KZ & Angelears Libra (ハイレゾ版)

こんにちは。今回は 「KZ × Angelears Libra (High resolution version)」です。低価格中華イヤホンのブランドとしてお馴染み「KZ ACOUSTICS」と「Angelears Audio」とのコラボモデルとなります。なお同製品は「Balanced version(通常版)」と「High resolution version(ハイレゾ版)」が存在しており、今回は「ハイレゾ版」のほうでのレビューとなります。

■ 製品概要と購入方法について

私のブログでは毎度おなじみ低価格中華イヤホンブランド「KZ(KZ ACOUSTICS)」です。今回の「KZ × Angelears Libra」はAngelears Audioとのコラボでリリースされている20ドル以下の1DD構成の低価格モデル。「通常版」と「ハイレゾ版」の2種類のバージョンが販売されています。
KZ & Angelears LibraKZ & Angelears Libra

KZ × Angelears Libra」の本体は、樹脂製シェルにワイドバンドのダイナミックドライバーをシングルで搭載。フェイス部分には軽量の金属カバーで装飾されており、ベント(空気孔)により圧力を調整しています。
KZ & Angelears LibraKZ & Angelears Libra
KZ × Angelears Libra」の2種類のエディションは「通常版(Balanced version)」がトラディショナルなV字カーブを描くドンシャリ傾向、「ハイレゾ版(High resolution version)」はハーマンターゲットを意識したニュートラルバランスにチューニングされています。
KZ & Angelears LibraKZ & Angelears Libra

KZ × Angelears Libra」の購入は、AliExpressの取扱いセラーにて。
価格は「通常版」が12.99ドル~、「ハイレゾ版」が14.99ドル~です。
AliExpress(Angeldac Audio Store): KZ & Angelears Libra


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Angeldac Audio Store より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

KZ × Angelears Libra」のパッケージは通常のKZの低価格イヤホンよりさらにコンパクトなパッケージ。ただ付属品などは通常のKZと同様なので、通常版のこのサイズのボックスでも問題ないのかもしれませんね。今回は「ハイレゾ版」で届きました。判別は裏面のチェックにて。
KZ & Angelears Libra (ハイレゾ版)KZ & Angelears Libra (ハイレゾ版)

パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、説明書、オマケのスクラッチカード。スクラッチカードはコラボ版ということでの付属だそうです。
KZ & Angelears Libra (ハイレゾ版)KZ & Angelears Libra (ハイレゾ版)

本体は通常のKZ製品よりコンパクトで、フェイス部分のサイズ感は最近のCastorに近い感じ。ただ全体が樹脂製(フェイス部分に薄い金属カバーで装飾しているのみ)のためより厚みを抑えてコンパクトに仕上がっていますね。
KZ & Angelears Libra (ハイレゾ版)KZ & Angelears Libra (ハイレゾ版)

円安の状況下でも2千円ちょっとで購入できるイヤホンということを考慮すれば十分にしっかりした仕上がりと言えるでしょう。コンパクトかつ軽量なぶん装着性もより向上している印象です。
KZ & Angelears Libra (ハイレゾ版)KZ & Angelears Libra (ハイレゾ版)
ケーブルは最近のKZの透明被膜の銀メッキ線タイプ、イヤーピースは白色タイプが付属します。この辺を適時交換していくのもKZの楽しみ方としてはすっかり定着していますね。


■ サウンドインプレッション

KZ & Angelears Libra (ハイレゾ版)KZ × Angelears Libra (ハイレゾ版)」の音質傾向は若干中高域寄りでフラット方向の弱ドンシャリ。
KZはパワフルな低域を持つ派手めのドンシャリ傾向と最近では「U-shape」バランスと記載している文字通りU字方向のサウンドバランス(以前HBBコラボモデルを出した際に参考にしたHBB氏のターゲットカーブを元にさらに中音域を強化して独自のチューニングとした模様)といった傾向が特徴的ですが、「KZ × Angelears Libra (ハイレゾ版)」についてはこれらの製品とは異なるチューニングで作られているようです。
というのも今回はAngelearsコラボモデルと言うことで、よりセラー(Angelears)側のニーズを反映して、特定の人気モデルの傾向をターゲットに「通常版(Balanced version)」と「ハイレゾ版(High resolution version)」の音作りをしているようですね。「KZ × Angelears Libra」の製品ページの記述を見ると、「通常版」は40ドル程度のハーマンターゲット寄りで弱ドンシャリ傾向の製品を参考にしており、今回レビューしている「ハイレゾ版」は89ドル程度のニュートラル傾向のイヤホンを想定ターゲットにしているようです。それぞれ具体的な製品名は不明ですが、個人的には「ハイレゾ版」については「HZSOUND HeartMirror Pro」をちょっと意識してるかな、と思いました。

KZ & Angelears Libra (ハイレゾ版)そのため、癖のないフラットな印象のボーカル域とより鮮やかさを持ちつつ刺激を抑えた中高域および高域、そして通常のKZよりかなり控えめな印象を受けつつも締まりのある低域と「HeartMirror Pro」ぽさのあるニュートラルチューニングとなっています。ただ「KZ × Angelears Libra」がワイドレンジのドライバーを使用しているとはいえ、ドライバー自体のパフォーマンスは価格差なりに違いがあるため、メリハリを抑えたことで多少鮮明さや解像感が損なわれている印象を持つかも知れませんね。もっともより情報量の多い銀メッキ線などにリケーブルしてパワフルな再生環境で鳴らすことで、V字方向のメリハリが増すためポテンシャルはそれなりに高そうという印象もありました。

KZ × Angelears Libra (ハイレゾ版)」の高域はKZらしい寒色系のスッキリした鮮明さを持ちつつ、刺さりなどをコントロールした効きやすい印象を持ちます。価格設定を考えれば十分に明瞭な高域ですが、リケーブルなどにより解像感や分離はより向上します。ただ相対的に中高域寄りのバランスのため、高域成分の多いアニソンなどではやや腰高で主張が強めに感じるかもしれません。気になる場合はOCCなど銅線タイプや合金系のケーブルを合わせる方が良さそうです。
KZ & Angelears Libra (ハイレゾ版)中音域はフラット傾向で明瞭ながらややあっさりした印象もあります。バランスとしてはU字方向に近いためボーカル域は多少前傾しています。音場は比較的に広く、フェイス部分のベントにより音抜けも良いため窮屈さはありません。リケーブルにより分離感は向上しますが、定位など正確な描写という点では価格なりの粗さも若干あり、低価格でのニュートラル傾向の難しさもちょっと感じさせます。それでも全体としては十分によくまとまっていると思います。
低域は全体としてはやや控えめで、小型のオーディオアダプターなどでは結構物足りなく感じるかもしれません。ただ付属ケーブルでも駆動力のあるDAPやアンプなどではミッドベースを中心に十分な存在感を感じる事はできます。締まりは良く直線的で中高域との分離は良好です。重低音は標準ケーブルではあまり深さを感じにくいかもしれません。リケーブルで多少の変化はありますが、この辺を意識される場合は「通常版(Balanced version)」を選択した方が良いでしょう。



■ まとめ

KZ & Angelears Libra (ハイレゾ版)というわけで、結構久しぶりのKZでしたが、15ドル前後の価格設定で粗の出やすいニュートラルなサウンドバランスで仕上げているわりに想像以上にちゃんとしたサウンドに仕上がっていて感心しました。ちゃんとKZも進化しているんですね。「KZ × Angelears Libra」についてはおそらく多くのユーザーには「通常版」のほうが好印象に感じるのでは、という気がします。ただ「ハイレゾ版」もいろいろ追い込んでいくと楽しそうですので、素材として楽しみたい方には良い選択肢だと思います。
最近は私のブログではいろいろ依頼や購入イヤホンが「積み」まくってる関係で、KZなどの低価格中華イヤホンのレビュー頻度が相対的に減っているのですが、いちおう新製品はコンスタントに購入をしています。いろいろ立て込んでおりレビューがつい後回しになりがちですが(そのため結果的に没ネタも多かったり)そのうちに、改めてちゃんとレビューしようかな、という動機づけに感じる位には良かったと思います。


ちなみに以下は余談ですが、市場では今回の「KZ × Angelears Libra」をはじめ、より低価格で品質の向上した製品が多く流通し、よりライトなユーザーや、学生さんなどあまり多くの資金をかけられない方の購買層も非常に大きく拡大しているようです。市場の拡大自体はとても良いことだと思いますが、いっぽうで「それを10ドル台の中華に求めるのはちょっと・・・」みたいなやりとりを見かけることも増えている気がします。
多くの低価格中華イヤホンは流通経費を大幅に圧縮していますので、日本の店頭で購入できる同価格帯の製品より圧倒的に原価率は高い(≓性能面でお得)なのは容易に想像できると思いますが、競争激化で矢継ぎ早に新製品を投入する必要があるため、より短期間で開発し、損益分岐点をギリギリ超える程度の生産数で部品を確保して生産する方式をとります。そのため店頭流通品のように長期間で製造ラインを押さえたり同じ部品を調達し続ける(=部品のサプライヤーと長期購入の契約を結ぶ)ことが難しくなります。このような理由で、たまに「何故そうなった」みたいな「ハズレ」な製品が出てくることがあるかも知れませんし、売れすぎて再生産しようにも部品確保の関係で「ロット差」が生まれる可能性もあります。それでも次々と新製品をリリースし続けないと成立しないビジネスモデルが低価格の中華イヤホンといえるでしょう。そんななかで、もし気に入った製品を見つけることができたら、彼らのビジネスに思いを馳せて(できれば買って応援して)みるのもマニアとしての楽しみのひとつなのでは、と思います(^^)。