マリファナのくすんだ煙霧が、フロアでゆらゆら揺れている─。サウス・ロンドンに住む青年ブルーは、白人たちの度重なる嫌がらせに耐える日々を送りながらも、昼間は整備士として働き、夜は仲間たちと結成したユニット<アイタル・ライオン>のDJとして活動している。この街のどこにも居場所はないが、力強いレゲエのリズムこそが彼らのアイデンティティであり、音楽活動の拠点であるガレージだけがメンバーにとって唯一の“楽園”だった。サウンドシステム競技を勝ち抜き、強敵ジャー・シャカとの決勝戦を前に意気揚々とする彼らだったが、ある日、大切なガレージが何者かによって荒らされ、ブルーはついに怒りを爆発させてしまう……。
圧倒的な人種差別の壁に押し潰されそうになりながらも、音楽に魂のすべてをぶつける若者たちを強烈に描いた幻の傑作『バビロン』。その衝撃的な内容ゆえ、世界的に公開が見送られていたが、製作から40年近く経った2019年にニューヨークでプレミア上映され大きな反響を呼び、ついに我が国でも初公開。主演のブルーに一世を風靡したレゲエ・グループ、アスワドのメンバーだったブリンズリー・フォード。また孤高のレジェンド、ジャー・シャカが本人役で出演しているのも話題の一つだ。ディープなレゲエ・ミュージックに彩られた過酷な青春、リアルに描き出される黒人たちの置かれた容赦ない現実……ブルーたちの悲しみと怒りは、決して過去だけのものではない。1980年のロンドンストリートから40年の時を超え、ラスタカラーを纏ったアイタル・ライオン─『バビロン』がいま現在に向かって咆哮する!
(黒人映画歴史家)
約40年を経て、ついに日本初公開が決定されたちょうどその頃、ドラミー・ゼブの訃報が舞い込む。そして世界が混迷を続ける中、このタイミングでの公開が大きな意味を持つ映画だと思う。
(REGGAE / DUB club OPEN 店主“校長”)
内容には触れられないが、ヘビーだった。時代が変われば常識も変わる。今私たちはかつての時代に生きてはいない。 当たり前のようにあったここまで酷い差別を受けたこともなければ、したこともない。ただ、差別は今でもどの国にもある。憎しみから憎しみは簡単に生まれるし、伝染して広まるのも容易。世代を超えて受け継いでいくにはあまりに悲しい。忘れるのではなく、許すことが出来れば、憎しみを愛にフリップさせることは出来るのではないか。 観終わってしばらく考え込んだ。そこまで考えさせられる映画はそうない。話は戻るが、劇中ずっと音楽が素晴らしいので、是非劇場で観てほしい!座ってるのが煩わしいほど、立ち観で揺れながら観たい映画。
(レゲエアーティスト)
(ブロードキャスター)
当時のDJカルチャー、レゲエ・カルチャーの粗野で尖がって熱々しい熱気にあふれた空気が描かれた必見作がいよいよ40年の封印を解かれ日本上陸。
(音楽ジャーナリスト/DJ)
遡ること60年前に独立したジャマイカからイギリスに移住した人々(の2世)のツラい話しです(1980年あたり) サウンドシステム鳴らして仲間とガンジャ吸って揺れて騒いで約束の地アフリカを切実に夢想して楽しんでただけなのに…、その切実さが伝わってきました。
Warrior Chargeで踊るとき、ジャマイカとは違うテンションの高さが「オッ」うまくいかないことばかりで暴力暴発しちゃうところ、後ろから羽交い締めして止めてくれる仲間が必要だよな、とか。暴力を排して理解と寛容の社会を築くのがどれだけ困難な世界か痛いほど今な話しです。
(レゲエ・ディージェイ)