ドジャースの大谷翔平が本塁打50本、盗塁50個の50-50 (フィフティー・フィフティー)を達成した。日本のプロ野球では聞くことがない珍しい記録だ。そもそもホームランを50本以上打つ打者が現れるのも数年に一度のレアケースであり、盗塁を50以上するのもかなりの難易度。年によってはホームラン王と盗塁王を同時に達成できる記録である。50-50にいたっては、これまで誰も達成したことがない前人未到の領域。この凄さを語れるのは世界で大谷翔平しかいない。
野球においては得点が入るホームランのほうが上位概念になるが、ホームランを打ったバッターは「歩く」。盗塁は「全力疾走」。盗塁にはホームランにない尊さがあり、この2つを並列にした大谷翔平は野球の魅力を再発見させてくれる。
打撃においてホームランと盗塁は相反する記録である。ホームランを打ってしまえば盗塁の機会はなくなり、盗塁の記録が増えることはホームランが生まれない。本塁打を打てば打点も打率も向上するのとは真逆に、どちらかが増えれば、どちらかは失われてしまう。その難しさから、これまで50-50の達成者は現れなかった。いわば50-50は形を変えた「もう一つの二刀流」である。大谷翔平だからこそできる記録とも言える。
何より凄いのは、数字や記録を打ち出す以上に、打者に専念しながらも大谷翔平が形を変えた二刀流を成し遂げ貫いていることである。投打の二刀流続ける事は難しい。それと同じくらい、打者専念のように環境が変わった状態でも二刀流を体現してしまうのはもっと難しいかもしれない。怪我でピッチャーができなくても大谷翔平は二刀流をやってしまう。環境や状況が変わっても己を貫く。大谷翔平はやはり異次元であり、二刀流の申し子である。