個人ゲーム開発者が「サウンドデザインがこんなに大変と思わなかった」と悲鳴を上げ、共感を呼ぶ。“失敗したときだけバレがち”ゆえに - AUTOMATON

個人ゲーム開発者が「サウンドデザインがこんなに大変と思わなかった」と悲鳴を上げ、共感を呼ぶ。“失敗したときだけバレがち”ゆえに

ゲーム開発系コミュニティにて「サウンドデザインの難しさ」を論じる投稿が注目を浴びている。何気なく聴き流しがちなゲームのサウンドながら、苦労して作っても注目されにくい傾向もあるようだ。

Redditのゲーム開発系コミュニティにて「サウンドデザインの難しさ」を論じる投稿が注目を浴びている。何気なく聴き流しがちなゲームのサウンドながら、苦労して作っても注目されにくい傾向もあるようだ。

チーム開発でのゲームにおける効果音などのサウンド全般は、サウンドデザイナー(サウンドクリエイター)といった役職のスタッフが担当している場合が多い。効果音全般の制作(波形制作)、ゲーム内への実装など、ゲームの音に関するあらゆる分野を担う部門といえる。BGMについては別途作曲家(コンポーザー)が担当する例もあるものの、これも開発規模によってはサウンド担当者がおこなう場合もあるだろう。開発規模によってどのような役職が設けられ、どのように分担されるかはまちまちなポジションといえる。


サウンドデザインへの悲鳴

そんなサウンドデザインについて“ゲーム開発の中で特に大変な部門ではないか”との見解がRedditのゲーム開発系コミュニティr/gamedevにて投じられ、共感を呼んでいる。「サウンドデザインはめちゃくちゃ難しい」とのスレッドを投稿したのは、ゲーム開発者のTossedBloom氏だ。同氏は『Potato Cop』(仮題)という見下ろし型アクションゲームを個人開発しているようで、制作中にサウンドデザインの難しさに直面したという。


TossedBloom氏はWeb開発を本業としているそうで、プログラミングについては違いもあるものの、何とかなっているという。またアートについてはマウスで描いたそうで、美しくはないものの一貫性のとれたデザインになっていると考えているようだ。

しかし、サウンドについては非常に苦労しているとのこと。適切なライセンスフリーのサウンドを探す必要があるほか、キャラクターの声のために声優を複数人雇うことになったという。そうして苦労して用意したサウンドを、良質で一貫した音に調整するのも大変だったそうだ。TossedBloom氏は、サウンドデザインに携わるすべてのクリエイターに敬意を表するとしつつ、これまでで一番くじけそうになる仕事だったと綴っている。

スレッド内では同じく個人開発などでサウンドデザインに挑戦し、苦労したというユーザーの声も見られる。音楽・効果音の制作やミキシング、そしてそれらに用いるツールの使い方など、入門する際に学ぶことは非常に多いようだ。


失敗したときだけバレがち

そんなサウンドデザイナーながら、チーム開発においてはさらなる“悩み”が生じるケースもあるようだ。上述のスレッドではAAA規模のスタジオのコマーシャル部門で働いているというユーザーのTheReservedList氏が持論を述べており、「サウンドデザイナーは誰にも評価されないし、失敗したら叩きのめされる」という。

TheReservedList氏の考えは極端かもしれないものの、サウンドデザインでは成功よりも失敗が目立つといった傾向はあるかもしれない。たとえば過去には荷ほどきパズルゲーム『Unpacking アンパッキング』を手がけるWitch BeamのゲームデザイナーSanatana Mishra氏が、サウンドデザインは時間のかかる仕事にもかかわらず、正しく表現できた際には“目に見えない存在”、つまり認識されにくい存在になると伝えていた。一方で不自然な表現にしてしまうと、プレイヤーはたちまち違和感としてそのサウンドを認識するだろうとして、作品に溶け込むサウンドデザインがいかに重要かを述べていた。


ちなみに『Unpacking』においては実物などを用いて録音されたサウンド(フォーリーサウンド)が使用されており、1万4000種類もの音声ファイルが収録されているという。あらゆるアイテムに、場所に応じて置いたときの音に変化があり、また連続で置くと微妙に音が変わるといった徹底ぶりもみられる。このことを別のスタジオThe Chinese RoomのシニアサウンドデザイナーFrancesco Del Pia氏が称賛し、脚光を浴びていた。つまり同作のサウンドデザインの秀逸さを、他社のサウンドデザイナーが気づいて褒めたことでようやく大きく注目された格好だ(関連記事)。

そうした例も見るに、少なくともプレイヤーからは、サウンドデザインを上手くやればやるほど褒められるどころか気づかれにくく逆に失敗すると急に批判される、といった傾向は少なからずあるようだ。業界の水準が上がるにつれて、心地よく自然な音色が“あって当然の要素”のように求められている状況もあるかもしれない。

さまざまな知識やスキルが必要なものの、“失敗は許されない”傾向もありそうなサウンドデザイン。今回は個人開発者がサウンドデザインを経て、その大変さが身に染みたというRedditでの報告が注目されている格好だ。とはいえ先述のスレッド内には個人開発でサウンドデザインに挑戦した結果、開発における楽しみになったとの声や、趣味のひとつになったという報告もある。大変ながらもやりがいのある仕事とする見方もあるようだ。いずれにせよ、ゲームを遊ぶ際に普段あまり気にしないような細かな効果音に注意を払って、どのような工夫があるのかに思いを馳せてみるのもいいかもしれない。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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