岡林薫さん((株)セールスフォース・ドットコム) | Business for Marriage Equality

MESSAGE

働く人からのメッセージ

岡林薫さん

2020.11.18

(株)セールスフォース・ドットコム

勤務

レズビアン当事者

岡林薫さん

同性婚ができないことで、どんな問題が生じているか教えてください。

お付き合いして2年ぐらいになるドイツ人のパートナーとは、結婚の話も出ています。しかし、このまま日本で同性婚が実現しないと、私は今の会社をやめてドイツに行かざるをえなくなります。すごく仕事も好きですし、セールスフォース・ドットコムという会社も好きなので、同性婚ができないという障害さえなければ、日本に住み続けて、このまま働き続けていきたいです。でも今は、将来のビジョンが見えないですし、1年先、2年先さえ今の私には計画が立てられない。すごく不安ですね。

近い将来も計画が立てられないのは大変ですよね。

異性のカップルであったら、結婚して、自分たちの希望のタイミングで出産して、それに向けて貯蓄するとか、計画する人たちが多いですよね。私の友人で、日本人の女性とアメリカ人の男性の異性カップルがいます。そのカップルと私たちは付き合っている期間が同じぐらいなのですが、彼女たちが結婚した話を聞きました。相手の彼は当時アメリカに住んでいて、日本にゆかりもなかったので、「どうやって結婚するの?」と聞いたら、日本に着いた当日に大使館に行って籍を入れると教えてくれました。それを聞いて、この人たちはそれができるんだ・・・と思いました。日本では同性婚がまだ認められていないので、私とパートナーの彼女はそうはできません。彼女が大学院を卒業したら、日本にいるためには仕事を見つけて、ワーキングビザを取得しなければいけません。異性カップルだったらそんなに簡単にできることが、私たちにはできない。そう考えると、同性婚が実現するまで日本にいられるのかなと不安に思いました。

セールスフォース・ドットコムでは、福利厚生においてもLGBTQへ配慮がなされているのですよね。

セールスフォース・ドットコムでは配偶者の定義に同性カップルも含めています。結婚したり、亡くなったり、ライフイベントで何かあったときは、異性カップルと同じ扱いとなります。さらに最近、不妊治療に対する費用償還プログラムができました。それも同性カップルに適用される内容になっています。これはすごい!と思ったのですが、そもそも日本で同性カップルが子どもを産むのはハードルが高いですよね。では、どういうカップルがこのプログラムを使えるのか、考えてしまいました。同性婚が認められてない中では、会社の福利厚生の内容が充実しても、もそれを実際に使える人はそこまで多くないのでは、と思います。会社に対しては有り難いと思いますけど、歯がゆいと感じてしまいます。

岡林さんは会社が好きとおっしゃいましたけど、そういった制度が進んでいるからですか。

それもありますし、この会社で働きがいを感じているのは、LGBTQコミュニティの取り組みを推進するグループ(以下、「Outforce」)に属しているからというのが大きいです。Outforceでイベントを実施したりして社内で理解を深めていただいたり、トレーニングを実施してアライ(Ally, 支援者)を増やしていく活動を行っているんです。すごくやりがいを感じていますね。会社に対する愛着も沸きますし、仕事に対する情熱も増しました。ですので、この会社を辞めたくないです。

ちなみに、どのような業務を担当されていますか。

私の業務は、入社してきた方たちに導入研修をする仕事です。その自己紹介をする際に、「私は同性愛者です」と必ず皆さんにお伝えしています。私が研修をした方たちはトータルで千人を超えていて、その全ての人たちが私にカミングアウトされてることになります。中には、LGBTQの方たちもいらっしゃいます。カミングアウトしていない人でも、勤務初日に、岡林さんのカミングアウトを聞けてよかったと伝えてくださいます。

会社に制度が整っていたり、先輩からカミングアウトされるというのは、働くうえでの安心感につながりますよね。

最近の若い人たちは、企業がどういうことに取り組んでいるかで入社を決める人も多いです。社内の新卒3、4年目の後輩たちを見ていると、会社ではLGBTQへの理解があるけれど、世間はまだまだ遅れているという矛盾した環境でいつまでやっていけるのかなと思います。個人的な見解ですが、国外に出る選択肢を考える人たちは今後増えると思います。同性婚を実現しようとしない現状のままでは、人材流出がますます加速化していくと思います。国も企業も、このままの状態が続けば「この会社でなくてもいいや、海外でいいや」と思う人が増えていってしまうことをもっと重く考えてほしいです。

企業にはもっと変わってほしいし、差別をなくしていくように声をあげてほしいですね。

セールスフォース・ドットコムに入ろうと思ったのは、LGBTQに対する取り組みをしていると知ったことがきっかけでした。企業サイトにもたくさんLGBTQに関するコンテンツが掲載されており、私のアンテナにすごく引っかかりました。それで入社したいと思ったんです。今、同性婚賛同に関しては、日本の企業ではDiversity & Inclusionの一部として取り組むのが一般的だと思いますが、これは人権の問題なので、Diversity & Inclusionの一貫でやることではないと私は考えています。法律は、全ての人の人権を守るべきなのに、LGBTQコミュニティの人たちの人権についてはしっかりと権利が守られていないと感じます。そこに対して企業として、きちんと対応してほしい、平等を求める活動を応援しています、というメッセージを打ち出してほしいです。企業がそのようなメッセージを発信することが、社会を変えるきっかけになると思います。セールスフォース・ドットコムはアメリカの企業だからそういう取り組みができると言われることが多いのですが、そうではないと声を大にして言いたいです。私も日本人ですし、同じ日本の中でも頑張っている人はたくさんいます。ぜひ、日本の企業の人たちにも考えてほしいです。

構成 村山 幸

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