林真理子の記事:週刊文春デジタル : 週刊文春デジタル (週刊文春デジタル) - ニコニコチャンネル:社会・言論
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

記事 49件
  • 夜ふけのなわとび 第1881回 林真理子「言葉と数字について」

    2025-03-13 05:00  
     曽野綾子さんが亡くなった。
     曽野さんとは、日本文藝家協会の理事会などでお会いする機会があったが、そう親しくさせていただいたわけではない。
     元本屋の娘の私は、田辺聖子先生や瀬戸内寂聴先生なんかには、狎(な)れ狎れしく甘えさせていただいたが、曽野先生はちょっと近寄りがたい雰囲気があった。
     背が高く美人で、いかにも東京山の手のお嬢さまという雰囲気。しかもカトリック。美智子上皇后さまと仲よしと聞いて、なるほどと思う方であった。 
  • 夜ふけのなわとび 第1880回 林真理子「7の月」

    2025-03-06 05:00  
     春は突然やってきたような気配を見せて、そしてすぐに去っていった。
     この2、3日は本当に寒い。
     朝、私はミルク粥をつくった。これは雑誌のエッセイに出ていたもの。冬の北欧ではよく食べられているものらしい。
     お米を4倍のお水で煮て、あと同量の牛乳で煮つめていく。最後に砂糖をぱらつかせて出来上がり。体がしんから温まり、やみつきになるおいしさである。
     温かい、といえば、私はこの頃お酒を飲む時、和食のお店だったら熱燗を頼むことが多い。何も無理にバカ高くなったワインを、お鮨屋や割烹で飲むことはないと思うようになったのだ。
     こう考える友人は増えてきて、みんな日本酒か、そうでなかったら焼酎を頼む。中華だったら安い紹興酒にする。
     お酒はおいしい。一緒に飲む友人たちと、あれやこれやバカ話をするのも本当に楽しい。
     そしてこんな幸せが、いったいいつまで続くのかふと不安になる。 
  • 夜ふけのなわとび 第1879回 林真理子「売れる本」

    2025-02-27 05:00  
     先週歌舞伎座で、蔦屋重三郎を主人公にしたお芝居を見たと書いた。
     大河ドラマの方も、毎週楽しみに見ている。吉原がこれほど忠実にたんねんに描かれたドラマはなかったのではなかろうか。こんなに面白いのに、視聴率がイマひとつなのは、
    「子どもに見せたくない親がいるから」
     という説がある。
     確かに子どもに、
    「このオネエさんたち、いったい何をしてるの?」
     と聞かれたら言葉に窮するに違いない。 
  • 夜ふけのなわとび 第1878回 林真理子「私は写楽」

    2025-02-20 05:00  
     コロナの出口が見えかけた頃、ある人が言った。
    「これで日本のクラシックは終わるよ」
     長年支えてきた中高年たちに、会場に行かない習慣がついてしまった。もう元に戻ることはないだろうと言うのだ。
     しかしここのところ、私が行ったコンサートやオペラはどこもほぼ満員であった。若い人もいるが、やはり主流はある程度年がいった人たちである。
     歌舞伎も大盛況で本当に嬉しい。 
  • 夜ふけのなわとび 第1877回 林真理子「手土産」

    2025-02-13 05:00  
     私のように会食が多いと、悩むのは手土産のことだ。
     それが必要かどうか、まず考える。ワリカンで食べることになっているのだから、手ぶらでいいのではないかと判断していくと、よく裏切られる。
    「私だけ申しわけないです……」
     それではと人数分用意していくと、持ってきたのは私だけ。
    「そんなに気を遣わなくてもいいのに」
     あれ、という感じだ。
     さらに困るのは、はっきりとご招待を受けている場合だ。 
  • 林真理子×今村翔吾 皇族フェチと戦国フェチの矜持《『皇后は闘うことにした』刊行記念対談》

    2025-02-06 05:00  
     小説が書けない……悩む林さんが向き合った、理不尽に抗う皇族たち。書店経営など多忙な今村さんが感じた、戦国の技術官僚たちの生き方。歴史小説の想像力、醍醐味を語る特別対談。 
  • 夜ふけのなわとび 第1876回 林真理子「記者会見って」

    2025-02-06 05:00  
     混沌を極めるフジテレビ問題。
     あの記者会見の始まりを、日大本部で何人かで見た。
    「とても冷静には見られませんよね」
     常務理事の一人がつぶやく。
    「これはおととしのうちとそっくり」
    「本当にそうだよねー。私はトラウマになってる」
     と私。
    「あれはやった人でないとわからないよ。もう吊るし上げにあうわけだからね」
     最初の質問者が喧嘩ごしで、
    「アンター、嘘ついて。学生に謝りなさい」
     と怒鳴りこちらはびっくりした。その質問者はユーチューバーで、こちらを怒らせれば視聴者が増え、投げ銭が多くなる仕掛けと聞きさらに驚いた。 
  • 夜ふけのなわとび 第1875回 林真理子「SNSしかしない人生って…」

    2025-01-30 05:00  
     日大の理事長にならなければ、ずっといい関係だったのに、と思う知り合いは何人かいる。
     人間ではないけれど、フジテレビがその最たるもの。もう憶えている人も少ないと思うが、デビューしてすぐの頃、私はフジテレビのキャンペーンキャラクターをしていた。
     時はあたかもフジテレビが黄金期を迎えようとしていた頃。
    「おもしろロマン」というキャッチフレーズで、いいとも青年隊と踊り歌っていた私。
     落ち着いて作家になってからは、十七年間番組審議委員をさせていただいた。いろいろなイベントに呼んでもらっていたし、社内に親しい人は何人かいる。自分でも「フジの準社員」として、ずっと視聴率やいろんなことを気にかけてきたつもり。
     それが理事長になってからは一変。大学や私個人への攻撃が始まったのである。不祥事に伴う一連の報道の後もそれは続き、その執拗さと歪曲ぶりは異様であった。 
  • 夜ふけのなわとび 第1874回 林真理子「正月の冒険」

    2025-01-23 05:00  
     暮れに、親しくさせてもらっている相撲部屋のお餅つきに行った。
     お相撲さんのついたお餅は、粘り気が強く本当においしい。アンコや納豆、キナコと三種類頬ばったうえ、大鍋のちゃんこ汁もいただき本当にお腹いっぱい。
     帰りにのし餅を二枚いただいた。
     帰ってそれを切りながら、しばし思い出にふける私。子どもの頃のお正月、どうしてあんなにたくさんのお餅を食べたんだろう。三ヶ日、家族が食べる数の切り餅をとりに行くのは私の役目であった。父親が六つ、母が四つ、私と弟が三つ。うちの中でいちばん寒い、階段下のダンボールの中、それをとって火鉢の網の上に置く。やがてぷっくりふくれていく切り餅は、今よりもはるかに大きかった。 
  • 夜ふけのなわとび 第1873回 林真理子「沖縄に行こう」

    2025-01-16 05:00  
     年の瀬も迫った頃、知り合いからこんなLINEが届いた。
    「ハヤシさん、お元気ですか。先日沖縄へ行きA子さんにいろいろなパワースポットに連れていっていただきました。とてもよかったです」
     あれ、と私。
    「A子さんご存知なの?」
    「ハヤシさんにご紹介いただきましたけど」
     いつも私はそうしたことを忘れてしまう。
    「本当にいろいろなことがあったのですが、A子さんと沖縄に救われたような思いです」
     それならばよかった。その知り合いは、とてもピュアで感じのいい女性である。世間的に大変な仕事をしている。彼女なら、A子さんもひと肌脱ごうという気持ちになったに違いない。