こんにちは。今回は 「FiiO JD7」です。中国の大手オーディオブランド「FiiO」のシングルダイナミック構成のセミオープン型モデルです。位置づけとしては同社のサブブランド「JadeAudio」のシリーズになりますが、最近ではFiiOブランドとほぼ一体化しておりラインナップのひとつになっているようですね。「FA7s」そっくりの金属ハウジングの外観も驚きですが、100ドル以下でハーマンターゲット寄りのサウンドを採用し、手堅くまとめる実力の高さもしっかり感じる仕上がりなど、とても興味深いイヤホンですね。
■ 製品の概要について
「FiiO JD7」は、中国の大手オーディオブランド「FiiO」の「JadeAudio」ラインの新モデルです。「JadeAudio」は当初FiiOがネット直販専用につくったサブブランドでしたが、現在では同社のエントリーグレードのラインナップに統合されています。「JadeAudio」ブランドの製品としては「EA3」(現在は「FiiO FH1s」に移行)、「EA1」(同じく「FiiO FD1」に移行)、があり、「FiiO」本体のラインナップに統合後には「JH3」「JD3」、オーディオアダプターの「KAシリーズ」が同ラインに含まれます。
今回の「FiiO JD7」はこれらの経緯から直接的には「FD1」(あるいは「JadeAudio EA1」)の上位モデルで、「FD3/FD3 Pro」と同様のポジションに位置するグレードの製品になります。「FH3」と同様の円筒型の金属製シェルデザインを採用しますが、「FiiO JD7」ではセミオープン型の構造を採用。ドライバーも「半結晶ポリマー+PU振動版・デュアル磁気回路ダイナミックドライバー」を搭載し、密閉型でDLC振動板の「FH3」とは異なる設計・仕様となっています。
「FiiO JD7」のドライバーは10mmサイズのシングルダイナミック構成で、半結晶ポリマー(LCP)ドームにPU(ポリウレタン)サスペンションを組み合わせた直径10mmの「複合素材振動版」を採用しています。剛性が高く応答性の良さと低歪みのポリマー素材と、艶やかな響きを加えるポリウレタン素材を組み合わせることにより深みと歯切れの良さを実現しています。また二重磁気回路を使用することで磁束密度を高め、レスポンスを高めています。
またハウジング設計には二重構造を採用し、内部の空気圧を段階的に最適化することで制振性を高めクリーンなサウンドを実現。さらにセミオープン型構造を採用することでダイナミックレンジの広い自然なサウンドを実現しています。
「FiiO JD7」は日本国内モデルではアマゾンほかFiiO取扱いの主要な専門店で購入可能。海外モデル(「JadeAudio」モデル)はHiFiGoなど取扱いのある一部のショップで購入可能です。海外モデル(「JadeAudio」モデル)の価格は77.99ドル、国内モデルは16,500円前後で販売されています。
HiFiGo: FiiO Jade Audio JD7
AliExpress(BrightAudio Store): FiiO JadeAudio JD7
Amazon.co.jp(国内正規品): FiiO JD7
「FiiO JD7」のパッケージはFiiOのお馴染みのハードケース内に本体、ケーブル、イヤーピースなどがまとめられています。「JH3」などと同様で通常のFiiO製品とは区別され、より簡易的な包装になっていますね。パッケージの側面には「FiiO」と「JadeAudio」の2種類のロゴがそれぞれ記載されています。
パッケージな用法は、本体、ケーブル、シリコンイヤーピース2種類(白色、黒色、それぞれS/M/Lサイズ)、ウレタンイヤーピース1ペア、MMCXリムーブ用金具、ハードケース、説明書。
本体は「316L ステンレス」を使用した金属製シェルで、粉末冶金工法により製造されているとのこと。比較的コンパクトな円筒形のデザインで耳への収まりも良い印象です。フェイス部分はスリット上のベント(空気孔)が三方向に伸びており、シンプルながらクールなイメージのデザインになっています。
ちなみに、「FiiO JD7」のシェル形状は同社の6BAモデル「FiiO FA7s」とほぼそっくりです。というか外装部分はそのまま流用しているようにも思えます。とはいえ、「FiiO JD7」はフェイス部分のベントを使用したセミオープン型構造だったりするわけで、果たして最初はどちらを先に作ったの?という素朴な疑問も浮かんでくるわけですが(謎)。いっぽうでケーブルはブラウンカラーのケーブルで「FH3」など同価格帯のモデルと同様のタイプになっています。
イヤーピースは通常の白色タイプのほか、超薄型ソフトイヤーピースの「HS18」が各サイズ同梱されます。通常はこの「HS18」イヤーピースを利用するのが推奨と思われます。もし「HS18」が耳に合わない場合はよりフィット感を得られるものに交換することが望ましいでしょう。定番のJVC「スパイラルドット」や「AET07」(互換品を含む)、ソフトシリコンタイプでは「SpinFit CP100+」や最近では「TRN T-Eartips」などもお勧めです。私の場合、最終的には「HS18」ではなく「TRN T-Eartips」を選択しました。
■ サウンドインプレッション
「FiiO JD7」の音質傾向は非常にバランスの良い、ニュートラルな印象の弱ドンシャリ。メーカーサイトでもハーマンターゲットカーブを意識したチューニングであることが明記されており、聴きやすく、多くの方が好感しやすいサウンドに仕上がっています。ちなみにハーマンターゲットを意識したチューニングを行うこと自体は最近のイヤホンでは非常に多く、私のレビューでも「毎度おなじみ」と書いても支障ないほど出てくるようになりましたが、従来のFiiO製品ではほぼ採用されてきませんでした。実際ほぼ同グレードに位置する「FD3/FD3 Pro」は上位モデルの「FD5」を踏襲した量感のある深く重い低域が特徴的なドンシャリ傾向で、ハーマンターゲットを採油推し、セミオープン型の構造でどちらかというと中高域寄りの「FiiO JD7」とはアプローチが全く異なります。いっぽうで特に女性ボーカルの高音などスッキリした印象があり、過度に硬質になりすぎない範囲で明瞭感とキレの良さを感じさせるサウンドです。
「FiiO JD7」の高域は、明瞭でスッキリした音を慣らしつつ、自然な印象で聴きやすくまとめられています。煌びやかさや艶感を持ちつつ刺さりや歯擦音などはコントロールされており、適度な滑らかさがあります。質感においてFiiOの上位モデルと相応の差はありますが、シンバル音も適度な解像感がありこの価格帯としては比較的まとまっていると思います。
中音域はニュートラルで癖の無い音を鳴らします。セミオープン型の構造を採用するため、抜け感のある中高域と音場感を実現し、付属のケーブル、イヤーピースでも十分な質感を持ちます。ただポテンシャルはより高く、リケーブルやさらにフィット感のあるイヤーピースへの交換等でより良い変化を得ることもできるようです。凹むこと無く鳴り、ボーカル域も前面で定位し、一定の主張があります。
一般的にこのクラスの製品でハーマンターゲットを採用する場合、質感に粗さが出やすい側面もありますが、「FiiO JD7」はかなり善戦しており、解像感、分離の良さ、そして適度な滑らかさと1音1音の粒立ちの良さを持っています。手持ちの「FiiO FD5」あたりのとの比較であれば、そこまで大きな質の差は感じないレベルで仕上がっているかもしれませんね。中低域は厚みはそれほど感じないものの、エネルギッシュかつスピード感があり、見通しも良いため、それほど不満を感じることはないでしょう。
低域は適度な温かみがあり、自然な印象で鳴ります。ミッドベースは十分な量感と力強さがあります。適度な締まりとスピード感があり、直線的に鳴るため、籠もるような印象はありません。いっぽうで過度に硬質にはならず、ベースは適度な弾力があり、キックは質量を感じさせます。重低音はセミオープン型ということもあり多少抜ける感じもありますが、イヤーピースをしっかりフィットさせることでより深さと密度感が増します。ニュートラルなバランスの低域として個人的にはよくまとまっていると思います。
■ まとめ
というわけで、「FiiO JD7」はアンダー100ドル級のイヤホンとしては非常に良くできていると思います。何というか、「普段はやらないけど、その気になればMoondropみたいなサウンドも80ドルでちゃんと作れるよ」とか言っているような、FiiOの実力を改めて垣間見たような気がします。要するにいちいち手堅いんですよね(褒め言葉)。
オールランドに使える手頃なイヤホンを探している方には強力な選択肢のひとつになるでしょう。あと、同じFiiOでもそれこそ「FD7」などの上位モデルでやっているような音作りの一端を手が届く価格で楽しみたい、あるいは普段使いで持ち歩きたいという方にも最適です。リケーブルなどでもより解像感や音場感を向上させることはできますので、かなり楽しめるイヤホンと言えるでしょう。惜しむらくは国内版の価格設定が海外より例によって高めな点で、これで海外版と同様の1万円そこそこの価格で購入できれば、さらにお勧め度はアップできるのに、というのはやはりありますね。。。(^^;)。
「FiiO JD7」は、中国の大手オーディオブランド「FiiO」の「JadeAudio」ラインの新モデルです。「JadeAudio」は当初FiiOがネット直販専用につくったサブブランドでしたが、現在では同社のエントリーグレードのラインナップに統合されています。「JadeAudio」ブランドの製品としては「EA3」(現在は「FiiO FH1s」に移行)、「EA1」(同じく「FiiO FD1」に移行)、があり、「FiiO」本体のラインナップに統合後には「JH3」「JD3」、オーディオアダプターの「KAシリーズ」が同ラインに含まれます。
今回の「FiiO JD7」はこれらの経緯から直接的には「FD1」(あるいは「JadeAudio EA1」)の上位モデルで、「FD3/FD3 Pro」と同様のポジションに位置するグレードの製品になります。「FH3」と同様の円筒型の金属製シェルデザインを採用しますが、「FiiO JD7」ではセミオープン型の構造を採用。ドライバーも「半結晶ポリマー+PU振動版・デュアル磁気回路ダイナミックドライバー」を搭載し、密閉型でDLC振動板の「FH3」とは異なる設計・仕様となっています。
「FiiO JD7」のドライバーは10mmサイズのシングルダイナミック構成で、半結晶ポリマー(LCP)ドームにPU(ポリウレタン)サスペンションを組み合わせた直径10mmの「複合素材振動版」を採用しています。剛性が高く応答性の良さと低歪みのポリマー素材と、艶やかな響きを加えるポリウレタン素材を組み合わせることにより深みと歯切れの良さを実現しています。また二重磁気回路を使用することで磁束密度を高め、レスポンスを高めています。
またハウジング設計には二重構造を採用し、内部の空気圧を段階的に最適化することで制振性を高めクリーンなサウンドを実現。さらにセミオープン型構造を採用することでダイナミックレンジの広い自然なサウンドを実現しています。
「FiiO JD7」は日本国内モデルではアマゾンほかFiiO取扱いの主要な専門店で購入可能。海外モデル(「JadeAudio」モデル)はHiFiGoなど取扱いのある一部のショップで購入可能です。海外モデル(「JadeAudio」モデル)の価格は77.99ドル、国内モデルは16,500円前後で販売されています。
HiFiGo: FiiO Jade Audio JD7
AliExpress(BrightAudio Store): FiiO JadeAudio JD7
Amazon.co.jp(国内正規品): FiiO JD7
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「FiiO JD7」のパッケージはFiiOのお馴染みのハードケース内に本体、ケーブル、イヤーピースなどがまとめられています。「JH3」などと同様で通常のFiiO製品とは区別され、より簡易的な包装になっていますね。パッケージの側面には「FiiO」と「JadeAudio」の2種類のロゴがそれぞれ記載されています。
パッケージな用法は、本体、ケーブル、シリコンイヤーピース2種類(白色、黒色、それぞれS/M/Lサイズ)、ウレタンイヤーピース1ペア、MMCXリムーブ用金具、ハードケース、説明書。
本体は「316L ステンレス」を使用した金属製シェルで、粉末冶金工法により製造されているとのこと。比較的コンパクトな円筒形のデザインで耳への収まりも良い印象です。フェイス部分はスリット上のベント(空気孔)が三方向に伸びており、シンプルながらクールなイメージのデザインになっています。
ちなみに、「FiiO JD7」のシェル形状は同社の6BAモデル「FiiO FA7s」とほぼそっくりです。というか外装部分はそのまま流用しているようにも思えます。とはいえ、「FiiO JD7」はフェイス部分のベントを使用したセミオープン型構造だったりするわけで、果たして最初はどちらを先に作ったの?という素朴な疑問も浮かんでくるわけですが(謎)。いっぽうでケーブルはブラウンカラーのケーブルで「FH3」など同価格帯のモデルと同様のタイプになっています。
イヤーピースは通常の白色タイプのほか、超薄型ソフトイヤーピースの「HS18」が各サイズ同梱されます。通常はこの「HS18」イヤーピースを利用するのが推奨と思われます。もし「HS18」が耳に合わない場合はよりフィット感を得られるものに交換することが望ましいでしょう。定番のJVC「スパイラルドット」や「AET07」(互換品を含む)、ソフトシリコンタイプでは「SpinFit CP100+」や最近では「TRN T-Eartips」などもお勧めです。私の場合、最終的には「HS18」ではなく「TRN T-Eartips」を選択しました。
■ サウンドインプレッション
「FiiO JD7」の音質傾向は非常にバランスの良い、ニュートラルな印象の弱ドンシャリ。メーカーサイトでもハーマンターゲットカーブを意識したチューニングであることが明記されており、聴きやすく、多くの方が好感しやすいサウンドに仕上がっています。ちなみにハーマンターゲットを意識したチューニングを行うこと自体は最近のイヤホンでは非常に多く、私のレビューでも「毎度おなじみ」と書いても支障ないほど出てくるようになりましたが、従来のFiiO製品ではほぼ採用されてきませんでした。実際ほぼ同グレードに位置する「FD3/FD3 Pro」は上位モデルの「FD5」を踏襲した量感のある深く重い低域が特徴的なドンシャリ傾向で、ハーマンターゲットを採油推し、セミオープン型の構造でどちらかというと中高域寄りの「FiiO JD7」とはアプローチが全く異なります。いっぽうで特に女性ボーカルの高音などスッキリした印象があり、過度に硬質になりすぎない範囲で明瞭感とキレの良さを感じさせるサウンドです。
「FiiO JD7」の高域は、明瞭でスッキリした音を慣らしつつ、自然な印象で聴きやすくまとめられています。煌びやかさや艶感を持ちつつ刺さりや歯擦音などはコントロールされており、適度な滑らかさがあります。質感においてFiiOの上位モデルと相応の差はありますが、シンバル音も適度な解像感がありこの価格帯としては比較的まとまっていると思います。
中音域はニュートラルで癖の無い音を鳴らします。セミオープン型の構造を採用するため、抜け感のある中高域と音場感を実現し、付属のケーブル、イヤーピースでも十分な質感を持ちます。ただポテンシャルはより高く、リケーブルやさらにフィット感のあるイヤーピースへの交換等でより良い変化を得ることもできるようです。凹むこと無く鳴り、ボーカル域も前面で定位し、一定の主張があります。
一般的にこのクラスの製品でハーマンターゲットを採用する場合、質感に粗さが出やすい側面もありますが、「FiiO JD7」はかなり善戦しており、解像感、分離の良さ、そして適度な滑らかさと1音1音の粒立ちの良さを持っています。手持ちの「FiiO FD5」あたりのとの比較であれば、そこまで大きな質の差は感じないレベルで仕上がっているかもしれませんね。中低域は厚みはそれほど感じないものの、エネルギッシュかつスピード感があり、見通しも良いため、それほど不満を感じることはないでしょう。
低域は適度な温かみがあり、自然な印象で鳴ります。ミッドベースは十分な量感と力強さがあります。適度な締まりとスピード感があり、直線的に鳴るため、籠もるような印象はありません。いっぽうで過度に硬質にはならず、ベースは適度な弾力があり、キックは質量を感じさせます。重低音はセミオープン型ということもあり多少抜ける感じもありますが、イヤーピースをしっかりフィットさせることでより深さと密度感が増します。ニュートラルなバランスの低域として個人的にはよくまとまっていると思います。
■ まとめ
というわけで、「FiiO JD7」はアンダー100ドル級のイヤホンとしては非常に良くできていると思います。何というか、「普段はやらないけど、その気になればMoondropみたいなサウンドも80ドルでちゃんと作れるよ」とか言っているような、FiiOの実力を改めて垣間見たような気がします。要するにいちいち手堅いんですよね(褒め言葉)。
オールランドに使える手頃なイヤホンを探している方には強力な選択肢のひとつになるでしょう。あと、同じFiiOでもそれこそ「FD7」などの上位モデルでやっているような音作りの一端を手が届く価格で楽しみたい、あるいは普段使いで持ち歩きたいという方にも最適です。リケーブルなどでもより解像感や音場感を向上させることはできますので、かなり楽しめるイヤホンと言えるでしょう。惜しむらくは国内版の価格設定が海外より例によって高めな点で、これで海外版と同様の1万円そこそこの価格で購入できれば、さらにお勧め度はアップできるのに、というのはやはりありますね。。。(^^;)。