逆流性食道炎から吐血(その1)
- 2015/06/26
- 13:04
夫には食道裂孔ヘルニアがある。
それが原因で逆流性食道炎が起こり、胃と食道の継ぎ目あたりが裂けて、大量吐血するというマロリーワイス症候群を今まで2回経験している。
2009年7月、その日はよく晴れた暑い日だった。
私はベランダで洗濯物を干していた。
夫は起きていて、キッチンでコーヒーの準備をしていた。
ガタン!
という音がしたので、ベランダから部屋の中をのぞくと、
夫が食卓の上に、上半身を突っ伏している。
どうしたの?
慌てて中に入り、夫の背中を叩いてみたが、起き上がれない。
どうやって起こしたのか覚えていないが、
食卓から隣にあるソファへ夫を移した。
しかし、夫は仰向けになり白目をむいたまま意識を失っている。
頬をペタペタ叩いてみたが、意識が戻らない。
脳梗塞の再発?
救急車を呼ばなくちゃ!
119番をし「突然倒れて意識不明。以前、脳梗塞の既往があるので、再び脳梗塞を起こしたかも?」と伝え、救急車の到着を待っていると、夫の意識が戻ってきた。
トイレ・・・ したい。
とヨロヨロと立ち上がるので、夫を支えてトイレへ。
夫は少ししてトイレから出てきた。
今、救急車を呼んだからね・・・
さっき、倒れたんだから。
え~、そうなの?
サイレンが近づいてきたので、外へ出て救急車に
合図をする。
救急隊の隊員を玄関に案内したところ、
夫が2階から1階へ自分で下りてきた。
救急隊の隊員が
あ~っ、そのままで! 無理しないでください!
と階段の途中で夫を押しとどめ、
その場で、バイタルを確認する。
その時、救急隊員が、
夫の両手がびっしょり汗をかいていることを記録していた。
実はこの冷や汗が病態を示すものだったのだが、
その時は、暑い季節だったので、そのための汗と思っていた。
救急隊員から、「どこか痛いですか?」と訊かれるも、
夫は「どこも痛くありません。」と答え、普通の感じ。
救急隊員が、かかりつけのJ病院の神経内科へ
救急の受け入れ打診の電話をし、現在の状況を伝えたところ、
救急車ではなく、自分で病院まで来るようにと言われたという。
えぇ~、そう言われても、うちには自動車もない・・・、
タクシーで・・・?
と戸惑っていると、気の毒に思ったのか、救急隊員の方が
ジュンポウハンソーで、病院の玄関まで送りましょうか?
ジュンポウハンソー
つまり、救急車ですけど、赤信号では止まって、搬送するということです。
はい、それで結構です。お願いします。
というと、「遵法搬送同意書」という趣旨の書面を差し出され、
それにサインをして、救急車に乗ってJ病院へ。
J病院の玄関で、車椅子を借りて、神経内科受付へ。
救急隊からの連絡が行っていたので、すぐにCTを撮るように
手配がなされ、CT検査室の前で夫と共に待っていた。
暑い日だったので、脱水が心配に思い、持ってきていた麦茶を
夫に飲ませた。
すると、夫が「気分が悪い」と訴え、椅子に横になった。
ウェー、吐きそう・・・
CT検査室の受付の人に、吐きそうだと言っている・・・
と伝えているそばから、夫が吐いた。
黒い!
黒っぽい液体を床に吐き散らした。
すぐにCT室に居た医師とおぼしき人が駆けつけてきて、
吐いた物を一瞥すると、
CT中止ね!ストレッチャー持ってきて!
点滴用意! 胃カメラだな・・・
ストレッチャーが運ばれてきて上に乗せられ、点滴開始。
CT検査室の前から神経内科の隣にある消化器内科へ移された。
しばらくして消化器内科の医師が来て、胃カメラを指示したからとの話。
夫は朝から何も食べていない。
黒っぽい液体は、私にも血であろうことは想像できた。
喉に麻酔をして、夫の胃カメラ検査が始まった。
私も検査室の中に入れてもらい、モニター画面を見ていた。
夫の胃の中は、黒いあわあわしたもので 覆われており、
「 これは癌かもしれない」 と私は覚悟したが、
検査を担当した医師は、軽~い調子で、
あ~、これは、マロリー・ワイス症候群だね。
お酒をいっぱい飲みましたか~?
いいえ、まったくお酒は飲んでいません。
黒いのは、出血した血が胃酸に触れると黒くなるの。
じゃあ、止血するかな。
と、ビデオスコープを何やら動かし始めたところ、夫が
痛~いっ!
ともがき、暴れ出した。
胃カメラのビデオスコープを手で握って、
自分で引き抜こうと引っぱった。
モニター画面には、ビデオスコープが
胃の中?か食道の中で激しく動いて、
内臓にあたって、 ピッ~ と
血が出るのが見えた。
あ~、もう止めましょう! もう、終えます!
私は、夫の手を一所懸命押しとどめていたが、
夫は興奮して怒りまくってもり、ビデオスコープが
口から出て、マウスピースを外されてからも、
胃カメラの機器を両手で思いっきり押したりして
暴れて 手がつけられない状態になりそうだったので、
私は夫の上に馬乗りになって、
大丈夫だから!
もう終わったから!
と夫の両手を掴んで、て押さえ込んだ。
すると、少し夫は冷静になってきた。
担当医師に、
止血できなかったけれども、いいんですか?
まあ、このままでも自然に出血は止まりますから。
と言い残して医師は退散。
検査室に残っていた検査技師さんに、夫は
ごめんなさい。
と謝っていた。
消化器内科のケアルームに戻り、医師から、
3日間の絶飲食が必要です。
・・・ということは、水分とかどうやってとるんですか?
入院して、点滴です。
夫が突然意識を失ったのは、
食道裂孔ヘルニアにより逆流性食道炎で荒れていた食道に
何らかの腹圧が加わり、粘膜壁が裂けた拍子に、バッ~と出血し、
出血性ショックを起こして、低血圧になったことによるものだった。
両手にびっしょり汗をかいていたのも出血性ショックの現れだった。
こうして入院することになったが、
夫がアルツハイマーであることを伝えて、混乱するであろうから
私が一緒に病室に泊まれないかと相談すると、
個室に入ることによって、可能だという。
胃カメラ検査の時に夫が暴れたことも理由かもしれないが、
一緒に泊まって介護してくれた方が、看護も楽ということか?
ともかく、家族による宿泊看護申請書というような書類を出して
私も一緒に泊まれることになった。
病室は、消化器内科ではなく神経内科の病棟だった。
認知症対応ということか?
翌朝、夫は真っ黒な下痢便を漏らしてベッドを汚した。
すぐにシーツを取り換えてもらった。
トイレでも真っ黒な下痢便。
夫が言うには、
筆で文字が書けそうだよ~ 墨みたい。
以降、胃酸を抑えるオメプラール錠(現在は、ネキシウムカプセルに変更)を寝る前に服用するようになった。
出血量が多くて貧血状態になっていたので、しばらく鉄剤も飲んだ。
この当時、脳梗塞の再発予防にバイアスピリン1錠を飲んでいたが、これは当面中止。
血液検査でフェリチンの値が正常に戻った頃、私は主治医に、
脳梗塞の再発予防も考えないといけないと思うのですが、バイアスピリンではなく、シロスタゾール(商品名:プレタール)にしてはどうでしょうか?
ここのJ病院の●●教授も、「シロスタゾールがラクナ梗塞の再発予防に効果がある。動脈硬化も改善する」という趣旨の論文を書いてましたから(たまたまネット検索をしている時に見つけた)。
それにバイアスピリンより、シロスタゾールの方が消化管出血のおそれが少ないのではないでしょうか?
と提案して、2010年頃からバイアスピリンをプレタールに変更して服用するようになった。
現在、プレタールOD錠50mg×2(朝、晩)
プレタールは、服用を開始すると、脈拍が早くなるんですね。
夫はどちらかというと徐脈気味で、起きている時は60回/分台のところ、プレタールの服用を開始すると80回/分台ぐらいに。服用開始まもなくは、めまいがすると言って具合がよくなかったが、馴れてくると大丈夫になってきた。
その後、心臓の薬のメインテートを服用するようになり、こちらは脈が速くなるのを抑える作用があり、これによって起きている時の夫の脈はだいたい65回/分台になっている。
2014年7月にNHKスペシャルで、このシロスタゾールが、認知症進行を遅らせる効果があると放映された。
コウノメソッド2015でも脳虚血への推奨薬となっているが、最近の河野先生の「認知症ブログ」では、脳アミロイドアンギオパチーという脳出血(アルツハイマーやレビー小体型認知症の人に多く発症するようだ)との関係で、この薬を使うことで、脳アミロイドアンギオパチーの危険性を高めていないか、躊躇しているような表現が見受けられた。
血管が詰まらないようにすることと、脳出血を起こさないようにすることは微妙なバランスの上に立っているものなんだなあ。
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それが原因で逆流性食道炎が起こり、胃と食道の継ぎ目あたりが裂けて、大量吐血するというマロリーワイス症候群を今まで2回経験している。
2009年7月、その日はよく晴れた暑い日だった。
私はベランダで洗濯物を干していた。
夫は起きていて、キッチンでコーヒーの準備をしていた。
ガタン!
という音がしたので、ベランダから部屋の中をのぞくと、
夫が食卓の上に、上半身を突っ伏している。
どうしたの?
慌てて中に入り、夫の背中を叩いてみたが、起き上がれない。
どうやって起こしたのか覚えていないが、
食卓から隣にあるソファへ夫を移した。
しかし、夫は仰向けになり白目をむいたまま意識を失っている。
頬をペタペタ叩いてみたが、意識が戻らない。
脳梗塞の再発?
救急車を呼ばなくちゃ!
119番をし「突然倒れて意識不明。以前、脳梗塞の既往があるので、再び脳梗塞を起こしたかも?」と伝え、救急車の到着を待っていると、夫の意識が戻ってきた。
トイレ・・・ したい。
とヨロヨロと立ち上がるので、夫を支えてトイレへ。
夫は少ししてトイレから出てきた。
今、救急車を呼んだからね・・・
さっき、倒れたんだから。
え~、そうなの?
サイレンが近づいてきたので、外へ出て救急車に
合図をする。
救急隊の隊員を玄関に案内したところ、
夫が2階から1階へ自分で下りてきた。
救急隊の隊員が
あ~っ、そのままで! 無理しないでください!
と階段の途中で夫を押しとどめ、
その場で、バイタルを確認する。
その時、救急隊員が、
夫の両手がびっしょり汗をかいていることを記録していた。
実はこの冷や汗が病態を示すものだったのだが、
その時は、暑い季節だったので、そのための汗と思っていた。
救急隊員から、「どこか痛いですか?」と訊かれるも、
夫は「どこも痛くありません。」と答え、普通の感じ。
救急隊員が、かかりつけのJ病院の神経内科へ
救急の受け入れ打診の電話をし、現在の状況を伝えたところ、
救急車ではなく、自分で病院まで来るようにと言われたという。
えぇ~、そう言われても、うちには自動車もない・・・、
タクシーで・・・?
と戸惑っていると、気の毒に思ったのか、救急隊員の方が
ジュンポウハンソーで、病院の玄関まで送りましょうか?
ジュンポウハンソー
つまり、救急車ですけど、赤信号では止まって、搬送するということです。
はい、それで結構です。お願いします。
というと、「遵法搬送同意書」という趣旨の書面を差し出され、
それにサインをして、救急車に乗ってJ病院へ。
J病院の玄関で、車椅子を借りて、神経内科受付へ。
救急隊からの連絡が行っていたので、すぐにCTを撮るように
手配がなされ、CT検査室の前で夫と共に待っていた。
暑い日だったので、脱水が心配に思い、持ってきていた麦茶を
夫に飲ませた。
すると、夫が「気分が悪い」と訴え、椅子に横になった。
ウェー、吐きそう・・・
CT検査室の受付の人に、吐きそうだと言っている・・・
と伝えているそばから、夫が吐いた。
黒い!
黒っぽい液体を床に吐き散らした。
すぐにCT室に居た医師とおぼしき人が駆けつけてきて、
吐いた物を一瞥すると、
CT中止ね!ストレッチャー持ってきて!
点滴用意! 胃カメラだな・・・
ストレッチャーが運ばれてきて上に乗せられ、点滴開始。
CT検査室の前から神経内科の隣にある消化器内科へ移された。
しばらくして消化器内科の医師が来て、胃カメラを指示したからとの話。
夫は朝から何も食べていない。
黒っぽい液体は、私にも血であろうことは想像できた。
喉に麻酔をして、夫の胃カメラ検査が始まった。
私も検査室の中に入れてもらい、モニター画面を見ていた。
夫の胃の中は、黒いあわあわしたもので 覆われており、
「 これは癌かもしれない」 と私は覚悟したが、
検査を担当した医師は、軽~い調子で、
あ~、これは、マロリー・ワイス症候群だね。
お酒をいっぱい飲みましたか~?
いいえ、まったくお酒は飲んでいません。
黒いのは、出血した血が胃酸に触れると黒くなるの。
じゃあ、止血するかな。
と、ビデオスコープを何やら動かし始めたところ、夫が
痛~いっ!
ともがき、暴れ出した。
胃カメラのビデオスコープを手で握って、
自分で引き抜こうと引っぱった。
モニター画面には、ビデオスコープが
胃の中?か食道の中で激しく動いて、
内臓にあたって、 ピッ~ と
血が出るのが見えた。
あ~、もう止めましょう! もう、終えます!
私は、夫の手を一所懸命押しとどめていたが、
夫は興奮して怒りまくってもり、ビデオスコープが
口から出て、マウスピースを外されてからも、
胃カメラの機器を両手で思いっきり押したりして
暴れて 手がつけられない状態になりそうだったので、
私は夫の上に馬乗りになって、
大丈夫だから!
もう終わったから!
と夫の両手を掴んで、て押さえ込んだ。
すると、少し夫は冷静になってきた。
担当医師に、
止血できなかったけれども、いいんですか?
まあ、このままでも自然に出血は止まりますから。
と言い残して医師は退散。
検査室に残っていた検査技師さんに、夫は
ごめんなさい。
と謝っていた。
消化器内科のケアルームに戻り、医師から、
3日間の絶飲食が必要です。
・・・ということは、水分とかどうやってとるんですか?
入院して、点滴です。
夫が突然意識を失ったのは、
食道裂孔ヘルニアにより逆流性食道炎で荒れていた食道に
何らかの腹圧が加わり、粘膜壁が裂けた拍子に、バッ~と出血し、
出血性ショックを起こして、低血圧になったことによるものだった。
両手にびっしょり汗をかいていたのも出血性ショックの現れだった。
こうして入院することになったが、
夫がアルツハイマーであることを伝えて、混乱するであろうから
私が一緒に病室に泊まれないかと相談すると、
個室に入ることによって、可能だという。
胃カメラ検査の時に夫が暴れたことも理由かもしれないが、
一緒に泊まって介護してくれた方が、看護も楽ということか?
ともかく、家族による宿泊看護申請書というような書類を出して
私も一緒に泊まれることになった。
病室は、消化器内科ではなく神経内科の病棟だった。
認知症対応ということか?
翌朝、夫は真っ黒な下痢便を漏らしてベッドを汚した。
すぐにシーツを取り換えてもらった。
トイレでも真っ黒な下痢便。
夫が言うには、
筆で文字が書けそうだよ~ 墨みたい。
以降、胃酸を抑えるオメプラール錠(現在は、ネキシウムカプセルに変更)を寝る前に服用するようになった。
出血量が多くて貧血状態になっていたので、しばらく鉄剤も飲んだ。
この当時、脳梗塞の再発予防にバイアスピリン1錠を飲んでいたが、これは当面中止。
血液検査でフェリチンの値が正常に戻った頃、私は主治医に、
脳梗塞の再発予防も考えないといけないと思うのですが、バイアスピリンではなく、シロスタゾール(商品名:プレタール)にしてはどうでしょうか?
ここのJ病院の●●教授も、「シロスタゾールがラクナ梗塞の再発予防に効果がある。動脈硬化も改善する」という趣旨の論文を書いてましたから(たまたまネット検索をしている時に見つけた)。
それにバイアスピリンより、シロスタゾールの方が消化管出血のおそれが少ないのではないでしょうか?
と提案して、2010年頃からバイアスピリンをプレタールに変更して服用するようになった。
現在、プレタールOD錠50mg×2(朝、晩)
プレタールは、服用を開始すると、脈拍が早くなるんですね。
夫はどちらかというと徐脈気味で、起きている時は60回/分台のところ、プレタールの服用を開始すると80回/分台ぐらいに。服用開始まもなくは、めまいがすると言って具合がよくなかったが、馴れてくると大丈夫になってきた。
その後、心臓の薬のメインテートを服用するようになり、こちらは脈が速くなるのを抑える作用があり、これによって起きている時の夫の脈はだいたい65回/分台になっている。
2014年7月にNHKスペシャルで、このシロスタゾールが、認知症進行を遅らせる効果があると放映された。
コウノメソッド2015でも脳虚血への推奨薬となっているが、最近の河野先生の「認知症ブログ」では、脳アミロイドアンギオパチーという脳出血(アルツハイマーやレビー小体型認知症の人に多く発症するようだ)との関係で、この薬を使うことで、脳アミロイドアンギオパチーの危険性を高めていないか、躊躇しているような表現が見受けられた。
血管が詰まらないようにすることと、脳出血を起こさないようにすることは微妙なバランスの上に立っているものなんだなあ。
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