睡眠時無呼吸症候群と認知症 - 認知症になった夫との日々の記録
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睡眠時無呼吸症候群と認知症

 夫は重度の睡眠時無呼吸症候群である。

 いつからそうだったのか?は定かではないが、脳梗塞後、しばらくしてから気づいたから、72~73歳の時には既に睡眠時無呼吸症候群だったのだろう。

 夫が75歳ぐらいの時に、一度、睡眠障害専門のY睡眠クリニックを受診。入院しての「終夜睡眠ポリグラフ検査」の結果、睡眠時無呼吸症候群の診断が確定。その他、鼻の息の通りの状態等の検査等を経て、CPAP治療(Continuous Positive Airway Pressureシーパップ:持続陽圧呼吸療法=予めその人の無呼吸解消に必要な空気の圧力を調べておき、機械に圧力を設定しておく。機械から設定された圧力の空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止する治療法)を開始した。送り込むのは機械が室内から取り込む「空気」であって「酸素」ではない。簡単に言うと、もの凄い勢いのある風がマスクから吹き出してくる。
 このCPAPの機械はレンタルすることになるのだが、毎月クリニックに通院して、機械に装着された呼吸状態の記録データを解析してもらい、調整等を行う必要がある。

 この毎月通院するというのが結構な負担なのである。当時私はフルタイムの仕事をしており、一人で通院できない夫の受診には、毎回同行せねばならず、様々な持病が増え、通院しなければならない回数が増えていく中で、当時の私は、この無呼吸症候群の治療の重要性についての意識が低かったため、夫のCPAP治療を中断させてしまった。

 しかし、夫が79歳になった頃、夫の睡眠時の無呼吸がひどくなってきていることに気づいた。
 テレビで睡眠時無呼吸症候群の人の睡眠の様子を放映しているのを見ると、グオーグオーと凄い大きないびきをたてているが、夫の場合はそのような大きないびきはかかない。

  ふぅ~ ふぅ~ ふぅ~ ふぅ~ ふぅ~ ・・・(無呼吸)・・・・ん ん ふぅぅぅぅ~ふぅ~ ふぅ~ふぅ~ ふぅ~

 このような感じの呼吸を繰り返す。文字で息の様子を表すのが難しいのだが、ふぅ~と書いてはいるが、口をつぼめて呼吸をしているのではありません。他に息の様子を表す適当な文字がないので、こんなイメージということでご了解を。

 夜中にふと、夫が呼吸をしていないことに気づき、パシパシ頬を叩いて起こしてみたり、横向けに寝かせてみたり(少し無呼吸状態が減る)、かなり気になる状態になっていた(悪化していた)。

 やはり睡眠時の無呼吸の治療が必要だと痛感し、脳梗塞とアルツハイマーの関係で通院中のJ病院の呼吸器内科医に相談した。
 ところが、その時の担当医師は「認知症患者にはCPAP治療は無理ですよ」と言われてしまった。
 確かに・・・以前の短い治療経験からしても、CPAPに馴れ使いこなすには、かなりの忍耐と習熟が必要であり、治療への患者本人の動機付けがなければ、使用継続が難しい機器なのだ。

 認知症患者の場合は、その点、かなり厳しいというのはよく分かる。
 でも、前回のCPAP治療は、夫を介助する私の都合で中断させてしまったという思いもあり、あきらめきれない。
 ネットで調べてみたところ、バスで通院できる距離にS睡眠クリニックを見つけた。このクリニックに夫を連れていき受診したのが79歳(2010年、平成22年)の時。入院して(もちろん、私も付き添いで一緒に泊まり込み)の終夜睡眠ポリグラフの検査結果は・・・

 無呼吸の総数は218回。1時間あたりの指数(AI)は43.3。
 無呼吸と低呼吸の総数は392回。1時間あたりの指数(AHI)は77.9。
 無呼吸のうち、最も長い無呼吸時間は83.7秒で、最も低い酸素飽和度は82%。

 一晩(7時間)の睡眠中に30回以上の無呼吸があると睡眠時無呼吸症候群と診断されるところ、夫はなんと218回もの完全な無呼吸。低呼吸と合わせると392回。
 「成人の睡眠時無呼吸症候群 診断と治療のためのガイドライン 2005」によれば無呼吸指数(AHI)による重症度は次のとおり。

 軽症 5 ≦ AHI <15
 中等症 15 ≦ AHI < 30
 重症 30 ≦ AHI

 夫はAHIが77.9だから、かなりの重症。
 最初のCPAP治療時、私の記憶では、確かAHI指数が30代だったような・・・。
 放置した結果、重症に移行してしまった・・・と大後悔。
 大反省をし、心をあらためて、睡眠時無呼吸症候群の治療を開始した。

 ところで夫の場合、いびきの音が大きくないことが示すように、一般的な睡眠時無呼吸症候群(肥満気味で舌根が気道に落ちてしまうような閉塞性タイプ)とは、タイプが異なる「中枢型無呼吸」が生じていることが検査結果で判った。正確に言うと「閉塞型無呼吸」も出る。最も多く出現するのは「中枢型+閉塞型の混合型無呼吸」だった。
 上に記載したような夫の呼吸のパターンは、いわゆる「チェーンストークス呼吸」というもののようだ。
 夫にこのような中枢性無呼吸が出現する理由は定かではないが、夫には肥大型心筋症があること(心臓からの影響)と、脳梗塞の影響と両方あるのかもしれない。
 中枢型の無呼吸症候群には、CPAPよりもASV(adaptive servo-ventilation)という治療機器を使ったほうが、無呼吸が解消されやすいのだそうだ。ASVは慢性心不全への治療として処方されるものなのだ。
 実際のところ、夫はCPAPで治療を再開したが、無呼吸の数は減るには減ったが、いまひとつ。そこで、ASVに変更してみたところ、無呼吸の数はだいぶ減り、だいたい上記の軽症の範囲以上の無呼吸成績に収まるようになった。
 毎月1回の通院は大変だが、とても重症の無呼吸症候群であることが明らかになった以上は、そのまま放置しておくことはできない。

 認知症の人には、睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療は無理だとJ病院の医師に言われていたが、認知症患者自身が自分で治療機器を装着したり操作したりできないのは確かなので、要は介護する家族の取り組み方次第ということかなと思う。
 で、実際にやってみて、正直言って、かなり大変です。
 まず、正しく装着して快適に使えるようになるためには、一定の習熟期間が必要。少なくとも1ヶ月は忍耐強くやってみる必要がある。その上、鼻柱のところにマスクが強くあたり過ぎて痛みが出たりして適切な強さにベルトを調整するのが難しかったり、マスクのフィッティングが悪くて空気が漏れたり(空気が漏れると、ブワァ~ともの凄い音がする、時にプゥ~プゥ~、とか、それはそれはいろいろうるさい音が・・・・きちんと装着されていればそのような音はでないのだが、寝ているうちに、口の開け具合が変わったり、寝返りをうったりすれば、マスクのフィッティング状態もそれにつれ変わる。)
 それに、そもそも機械を通しての増幅した呼吸音が常にしているので、夫の隣で寝ている私は常にその音を聞きながら寝ている。うまくマスクのフィッティングが調整できていない時には、これらの不快な音に悩まされ続け、夜中に何度もガバッと起きて、マスクのフィッティングの調整に苦心し、すっかり神経症気味、睡眠不足に。

 夫はトイレに行きたくなると、自分でこのマスクを外す。するとブワァ~というものすごい音がし、ピーピーピーという警告音が鳴る。このものすごい音は神経に触るので、夫がマスクのベルトのマジックテープをはずす「ベリッ」という音を聞いた途端、私はパッと目が覚め、電灯を点けて、マスクをきちんととはずしてやり、ASVのストップボタンを押してから、トイレ介助をし、再び寝かせて、マスクをつけ直し、ASVを再開する。

 それで、当の夫はというと、馴れてきたら、このASVを使うことを嫌がったりはしない。
 「これつけて寝る?」と訊くと、「うん。あった方がいい」と言うから、当人としてもASVをつけて寝た方が快適なのだと思う。

 ただ、花粉が飛ぶ季節や、風邪を引いて鼻が詰まっている時などは、夫は苦しくなってマスクをつけ続けることができず、自分で外してしまう。けれども、そうすると、やはり無呼吸が出て、眠りが浅くなり、ほとんど眠れていない状態が続き、翌朝は体調不良となる。だから、できるだけASVを装着したい。鼻が詰まっている時は、市販の鼻の通りをよくするスプレーを使ったり、しばらく時間を置いて、夫の眠りが深くなった様子が見られた時に素早くマスクを装着すると、うまく行く。

 夫にはREM睡眠行動障害もあり、REM睡眠時は手足をバタバタさせたり、うなされて寝言を言ったり、悪夢を見たりする。こうした時には、顔にぴったり装着されているASVのマスクが、さらなる妄想を誘発することがある。けれども、REM睡眠時に多くの無呼吸が発生するものなので、外していまうとデメリットが大きく、何だか三重苦状態で、不憫だな~と思う。

 そんなこんなで治療を再開してからは、ASVを使わなかったのは、我が家の猫がチューブをかんで穴を開けてしまった時の一日だけで(以降、予備のチューブを必ず備えている)、旅行の時にも必ずこの重くてデカイASVを持って行く。
 私たちは車を持っていないので、旅行に行く時は、夫の車椅子、このASV機器セット、それに旅行の荷物と全部私が抱えて持って行かねばならず、正直言って、とても大変。
 ASV機器がもっとポータブル性のあるコンパクトなものになってくれることを要望している(CPAPよりASVの方が一回りも大きく重い)が、ASVはCPAPに比べて利用者が多くないためか、より小型の機器が開発製造されたという話はちっとも聞かない。
 昨年、2014(平成26)年から、訪問診療契約に切り替えた時に、睡眠時無呼吸症候群も併せて在宅クリニックで診てもらうようになり、毎月1回の通院の負担が減った。

 「認知症ネット」のホームページに次のような記事が掲載されていた。

 不自然にいびきがうるさい人や睡眠時に呼吸が不規則になる人は、早い時期に記憶障害や思考の衰退を引き起こすリスクが高いという研究結果が発表された。
「ADNI: the Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative( アルツハイマー病脳画像先導的研究)」グループの調査・研究によるもので、2015年4月15日、米国神経学会(AAN)の機関誌「Neurology(ニューロロジー)」にオンライン版で掲載された。
 ・・・・
 これらの結果から、睡眠時呼吸障害についてCPAPの治療をおこなった場合は、軽度認知障害あるいはアルツハイマー病の発症を数年から10年は遅らせることができることが示唆されたというわけだ。

  https://info.ninchisho.net/archives/4089

 ああ、夫の無呼吸症候群は、夫のアルツハイマー病が発症するのを10年早めたのだなあ~。
 低酸素に弱い海馬を守るためにも、睡眠時無呼吸症候群の治療はできるだけやった方がいい。
 ただ、認知症の人の睡眠時無呼吸症候群の治療には、介護者側のかなりの努力が必要です。 大変です。

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プロフィール

アワキビ

Author:アワキビ
夫と2人暮らし。子どもはいません。
それに現在は猫1匹の家族。
夫、要介護5。アルツハイマー型認知症。生まれつき耳が聞こえない。
父は2018年秋に特養に入所。要介護4。毎週木曜日に実家へ介護タクシーで帰り、2泊3日。土曜日の朝、特養へ帰るという生活も、コロナ禍でずっと特養のみの生活に。特養での看取りも視野に。
母は要介護1で、認知症。弟家族と同居していたが、コロナ禍を期に、我が家に同居することに。記憶障害がだいぶ進んできていて、話したそばから忘れるが、身体は元気。

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