噺家には誰しも、自分なりの得意ネタってのがあるもんです。得意ネタがあるって事は、苦手なネタもあるって事（こ）ッて。あたしなんざ持ちネタの殆どが苦手なネタなんですが、その中でも特にこれはってのが『蟇（がま）の油』。そう、蟇の油売りの口上を朗々と言い立てる、お馴染みの演目です。二ツ目の終わりの頃か真打になりたてだったか、独演会で演（や）ったんです。ところがね、口上の途中で言葉が出てこなくなっちゃった。仕方ない、一からやり直したんですが同じ所でまた絶句。何度かやり直して結局出来なくて……もうあのネタはトラウマです。でも久々にリベンジしてみよっかな。ん～……やっぱ怖いなぁ。　

　フードコートって所が好きなんですよ。なんといいますか、あの、ざっかけない感じが好きなんですね。昔、東京は池袋の地下街に、すなっくらんどってフードコートがありました。そば、うどん、ラーメン、焼きそば、カレー、ピラフ、おにぎり、寿司……立ち食いでね、言っちゃ悪いが小汚くって、フードコートなんて洒落た呼び方が似合わない、立ち食いのパラダイスだったのです。前座から二ツ目の頃、よく通ったな。串刺し肉団子のフライをおかずに、おにぎりを食べるのが好きでした。カウンターにでっかいやかんが置いてあってね、湯呑みに茶を注いでガブ飲みして……懐かしい思い出であります。　

　今週のお題はパチンコだよ、パチンコ。懐かしいなぁ、パチンコ。今はまるで打たなくなっちまったけど、二ツ目の頃は毎日打ってましたよ。軽い依存症だったんじゃないのかな。短い期間、某パチンコ雑誌に、駄文を連載させて頂いてた事もありました。
　えー、今回ですね、パチンコのネオンのパの字が消えてて……という句が、多く寄せられました。それで思い出したんですが、ずいぶん昔、とある地方都市の駅前で見かけた店に、パチンコセンター金の玉ってのがありました。
　……えーっと、あの……失礼しました。
　……では、のらりくらりと始めましょうか。　

　札幌のちくわパンを知ったのは、いつの頃でしたでしょうか。
　衝撃でした。だって、ちくわのパンですぜ。試しに買って、食べてみました。大手のメーカーが作った、駅の売店で買ったそれは、ふぅんこんなもんか……と、正直、そんな感じでした。でもね、札幌の友人が、いやいや札幌のちくわパンは、これだよ！ってのを食べさせてくれて、それからオイラ、そこのちくわパンの虜だよ！　そのお店には取材にも行かせて頂いて、嬉しいひとときを過ごしました。それとは別に、最近、豊橋でバカウマのちくわも食べさせてもらって、もう俺は幸せだよ。
　今週のお題は、のらりくらりとちくわだぜ。　

　地方の仕事に伺って、ずいぶんと年季の入った、地元のホテルに泊まらせて頂きますとね、ごく稀に、トイレの便座に座ってちょうど横の壁に、小さな灰皿が据えつけてある事がある。うわ、今でもあるんだ……！
　喫煙OKの喫茶店とかラーメン屋、ふらりと入るとテーブルの上に、コインを入れると占いだかおみくじだかが出てくる灰皿が、古ぼけて置いてある事がある。うわうわ、今でもあるんだ……！
　もう煙草やめたから関係ないんですけどね、現存する昭和の風景が、ちょっと嬉しい。だけどそのうち、灰皿そのものが、世間から消える日が来るのかもしれませんね……。　

　私事で恐縮ですが、おかげさまで禁煙して三か月が経ちました。禁煙って三か月が一つのヤマだって言いますからね、いい塩梅に続けられるんじゃないかな。酒飲んでも吸いたいって思わなくなりましたしね。
　酒は飲んでます。毎日じゃありません、月に十日くらいじゃないかしら。若い頃は毎日のように飲んでましたけどね。よく二日酔いにもなりました。酒臭い匂いをごまかすために、牛乳でうがいしてから出勤したりね。人に教わってやってたんだけど、効果あったのかな、牛乳のうがいって。ずいぶん昔、サラリーマン時代の話です。
　ではでは今週も、のらりくらりと。　

　出囃子が鳴って、高座に上がる。座布団に座って、頭を下げる。頭を上げて、客席を見る。えー、いっぱいのお運びで、ありがたく御礼を申し上げます。……とは言うよ。そりゃ、そうは言うけどさ。
　全然、いっぱいじゃねえじゃん！
　そういう事は、よくあります。しょっちゅうです。のべつです。でもね、必ずしも嫌じゃないんです。そりゃ、お客様いっぱいの方が嬉しいに決まってます。収入にも関わってきますし。けど、そこそこ空いてる客席の、余裕のある空気も良いもので。お客様がゆったり聴いてくださって、いい雰囲気になるんです。皆さん、寄席にお越しくださいね。　

　今週のお題はリボンであります。
　堀ちえみだったり桜田淳子だったり少女マンガだったりバッテンボーだったりします。
　まぁあたしゃ、リボンって物には縁がありませんな。頭に付ける訳でもないしね。
　あ、でも、商売柄、お客様からちょいちょい頂き物をしますが、その頂き物の箱にリボンがかかってたりって事はありますね。あのリボン、なんとなく捨てらんなくて、何かに使うような気がして、しばらくとっといたりするんだよね。絶対使わないんだけど。結局、捨てるんだけど。貧乏性なんだねどうも。
　そんな訳で、お題はリボンであります。のらりくらりと、今週も始めますよ。　

「ろくぶて」と言ってた頃はもう来ない
　　　　　（福島県 遠藤剛 65歳）
　お題は、手袋。今週も、たくさんの投句を頂きました。いやー、この「ろくぶて」関係の句がね、とにかく多かったっすよ。もうね、葉書読んでて、三枚に一枚は「ろくぶて」の句があったんじゃなかろうかと。
「てぶくろ、さかさまから言って！」
「ろくぶて」
　パシ、パシ、パシ、パシ、パシ、パシ！
「なにすんだよー！」
「だって、六ぶて、って言ったじゃーん！」
　子供の頃、やりましたよねぇ。僕らの世代だけじゃないんだな、幅広い年代の皆様からの投句を頂きましたからね。懐かしい、無邪気なあの頃には戻れません。汚れっちまった悲しみに今日も小雪の降りかかる。手袋、手袋。　

　えー、今さらながらではございますが、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
　てな事言ってるうちに、あっという間に成人式ですな。俺、成人式なんて、もう四十年以上前だよ。もっとも、式には出なかったんだけどね。当時、日大の落研の現役だったんですけど、とある街の成人式で一席って話がうちのサークルに来て、行きたい行きたい俺行きますって、よその街の成人式に、一席喋りに行ってたんですわ。だから自分の成人式には出てないの。いま思えば、出ときゃよかったなぁ。まぁ後悔しても仕方ない、今週ものらりくらりと始めますか。