【WhereNext】より良いルーティングが、より良い医療をもたらす

【WhereNext】より良いルーティングが、より良い医療をもたらす

予防医療に重点を置いた健康プログラムを展開する米国のある医療サービス企業では、全国に 1000 人以上の診療看護師 (以下「NP」) やフィジシャン・アシスタント (以下「PA」) を抱え、会員の自宅に訪問診療しており、年間何万マイルも移動コストに費やしていました。

当時、同社が直面したのは古典的な「巡回セールスマン問題」の現代版でした。ビジネスにおいて、サービスや商品を地理的にできるだけ効率的に届けるにはどうしたらいいか、という問題です。この問題と同社が抱える数十万人の会員数をかけ合わせると、解決すべき切実な問題であると同時に、ロケーション インテリジェンスにとって最適な課題となります。

ルート最適化による会員と従業員の満足度向上

スタッフが毎日直面する訪問診療のルーティングの問題は、不便なだけでなく、貴重な時間を奪っていました。NP や PA は、予約間の移動で急かされることが多く、通常 10 時間の勤務でカバーできる症例数には限界がありました。

同社では、訪問診療のルーティングをよりスマートに行うことで、コスト削減以上の効果が得られる、またうまくいけば、スタッフが会員と接する時間を増やし、キャンセルを減らし、予約時間をより予測しやすくし、高い顧客満足度を達成することができると経営陣は考えました。

企業経営者にとっての真の問題は、優れた患者ケアや従業員体験をサポートするために、より効率的なネットワークを構築するかどうかではなく、どのように構築するかということでした。

データを利用して人間の体験をより良く変革する

同社は 2019 年晩夏にルート最適化のパイロット プログラムをテキサス州で実施しました。この取り組みでは、会員はもちろん、特に第一線の従事者である数十人の地元のスタッフのルート最適化に重点を置いていました。

分析チームとプログラム チームが協力して、GIS のルート最適化アルゴリズムにスケジュール データを送り込むプロセスを開発し、各会員をどのスタッフが訪問するかなど、最も効率的な予約配分およびルート生成するツールを作成しました。

このパイロット プログラムは、最前線で働く人々にとって効果は絶大でした。配車担当者は、最適化されたルート計画をスタッフのタブレットやスマートフォンに送信し、スタッフは、よりスマートなルートと運転時間の短縮という効率化の恩恵を受けることができました。

しかし、GIS は John Deere の販売店の場所から FedEx の飛行機のメンテナンス作業まで、全てを計画するのに優れていましたが、訪問診療のプログラムに関しては、従来のユースケースにはない特性がありました。分析チームは会員のケアに関して会員ごとに微妙に異なるニーズを満たすために、ルートの最適化に更なる柔軟性を求めました。

会員の中には、男性または女性のスタッフを希望する人もいます。また、前回と同じスタッフを希望する人や特定の言語を話すスタッフを希望する人もいます。このような前提条件から、このパイロット プログラムでは予約の約 25 パーセントが除外されていました。分析チームは、GIS アルゴリズムを使って残りの会員を分析することにしました。

これには、スタッフがどの予約を担当するかを、日付が近くなってから発表するように微調整する必要がありました。

「これにより、GIS アルゴリズムは、割り当てられた予約優先コード (APC) を確定する前に、すべてまたはほとんどの予約がスケジュールされるのを待つことができました」と、分析チームのデータ サイエンティスト兼 GIS アナリストは説明します。「そのようにすることで、アルゴリズムはスケジュールの調整やキャンセルに関するできるだけ多くの情報を収集し、意思決定を行うことができました。」

パイロット プログラムで、分析チームは提案されたルートに手動で確認作業を行いました。これは、どんなに微妙な会員の希望であっても見落とされないようにするためのものでした。しかし、将来的に規模を拡大するにはこのプロセスは自動化される必要があるでしょう。

地域で始めて全国に展開し勢いをつける

2020 年 2 月までに、ルート最適化のパイロットにより、プログラム マネージャーは 200 のルートに沿って 300 以上の予約を割り当て直し、GIS で最適化されたスケジュールは、わずか 5 ヶ月で 2,000 マイル以上、45 時間の運転時間を節約することができました。これは、変更したルート全体で運転時間が 10% 減少し、運転距離が 12% 減少したことになり、比較的小規模なグループにとってはかなりのコスト削減になりました。

地域のプログラム ディレクターによると、ルートが効率的になり、一日の流れがスムーズになると、すでに会員から高い評価を得ているプログラムに対しても、スタッフがさらに高いレベルのサービスを提供できるようになるそうです。到着予定時刻を常に信頼し、急ぐことなく働くスタッフを見ることができれば、会員の 1 日に真の違いが生まれます。また、スタッフが単に予約を取るだけでなく、予約を最大限に活用することに集中できるようになります。

NA や PA は、訪問までの経路を短縮することで、節約した時間を会員のケアに再利用できるとディレクターは述べています。”彼らは、質の高い検査、指導、会員のあらゆるニーズに対応するために、その時間を会員と過ごすことができます。”

それは、医療従事者が手薄になっている現在、より良い労働環境をサポートするものです。ディレクターの言葉を借りれば、最適化プログラムは、”従業員がより良いワークライフバランスを保ち、その時間を会員に還元するための方法 “なのです。

GIS を全国の数千人の臨床医と数百万人の予約に適用することで、節約と改善をどこまで拡大できるかということです。

この記事は WhereNext のグローバル版に掲載されたものです。
原文: Better Routing Leads to Better Healthcare