【WhereNext】店舗はいかにして成功するか – 失敗を教訓にして

【WhereNext】店舗はいかにして成功するか – 失敗を教訓にして

競争市場で優位に立とうとする小売企業の経営幹部にとって店舗の配置は重要ですが、ある人気ビデオチェーンの失敗に関する研究から、店舗の位置を決めるための示唆を得ることができます。

ブロックバスターは 2000 年に Netflix を 5000 万ドルで買収できたのに断ってしまったという話は、シリコンバレーのスタートアップ企業に関する伝承の中でもよく知られています。

当時、レンタルビデオチェーンは全盛期でしたが、一方で Netflix の DVD 郵送ビジネスは、店舗で販売されるのが一般的な市場で厳しい状況に置かれていました。

Netflix の創業者たちがブロックバスターの CEO と面会し、自分たちの価格を提示したとき、彼らは断られ、インターネットビジネスは長くは続かないと言われました。

そして 20 年後、9,000 店舗以上あったブロックバスターの店舗は、オレゴン州ベンドに 1 店舗を残すのみとなり、一方、ストリーミングメディアの先駆者である Netflix の時価総額は 2,400 億ドルを超えました。

これは、技術の急激な進歩と消費者の好みの変化の早さについての警告的な物語であり、不安定なビジネス環境では、ダビデとゴリアテが想像以上に素早く立場を入れ替えることもあるという現実を示しています。企業は、さまざまなツールを利用して、データ分析や地理空間解析などのツールを利用して、大きな敗北を被る前に変化に対応しようとしています。

小売業と位置情報

ブロックバスターは、他の数多くの米国ブランドと同じく、ストリップモールや市街地から消えていきました (ボーダーズ、ラジオシャック、トイザらスなどがそうでした)。2021 年初めには、アメリカで最後に残ったレンタルビデオチェーン「ファミリービデオ」も長い低迷の末、残りの店舗を閉鎖しました。

ビジネスリーダーやアナリストは、自社の業績を上げるために有益な教訓を求めて、成長戦略や事業拡大の成功事例に目を向けがちです。しかし、昨年『The Professional Geographer』誌に発表されたファミリービデオの低迷に関する研究論文では、ビジネスリーダーは、縮小や失敗の経験をした小売企業からも同じぐらい多くのことを学べると指摘しています。

この研究の著者は、ビジネスの健全性や店舗の存続には、立地条件や関連要因が重要な役割を果たすと主張しました。彼らの分析から、地域の人口密度、近隣のビジネス、店舗の大きさなど、しばしば無視される外的要因が、店舗が閉鎖に追い込まれるか維持に成功するかに顕著な影響を与える可能性があることを明らかにしました。

地理情報システム (GIS) を分析に利用する革新的な企業が増えています。地図上でロケーション データのパターンを可視化することで、目視や表計算ソフトでは捉えられないような情報を把握できます。ロケーション インテリジェンスと呼ばれるこの GIS のビジネスへの応用は、企業のリーダーが競争力を高め、リスクを減らし、機会を掴むのに有効です。

規模と人口が重要

北イリノイ大学のジョセフ・トコシュとシュウェイ・チェンは、論文でファミリービデオの閉店に関するデータを調べ、その要因を明らかにしました。このチェーンは五大湖地域で開業し、ブロックバスターの影響が少なかった場所や郊外に進出し、全盛期には 19 州とカナダに 700 店舗を構えていました。調査時点で、営業中の店舗は 537 店舗でした。

著者らは、建物のサイズや人口統計、他の小売店との距離などの要素を分析して、主に 3 つの見解に至りました。第一に、大型店舗 (5,500 平方フィート規模) は、小型店舗に比べて失敗しやすいということです。小規模な店舗は、ビデオレンタル市場の特性、シンプルな商品構成、百貨店のような市場環境がないことなどで、大きな利点を得ました。

次に、店舗周辺の人口密度が高いほど、事業がうまくいかない傾向が高いことが示されました。人口密度が高い地域では、消費者はさまざまな買い物の選択肢を持ち、ファミリービデオのような比較的小規模なブランドは、DVD も扱う大手スーパーや量販店に価格や品揃えで対抗しなければなりません。また、人口の少ない地方では、高速インターネットやストリーミング メディア サービスを利用できる設備が十分でない場合が多く、こうした地域ではこれまで実店舗型のビデオ店が繁盛してきたのです。

最後に、この調査は、店舗が同じ建物に入居する他の店舗と地域の物件の状態を選ぶことが、成功するかどうかの重要な要因の一つであると述べています。空き店舗が近くにあると店舗が閉鎖されるリスクが高まります。これはデータが示すとおり、大型ショッピング プラザ内の店舗の方が単独店舗よりも閉鎖されやすいという事実と合っています。空室が 1 つでもあるだけで、複合商業施設の魅力度が下がり、連鎖的な閉鎖の影響を与える可能性があります。

一方、ファミリービデオは飲食店との併設によって生き残る可能性が高まりました。ピザと映画の組み合わせはストリーミングの時代に入っても魅力を失いませんでした。ファミリービデオはマルコピザというピザチェーンと提携し、200 以上の店舗にスペースを貸し出しました。これにより、店舗は好調に業績を伸ばしました。他のビジネスに影響を与える空き店舗と同様に、人気レストランはストリップモール内の周辺のビジネスの成功に寄与することがあります。

ロケーション データ主導の戦略

このようにデータを地理的に視覚化することで、GIS は分析の質と洞察力を向上させるだけでなく、技術変革や市場の変動に直面する前にパターンや予測を明らかにすることもできます。GIS アナリストは、いずれの規模の事業所に対しても、スマートな地図を作成し、それぞれのビジネスケースに適した最善の戦略を導き出すことができます。

ファミリービデオのような小規模事業者は、近隣に空き店舗が出るリスクを回避するために、その場所をダークストアとして利用します。ダークストアは一般客には開かず、eコマースやオムニチャネル小売の需要に応える小型の配送センターとして活用できます。

あるいは、ビデオゲームや eスポーツの業界は、低人口地域とインターネット利用の少なさが関連しているという事実に基づいて市場戦略を立て、郊外や地方に注目する可能性があります。また、インターネット サービス プロバイダーもデジタル格差の縮小を目指して、同様の地域にビジネスチャンスを見出すかもしれません。

共同テナントが周辺の企業と連動するビジネスを促進するという見方は、有益なパートナーシップの機会を示すかもしれません。GIS アナリストは、小売チェーン内の各店舗の売上をマッピングし、近くにある他のビジネスと関わるパターンを抽出することができます。

ブロックバスターと Netflix の事例が如実に示しているように、未来を予測することは困難です。しかし、GIS などのツールを使いこなし、見えないパターンを発見することの重要性を認識している者にとっては、データには多くの洞察力が含まれています。

この記事は WhereNext のグローバル版に掲載されたものです。
原文: How Stores Can Thrive—By Learning from Failure