読者を連れ去る魔法が隠れているような気がする。
或いはわたしの読書の癖なのか。
「たゆたえども沈まず」を読み終えた時、ゴッホの強烈な印象の一枚の絵を思い出していた。
その絵は「レモン、マルメロ、梨、葡萄」
エネルギー溢れる黄色い静物画だ。
自ら木枠で額装し、その額までもが黄色で塗りたくられている。
絵に対する情熱を自分でも止められない、とでもいうような圧倒される作品だ。
目にしてから10年以上経つ今でもあのエネルギーは忘れられない。
哀しい最後を迎えたゴッホだが、彼の中にあった確かな生きるチカラを感じることが出来る一枚だからこそ、この本を読み終えた時にわたしの脳裏に浮かび上がってきたのかもしれない。
当時六年生だった次男を連れて観に行った「ゴッホ展」でふたりして目を見張ったことをよく覚えている。
丁度その頃、小林秀雄の「ゴッホの手紙」に出逢い深く感じ入っていたから相乗効果もあったのかもしれない。
いずれにしても目で観た実物の持つチカラってスゴイ。
改めてあの名著を読み返してみようかな。
フィンセント・ファン・ゴッホ「レモン、マルメロ、梨、葡萄」
(2010年11月自分の過去記事の写真より)