なんか学術的なタイトルだが肩の力を読んでいただけたらと思う。ただボーっと考えていたらふと思っただけの話。
経済産業省が「音楽産業の新たな時代に即したビジネスモデルの在り方に関する報告書」という非常に興味深い資料に出会った。2024年7月だから古い資料ではない。以下にリンクを添付しておく。
報告書なので真面目に書いてあり少しボリュームがある。しかし、いくつか参考になるデータが集まっている点が注目だ。肌感覚で感じていたとおりのこともあるし、その内容を具体的に示されると説得力が増して非常に面白い。
興味深いデータを少しピックアップしてみたい。2022年日本の音楽市場は約70億ドル、そのうちライブでのトータル収益が約40%だということだ。この数字は2018年(全体約61億ドル)の38%と比べてあまり割合は変わらない。2022年と2018年を比べて変化が大きいのはフィジカルで、45%が35%へと4年で10%も減少していること。そして、まだ35%もあることに驚く。世界全体で見れば2022年はフィジカルの割合が10%しかない。そんな世界全体の流れと比べると、日本はまだまだCDが売れている変わった国なのかも知れない。その他にもたくさん面白いデータがあるので是非先ほどのリンク先はご覧いただきたい。
さて、タイトルにある私がぼんやり思ったこと「ストリーミングとフェスの相関関係」の答えだが、いくつかの資料から「相関性があるとはいえない」という結論に至った。それは何故かというと、そもそも単独ライブであれフェスであれライブ会場に行くのは一定ライン以上の音楽ファンだということ。そして、ライブは現地に行くことが原則であるため、敷居は容易に下がるものでもない。開催数はほんのわずか増えているが、チケットの相場も少しずつ上がって安くなくなってきた。5年前と比べて値段が随分と違う。実際先程のデータで2018年と2023年のチケットの推定平均価格が6900円位から8700円超えと2000円近く上がっている。
だからライブに行く人の割合は意外と一定なんじゃないかな?と思えてしまう。またもや経産省サイトのデータによると公演回数や動員数は2018年と2023年を比べても大して変わらない。ライブの市場は今後も微増の傾向にあるが、それは全体的な人数が増えているというより、1人あたりの単価が上がっているのが大きな要因だと考えられる。
一方ストリーミングは裾野が広く様々なファン層を獲得している。フィジカルに比べて音楽を簡単に入手することが出来るため、若年層を中心にシェアを伸ばしている。少し面白いデータとしてサブスクで音楽を入手する人が増える一方、音楽に興味がないという層が増えていることが読み取れる。課金制のストリーミングのシェアもあまり伸びは見せず、無料の音楽ストリーミングのシェアが伸びを見せているのもこのデータからわかる。端的に言えば「わざわざ金払ってまで音楽を聞く人」が減っているのだ。データを見る限りライトユーザーがかなりライトなのだ。
これらのことから何となく見えてきたのは、ひと昔前より音楽を聞く人は増えているがお金を落とすことが減っているということだ。フェスが増えているから音楽産業は今後も伸びていきそうだな、という考えは単なる肌感覚だった。現実はフィジカル全盛の頃とはかなり異なった産業構造をしており、音楽制作者側も色々な手段を新たに考えながら日本市場を開拓していかなければならない時代ということ。
日本は今後音楽産業が大きく拡大していくことは恐らくないだろう。そのかわり世界の音楽市場は大きな成長をしていくことが予想される。これからは世界でバズるアーティストが日本から登場する機会が増えることを期待したい。
世界に羽ばたく切り口のヒントになるかも知れない日本のアーティストから生まれた楽曲を最後に紹介して私の偉そうな話を終わりにしたい。SNSでめちゃくちゃ耳にするこの「オカネカセグ ワタシハスター」のフレーズで有名なMegan Thee Stallion featuring Yuki Chiba「Mamushi」。「チーム友達」がヒットした千葉雄喜さんが参加し、そのプロデュースは同じ「チーム友達」をプロデュースしたKoshyさんと日本人がそのジャンルで活躍している。そんな世界への可能性をご一聴。