こんにちは。今回は「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」です。最近数多くのブランドとのコラボ製品も増えている海外レビュアーのCrinacle氏が低価格中華イヤホンブランドとしてお馴染み「KZ ACOUSTICS」とコラボした製品ですね。昨年末頃には手元に届いていましたが、ちょっと気になることもあってレビューを先送りしておりました。実際のところ、同氏のコラボ製品のなかでもこのモデルは評価が分かれる製品ですので、ひとつの情報としてご覧いただければと思います。
■ 製品の概要と特徴など。
「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」は中華EST(静電ドライバー)搭載ハイブリッドとして話題となった「KZ ZEX」の上位モデルに相当しさらに高域用BAが追加されています。当初は「KZ ZEX Pro」という名称のみでリリースしていましたが(私も最初期ロットの「KZ ZEX Pro」を購入しています)、その後、Crinacle氏の監修モデルであることを前面に出すため、「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」に製品名称も変更となり、パッケージも一新されました。
ドライバー構成では「KZ ZEX」と同じ独自の低電圧仕様「静電(EST)ドライバー」(私のブログでは「中華EST」と呼称します)と10mm「二重磁気回路ダイナミックドライバー」の組み合わせに、さらに「30095」BAユニットを追加してます。このうえで、Crinacle氏によるサウンドーチューニングの監修が入っています。「中華EST」についての説明などについては、先日レビューした「KZ ZEX」のほうのレビューも併せてご覧頂くと良いと思います。
→ 「KZ ZEX」 もうひとつの静電(EST)ドライバー搭載20ドル級モデル。カラバリとNRAとの僅かなサウンドの違いも興味深い低価格中華イヤホン【レビュー】
「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」のカラーバリエーションはブラックとローズゴールドの2色。購入はAliExressなどの各セラーまたはアマゾンにて、価格は海外が35.99ドル~、アマゾンが3,999円前後です。
Amazon.co.jp(G.K.Offical Store): KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)
■ シェル形状は最近のタイプを採用しZEXより装着性が向上。
というわけで、「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」はパッケージ自体は通常のKZ製品と同じサイズの白箱タイプですが、パッケージがKZとCrinacle氏のマークになっているなど、コラボ製品と分かるちょっと雰囲気の異なる感じになっています。パッケージ内容は本体、ケーブル(銀メッキ線タイプ)、イヤーピース(白色フジツボタイプ)、説明書です。
しかし、前述の通り、実は「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」として販売される以前に本来の製品名である「KZ ZEX Pro」としても先行販売されており、私はこの最初期と思われるロットを購入していたりします。中身については外箱がラインアートデザインになっている点を除くと「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」と同一とされており、実際に見た目上は同じです。
「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」のシェルは「KZ ZAS」より若干小振りのサイズ感で、最近の同社のデザインを踏襲しています。ただフェイス部分の印象はロゴを変えるとCCAぽさもありますね。もしかすると「KZ ZEX」よりデザイン的にはあまり工夫は無いのかもしれません。
ダイナミックドライバーと中華ESTドライバーは直列で固定されており、その側面に「30095」BAが確認できます。ドライバーが重なっている分、「KZ ZAS」より厚みがありますが、装着性自体はそれほど大きな違いはありません。多くの方はしっかりとホールドできると思います。
イヤーピースは以前からのフジツボタイプの白色バージョンが付属します。細口のステムノズルになってから付属しているペラペラのイヤーピースは非常に評判が悪かったので従来タイプに戻ったのは朗報でしょう。その他交換する場合「スパイラルドット」や「AET07」は口径が大きすぎるため、より穴の小さいものを選びます。具体的には、「RHAイヤーピース」「Acoustune AET08」「final Eタイプ」などが候補に挙がるでしょう。また低価格のものでは「SONY ハイブリッドイヤーピース」は私もよく使います。他にはよりフィット感の高い粘着性のあるタイプで「SpinFit CP100+」もお勧めです。
■ 結局「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」と「KZ ZEX Pro」の音は同じなのか
音質傾向のレビューを記載する前にいきなりここから入ってしまうのですが、いちおう、KZ公式およびCrinacle氏の見解は「同じもの」とされています。
しかし、「KZ ZEX Pro」発売当初、つまりコラボが発表される前段階のサイトに掲載されていた周波数特性は(毎回あまり当てにならない「雰囲気グラフ」だとは知っていますが)「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」のCrinacle氏のグラフとはだいぶ異なるものです。そして、実際に私の手元にある「最初期ロット」の「KZ ZEX Pro」は「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」とは多少異なるサウンドでした。これが「最初期ロットだから」あるいは単なる「個体差」なのかは正直なところよく分かりません。そして現在の「KZ ZEX Pro」はCrinacle氏の見解どおり、「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」と同じ音なのかもしれない、と推測します。
手元にある最初期ロットの「KZ ZEX Pro」も基本的な傾向は「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」と同じで、違いとしては少しだけ聴きやすい、という程度の違いです。あるいはBAがちゃんと鳴っていない「ハズレ個体」という説も、実はあったりするのですが(^^;)。まあ個体差の可能性も高い以上、以降は「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」を中心に記載していきたいと思います。
■ インプレッション(音質傾向など)
「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」のサウンドは全体としてKZらしい派手さを感じつつ、サウンドバランスとしては比較的ニュートラルにまとめられている印象。ただし、再生環境に対して「非常にピーキー」で、高域が激しくシャリ付きのある音になりやすく、プレーヤーによっては中高域より上の音はずっとシャリシャリするように感じます。また比較的普通になってくれるプレーヤーでも最近のKZ製品に比べれば高域が強く、また少し音量をあげると、女性ボーカルのハイトーンで「30095」特有のギラつきが比較的出やすいなど「ちょっと前のKZの悪いところ」がまた頭をもたげている感じもありますね。最近のKZはドンシャリの中でもいわゆる「W字」とか「U字」と呼ばれるようなボーカル帯域を少し持ち上げて聴きやすい印象でチューニングされることが多いため、いわゆるフラット方向へのチューニング変更も出来なくは無いだろうな、と思いましたが、やはり低コストのBAが1個では荷が重いようですね。
「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」の高域は強めの主張で、いうなれば「ちょっと前のKZ製ハイブリッド」みたいな音を鳴らします。特に据置きアンプやハイゲインのDAPなどを使用すると盛大にシャリ付きが発生し、また歪みなども出やすくなります。しかし、このイヤホンのもうひとつの特徴である「中華EST(静電)」ドライバーのほうは通常の静電ドライバーと構造が異なるとは言えある程度駆動力をかけたほうがしっかり鳴ることがベースとなっている「KZ ZEX」などでも分かっています。そうすると、「中華EST」が本来の鮮やかで伸びのある音をならしつつ、「30095」BAが暴れないちょうど良い出力を見つけるのは結構面倒ですね。ただ、ちょうど良いバランスで鳴らせば「ああCrinacle氏がやりたかったのはコレね」というのが分からなくも無い印象です。マニア的に言えば、DAP/アンプやケーブル、場合によってはアッテネーターなどで「遊べる」余地が大きいとも言えますが、なかなか一般ウケを狙うのは厳しそうです。
中音域も基本は高域同様に、「再生環境による」部分が大きくあります。実は私はレビューを書いている途中では、据置き環境でイヤホン用にそこそこの駆動力のアンプを使って聴くことも多いのですが(DAPとPCを行ったり来たりしなくていいので)、ここで使ってる「TOPPING A50s」アンプのノーマルゲインが前述の「ちょうど良い」に結構近い感じだったりします。ですので、Twitterにファーストインプレッションを上げた際は「んー、悪くないんじゃない」みたいに感じ、その後DAPで聴いてみて「おいおい」となった次第。全体的には「KZ ZEX」を踏襲しており、癖が無く直線的な音で静電ドライバーの恩恵もあってかドライながら明瞭感があります。DAP等で聴いた印象では、高域が暴れないようにゲインを下げると、中高域が歪みちょっとキツめの帯域が頭を出し、たぶん本来のゲインだとBAが暴れる、みたいな感じになります。これは「30095」と「中華EST」の音域が被り出す中高域からのみ顕著に出ますので、この帯域の少ない男性ボーカルのバラードなどでは普通に楽しめます。
低域は「KZ ZEX」を踏襲しており、最近のKZらしいハッキリとした輪郭と力強いアタックが楽しめます。。重低音は比較的深く、ミッドベースも適度に締まりがあり量的には結構多いものの分離は良く過度に膨らむことはありません。解像感も比較的得やすいため、スピード感のある音数の多い曲でも楽しめる印象です。
■ どうして今回のコラボは世間から「キワモノ」扱いな評価になってしまったのか。
「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」のチューニングについて、多くの方の不評の原因となっている「高域の不自然な鳴り」、あるいは再生環境によって前面に出る「強いシャリ付き」ですが、これはBAの無い「KZ ZEX」をベースに監修を行う課程で「30095」が追加された、という経緯も大きく影響していそうです。つまりCrinacle氏が求めた周波数特性を実現するために高域側にドライバーの追加を行ったものの、追加した「30095」の特徴をコントロールするところまでは至らなかったのではないかという想像です。数年前のKZ製ハイブリッドには音圧や再生環境により高域が暴れ出す傾向もありました。最近の製品はドライバー数の少ない「KZ ZSTX」などでもこの特徴をコントロールするための調整を行うことで格段に評価が向上した経緯もあるわけです。
確かに「他の同氏がコラボしたメーカーに比べてKZのユニットは低コスト品だから、要望通りに出せるポテンシャルが低い」という意見は、まあそれはそうだろう、ということなんですが(汗)、それでもKZ自身は「低コストの自社ユニットでそれなりの音を出す技術」を持ってる事は最近のモデルを見ても明らかですから、やはり「コラボ製品を作り込む上での対話不足」ではないかなとも思ったりします。
この辺はKZが今度は「HBB(hawaiibadboy)」氏とのコラボした「KZ DQ6s」の完成度を見て、改めて確認したいと思います。HBB氏コラボは種類は多くないですが、最近の「TRIPOWINxHBB Mele」はアンダー50ドルの低価格モデルで高い評価を得ているため、期待値も高いですね(Crinacle氏のコラボは周波数特性など数値データに基づく監修がメインなのに対し、HBB氏はプロジェクトを立ち上げてコミュニティの意見を反映しているなど手法も対照的らしいです)。
「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」はアマゾンでの販売価格も最近下がっており、現在の(円安傾向の)為替レートでみるとAliExpressで購入するより大幅に安くなっています。正直「キワモノ」扱いの製品ですので個人的にも多くの方にオススメできるイヤホンではありませんが、マニアであれば価格が下がっているうちに買っておくのも良いかもしれませんよ。ネタとしてかもですが(^^;)。
「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」は中華EST(静電ドライバー)搭載ハイブリッドとして話題となった「KZ ZEX」の上位モデルに相当しさらに高域用BAが追加されています。当初は「KZ ZEX Pro」という名称のみでリリースしていましたが(私も最初期ロットの「KZ ZEX Pro」を購入しています)、その後、Crinacle氏の監修モデルであることを前面に出すため、「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」に製品名称も変更となり、パッケージも一新されました。
ドライバー構成では「KZ ZEX」と同じ独自の低電圧仕様「静電(EST)ドライバー」(私のブログでは「中華EST」と呼称します)と10mm「二重磁気回路ダイナミックドライバー」の組み合わせに、さらに「30095」BAユニットを追加してます。このうえで、Crinacle氏によるサウンドーチューニングの監修が入っています。「中華EST」についての説明などについては、先日レビューした「KZ ZEX」のほうのレビューも併せてご覧頂くと良いと思います。
→ 「KZ ZEX」 もうひとつの静電(EST)ドライバー搭載20ドル級モデル。カラバリとNRAとの僅かなサウンドの違いも興味深い低価格中華イヤホン【レビュー】
「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」のカラーバリエーションはブラックとローズゴールドの2色。購入はAliExressなどの各セラーまたはアマゾンにて、価格は海外が35.99ドル~、アマゾンが3,999円前後です。
Amazon.co.jp(G.K.Offical Store): KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)
■ シェル形状は最近のタイプを採用しZEXより装着性が向上。
というわけで、「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」はパッケージ自体は通常のKZ製品と同じサイズの白箱タイプですが、パッケージがKZとCrinacle氏のマークになっているなど、コラボ製品と分かるちょっと雰囲気の異なる感じになっています。パッケージ内容は本体、ケーブル(銀メッキ線タイプ)、イヤーピース(白色フジツボタイプ)、説明書です。
しかし、前述の通り、実は「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」として販売される以前に本来の製品名である「KZ ZEX Pro」としても先行販売されており、私はこの最初期と思われるロットを購入していたりします。中身については外箱がラインアートデザインになっている点を除くと「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」と同一とされており、実際に見た目上は同じです。
「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」のシェルは「KZ ZAS」より若干小振りのサイズ感で、最近の同社のデザインを踏襲しています。ただフェイス部分の印象はロゴを変えるとCCAぽさもありますね。もしかすると「KZ ZEX」よりデザイン的にはあまり工夫は無いのかもしれません。
ダイナミックドライバーと中華ESTドライバーは直列で固定されており、その側面に「30095」BAが確認できます。ドライバーが重なっている分、「KZ ZAS」より厚みがありますが、装着性自体はそれほど大きな違いはありません。多くの方はしっかりとホールドできると思います。
イヤーピースは以前からのフジツボタイプの白色バージョンが付属します。細口のステムノズルになってから付属しているペラペラのイヤーピースは非常に評判が悪かったので従来タイプに戻ったのは朗報でしょう。その他交換する場合「スパイラルドット」や「AET07」は口径が大きすぎるため、より穴の小さいものを選びます。具体的には、「RHAイヤーピース」「Acoustune AET08」「final Eタイプ」などが候補に挙がるでしょう。また低価格のものでは「SONY ハイブリッドイヤーピース」は私もよく使います。他にはよりフィット感の高い粘着性のあるタイプで「SpinFit CP100+」もお勧めです。
■ 結局「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」と「KZ ZEX Pro」の音は同じなのか
音質傾向のレビューを記載する前にいきなりここから入ってしまうのですが、いちおう、KZ公式およびCrinacle氏の見解は「同じもの」とされています。
しかし、「KZ ZEX Pro」発売当初、つまりコラボが発表される前段階のサイトに掲載されていた周波数特性は(毎回あまり当てにならない「雰囲気グラフ」だとは知っていますが)「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」のCrinacle氏のグラフとはだいぶ異なるものです。そして、実際に私の手元にある「最初期ロット」の「KZ ZEX Pro」は「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」とは多少異なるサウンドでした。これが「最初期ロットだから」あるいは単なる「個体差」なのかは正直なところよく分かりません。そして現在の「KZ ZEX Pro」はCrinacle氏の見解どおり、「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」と同じ音なのかもしれない、と推測します。
手元にある最初期ロットの「KZ ZEX Pro」も基本的な傾向は「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」と同じで、違いとしては少しだけ聴きやすい、という程度の違いです。あるいはBAがちゃんと鳴っていない「ハズレ個体」という説も、実はあったりするのですが(^^;)。まあ個体差の可能性も高い以上、以降は「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」を中心に記載していきたいと思います。
■ インプレッション(音質傾向など)
「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」のサウンドは全体としてKZらしい派手さを感じつつ、サウンドバランスとしては比較的ニュートラルにまとめられている印象。ただし、再生環境に対して「非常にピーキー」で、高域が激しくシャリ付きのある音になりやすく、プレーヤーによっては中高域より上の音はずっとシャリシャリするように感じます。また比較的普通になってくれるプレーヤーでも最近のKZ製品に比べれば高域が強く、また少し音量をあげると、女性ボーカルのハイトーンで「30095」特有のギラつきが比較的出やすいなど「ちょっと前のKZの悪いところ」がまた頭をもたげている感じもありますね。最近のKZはドンシャリの中でもいわゆる「W字」とか「U字」と呼ばれるようなボーカル帯域を少し持ち上げて聴きやすい印象でチューニングされることが多いため、いわゆるフラット方向へのチューニング変更も出来なくは無いだろうな、と思いましたが、やはり低コストのBAが1個では荷が重いようですね。
「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」の高域は強めの主張で、いうなれば「ちょっと前のKZ製ハイブリッド」みたいな音を鳴らします。特に据置きアンプやハイゲインのDAPなどを使用すると盛大にシャリ付きが発生し、また歪みなども出やすくなります。しかし、このイヤホンのもうひとつの特徴である「中華EST(静電)」ドライバーのほうは通常の静電ドライバーと構造が異なるとは言えある程度駆動力をかけたほうがしっかり鳴ることがベースとなっている「KZ ZEX」などでも分かっています。そうすると、「中華EST」が本来の鮮やかで伸びのある音をならしつつ、「30095」BAが暴れないちょうど良い出力を見つけるのは結構面倒ですね。ただ、ちょうど良いバランスで鳴らせば「ああCrinacle氏がやりたかったのはコレね」というのが分からなくも無い印象です。マニア的に言えば、DAP/アンプやケーブル、場合によってはアッテネーターなどで「遊べる」余地が大きいとも言えますが、なかなか一般ウケを狙うのは厳しそうです。
中音域も基本は高域同様に、「再生環境による」部分が大きくあります。実は私はレビューを書いている途中では、据置き環境でイヤホン用にそこそこの駆動力のアンプを使って聴くことも多いのですが(DAPとPCを行ったり来たりしなくていいので)、ここで使ってる「TOPPING A50s」アンプのノーマルゲインが前述の「ちょうど良い」に結構近い感じだったりします。ですので、Twitterにファーストインプレッションを上げた際は「んー、悪くないんじゃない」みたいに感じ、その後DAPで聴いてみて「おいおい」となった次第。全体的には「KZ ZEX」を踏襲しており、癖が無く直線的な音で静電ドライバーの恩恵もあってかドライながら明瞭感があります。DAP等で聴いた印象では、高域が暴れないようにゲインを下げると、中高域が歪みちょっとキツめの帯域が頭を出し、たぶん本来のゲインだとBAが暴れる、みたいな感じになります。これは「30095」と「中華EST」の音域が被り出す中高域からのみ顕著に出ますので、この帯域の少ない男性ボーカルのバラードなどでは普通に楽しめます。
低域は「KZ ZEX」を踏襲しており、最近のKZらしいハッキリとした輪郭と力強いアタックが楽しめます。。重低音は比較的深く、ミッドベースも適度に締まりがあり量的には結構多いものの分離は良く過度に膨らむことはありません。解像感も比較的得やすいため、スピード感のある音数の多い曲でも楽しめる印象です。
■ どうして今回のコラボは世間から「キワモノ」扱いな評価になってしまったのか。
「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」のチューニングについて、多くの方の不評の原因となっている「高域の不自然な鳴り」、あるいは再生環境によって前面に出る「強いシャリ付き」ですが、これはBAの無い「KZ ZEX」をベースに監修を行う課程で「30095」が追加された、という経緯も大きく影響していそうです。つまりCrinacle氏が求めた周波数特性を実現するために高域側にドライバーの追加を行ったものの、追加した「30095」の特徴をコントロールするところまでは至らなかったのではないかという想像です。数年前のKZ製ハイブリッドには音圧や再生環境により高域が暴れ出す傾向もありました。最近の製品はドライバー数の少ない「KZ ZSTX」などでもこの特徴をコントロールするための調整を行うことで格段に評価が向上した経緯もあるわけです。
確かに「他の同氏がコラボしたメーカーに比べてKZのユニットは低コスト品だから、要望通りに出せるポテンシャルが低い」という意見は、まあそれはそうだろう、ということなんですが(汗)、それでもKZ自身は「低コストの自社ユニットでそれなりの音を出す技術」を持ってる事は最近のモデルを見ても明らかですから、やはり「コラボ製品を作り込む上での対話不足」ではないかなとも思ったりします。
この辺はKZが今度は「HBB(hawaiibadboy)」氏とのコラボした「KZ DQ6s」の完成度を見て、改めて確認したいと思います。HBB氏コラボは種類は多くないですが、最近の「TRIPOWINxHBB Mele」はアンダー50ドルの低価格モデルで高い評価を得ているため、期待値も高いですね(Crinacle氏のコラボは周波数特性など数値データに基づく監修がメインなのに対し、HBB氏はプロジェクトを立ち上げてコミュニティの意見を反映しているなど手法も対照的らしいです)。
「KZ x Crinacle CRN (ZEX Pro)」はアマゾンでの販売価格も最近下がっており、現在の(円安傾向の)為替レートでみるとAliExpressで購入するより大幅に安くなっています。正直「キワモノ」扱いの製品ですので個人的にも多くの方にオススメできるイヤホンではありませんが、マニアであれば価格が下がっているうちに買っておくのも良いかもしれませんよ。ネタとしてかもですが(^^;)。