全ての人間は男女ともに、精子と卵子の結合が分化して出来た生き物である。
そうであるにも関わらず、男は精子の気持ちを思うことは容易だが、卵子に共感することは難しい。自分の始まりの半分であるはずの卵子にまったく共感できない。
おそらく女性にとって逆のこともまた真実である。
精子と卵子の性質が、成長して大きくなったはずの男女の行動と思考のパターンに強く影響し続けるという事実は、よくよく考えてみると驚きに値する。われわれは精子や卵子よりどの程度進歩したというのだろう?
では卵子とはどういう性質なのか?
男の立場から言わせていただけるなら、怠惰で意地悪で図々しい。これは卵子の性質というのみならず、男から見た女性の一般的特質といって過言ない。
一回の射精により、子宮内部に放出される精子の数は数千万から数億。個人の能力、健康状態、精神状況により左右される。中間を取って2億ぐらいとしておくが、2億の精子が膣内で射出されると、子宮の内奥に向かってひたすら泳ぎだす。
泳いで泳いで卵子の通り道にあたる卵管の入り口にたどり着く頃には5万ぐらいに減っている。ここまでの生存確率は0.025%、前近代中国の科挙の合格率を思い起こさせる狭き門だ。もしくはスターリングラードから生還したドイツ兵の確率だ。
そして、卵管をさかのぼり卵子の間近まで達するのがわずかに100匹程度。その内一つのみが卵子の中に向かいいれられ、受精卵となる。
これは一回の射精で妊娠する場合の確率であり、一晩二発を三日続けたと仮定すると、膣内に射出された精子の量は単純計算で12億個。実際毎回毎回そんな大量な精子を出せるわけではないけれが、運がよければ一つだけが受精可能となる。。
精子の大きさは頭部が10ミクロン 尻尾を合わせると60ミクロン。其れが幅5センチ長さ8センチの子宮の中を卵管の入り口目指して泳ぐことになる。
精子を成年男子の縮尺に変換すれば、最悪の場合2万メートルくらい泳ぐ計算になる。それだけ泳いで、0.025%が卵管にたどり着き、その内奥に至ったつわものどもがやっと卵子とまみえることが出来るのだが、卵子はその間ほとんど移動しない。この怠惰さは何も考えずワイドショーを見ながらせんべいをかじっている女の姿そのものだ。
また質の悪いことに、それだけ苦労した精子の方々をじらし、気まぐれに扱い、場合によっては、えり好みしすぎで、自分の賞味期限が終わってしまい、受精しないまま卵管を下って、自ら血となって流れてしまう。なんという愚かしさだ。
じゃあ、精子とはどんな性質を持っているのか?
私には、頭によみがえってくる会話がある。あるときのタイのゲストハウスでの会話。
大学2年生まで童貞ですごした男が、海外旅行でタイに来て、そこで初めてタイの売春婦と経験し、またセックスショーなるものを観覧して、突如悟ったように開放的に振舞うようになった。他の旅行者の前でいかにセックスショーが楽しい見世物だったかを嬉々として語っている。その聞き手の中には日本人の女の子も混じっていた。
で、その日本人の女の子が私に向かってつぶやいた一言。
「男ってアホやなぁ、・・・・・セックスぐらいただで、日本でも出来るやろ」
ホントその通り。ただで出来ますし、日本で出来ます。そして男はアホなんだと激しく共感した。
何かわけの分からない衝動に突き動かされて、ひたすら前に突き進み、にも関わらず成功の確率はきわめて低い。運良く最終局面まで到達しても、そこで卵子から「すみません」と断られたら、走って爽やかに消え去るしか仕方がない。ホント精子ってアホだ。そして男の視点からすると、それでいいのだと思う。他に何があろうか?
何かの間違いで私の文章を読んでしまい、「精子の気持ちがよく分かる」とか書いてあるの読むと、こいつ頭おかしいんとちゃうか、と思うでしょ。
でも、そう思うのはあなたがアホだからです。
私以外にも似たようなこと考えてる人はいるし、実際に精子の役を映画で演じている人がいるんですわ。
それも有名どころで、ウッディ・アレン。
ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいSEXのすべてについて教えましょう http://www.youtube.com/watch?v=dvyUNhNBG-8
以下全てネタばれ。
人間を潜水艦か何かに見立てて、女とセックスするまでの人間内部の動きをお笑い系で表現しているんですが、
脳が司令部で、そこにコンピューターが幾つも並び、体の各部位からデータが集まってくる。
潜望鏡みたいなので下界を覗くと、
「おっ、いい女。今日は忙しくなりそうだ。音声出力を上げてくれ」
…フロベールとディラントーマスが……私はニューヨーク大学出で、・・・・・・
「こりゃ、見込みなさそうだな」
「そうでもないだろ」
「胃に食物が流れ込んでいます」
「どうだ、消化の方に問題はないか」
「きしめんスパ、に赤ワインで、行動計画には支障なし」
「ペニスに勃起を開始するように伝えよ」
ペニスの部位にガテン系の人が何人かいて、えんやこりゃえんやこりゃと力仕事をはじめる。
「だめです。勃起角度が上がりません」
ビービービー
「破壊工作員を見つけました」
黒い聖職者の服を着た男が司令室に連れてこられる。
「まちがっとる、結婚も婚約もしていない男女が快楽のためだけに」
「こいつを終わるまで独房につっこんどけ」
「勃起角度が回復してきました。もうすぐ射精可能になります」
「よし、じゃあ精子に発射の準備をするように伝えよ」
そうすると、ぞろぞろと白い服を着た精子の役を演じる役者が映し出される。
「受精か、さもなくば死を」とか言って周りの精子はみんな盛り上がってるんだけど、ウッディアレンだけいつもの通り悲観的な妄想全開で、
「相手がピル使ってたら皆殺しじゃないか」
「もしゴムの中で死ぬとしたら、まったく無意味だ」
「実はオナニーで天井に向けて飛ばされたらどうするんだよ」
等々さえない表情で愚痴りまくる。
結局、無理やり発射させられて、
「行く前に両親と最後の食事を!」とか言ってる。